【書評】『一流役員が実践している仕事の哲学』(安田正)
お薦めの本の紹介です。
安田正さんの『一流役員が実践している仕事の哲学』です。
安田正(やすだ・ただし)さんは、プレゼンテーションや対人対応コーチングがご専門のコンサルタントです。
役員にまでなれる人が持つ「仕事の哲学」とは?
安田さんはこれまで、中小企業から大手と呼ばれる企業まで、千人以上の部長以上の役職者と五万人一般社員に接してきました。
そのなかで、会社組織で出世する人には、ある共通する習慣があることに気づきます。
安田さんは、その紙一重の習慣の積み重ねをするかしないかが、役員になれる人と、課長や部長で終わってしまう人の差
だと指摘します。
その習慣の差を生むのは、「仕事の哲学」があるかないか。
本書は、会社組織の中で出世している人が持つ「仕事の哲学」を解説した一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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役員は、100%朝7時にお礼メールが来る
部長止まりの人と、さらに役員まで出世する人。
両者には、「接待の次の日の朝」に差が出ます。
ごちそうしてもらった相手にお礼メールを送る比率は、大企業の部長クラスの人たちで20%。
しかし、これが役員クラスの人になると、間違いなく100%になります。
出世した人たちは、次のようなほんの小さな積み重ねを非常に大切にしています。たとえば、
・お礼メールを出す(すごい人になると、メールではなく、わざわざ手書きのお礼状をいただくことがあります)
これは接待に限らず、面談、人脈を使った紹介、物の紹介、贈り物などなど、全てのことにおいてです。必ずお礼メールを出します。・まめに報連相をしたり、情報交換のための連絡も頻繁にする
なぜなら、報連相を怠ると誤解や行き違いが生まれるからです。「このくらいわかっているだろう」ということを作らないのです。・メールや電話も即レスポンス
これは先ほどお伝えしたとおりです。・頼まれたことで簡単にできることは、すぐその場で済ませてしまう
絶対に、あと回しにはしません。そうしないと忘れてしまうのです。このように小さなことを習慣化し、大きな信頼を得ているわけなのです。
『一流役員が実践している仕事の哲学』 第1章 より 安田正:著 クロスメディア・パブリッシング:刊
役員クラスの人たちが、なぜ朝七時台にお礼メールを出すのか。
それは、「その時間にしかお礼メールを出せないから」です。
どんなに忙しくても、やるべきことは、きっちりこなす。
受けた恩は、些細(ささい)なことも、決して粗末にしない。
そんな下積みの頃からの習慣が、今の地位を築いたということです。
役員は、「◯曜日」という概念がない
日曜の夕方に次の日の仕事のことを考えて、憂鬱(ゆううつ)になる。
いわゆる「ブルーマンデー」ですね。
出世した人たちのほとんどは、ブルーマンデーになりません。
彼らにとって、「サタデー」も「サンデー」も仕事だからです。
なぜ、そこまで仕事をしてしまうのか?
ひとことで言うと、大きなテーマ、使命感を持っているからではないでしょうか。
「この仕事で会社を変えたい」
「僕が業界を変えたい」
「社会を良くしたい」
出世した人たちはよくこのような使命感を口にします。そして、「決めたことを絶対にやり遂げる!」と、言います。
実際、彼らの仕事は大きな影響力を持ち、その行動力はずば抜けています。そして、最後には本当にやり遂げるのです。
そのために一心不乱で仕事をしています。土日もありません。「休みはいらない」と断言していますし、ブルーマンデーなどと言ったら鼻で笑われてしまいそうです。
一方普通の人は、オフになることがたまには必要だと感じています。
普通の人は、仕事に対して負担感を感じています。その負担感はどこから来るのか、それは仕事に対する「やらされ感」ではないでしょうか。
つまり、受け身なのですね。
だから「仕事をやりつづけるとしんどい、たまにはオフを取らないと!」と思い込んでしまいます。
このような仕事に対する姿勢が能動的であるか受動的であるかが、出世できるかどうかの一番の違いであると私はつくづく感じています。『一流役員が実践している仕事の哲学』 第1章 より 安田正:著 クロスメディア・パブリッシング:刊
出世できるかどうかの一番の違いは、やはり、「仕事に対する姿勢」です。
喜んで積極的にやるのか、イヤイヤやるのか。
同じ仕事をするにも、後に残る疲労感は、雲泥の差です。
どうせやらなければならない仕事ならば、こちらから積極的に向かっていく。
そんな気持ちをつねに持ち続けたいですね。
一流は、師を仰ぎ、師を超えようとする
出世した人は、よく、「私には師匠がいました」「憧れの上司がいました」という話をします。
安田さん自身も、若い頃そんな憧れの上司がいて、勇気づけられました。
人は、「出世する」とか「成功する」という言葉だけの、抽象的なものを目標にしてもやる気が出るわけではないのです。私たちはもっと属人的な身近な上司、先輩という存在からこそ、自分の可能性を実感が持てるのだと思います。
たとえばテニスなら、フェデラーのような一流選手のプレイを見て、「あんなサーブが打てるようになりたい」などと憧れ、そのうちにテニスにのめり込んでいくわけです。フェデラーを夢見ているからこそ、地味な、繰り返しの練習も耐えられます。辛(つら)い筋トレであっても黙々と取り組めます。
「あんなふうになりたい!」という人が具体的にいるだけで、辛い練習であっても、それがむしろ一歩一歩その人に近づいている、という喜びにも変えることができるわけです。
反対に具体的な憧れがもてず、身近に尊敬できる人がいない場合は、仕事へのモチベーションがなかなか持てません。そこに「自分の可能性を見いだすこと」ができないからです。そんな仕事はつまらないでしょう。『一流役員が実践している仕事の哲学』 第2章 より 安田正:著 クロスメディア・パブリッシング:刊
仕事の環境、とくに上司や先輩などの人間関係は大事です。
身の回りにお手本となるような人がなかなかいない。
そのような現実は、たしかにあります。
しかし、「いつか、あの人のようになりたい」と思える人を可能な限り、見つけ出す。
そして、いいところを盗みたいですね。
役員まで行く人は、自分を磨き続けている
会社の役員になる人は、たいていの場合、出世する前から、同性、異性を問わずにモテます。
彼らには、人を引き込む魅力があるからです。
出世した人たちは、自分の持ち味をよく知っています。
そして、それを磨き、効果的に表しています。
人の魅力はそれぞれで、それぞれが個性という原石を持っているはずです。
ところが、それに気づかずにいたり、たとえ原石に気づいていていもその表し方がわからなかったりして、せっかくの輝きを伝えられないことがよくあります。
人間、誰しも魅力を持っているものなのですが、その磨き方によって、その後の輝き方が変わってくるのです。
確かに、出世したからといって、皆さん、万能なわけではないですし、あらゆる側面を持っているわけではありません。
「頼りになりそう」とか「気配りができる」とか、「人情がある」とか、ある一面が際立っている、そして、それがその人の強烈な個性や魅力になっている、いわば「一点豪華主義」のような印象があります。
そして、皆さん自分の強烈な個性以外のところは切り捨てて、それでよし!と納得されているようなところがあるのです。
それはちょうど、優れた俳優さんが自分の「役どころ」をよく知っている、というのと同じです。「どんな役でもできます」というのは、「何もできません」と言っているのと同じなのです。
自分の魅力、表し方をよく知っている。これが出世した理由、モテる理由になっているのだと思います。『一流役員が実践している仕事の哲学』 第3章 より 安田正:著 クロスメディア・パブリッシング:刊
役員になる人は、自分の地位に満足せず、常に自分を磨き続けてきたのでしょう。
大事なことは、自分の「どこを磨くか」ということ。
すべてに秀でている人は、なかなかいません。
一つでも強烈に輝く部分があれば、それ以外の部分はたいてい、隠されてしまうものです。
自分の目立たせたい面はどこか。
長所・短所をしっかり把握し、つねに「最も自分が輝いている姿」をイメージすること。
日々研鑽(けんさん)を続けていきたいですね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
価値観が多様化してきた今の社会。
「役員になりたいとは思わない」という人も大勢いることでしょう。
役員になった人の多くも、最初から「役員になりたい」と考えていたわけではありません。
彼らは、異口同音に「何だか夢中で仕事をしていたら、ここまで(役員)来てしまった」と言うのだそうです。
役員になる、ならない。
それはともかく、本書にある「紙一重の習慣」を身につけて、活き活きと仕事をし、眠っている自分の可能性を開花させたいですね。
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