本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『プロフェッショナルの習慣力』(森本貴義)

 お薦めの本の紹介です。
 森本貴義さんの『プロフェッショナルの習慣力 トップアスリートが実践する「ルーティン」の秘密』です。



 森本貴義(もりもと・たかよし)さんは、スポーツ・トレーナーです。
 長年に渡り、米国のメジャーリーグや日本のプロ野球チームでアスレティックトレーナーを務められた経験をお持ちです。
「シアトル・マリナーズ」に9年間在籍し、イチロー選手を見守り続けました。

成果を出すには「ルーティン」の力が必要

 数々の一流選手を間近に見てきた森本さん。
日米を通じて、成果を出す選手にはある共通点があることに気づきます。
 それが「ルーティン」の力です。
 ルーティンとは、同じ時間やタイミングで、決まった行動を行うことを指します。

 ルーティンの力を最大限に活用した選手として、真っ先に名前が上がるのはイチロー選手でしょう。
 イチロー選手は、毎朝同じ時間に起き、決められた時間に決められた食事をし、同じ時間に球場入りします。
 また、バッターボックスに入る前のストレッチや、バットを立てる動作にも一連のルーティンを見ることができます。

 同じ動作を繰り返していると、無意識に身体が動くようになります。
 イチロー選手のルーティンは、「ヒットを打つ」という行動を、失敗なく行なうための手法といえます。
 森本さんは、メジャーリーグで10シーズンも結果を出し続けた最大の要因は、このルーティン(習慣)の活用にあると考えています。
 イチロー選手に限らず、日本人の強みは、目の前の仕事をこつこつ継続できる点にあるといえます。

 本書は、日本人の性質や働き方に適した、「ルーティン」の力をいかに活用すべきかを具体例を用いながら解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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生活を「ルーティン化」するわけ

 イチロー選手は本番で結果を出すため、1日をルーティン化しています。
 プレー中には、自分では制御不能な変動要因がたくさんあります。
 だから、変動しない要因は自らコントロールしよう、という発想からです。
 多くのメジャーリーガーのなかでも、自分の「ルーティン」を持ち、継続している選手は一握りとのこと。

 森本さんは、その一握りの選手は、日々自分を進化させ、継続的に結果を残し続ける、一流のアスリートたちであると述べています。

 多くの心理学者もイチロー選手の成功の秘訣を探っていますが、「ルーティン」はその要因のひとつとして必ず挙がります。
 イチロー選手は、欧米人に比べると比較的身体も細く、筋肉量も特別多いわけではありません。また高校野球は1回戦敗退、オリックスに入団したときもドラフト4位、1軍レギュラーに定着したのも入団3年目から、ということを考えると、誰もが認めるような天性の才能があったわけではなさそうです。
 にもかかわらず、唯一無二の選手になったのは、毎日のルーティンによってプロの選手に必要な「心」「技」「体」を突き詰めたからだと思います。事実、彼のルーティンを紹介しましたが、特別な内容は何ひとつありません。練習メニューにもストレッチ内容にも特別な「魔法」はなく、唯一違うのが、それを毎日継続しているかどうか、なのです。

 『プロフェッショナルの習慣力』 第1章 より  森本貴義:著  ソフトバンク クリエイティブ:刊

 天性の才能がなくても、特別なことは何もしなくても、特別な結果を出し続けることができる。
 それが「ルーティン」の力です。
 毎日必ず、一歩でもいいから前に進む続ける。
 何年か経つと、その積み重ねが大きな差となって表れてきます。
 努力を努力と思わないようになるくらい、努力を「ルーティン化」したいですね。

「4行日記」で得意分野を見つける

 ルーティンを続けることは、基本的に面倒で地味な作業です。
 また、始めたからといって、急に成果が上がるものでもありません。
 ルーティンが続く人とそうでない人の違い。
 それは、「ルーティンの先に目指すものがあるかどうかの違い」です。
 森本さんは、まずは、「自分の望む姿」を見いだす作業をすべきだと強調します。
 ただ、日本人は、「人と同じことがよいこと」と教育されてきたため、自分のスペシャリティ(専門・得意分野)を見つけるのが苦手です。
 森本さんは、自分の強みと向き合い伸ばす訓練として、以下のような手法を紹介しています。

 そんな皆さんに、私は「4行日記」という手法をおすすめします。「4行日記」とは、その名の通り、一日を4行で振り返りアウトプットする手法です。構成は以下の通りです。

 【1行目】今日起こった事実
 【2行目】気づき
 【3行目】気づきから得た教訓
 【4行目】明日への宣言

 このように、今日起った事実から得た気づきや教訓、明日以降どのような行動が必要か、を文字化する作業です。一日を振り返ることで、明日以降をよりよく過ごすための手法ですが、毎日のできごとだけでなく自身のスペシャリティを見つめるためにも使えます。
 例えば今日、これまで懇意にしていた取引先から、継続契約をしないという連絡を受けたとします。1行目にはその事実を書きますが、2行目にその事実から学んだ気づき、3行目に教訓などを書くことで、「悲しい」「ムカつく」といった感情に浸ることなく、自分やその事実と向かい合うことができます。
 一方で難しい取引先から受注が取れたのであれば、なぜ取れたのか、プレゼンで工夫した点などを考え、2行目に書き加えることができます。このように「4行日記」は、その日に起こった事実に打ちのめされたり、感情に埋もれたりすることなく、自身を客観視できるツールなのです。

 『プロフェッショナルの習慣力』 第2章 より  森本貴義:著  ソフトバンク クリエイティブ:刊

 必要な作業は、一日わずか4行の日記を書くこと。
 これなら、誰でも手軽に始めることができます。
「ルーティン」の力をつけるための最初のステップとしては、もってこいですね。

過去をインプットして忘れる

 過去の経験が苦手意識を生んだり、行動に悪影響を生むことは、誰にでも起こり得ます。
「忘れ下手な人」は、過去のネガティブな経験が脳に刻み込まれています。
 ですから、同じような状況で再びその場面が頭に浮かび、感情がコントロールできなくなります。

 一方、忘れ上手な人は「過去をインプットして忘れ」ます。もう少し具体的に言うと、失敗から得た教訓をインプットし、失敗したときの状況は忘れる、ということです。
 イチロー選手は、実は忘れる方法も「型」にしています。彼は試合後のロッカールームで、いつもグラブやバットなどの道具を綺麗に磨きます。これが「過去をインプットして忘れる」瞬間です。
 打てなかったときは、当然彼にも「悔しい」という感情が湧き起こっているでしょう。事実、明らかに「ムッ」とした表情でベンチに戻ってくることもありますから、感情がないわけではありません。でもそれをぐっとこらえて、打てなかった理由を考えます。そこで次につながるヒントが得られれば、この経験は次の結果につながります。
 どのような状況においても冷静に物ごとを振り返り、感情ではなく起こった事実のみをインプットすることです。これが平常心を生み、継続的な成長につながると私は思います。 

 『プロフェッショナルの習慣力』 第3章 より  森本貴義:著  ソフトバンク クリエイティブ:刊

「型」とは、本番の手順のようなもののことです。
「型」も日々続けることで磨かれるため、ルーティンの一種です。
 イチロー選手のように、その日に起こったことを振り返り、反省して忘れる時間を持つことは大切です。
 ぜひ見習いたいですね。

「道を究める人」は孤独である

 どんなに好きな仕事にも、苦手な作業は含まれています。
 多少嫌なことがあったとしても、自分なりの「ルーティン」をつくり、そのルーティンを続ける過程で、仕事の本質を突き詰める。
 満足のいく仕事をするには、そんな姿勢が必要になります。
 森本さんは、そのような働き方を「道を究める」と表現します。
 どの分野においても、「道」を究めた人は、その道から人生を学びます。

 一流の人々は、自分が成功した理由を聞かれると、同様に「自分がやっていることを突き詰めたら、気がついたらいまの場所にいた」と答えるそうです。
「道」を追求するということは、自分でゴールを設定し、そこに至るまでのスタイルを確立し、やり続けるということです。

 森本さんは、「道を究める」働き方について、具体的にいくつも紹介していますが、その中のひとつに「孤独であること」を挙げています。

 私が見てきた限り、「道」を究めている人は孤独と向き合っている人が多いようです。誰の道でもなく「自分の道」という唯一の形を突き詰めているので、人に相談したり、人の真似では解決しない壁にもぶち当たるのです。
 前述の通り、「レジを打つ」という作業にも、自分なりの改善やアイディアを加えることでオリジナリティーが出ます。しかし教えてもらった通りにやるだけでは、他人の道を歩かせてもらっているだけにすぎません。
 さらに、壁を乗り越えるための「解」は、いつ見えるか分かりません。例えば職人さんなどは、自分が求める形をつくるのに、20年、40年かそれ以上の歳月を費やす人もいるそうです。時には、亡くなってはじめて評価される人もいます。ですから、とても孤独なのです。

 『プロフェッショナルの習慣力』 第5章 より  森本貴義:著  ソフトバンク クリエイティブ:刊

 孤独と向き合うからといって、周りをまったく無視してしまうのも困りものです。
 特に身近な人に対してのケアは重要です。
 「道の追究」のためには、仕事時間以外にも、自分なりの勉強時間が不可欠です。
 その時間を確保するためには、家族に理解してもらい、協力してもらう必要があります。
 「孤独」と「孤立」はまったく意味が違います。
 家族の強力なバックアップを得て、万全の状態で「自分の道」を究めていきたいですね。

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『夢や目標を達成するには1つしか方法がない。小さなことを積み重ねること』

 イチロー選手が口にした名言のひとつです。
 自分の理想とする姿を追い求めて、休まず一歩一歩着実に歩みを進めていく。
 その地味で、骨の折れる作業の負荷を軽減し、逆に、強力に後押ししてくれるもの。
 それが、「ルーティン」ということですね。

「自分の道」を究めた人は、自分の長所をとことんまで伸ばして実績を積み重ねてきた人のことです。
 私たちも、そんな替えの効かないスペシャルな存在を目指して、日々努力していきたいですね。

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