本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

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【書評】『なぜ、仕事ができる人は残業をしないか』(夏川賀央)

 お薦めの本の紹介です。
 夏川賀央さんの『なぜ、仕事ができる人は残業をしないか』です。

 夏川賀央(なつかわ・がお)さんは、人材プロデューサー、作家です。

「仕事のできる人」の基本の基本とは?

 今でこそ「人材プロデューサー」としての確固たる地位を築いている夏川さん。

 しかし、過去には「仕事のできる人」に憧れ、「自分もそうなりたい」と思って、一生懸命に研究して真似をしてたけれど、結局、身に付かなかったという経験があります。

 その経験を通して、自分と「仕事ができる人」では、ベースとなっているものが違うことに気がつきます。
 そして、あらゆる「仕事ができる人」が持っている、基本の基本となる“通常の人との考え方の違い”を発見します。

 夏川さんが発見したのは、仕事のスキルやノウハウのような方法論ではなく、もっと根本的な、発想の土台になっているようなものです。

 本書は、「仕事のできる人」の“考え方の土台”を明らかにして、一つひとつをまとめた一冊です。
 ここでいくつかピックアップしてご紹介します。

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仕事の時間を「自分のもの」と考える

 私たちは便宜上、「拘束されている時間」と「拘束されていない時間」を、「仕事」と「プライベート」とか、「ON」と「OFF」という形で分けます。

 しかし、「仕事のできる人」は、そもそもの業務時間に「拘束されている」という認識がないです。
 会社に拘束されている時間も、拘束されていない時間も「自分にとっての仕事」のために使っています。
 つまり、ここまでは仕事、ここからはプライベート、という線引きがありません。

 夏川さんは、「仕事ができる人」は残業をしないのではなく、残業をするという概念がそもそもないと指摘します。

 つまり、「残業したほうがいい」「しないほうがいい」という問題ではないのです。
 「自分の仕事」にとって有利なほうを選択すれば、当然、「自分の仕事」にプラスのほうに道が開けていく、という単純なことです。
 「会社の方針だから残業しよう」と思った人は、当然ながら、「会社の方針をきちんとわかっている」という評価がついてきます。
 「残業はしないで、将来のために起業家になる勉強をしよう」と思った人なら、やはりその方向に沿った知識なり、人脈なりがついてきます。
 「とにかく残業代を稼ぎたいから」と残業代をする人は、そこそこの時間外手当を稼ぐことはできますが、「もっと稼ぎたい」と時間外でできるサイドビジネスを探した人は、それよりももっとお金を稼ぐことができるでしょう。
 要するに重要なことは、仕事の時間を「自分のもの」としているかどうか、ということです。
 そうできていない人が、「うちの会社は帰らせてくれないんだよ」とか、「会社は現場の人間をわかってくれない」と不満を抱えているのです。

 『なぜ、仕事ができる人は残業をしないか』 第1章 より  夏川賀央:著  ソフトバンク クリエイティブ:刊

 仕事の時間を、会社からやらされていると捉えるのではなく、自分にとって意味のあるものとして前向きに捉える。
 そうして、仕事とプライベートの垣根をとっぱらってしまえる人が「仕事ができる人」です。

「仕方ないな」で通るレベルの“出る杭”になれ

「仕事のできる人」は時間の枠にはまりません。

 周囲の人の同調圧力に屈することなく、自由に行動することができます。
 すでに個人として「ブランド」を打ち立てているので、周囲を納得させることができます。

 よく「出る杭は打たれる」と言われます。一方で「出る杭になることこそ重要なんだ」という意見もあります。実はどちらでもなく、杭が出ている状態でも「仕方ないな」で通るレベルにまでしてしまっているのが、「仕事ができる人」なのです。

 では、どうしたらそんなふうになれるのでしょうか?
(中略)
 1つは、1本ビシッと筋が通っていることです。
 別にそれは高尚なことでなくていいのです。実際にこれまで挙げた人たちだって、「創造性を磨くために、残業をできるだけしないで遊びに行こう」とか、「ファッションに携わる者は、自分もおしゃれであるべきだ」という発想で始まっています。
 もう1つは、それをやり続けることです。何を言われたって妥協しない。筋はきちんと通っているから、結局は「仕方がないな」になってしまうのです。
 実際のブランドだって同じようなものだと思います。

 『なぜ、仕事ができる人は残業をしないか』 第2章 より  夏川賀央:著  ソフトバンク クリエイティブ:刊

 周囲に「仕方ないな」と納得させる。
 それには、仕事における自分のこだわりをどこまで貫き通すことができるか、にかかっています。

 夏川さんは、「仕事ができる人」というのは、結局は「自分をとても大切にできる人」にほかならないとも述べています。

「仕事ができる人」の価値感覚とは?

 仕事をする上で、つねに考えるべきことが、「費用対効果」です。

 私たちの労働時間にも、「値段」がついています。
 年収が600万円で、1年の労働日数が250日、1日の労働時間が7時間とすると、1時間当たり3429円の価値とみなされます。

 労働時間には、それだけのコストがかかっているということを認識して仕事をしている人は少ないです。

「仕事ができる人」は、つねに費用対効果を意識し、投資する時間と資金にとことんこだわります。

 私の知っている経営者には、近郊への移動には必ずタクシーを使うという人がいます。これはムダではないかと思いきや、移動中には必ずパソコンを使って作業をしているのです。満員電車などではこれができません。
(中略)
 一方で同じ人が、コピー用紙は必ず、裏面を使用してから捨てるようにしているのです。「移動にそれだけお金を払うのになぜ?」と思うのですが、これも単純に裏表使えば金銭価値が倍になるから、そうしているわけです。
 つまり、「ケチになったほうがいい」とか、「気前よくお金を消費しよう」ということではないのです。
 すべては投資時間や投資金額に対して、多くの価値が生まれるほうを選んでいるだけ。その点では「電車ではなくタクシーで移動すること」も「コピー用紙を裏表で二度使うこと」も、同じ考え方のうえに成り立っているのです。

 『なぜ、仕事ができる人は残業をしないか』 第6章 より  夏川賀央:著  ソフトバンク クリエイティブ:刊

 残業に対する考え方も同じです。

 会社に拘束されて得られる1時間当たりに支給される残業代より、自分で自由に使える1時間のほうが価値がある。
 そう思えば、さっさと定時に仕事を切り上げてしまいます。

 その判断基準が、自分の中で、はっきりしている人が「仕事ができる人」です。

「将来」ではなく「いま」を大切にするという感覚

「結果」と「成果」は違います。

「結果」は、“起こったことは何か”ということ。
「成果」は、“そのことによって自分が獲得したもの”です。

 仕事で求められているのは、「結果」の方です。
 私たちが「仕事ができる人」を判断するときに基準になるのは、「成果」の方です。

 前進していくアクションの中にこそ、「仕事ができる人」になる要素が存在します。

「結果を求める」というのは、結局のところ「これから何をするのか」ということだと思います。
 それに対して「成果を求める」というのは、「いま何をするのか」です。
(中略)
「いま何をするか」のほうを大切にできる人は、現在の「結果」がどの時点であるにしろ、評価は確実についてきます。
 例えば「将来は起業家になりたいんです」という人が私のところへ来て、「だから簿記の勉強もして、決算書なんかも見られるんですよ。もうすぐ確定申告だから、わからなことがあったら教えますよ」なんて言ってくれれば、わたしだって「すごいなあ!」と評価します。
(中略)
 結局こういうことの延長線上に、「この人はできる人だ」という評価があり、多くの人がそういう評価を出すことによって、実質的な「結果」もついてくるのではないでしょうか。
(中略)
 つまり「仕事ができる人」というのは、“どういう基準を満たしているか”という達成値のようなもので決まっているのではなく、本当は“どれだけの動きを持っているか”というエネルギー値のようなもので決まっているのです。

 『なぜ、仕事ができる人は残業をしないか』 第8章 より  夏川賀央:著  ソフトバンク クリエイティブ:刊

 つねに成長したい。
 もっと仕事ができるようになりたい。

 そういう気持ちを持ち続けることが「仕事ができる人」になるための必要条件です。

 いま、この瞬間にできることを大切に、精一杯取り組みたいですね。

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 世界的な不景気の影響もあり、世の中の流れとして、残業時間を厳しく規制し、時間内に業務を終わらせることが強く望まれるようになりました。

 個人の評価も、仕事の質や量だけではなく、いかに短時間で効率よく終わらせることができるかが、大きなポイントとなっています。

 つまり、時間当たりの仕事量(能率)が問われる時代です。
 今後は、ますますその流れは加速するでしょう。

 本書は、これからの時代の「仕事の時間」に対する考え方を理解するうえで、最適な1冊です。

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