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本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『「第一印象」の魔法』(アン・デマレイス、バレリー・ホワイト)

お薦めの本の紹介です。
アン・デマレイスさんとバレリー・ホワイトさんの『「第一印象」の魔法』です。

「第一印象」の魔法――あらゆる出会いがチャンスに変わる

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アン・デマレイス(Ann Demarais)さんとバレリー・ホワイト(Valerie White)さんは、ファースト・インプレッション社の創業者で、ともに心理学者です。

人生は「第一印象」で変わる!

人生では、何度も「初対面の出会い」を経験します。
そのとき重要になるのが、「第一印象」です。

最初に与えた印象は、永遠に相手の心に残る可能性も高いです。

著者は、今後の人間関係や、その出会いをチャンスに変えられるかどうかは、第一印象にかかっていると指摘します。

 私たちは、改めて「第一印象」の大切さに目を向ける必要がある。
さまざまな場所に移り住み、職を変え、新しい友人をつくり、新しい人間関係をスピーディに築く。それが現代のライフスタイルだ。オンライン面談やSNSの普及も出会い機会を増やしている。初対面の機会があまりにも多すぎて、いちいち意識していられないほどだ。新しい同僚や顧客、子どもの学校の保護者、社会人サークルの参加者・・・・・現代は、新たな出会いの連続である。
さまざまな初対面の出会いの中で、私たちは、天気や日常の話をしながら、互いへの理解を深めていく。ごく短いやりとりを通じて、相手を評価し、好きか嫌いかを判断する。
「また会いたい」「この人と仕事をしたい」「友達になりたい」「デートをしたい」・・・・・・すべては、第一印象で決まるのだ。
(中略)
本書で紹介する「第一印象」に関する専門知識は、フォーチュン100社のリーダーや管理職を評価し、指導してきた長年の経験に基づくものだ。知的で有能なエグゼクティブであっても、人に与える印象に気づいていないことは多い。一方で、第一印象をよくするためのスキルを身につけることが、あらゆる人間関係に欠かせない。
そこで私たちは、より多くの人に第一印象のスキルを身につける場を提供する意図で、ニューヨークで「ファースト・インプレッション社」という企業を立ち上げた。
ここでは、ビジネスから恋愛に至るまで、一般的な出会いのシーンに焦点をあて指導を行っている。模擬デートや面談を設定し、カウンセラーが人との接し方や自己アピールの様子を観察して、フィードバックを行う。「自分をどう見せたかったか」「相手にどんな印象を与えたつもりか」を確認し、カウンセラーの認識と比較することで、具体的で建設的なアドバイスを提供している。
ほとんどのクライアントは「そんな指摘をされたのは初めてだ」と驚く。そして「自分にとってはほんの小さな、取るに足りないと思える行動」を変えることが、人からの評価をあげることにつながっているのを実感する。
本書では、弊社で行っている指導を、そのまま紹介する。
まず知ってほしいのは、良い第一印象は「7つ」の要素で構成されているということだ。

①親しみやすさ
②相手に興味を示せているか
③相手を啓発できているか
④自己開示のうまさ
⑤会話のエネルギー
⑥人柄
⑦セックスアピール

本書を読めば、①から⑦のすべての要素において「今、自分がどう見られているか」と「今後、印象を良くするためのコツ」を確認できるようになっている。
また、これら7つの要素は、どんなシチュエーションにも応用できる。仕事であれ、恋愛であれ、シチュエーションが変わったとしても問題ない。第一印象は、話の内容よりも、あなたの振る舞い方によって決まるからだ。どのように相手に関心を示し、話題を提供し、自己開示するかが第一印象を左右するのだ。

本書を通じて、「人からどう思われているか」についてあなたの認識と、「実際に他人の目にどう映っているか」のギャップが明らかになれば、最も簡単に、自然に、その場に応じて自分を感じのいい人に見せることができる。
もちろん、すべての人に好かれようと努力する必要はない。他人の好みや求めることには個人差がある。
一方で、「普遍的な魅力の要素」を知ることも大切だ。年齢や外見、地位や趣向を問わず、誰にとっても魅力的に映る行動があるのだ。笑顔でいる、相手に関心を示す、相手との会話のバランスを取るなどにより、誰もが魅力的に映るようになる。また、普遍的な魅力を押さえれば、自分の言動が相手にどんな印象を与えるかも予測できるようになる。

「第一印象を良くするために、自分の言動まで変えるのはとをなのだろうか。自分らしさも大切にしたいし、事実、友人や同僚はありのままの私を受け入れてくれている」
そう考えるかもしれない。
しかし、あなたが与えている第一印象が、あなたの想定している「ありのままの自分」を正確に反映しているとは限らない。初対面の人には、親しい友人が受ける印象とはまったく違った印象を与えている可能性がある。
内気で気を遣う人は「よそよそしい」と思われているかもしれないし、おしゃべりで明るい人は「自己中心的」だと思われているかもしれない。
初対面の人は、あなたの良さを知り、好意を持つだけの十分な時間をまだ一緒に過ごしていない。そのため、限られた情報に基づいて評価するしかないのだ。
「望み通りの印象を与えている」とわかれば、「相手に正確な自分の姿を見せることができた」という安心感が得られるだろう。
相手に受け入れられても拒否されても、それはあなたの本当の資質によるものであり、誤解を与えてしまったからではない。それかわかれば、相手との人間関係を発展させるかどうかを、あなた自身がコントロールできるようになる。つまり、人間関係のイニシアチブを握ることかできる。
また、少し工夫を加えることで、相手の反応が良くなるので、日々の出会いがもっと楽しくなる。新しい出会いに自信が持て、互いに満足度の高い交流ができるようになる。
さらには、第一印象で誤解されがちな他人に対して、思いやりを持って寛容に応対することもできるようになるだろう。

『「第一印象」の魔法』 プロローグ より アン・デマレイス、バレリー・ホワイト:著 鹿田昌美:訳 ダイヤモンド社:刊

・あなたは初対面でどう見られているのか?
・どうすればもっと良い印象を与えることができるのか?

本書は、これらの疑問に答えるために、あなたの「言動」と「人に与える印象」との関係について解説した一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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初対面で生まれる「4つの感情」とは?

第一印象を左右する大きな要因の一つが「相手の感情」です。

 あなたは、会話のあとに相手がどんな気分になるかを考えているだろうか?
もしも答えがノーなら、ぜひ考えるべきだ。なぜなら、あなたの言動は、相手の自己評価に影響を与えるからだ。
とりわけ初対面のときは重要だ。その瞬間に、そしておそらく永久に、あなたに対して抱く印象が決まってしまうからである。
「自分を理解してもらった」「幸せな気持ちになった」と相手に感じさせることができれば、それが相手に与える「あなたの印象」となり、相手はあなたにポジティブな感情を抱く。一方で、うっかり相手を侮辱したり、不快な気分にさせたりすると、相手はあなたに誤ったネガティブな感情を投影してしまう。
どちらにしても、相手は、「自分の気分の良し悪し」と「あなたの印象」を直結させるのである。

ここでファースト・インプレッション社のクライアントの事例を紹介しよう。ウォール街のアナリストのデヴィッドは、カフェでカウンセラーのスーザンと模擬デートを行った。
彼はニューヨークの歴史に興味があり、歴史に関する講座を受講していて、ニューヨークの政治史について論文を書いていると伝えた。
スーザンは彼の意欲と洞察力をほめ、論文を読んでみたいと応じた。すると、すかさずデヴィッドは論文の要点を説明した。デヴィッドはスーザンを気に入った。自分の考えを尊重し、理解してくれたので、自己肯定感が高まり、良い気分になったのだ。さらには、自分に関心を示し、敬意を払ってくれたスーザンは自分に気があるのだと思い込んだ。
しかし、デヴィッドはスーザン自身の気分や自己評価については考えていなかった。模擬デートの最中、スーザンは、「彼は私のことを気にかけてくれていない」と感じていた。デヴィッドは、彼女自身のことや彼女の意見を聞くことがなかったからだ。デヴィッドは自分が良い気分だから彼女も良い気分だろうと考えていたのだ。
デヴィッドのような誤解をする人は多い。自分が楽しんでいれば相手も楽しいと勘違いしてしまう。特に、初対面の場合、自分の気持ちに意識が集中しがちだが、人に与える印象においては、自分の気持ちよりも「相手を良い気分にさせる」ことのほうが重要なのだ。
ここで、初対面で生まれる「4つの感情」について見てみよう。

❶あなたの気分
パーティや会議、知らない人に話しかけるときなど、とりわけ初対面の相手との会話では、自分の感情ばかりに意識が向きやすい。今、自分は心地よいか、退屈か、緊張しているかなど、自分の抱いている感情が、今後あなたが相手とどう関わり、どんな状況を望み、誰と付き合うかの指針になる。デヴィッドが、「相手に理解されている、良い気分だ」と感じ、スーザンと交流を続けたいと考えたように。

❷あなたが相手に抱く感情
新しい状況に慣れ、心地よくなると、「自分が相手をどう感じているか」にも気持ちが向くようになる。言動や行動によって相手を評価し、性格や好感度を素早く判断する。デヴィッドは、自分の考えや態度を共有してくれたスーザンに対し、すぐに好意を持った。

❸相手があなたに抱く感情
良い印象を与えるためには、相手に肯定的にとらえてもらう必要がある。だから、相手にどう思われているかに意識を向けることも重要だ。クライアントとの顔合わせや初デートではなおのことだ。やりとりをしながら、あなたは「相手が笑顔か?」「あなたの冗談に笑っているか?」「熱心に聞き入っているか?」を意識するだろう。
デヴィッドは、スーザンの感情を考えていなかった。自分の感情のことで頭がいっぱいだったのだ。

❹相手の気分
あなたの言動は、相手の感情、とりわけ自己評価に大きな影響を与えている。これを意識するが、第一印象にとっては非常に重要だ。というのも、相手の自己評価を上げられるかどうかが、相手があなたに抱く感情や印象を大きく左右するからだ。
一方で、これは4つのうちで最も軽視されがちだ。相手はあなたとのやり取りから良い気分になっているか? 会話を終えたときに相手の自己評価は上がっているか?
親しい相手であれば、感情をすぐに察知し、気分が良くなるように働きかけることができる。料理にこだわりがある友人なら、意識的に料理の腕をほめたりするだろう。
しかし初対面の場合、相手の自己評価にまで意識がいかない。相手のことを知らないので、感情的なニーズにまで容易に踏み込めないのだ。初対面という緊張下で、自分の感情に気を取られてしまうこともあるだろう。私たちの指導経験からも、人は❹よりも、❶、❷、❸の感情を重視することがわかっている。

第一印象を良くする秘訣は、「相手の気分」に意識を向けることだ。これは自然にわきあがるものではないので、意識的に注意を向ける必要がある。自分の感情ばかりに目を向けずに、相手の気分を高めることを意識できれば、あなたの第一印象はぐっと良くなるだろう。
デヴィッドは、スーザンの気分や自己評価について考えるのを怠ってしまった。その結果、望んだような印象を与えられず、期待した反応も得られなかった。こうした人間関係の行き違いの多くは「相手の気分」を軽視していることが原因なのだ。

『「第一印象」の魔法』 第1部 第2章 より アン・デマレイス、バレリー・ホワイト:著 鹿田昌美:訳 ダイヤモンド社:刊

自分自身の感情や気分は、わかりやすいので意識しない人はいないでしょう。
一方、相手の感情や気分は、ついおろそかになりがちです。

自分が楽しいから、相手も楽しいだろう。
つい、そう思い込んでしまいがちです。

人と話すときには「4つの感情」に気を配れるくらい冷静でいたいですね。

「相手に興味を示す」ことが大事!

良い第一印象に欠かせない鉄則の一つが「相手に興味を示す」ことです。

著者は、その理由を人は、心からの興味を示されるとうれしくなり、理解されているように感じるからだと述べています。

 相手に興味を示すときには、物理的な動作が必要となる。体の向きや視線、どのように話しかけ、質問をし、耳を傾け、反応するか。こうしたささいなボディランゲージや言動から、人は即座にメッセージを読み取る。
ここでアイリーンの例を紹介しよう。大手テクノロジー企業の管理職である彼女と新しい部下のジョン、ローリーとのやりとりを弊社のカウンセラーが観察した。
アイリーンは新しいプロジェクトの概要を説明し、意見を求めた。ジョンもローリーも熱心にアイデアを出し合った。しかし、会議が進むにつれ、アイリーンはローリーのほうばかりを向き始めた。ローリーがアイデアを出すときには、うなずき、微笑み、身を乗り出した一方、ジョンが話すときには姿勢を変えなかった。やがてジョンは発言しなくなった。
カウンセラーが、振り返りのセッションで態度にひいきがあったと指摘すると、アイリーンは驚いた。ジョンが心を閉ざしたことには気づいていたが、自分のボディランゲージのせいだとは思ってもみなかった、と。アイリーン自身は、バランスよく意見を求めたつもりだった。
アイリーンが2人の部下にアイデアを求めていたのは確かだが、ボディランゲージに大きな偏りがあった。ローリーに体ごと集中している姿が、ローリーに肯定的なメッセージを送ると同時に、ジョンには拒絶のメッセージを送ってしまっていたのだ。
体には、興味の行方が表れる。アイリーンがそうだったように、私たちは「何を言っているか」に気を取られ、「身体的なコミュニケーション」には意識がいかないものだ。体の向き、頭の動かし方、笑顔の有無などによって、私たちは興味の強さを示しているのである。

ボディランゲージに加え、アイコンタクトもまた、相手への興味を示す重要な要素となる。
ポールの例はまさにそれを物語っていた。ポールはオフィスのカフェで弊社のカウンセラーと待ち合わせて模擬デートを行った。彼は積極的に言葉を交わし、仕事の話や今後のキャリアについて話した。彼の話はおもしろく、前向きだった。
しかし、ポールはミーティングの間、ずっとカウンセラーから目をそらし続けた。まるで気が散っているかのようにカウンセラーの背後を見たり、部屋を見回したりしていた。カウンセラーは、ポールが退屈しているように思え、自分よりもカフェに入ってくる人に興味があるように感じた。
フィードバックでカウンセラーが、ポールにそれを指摘すると、彼は「会話に集中しており、そんな印象を与えたつもりはない」と言い、アイコンタクトの弱さについて「まったく気づかなかった」と答えた。彼には「興味がない」というメッセージを送っている自覚がまったくなかったのである。
アイコンタクトは、相手への興味を示す明確なサインだ。会話では、相手の目を見つめるのが普通だ。それ以外の時間は、口元や顔のほかの部分を見たり、ちょっと目をそらしたりする。ほとんどの人はこの基本ルールを意識し、それに従うことで、「相手に関心があり、誠実で一緒にいて心地よい人」というメッセージを送っている。
あなたがポールのように、大多数の人よりもアイコンタクトが少ないとしたら、知らず知らずのうちに、「相手に関心がなく、魅力に欠け、居心地が悪い人」というメッセージを送っている可能性がある。
私たちの経験から言うと、通常よりもアイコンタクトが少ない人がかなりの割合で存在する。ファースト・インプレッション社のクライアントの中にも、自分のアイコンタクトが少ないことにまったく気づいていない人が多くいた。

アイコンタクトの基本ルールを知れば、与えたいメッセージをコントロールできる。
相手から離れたければ、顔をあまり見ないで短い視線を送ればいい。興味や魅力を示したいときは、視線を多めに送ると同時に、通常よりほんの少しだけでいいので、わずかな違いを感じ、あなたがその人に好意があり、魅力を感じていることが伝わる。
ただし、じろじろ見たり、ずっと目を合わせ続けたりするとーー特に男性からの視線はーー不快感や脅威を与えることがある。
では、どの程度のアイコンタクトが相手から期待され、望まれるのだろうか? 基本ルールから外れた場合、どのような影響があるのだろうか?
研究者たちは、この疑問について調査し、対面での会話において、どの程度のアイコンタクトが一般的であるかを調べた。その結果、ほとんどの人が全体の時間の45〜60パーセントの割合でアイコンタクトを取っていることがわかった。
また、標準を超えたときや下回ったときにどうなるかについても調査を行った。参加者に短い就職面接を受けてもらい、アイコンタクトの時間を増やす(90パーセント)、標準内に収める(45〜60パーセント)、アイコンタクトの時間を減らす(10パーセント)のいずれかの指示をした。
その結果、アイコンタクトの時間が短い人は、さまざまな点でネガティブな印象を与えることがわかった。アイコンタクトが平均的、あるいは多い人に比べて、表面的で、社会的な魅力に欠け、信頼性に欠けると感じられたのだ。また、興味深いことに、長時間のアイコンタクトを取っても、通常のアイコンタクトよりも好感度が上がることはなかった。

アイコンタクトを取る時間の割合とは別に、一度に見つめる長さや頻度も相手に影響を与える。別の研究では、視線を合わせる時間が長く、頻度が少ないほど、好感度が上がることがわかった。見つめる時間が短く、頻繁に視線を投げかける「チラチラ見」は好感度が下がるのだ。
通常の量(またはそれ以上)のアイコンタクトを取り、少しだけ視線を長く合わせることで、付き合いやすく感じのいい人に見えるだろう。

『「第一印象」の魔法』 第2部 第2章 より アン・デマレイス、バレリー・ホワイト:著 鹿田昌美:訳 ダイヤモンド社:刊

ボディランゲージやアイコンタクトは、意識しないと、普段のくせが出てしまいます。
一度、意識して自分の仕草を振り返ってみる必要がありますね。

相手から印象の良いボディランゲージやアイコンタクトを身につける。
それだけで、人間関係は劇的に良くなります。

初対面での会話は「話題選び」がカギ!

初対面の人との会話で、相手と親しくなるためのコツ。
それは「話題選び」です。

著者は、話題づくりの達人は、ほかの人が興味を持ちそうな話を拾うのが上手で、会話の相手に合わせてそれらの話題を変えることができると述べています。

 ここで、話題選びの際に重要な“価値観”の視点についても紹介しておきたい。心理学者たちは、「人が人に魅力を感じる理由はなんなのか?」を身体的特徴、協調性、知性など、さまざまな要因で探ってきた。
その結果、人は、日常生活で同じ価値観を持つ人に魅力を感じることがわかった。子育て、福祉、喫煙、趣味などについて日常生活の考え方が似ていると、相手はあなたに魅力を感じるのだ。
それはなぜか。第一に、自身の正当化につながるからだ。自分が常識的で、世の中を正しく解釈し、未来を正しく予測する能力があると肯定された気分になるのだ。
もう1つの理由は、自分と同じ考え方をする人は自分を好きになってくれると考えるからだ。あるトピックスについて相手に同意すれば、同意しない場合よりも、相手はあなたが好意を寄せていると感じる。あなたに好かれていると仮定するから、相手はあなたを好きになる。
だから、好意的に受け止められたいなら、似たような価値観を持っていそうな分野について話そう。相手と意見の合いそうな話題を探るのだ。どんな人でも、「あなたは間違っている」と言われるよりも「あなたは正しい」と言われるほうを好むのだ。

初対面の会話では、相手から出た話題に対して、関連する情報を提供することが望ましい。
レニーの例を紹介しよう。彼は、ある冬の日の午後、弊社の女性カウンセラーのスーザンと模擬デートを行った。そのときの会話の一部を紹介する。

スーザン 「来週のアカデミー賞の授賞式は見る?」
レニー  「いや、あまり映画には興味ないんだ」
スーザン 「私もそれほど興味ないけど、誰が受賞するか、どんな服装で登壇するかを見るのは好きよ」
レニー  「(うなずきながら)ああ、多くの人が注目するだろうね」
スーザン 「ところで、日曜の新聞は読んだ? どうやら北極の氷が溶けてきているらしいのよ。地球温暖化が進んできているらしいわね」
レニー  「本当かい、いったい地球はどうなっているんだろうね」

スーザンは新聞の内容を説明し、レニーがコメントを述べ、それが終わるとスーザンが別の話題を提供する。このパターンが1時間も続いた。
振り返りのセッションでは、レニーは会話を楽しめたと話し、自分が熱心に会話に関わっているように相手には見えたはずだと感想を述べた。さらに、スーザンのように新しい情報を追いかけている人が好きだと話した。
しかし、スーザンのほうは、レニーの会話への貢献度の低さに不満を感じ、会話を進めることに負担を感じていた。また、レニーから情報をえたり、楽しませてもらったりする機会はなかったと話した。
会話に何のアイデアも話題も加えなければ、たとえ熱心に話を聞いていたとしても、つまらない人だと思われてしまうので注意が必要だ。
とある研究でも、それは明らかになっている。ここでは対人関係における「つまらない人」がどういう人かを調べるために、人々に会話を聞いてもらい、いくつかの側面から評価してもらった。
その結果、受け身の姿勢で、関連する情報を会話にほとんど付け加えない人は、会話に貢献する人よりも、つまらない退屈な人だと思われることがわかった。また、貢献度の低い受け身のコミュニケーションを取る人は、社会性が低いと判断され、積極的に貢献する人よりも好感度が下がってしまった。
ほかの人の話題に対し、関連する話題を提供することは、とても重要だ。相手に新たな知識を与えて楽しませることで、あなたへの評価を輝かせることができる。

話題を提供することが大切な一方で、ほかの人が提供してくれた話題に“どう反応するか”も大切だ。
その話題が、あなたが知っていること、興味があることなら、話に乗りやすいだろう。好きなスポーツチームやミュージシャンについて質問してもらえたら、たいていは感想や意見を述べることができる。
では、知らない話題が出てきた場合はどうすればいいか。相手が提供してくれた話題が、あなたがまったく知らないことの場合もあるだろう。それはそれで、初対面の出会いの楽しみの1つだ。新しいことを学び、新しい視点を得ることができる。
ところが、知らない話題を振られたときに、無知だと思われる不安から話題を変えたり無視したりする人がいる。すると、失礼な人、自己中心的な人、社交的ではない人と思われてしまうので要注意だ。
ある月曜日の朝、コーヒーマシンの前でおしゃべりしていた同僚のロブとジョージのやりとりの一部を紹介しよう。2人は互いのことをあまり知らない。

ロブ   「週末は大変だったよ。息子2人のサッカーの練習の送り迎えがあったうえに、妻の家族が遊びに来てね。もうへとへとだよ」
ジョージ 「それは大変だったね。僕は、週末は横になってテレビを観ていたよ。そういえば昨日の夜、リンカンのドキュメンタリー番組がやってたんだ。僕も知らなかったんだけどねーー」
ロブ   「そうか・・・・・・それは見逃したよ・・・・・・僕はジャズの黄金時代についての映像を観ていて、あの手の音楽が本当にすごく好きだと感じたんだ」

歴史にほとんど詳しくないロブは、無知な自分をさらけだすのが嫌で、ジョージの話題を避けて話題を変えた。しかし、ジョージはロブの態度がぎこちなく、無関心で、失礼だと感じてしまった。
ロブの行動はフェイク・クエスチョン(→94ページ)の逆である。自己アピールができる話題へと戦略的に移行するのではなく、自分が避けたい話題から戦略的に遠ざけたのだ。
第一印象を良くするためには、幅広く話題に精通する必要はない。他人の興味や意見に好奇心を示すだけでいいのだ。その話題になじみがないと言われても、ほとんどの人は嫌がらない。むしろ、好きな話題を教える機会を喜んでくれるだろう。ロブが、「僕はリンカンのことはあまりよく知らないんだ」そのドキュメンタリー番組について教えてくれる?」と言っていたら、もっとポジティブな印象を与えられたはずだ。
無知をさらすのを恐れて話題を変えると、相手は好きな話題にしか興味がない人だと見なし、知識のなさを正直に話した場合よりもかえって印象を悪くしてしまうのだ。

『「第一印象」の魔法』 第2部 第3章 より アン・デマレイス、バレリー・ホワイト:著 鹿田昌美:訳 ダイヤモンド社:刊

自分から提供するときは、相手が興味を示しそうな話題がいいということですね。
自分が興味あるかといって、いきなりマニアックな話題を話し始めても、相手は戸惑ってしまいます。

一方、相手から振られた話題に対しては、興味を示してあげることが大切です。
自分が知らなかったり、興味がないからといって、無理やり話題を変えてしまうのは厳禁です。
知ったかぶりをしないで、素直に相手に教えてもらう姿勢も、好印象を与えますね。

「色気」は、第一印象に華やかさを与える

第一印象を構成する7つの要素のうちの一つが「セックスアピール」、いわゆる“色気”です。

色気は、第一印象に華やかさを与えます。

著者は、色気の強弱を調整することで、相手に安心感を与えたり、もう一段上の関係を築いたりすることができると指摘します。

 何度も言うが、色気とは単なる肉体美のことではない。たとえスーパーモデルであっても、相手に興味を示さず、会話に無反応であれば、魅力に欠けるものだ。
色気を表現するには、さまざまな方法がある。最も重要なのは、相手への好意・関心を態度で示すことだ。
さりげなく相手への好意を示せば、相手は良い気分になり、その結果、あなたに好意を抱くだろう。
では、初対面で相手に興味を持ち、心ひかれたときに、どうやって好意を示せばいいのだろうか。
相手にとって心地良い範囲で魅力を伝える方法としては、アイコンタクト、軽く触れる、関心を示す、の3つが有効である。
まずは、アイコンタクトについて見ていこう。アイコンタクトは、他者に関心を示す最も基本的な方法の1つであり、相手への好意も示せる。興味・好意を伝えたいなら、いつもより長く視線を送ろう。相手は、特別な注目を受けていることにすぐに気づくはずだ。
ここで、おもしろい研究結果を紹介しよう。「何回チラ見したら、男性に伝わるのか?」というものだ。
女性が男性にアプローチしてもらうためには何をすればいいのかを調べるために、ある女性研究者が、協力者である20代の魅力的な女性と一緒にバーの席についた。
研究者は、少なくとも3メートル離れたところにいる男性を選び、魅力的な女性に、1回または複数回アイコンタクトを取ってもらった。その際、笑顔をつくったりつくらなかったりしながら目を合わせてもらった。その後、ターゲットの男性に近づいてくるかどうかを10分待った。
その結果、男性たちにはかなりアプローチを要することかわかった。一度だけ視線を合わせただけでは、たとえ笑顔をプラスしても近づいてこなかった。
何度も目を合わせ、笑顔を送った男性だけが、60パーセントの確率で近づいてきた。それ以外の方法では、成功率は20パーセント以下だった。ただし、視線を送られた男性全員が関心をもたれていることに気づいており、注目されていることを喜んでいたことがわかった。

相手への好意を示すもう1つの方法は、相手に触れることだ。触れることで、視線よりもさらに強力なメッセージを送ることができる。状況にもよるが、ほとんどの人は、ロマンチックな場面でなくても軽く触れられることを好む。
初対面では、相手の関心を引くために、さりげなく相手に触るといいだろう。これにより、「あなたに好意があります」「私は温かい人間です」「もっとあなたと一緒にいたい」と言うメッセージを送ることができる。
事実、見知らぬ人に軽く触れられると、その人への好感度が上がることがわかっている。
ある研究では、図書館の司書にお願いして、利用者にカードを返却する際に、0.5秒だけ相手に触れてもらった。
すると、触れられた人は、そうでない人に比べて、司書や図書館に好意的な感情を抱いたと報告した。さらに、その後の気分も良くなった。また、好意的な感情は、司書が男性であるか女性であるかに関係なく引き出された。
別の研究では、ショッピングモールで、インタビューと称して人々を呼び止め、インタビュアーが買い物客の肩から手の間のどこかに軽く触れるか、まったく触れないかのどちらかの行動をとった。
その後に紙を落とし、その人が拾うかどうかを確認したところ、相手に触れた場合のほうが相手は親切になった。特に、腕に触れることが最も効果的であることがわかった。ここでは性別も重要な要素だった。男性の上腕に触れた女性インタビュアーが、最も助けてもらえた。
ここからもわかるように、一般的に、初対面の人に軽く触れると、その人はあなたに好意を持つ可能性がある。ただし、異性に触れる場合は注意しよう。職場などの場合はセクハラにつながる可能性があることも頭に入れておいてほしい。

関心は関心生み、相手からの好意を育む。相手に関心を寄せれば、相手から魅力を感じてもらえる可能性が高まるのだ。
ある会社の営業部の話をしよう。営業会議のあと、部員たちがカクテルを飲みながら談笑していた。若い営業担当者のポーリンは、まだほかの人のことをよく知らないため、黙ってまわりの話に耳を傾けていた。
それに営業部長のハリーが気づき、彼女を会話に引き込もうとした。会議の内容についてどう思ったかをたずね、意見に耳を傾けた。さらにハリーは、ポーリンのいくつかの指摘について、「それは気づかなかった!」と感心し、とても洞察力があると彼女をほめた。さらに個人的な質問もして、会話はさらに盛り上がった。その日の夜、ポーリンは同僚に「ハリーはとてもおもしろくて魅力的な人ね」と伝えた。
「感心」と「好意」には強い相互作用がある。同じような魅力を持つ3人を紹介され、そのうちの一人があなたに関心があると知ったら、あなたはその人のことをより好きになるだろう。ポーリンがほかの男性よりもハリーにひかれたのは、ハリーがポーリンの話を引き出して、関心を示したからだ。このように関心を示すと、相手はうれしいと感じ、あなたに引きつけられてしまうのだ。
つまり、あなたが誰かにひかれているのなら、自分の気持ちを相手に伝えて関心を示せば、相手からの好感度が上がる可能性が高い。多くの人は、拒絶されることを恐れて、相手に魅力を感じていることや関心があることを口にするのをためらってしまうが、実際には、その逆のことが起きる。
もちろん、関心を示したからといって、すべての人に好かれ、恋愛感情を抱かれるわけでもない。また、行きすぎた行為は不快に思われる可能性もある。
とはいえ、一般的には、純粋に相手への関心を示すことで、失うものより得られるもののほうが多いはずだ。

『「第一印象」の魔法』 第2部 第7章 より アン・デマレイス、バレリー・ホワイト:著 鹿田昌美:訳 ダイヤモンド社:刊

アイコンタクト、軽く触れる、関心を示す。
この3つは、やりすぎは逆効果になりますが、上手に使えば、一気に親密度を増すことができます。

相手の性格や反応を確かめながら、“ちょうどいい加減”を見極めたいですね。

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中身はまったく同じなのに、最初に受ける感じ方で、その後の評価や信用度合いまで、まるっきり変わってしまう。
それが「第一印象」の怖さです。

第一印象は、本質とはまったく関係ないし、良くしたり悪くしたり、いくらでも操作できる。
本書を読むと、それをまざまざと見せつけられます。

第一印象の知識を得ることは、他人を今まで以上に公平に判断するスキルを身につけることにもなります。
第一印象のなんたるかを知ることで、それに騙されることなく、その裏にある相手の本質に気づくことができるわけですね。

第一印象は、使い方次第で薬にも毒にもなる。
本書は、そんな“劇薬”の取り扱い説明書として最適な一冊と言えます。

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