本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『部下のやる気を引き出す 上司のちょっとした言い回し』(吉田幸弘)

 お薦めの本の紹介です。
 吉田幸弘さんの『部下のやる気を引き出す 上司のちょっとした言い回し―――聞き方・褒め方・頼み方・伝え方・叱り方…すぐに使える150フレーズ』です。

 吉田幸弘(よしだ・ゆきひろ)さん(@arrows77)は、コミュニケーションデザイナー、人材育成コンサルタントです。
 現在は独立し、経営者や中間管理職向けのコミュニケーション術やマネジメント術を伝えるコーチとしてご活躍中されています。

「ポジティブ思考」の一言が部下のやる気を引き出す!

 上司のちょっとしたひと言。
 それが、部下のやる気を損ねることもあれば、引き出すこともあります。
 
 上司が部下に納得しやすい言い回しをするためにすべきこと。
 それは、「部下の長所」に目を向けることです。

 吉田さんは、『ポジティブ思考』の重要性について、以下のように指摘します。

 考えてみましょう。実は、長所と短所は表裏一体です。ポジティブに考えるか、ネガティブに考えるかは上司次第なのです。ネガティブに思うことも、意識を変えればポジティブにとらえることができるのです。
 ここで、ネガティブとポジティブとは、いったいどのような状態を指すのかを確認しておきたいと思います。

 ネガティブとは、自分が精神的に八方ふさがりで一面的な考え方しかできなくなっている状態のことを指します。この状態では、部下をマイナスの志向でしか見られなくなってしまいます。
 一方、ポジティブとは、物事を多面的にとらえ、さまざまな考え方ができている状態を指します。この状態なら、視野が広くなっているため、柔軟にプラスの志向で部下を見られます。

 『部下のやる気を引き出す 上司のちょっとした言い回し』 序章 より 吉田幸弘:著 ダイヤモンド社:刊

 人は誰しも強味と弱味、長所と短所を持ち併せています。
 吉田さんは、その強みと弱みは表裏一体ですから、視点を変えればいいだけだと指摘します。

 例えば、「飽きっぽい」性格は「好奇心旺盛」な性格。
 「理屈っぽい」考え方は「論理的」な考え方。

 このように、見方を変えることでポジティブ思考でいられるようになります。
 吉田さんは、ポジティブ思考は、コミュニケーション円滑化のベースだと強調します。

 本書は、ポジティブ思考をベースにした“部下のやる気を引き出すちょっとした言い回し”をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「いたわり」を示す相槌とは?

 吉田さんは、会話を通じて部下に安心感を与える基本は、まず話を聞いてそれを受け止めることだ、と述べています。

 その際に有効なのが、「相槌(あいづち)」です。
 簡単な相槌でも、意識して使えば、大きな武器になります。

 上司が部下に「いたわり」を示したいときに使うべき相槌は、以下の三つです。

①「よく分かるよ」
 愚痴を聞くとき、部下に非があると思っても、まずはこう言いましょう。上司に「気持ちはわかるよ」と言われると、部下はとりあえず気分が晴れます。
 部下は、話を聞いてもらいたいと思っています。部下の愚痴は、必ずしも解決策を求めていません。聞いてもらうだけで、たいていは満足します。

②「それは困ったね」
 部下に悩みを相談されたとき、まず大事なのは部下の気持ちを受け止めることです。「それは困ったね」と気持ちを込めて言えば、部下は「この上司は味方だ。考えてくれている」と信頼を寄せてきます。今後、報連相もどんどん上がってくることでしょう。

③「それは残念だったね」「がっかりだね」
 部下の失敗談、コンペに負けた悔しい話を聞くときに使うといい相槌です。部下の気持ちに寄り添うことで、部下の気持ちも落ち着いてきます。早く立ち直ってくれるでしょう。

 『部下のやる気を引き出す 上司のちょっとした言い回し』 第1章 より 吉田幸弘:著 ダイヤモンド社:刊

 相槌は、相手の気持ちに共感しているのを示すために使うものでもあります。
 場面場面でうまく使い分け、会話をスムーズに進める道具にしたいですね。

「レッテル褒め」で部下をやる気にさせる

 吉田さんは、旅行会社に在籍していたとき、リゾートホテルの企画が連続して受注できたことがきっかけで、上司から「リゾートの企画なら吉田」とレッテルを貼られました。

 その時の経験から生み出したのが、「レッテル褒め」というアイデアです。

 先輩も吉田に聞くまでもないだろうと内心思っていたのでしょうが、私を育成するためなのか、わざわざ聞いてきます。聞かれると答えなければなりません。ときには即答できないこともありましたが、調べながら回答し、数カ月後にはようやく支店内ではいちばんの知識をもてるようになったのです。
 このように、「この企画なら、Aさん」「この業務なら、Bさん」というように褒める方法を「レッテル褒め」と私は名づけています。
 
 この「レッテル褒め」には三つの効果があります。

  • 部下の承認欲求を満たし、モチベーションがアップする
  • 部下の成長スピードが加速する
  • メンバーの自己ブランドを確立できる

 コンサルタントになってからも、このレッテル褒めを薦め、実践していただいた会社からは、社員の成長スピードが速くなったうえに自発性も高まったとの声を数多くいただいています。レッテル褒めは、全員をプロジェクトマネージャーにしているのと同じような効果が期待できます。
 このレッテル褒めをしようとすると、上司は部下の弱みよりも強みに目を向けるようになるので、非常に効果的です。

 『部下のやる気を引き出す 上司のちょっとした言い回し』 第3章 より 吉田幸弘:著 ダイヤモンド社:刊

「◯◯のことは、△△さんに聞けばいい」

 そんな風に言われると、一人前として認められた感じがしてやる気が出ますよね。
 吉田流「ポジティブ思考」の特長をもっともよく表したアイデアのひとつです。

同じ失敗を何度も繰り返す部下への言い回しは?

 同じミスを何度も繰り返す部下。
 ついイライラして、「何、やっているんだ」と叱りつけてしまいがちです。

 エスカレートすると、人格否定につながって事態を悪化させる恐れがあります。
 そうならないために重要なのは、以下の三つのステップを踏まえて話すことです。

①事実(現状の方法)を確認
 最初にダメのレッテルを貼るのはよくありません。人格否定などもってのほかです。そもそも部下は、わざと間違っているわけではありません。まずは、どのような行動を取っていたのか事実を確認するところからです。

②「なぜ」ではなく、「何」を聞こう
「なぜ」は人に焦点を当てているのに対し、「何」はモノに焦点を当てた聞き方です。「なぜ」と聞かれると、原因は自分にあると感じ、自分への罪の意識ばかり出てしまいます。
 反省するのはいいですが、それ以上に大切なのは行動改善することです。「何」という聞き方すれば、部下自身の行動のどこに問題があったのかという視点で振り返ることができます。
 同じ行動をしたら、同じ結果が繰り返されるのは当然です。気持ちや意識を変えることも大切ですが、それ以上に行動を変えることが大切です。気持ちや意識が変わっても行動が変わらなければ、結果は変わりません。行動に目を向けさせることが大切です。

③行動改善を促す
 問題となる行動が見つかったら、どう改善するかを具体的にしましょう。「ちゃんとやります」「気をつけます」「注意します」「きちんと確認します」なんて答えが返ってくることが多いでしょう。
 それでは具体的な解決につながりません。その際は「ちゃんととは具体的にどういうことかな?」と行動を具体化させます。
 こうすることで、同じ失敗の繰り返しに終止符を打つことができます。それでも失敗してしまったら、また、この三サイクルで部下と解決策を考えていくのです。

 『部下のやる気を引き出す 上司のちょっとした言い回し』 第6章 より 吉田幸弘:著  ダイヤモンド社:刊

 あくまでも「できない」という事実のみに焦点を当てて会話をする。
 それが大切です。

 できないのは、本人の能力の問題ではなく、やり方の問題。
 これは「行動科学マネジメント」の手法に沿った考え方ですね。

 以上の三つの手順を守って、根気よく指導を続けていきたいですね。

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 会社のような縦の関係が厳しい世界では、上司の命令は絶対的なものです。
 それもあって「指示の内容さえ部下に理解してもらえればいい」と考えて、言い回しにまで気を使わない上司が本当に多いですね。

 それでは部下の不満は溜まるばかりで、コミュニケーション不足に陥るのが必至でしょう。
 上司の言い回しひとつで、部下のやる気が出て、チーム全体のパフォーマンスが上がるなら、それを使わない手はありません。

 本書には、仕事に限らず、家族や友人などとのプライベートな関係でも、コミュニケーションの円滑化に役立ちそうな表現もたくさんあります。
 しっかり身に付けて、普段の生活の中でも役立てていきたいものですね。

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