【書評】『考えない練習』(小池龍之介)

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 お薦めの本の紹介です。
 小池龍之介さんの『考えない練習』です。

 小池龍之介(こいけ・りゅうのすけ)さんは、日本初期仏教の僧侶です。
 現在は、住職を務められながら、執筆活動にも積極的に取り組まれています。

「考えない練習」により、心を操縦する


 私たちが失敗する原因は、元をたどると、余計な考えごとに行きつきます。
 私たちの思考は、自分で思っている以上に不自由で、自分の足を引っぱります。

 裏を返すと、心の中で勝手に動き続けて僕たちを支配する「思考」さえストップできるようになると、自らの心を思った通りに操縦しやすくなるということ。

「思考を止める」
 言葉で言うのは簡単ですが、実行するのは至難の業です。

 小池さんは、「実際に止めてみようと練習することによって、初めて思考を調教することも叶う」と述べています。

 本書は、暴走しがちな「心」を制御し、思考を自由に操るための方法について解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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考えることで、人は「無知」になる


 小池さんは、多くの人は、考えるせいで、集中力が低下したりイライラしたりする「思考病」にかかってしまっていると述べています。

 人の心は、眼や耳などの感覚器官から送られてくる情報を処理し続けています。
 ほんの一瞬の間に、「聞く→見る→考える→聞く」という情報処理が行なわれます。

「聞く」ことだけをしていても、そのすきまに、膨大な量の無関係な情報が混じります。
 それらの「ノイズ」が、私たちの集中を途切れさせます。

 目の前のことに飽きて、別の刺激を求めるようになる「心の衝動エネルギー」。
 仏教では、それを「迷い」と呼びます。

 相手が話をしているのに、心がうろうろとさまよって、耳に入ってこない状態。
 つまり、自分の身体にどのような意識が働いているかを自覚できない状態を「無知」と呼びます。

 考えている間は、エネルギーを「考える」ことに浪費している分、視覚も聴覚も触覚も鈍くなる性質があります。脳内であれこれと考えごとに耽(ふけ)りすぎるせいで、身体感覚がなおざりにされ、心と身体がちぐはぐになります。
 脳の一部を酷使して考えれば考えるほど、人は身体や心の情報をちゃんとキャッチすることができず、「無知」になっていくのです。相手の表情の変化や声音の変化などをしっかりつかまえることができないから、いつもと同じ顔だ、ツマラナイ・・・・と感じてしまう。
 結局、頭だけで考えるほどに無駄な概念ばかりが積み重なり、リアルな現実や自分の意識の流れに対して無知になっていくのです。
「無知」の煩悩は、リアルな現実から脳内の考えごとへと心を逃避させてしまいます。そして一度「考えるクセ」をつけてしまうと、考えるべきでない時にも、考え込むクセからいつまでたっても抜けられない、考えごとにひきこもりやすい性質になってしまいます。

 『考えない練習』 第1章 より 小池龍之介:著 小学館:刊

 大人になるほど、時間が経つのが早く感じるといわれます。
 それは、年をとるにつれて「迷い」や「無知」が大きくなるから。

「頭だけで考えている」時間が多くなり、リアルな現実を感じる時間が少なくなるということです。

「心を移動させる」ということ 


 無駄な雑念を心から締めだすための最初のステップ。
 それは、「自分が無駄なことを考えている」ということに気づくことです。

 小池さんは、そのための方法として防犯チェックのように常にセンサーを張りめぐらせて、「いま自分の心が何をしているのかを普段から見張るようにすること」を勧めています。

 次のステップは、「心を移動させる」ことです。
 具体的にいうと、心の焦点を思考から視覚や聴覚、触覚などの感覚に移動させること。

「考える」を「感じる」ほうに意識を強めてあげる。
 すると、頭の中の考えや雑念は静まりかえります。

 特殊な意識状態を作らなくても、ある程度、心のコントロールはできるのです。
 初めの「気づく力」のことを、仏道では「念力」と申します。「念」とは、気づくパワー、つまり意識センサーのことです。それが細かくなればなるほど、敏感に、微細な変化に気づくことができるようになります。
 それに気づいたあとに、「心の働きを変える」という二つ目の力のことを「定力(じょうりき)」と申します。これはすなわち「集中力」です。集中して意識をコントロールして、ぐっとつかまえて、ひとつの場所に集める。心が非常なスピードで散乱をしてあちこちに行ってしまうのを集めて、一か所にぐーっと定めることです。
 まずできるだけ、普段から「いま自分は五感のうち、どれを使っているのか」ということに自覚的になることです。

 『考えない練習』 第2章 より 小池龍之介:著 小学館:刊

「見えている」という、受動的な状態。
「見る」という、能動的な状態。

 この二つは、まったくの別物です。

 五感(仏教でいうところの「六門」)を研ぎ澄ます。
 普段から、「念力」「定力」を高める意識を持っていたいですね。

「諸行無常を聞く練習」で意識を鋭敏化させる


 小池さんは、能動的に「聞く」ための訓練として、以下のような方法を挙げています。

 たとえば周囲のガヤガヤとした音の中から、風の音にフォーカスをあててみます。
 周りにある音すべてを漠然(ばくぜん)と聞いている時には、特に興味を惹かれることのない、つまらない音と見なしていたことでしょう。
 しかし、その音に特にフォーカスして、しっかり聞き取ろうと集中してみると、その音にも案外、興味深い情報が含まれていることに気がつかれるかもしれません。
 さらにもっとギューッと集中すると、これまでいろいろな「ノイズ」が含まれていた意識がクリアになって、ちょっとした爽快感が生じることでしょう。
 つまらない音に感じられていたのは、自分の意識が鈍化していたからです。
 どんな情報も微細に観察してみれば、常に変化しています。世の中の一切の作られたものは猛烈な速度で変化し続けていて永久不変なものはない、これが「諸行無常」です。
 普段は、大きな刺激ばかり気にしていて、微細な刺激を認識していません。しかし、細かく認知するように心がけ、諸行無常の微細な変化を認知して、その速度についていけるほどに意識をシャープにできますと、徐々にシャキーン、としていきます。

 『考えない練習』 第2章 より 小池龍之介:著 小学館:刊

 日々同じような生活を送っていると、「何も変わらない」日常だと錯覚しがちです。

 小池さんが述べている通り、世の中に存在するものは、すべて少しずつ変化しています。
 その変化に気づける、鋭敏な感覚を磨きたいですね。

「降伏」する人が鍵を握る


「考えない練習」を続ける。
 すると、ノイズが減り心の動きが見えやすくなると、煩悩(ぼんのう)をコントロールしやすくなります。

 本当の姿を認知すると、変わらざるを得なくなるからです。

 歩き方が崩れているのを自覚すると、歩き方が変わります。
 それと同じように、心の歪みがわかると、心の持ちようが変わります。

 人は嫌なことには無意識に目をつぶり、なかったことにしようとします。見たくないことは見ないのです。それが業の仕組みです。
 その業に惑わされず、自分の中の嫌な部分をきちんと認識し、それを含めて相手にさらけ出してみるのです。
「降伏する勇気」を持つことです。誰もが負けたくない、張り合いたいと思っていますから、降伏すると負けるような気がいたします。けれど、実際には先に降伏できる人のほうが、鍵を握ることになります。それは、お互いがいろいろごまかし合ってもつれてしまった関係をリセットするための鍵です。
 まずは、人に負けたくない、自分の歪みを見たくない、見せたくないという「慢」のプライドを捨てることです。
 お互いが心を律していくことによって、親子であれ、師弟関係であれ、恋人であれ、同僚であれ、真の善友になれるかどうかが決まってくると申せましょう。それが、自らを育て、相手を育てることにつながるのです。

 『考えない練習』 第2章 より 小池龍之介:著 小学館:刊

 こちらが警戒して構えるほど、相手も警戒します。
 こちらが敵意を見せれば、相手も敵意をむき出しにします。

「負けるが勝ち」ともいいますね。

 自分を相手にさらけ出せないのは、自分の心の中を理解していない証拠。
 心の中がノイズだらけで、「本当の自分の考え」が見えていないという状態です。

 相手の懐に自分から飛び込んでいくための「降伏する勇気」。
 どんなときでも備えておきたいですね。

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 私たちは、「情報の洪水」とでもいうべき、刺激に満ちた社会を生きています。
 それらの情報を取り込むことが「考えている」と勘違いしがちです。
 しかし、それは「思考病」にかかってしまっているだけです。

「考えないで、感じること」

「考えない」ことを身につけ、心のノイズを取り除き、鋭敏な感覚を取り戻す。
 クリアな思考で、日々健康的に過ごしたいですね。


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