本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『天職』(秋元康、鈴木おさむ)

 お薦めの本の紹介です。
 秋元康さんと鈴木おさむさんの『天職』です。

 秋元康(あきもと・やすし)さんは、作詞家・放送作家です。
「川の流れのように」など多くのヒット曲の歌詞を手掛けられ、AKB48の総合プロデューサーとしても有名な方です。

 鈴木おさむ(すずき・おさむ)さん(@suzukiosamuchan)は、放送作家です。
「SMAP×SMAP」「お試しかっ!」など、数々の人気番組の構成を手がけられています。

人間の幸せは「今が楽しいと思えるか」で決まる

「仕事のし過ぎでは?」

 周りから、そうと言われてもピンと来ないくらい、仕事を楽しんできたお二人。
 まさに、「天職」に巡り合うことができた幸運な人たちといえます。

 とはいっても、「天職を探しまわってたどり着いた」のではありません。
 ふとしたきっかけから「いつのまにかのめり込んでいた」というのが適切とのこと。

 後で振り返って改めて、今の仕事が「天職だ」と気づく。
 そんな感覚なのかもしれません。
 
 本書は、共通項の多い人気放送作家のお二人が、仕事や人生について語り合った内容を対話形式でまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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小さな奇跡が三回起きれば、恋に落ちる

 秋元さんは成功は98%は運で、あとは1%の汗と1%の才能だと思っていると述べています。

「三回奇跡がなかったら恋愛なんてうまくいかない」

 と、成功の98%を占める「運」の重要性を強調します。

秋元 すべてがそうだと思うから、仕事でも自分からアプローチはしない。アイデアの種があっても、ことさらプレゼンしない。何かのタイミングで「なんかないですかね?」と聞かれたら、「こんなのどう?」と言ってみて、向こうが乗ったらやる。昔はプレゼンしたこともあるけど、まったく意味がないってことに気づいた。運が導いて連れていってくれるんだよね。だから、膨大な時間を使って設計図を描いたり無理して人に会ったりはしない。だって、うまくいかないから。仕事も恋愛も同じで、お互いの気持ちじゃない? そんなシチュエーションが必ず来るんだって。おさむの場合は、今はいろんなところからオーダーがくるわけじゃない?
鈴木 はい。ありがたいことに。
秋元 そういう、ある種いただく仕事をやっていると、自分で主体的にこれをやろうというのが、なかなかできないんじゃないの?
鈴木 やりたいものを優先していると、不思議と自分の好みに合ったものがくるんですよ。この人と仕事してみたいな、と思うとお話をいただいたり。そういう自然な流れじゃなくて、ちょっと無理してやったものは、やっぱりうまくいかないですね。

 『天職』 第1章 より 秋元康・鈴木おさむ:著 朝日新書:刊

「仕事も恋愛も同じで、お互いの気持ち」

 いかにも秋元さんらしい考えですね。

 運を引き寄せるコツは、自然な流れに身を任せて「その時」を待つこと。
 来るべきチャンスに備えて、日頃から準備を怠らないようにしておきたいですね。

仕事にならないことをやれ

 秋元さんは、四十歳のときにいろんなものを作ってきたけど、そこに自分がいないと、気づいたそうです。
 その時、やっぱり自分がおもしろいと思わなければ作るのをやめようと思い、大きな転換点になったと指摘します。

鈴木 でも僕もだんだん、猛烈な興味がわかないものっていうのが、減ってきました。たとえば15本番組があったとして、前は、自分は興味がないけどビジネスとしてやらなきゃいけないものが半分以上を占めてましたけど、今はそれが減ってきましたね。
秋元 四十からだから、五十だな、五十歳になったら、自分のやりたいことが年間5本あったとしたら、その5本しかやらないっていう、そのスタンスでいいと思う。つまり、もう請け仕事はやらない。請け仕事はなぜよくないかっていうと、おさむが断ったら誰かがやるんだよ。これはつまらない。
 おさむがたとえば正月にハワイに行って、くつろぎながら、だいたいの1年間のプランを立てるわけ。ここでこの芝居をやろう、ここで映画を1本やろう、ここでテレビをやろう。その企画が開示されたときに、いろんなメディアやエンターテインメント企業から入札されて、おさむさん、この映画決まってるんですか、ぜひうちで、いやうちがっていう、つまり、こちら側がイニシアティブをとるようにしていかないとダメなんだよ。向こうから来たものは必ず向こうが有利だから。

  『天職』 第3章 より  秋元康・鈴木おさむ:共著  朝日新書:刊

「こちら側がイニシアティブをとる」

 そのためには、相手に認めてもらえる実力と実績を作らなければなりません。
 秋元さんは、その下準備となる四十代では、「仕事にならないことをやれ」ということが大事だと述べています。

 ただ漠然と歳を重ねると、考え方が凝り固まって新しい発想も出ません。
 やる気も起こらなくなってしまいます

 いくつになっても、様々なことに好奇心を持ち続けていたいですね。

一流の人は自分に飽きない

 普通の男の子、女の子たちがある日突然、スターになる瞬間を間近で見続けてきた秋元さん。

「一流の人」になる条件について、以下のように述べています。

秋元 一流の人たちはみんな努力をしてるから一流なんだと思うよ。僕はイチロー選手ってすごく好きなの。あのストイックさっていうか。たぶんおさむもそうなんだけど、一流の人は自分に飽きないのよ。それがすごく大変なんだよね。
 人って必ず自分に飽きるわけ。たとえば、僕もずっと歌詞を書き続ける。今までに四千何百曲。そうすると、違うことをやろうかなとか、いろんなことを思うわけ。でもイチロー選手は、かつて、毎日同じカレーライスを食べて、球場に通ってたじゃない。淡々とやり続けるってことが一流であり、プロフェッショナルであるってことなんだと思う。なんかうまくいかないっていう人たちは、どこかできょろきょろしてるんだよね。
 いいときでも悪いときでも、淡々とやっているうちに、運がくる。かかとを上げずに休めの姿勢でいて、運がきたよっていってから動いたんじゃ、間に合わないんだよね。

 『天職』 第5章 より 秋元康・鈴木おさむ:著 朝日新書:刊

 周囲の人の視線を気にしたり、何か他にいいことがないかときょろきょろしている。
 そんなことをしているうちは、まだまだです。

 脇目もふらず、自分のやるべきことを淡々とやり続ける人は、チャンスを逃しません。
 たとえ本人が気づかなくても、すでに「天職」に足を踏み入れている状態といえます。

 自分に飽きない。
 自分の可能性を信じ、自分に興味を持ち続けること。

 成長し続けるためには大事なことですね。

「仕事」が終わったあとに書くか

 本当にやりたいことを仕事にできる人とそうでない人の違いは、どこにあるのでしょうか。

 お二人は、結局、「成功者と呼ばれる人たちは、やったかやらないか」なのだと強調します。

鈴木 テレビの演出家で、映画監督の三木聡さん、あの人も放送作家なんですよね。映画を撮るようになって、あるとき、あるフリーのディレクターが、「ずっと僕も映画撮りたいと思っているんですよ」って、三木さんに言ったんですって。そうしたら、「簡単だよ、脚本書けばいいじゃん、明日」って言われたそうなんです。で、言われたそのフリーのディレクターはもう何年も書き始めていないんですけど(笑)。
秋元 是枝裕和監督もそうだよね。ADをしていた頃はボロクソに言われてたんだって。悔しいし、撮りたいじゃない。それで、休みの日に自分でカメラ持って、ドキュメンタリーを少しずつ少しずつ撮りに行って、それがテレビドキュメンタリーの賞をとった。そのとたんにまわりの見方も変わるし待遇も変わる。
 苦しい中でも、自分で撮りに行こうと思うかどうかだよ。僕もそうだったけど、放送作家はレギュラー番組の台本を延々と書いて、書き終わったあとに、どうするか。飲みに行くか、女の子と遊ぶか、寝ちゃうか。そこで、さらに書けるかどうかの差なんだよ。それは、つらいよな。
鈴木 好きでやっているとはいえ、つらいですよね。体力的には。でも机の前に座って、やり始めるとね。
秋元 誰に頼まれているわけでもないからね。
鈴木 夜中に机の前に座って、自分のスイッチを入れられるか。自分の中の「夢の種」に向き合って、無理だと諦めてしまわずに、毎日水をあげられるかどうかだと思うんです。

 『天職』 第6章 より 秋元康・鈴木おさむ:著 朝日新書:刊

 夢を叶えた人は例外なく、それに見合った努力をしています。

 仕事が終わった後、飲みに行ったり遊びに行くのか。
 それとも、「やりたいこと」を叶えるための時間とするか。

 わずかな違いかもしれませんが、積み重なると、その差は大きいです。

 自分の「夢の種」に向き合って毎日、水をあげること。
 忘れずに続けていきたいですね。

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 鈴木さんが今の仕事を続けてきたのは、「自分が得た興奮、感動を誰かに話したい、伝えたい」という理由からです。

「天職」は探すものではなく、自分がどうしてもやりたいことを追求していくと、自然と巡り会えるものなのかもしれません。

 天職に出会える、出会えないは、「運」に左右される部分はたしかにあります。
 ただ、その運を引き寄せる原動力は、本人の情熱と信念であることは間違いありません。

 いくつになっても、諦めずに、やりたいことを追い続ける姿勢はなくさずに生きていきたいですね。

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