【書評】『なぜ、タモリさんは「人の懐」に入るのが上手いのか?』(内藤誼人)
お薦めの本の紹介です。
内藤誼人さんの『なぜ、タモリさんは「人の懐」に入るのが上手いのか?』です。
内藤誼人(ないとう・よしひと)さんは、社会心理学の知見をベースに、実際のビジネスへの応用を主に研究されている心理学者です。
タモリさんが、芸能界で生き残り続ける理由
「笑っていいとも!」などのバラエティ番組での司会でおなじみの、タモリさん。
文化人からミュージシャン、俳優からお笑い芸人まで、幅広い層の有名人から慕われていることでも有名です。
それだけでなく、視聴者からも老若男女を問わず高い好感度を得ています。
それも短い期間ではなく、数十年にも渡って続けているのですから、本当に凄い方です。
内藤さんは、タモリさんが誰からも見捨てられずに芸能界で生き残り続けている理由は「人の懐に入るのが上手い」から
だと指摘します。
人の心をつかむことにかけては、心理学者の内藤さん。
その内藤さんでさえ、舌を巻くほどの達人、タモリさん。
本書は、タモリさんの「人の懐に入るための極意」をぎっしり詰め込んだ一冊です。
ここでいくつかピックアップしてご紹介します。
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「尊大さ」とは無縁の人間になれ!
タモリさんは、一流タレントの地位を確立した後も、偉ぶったり尊大になる部分がありません。
人は、仕事でもなんでも、少しでも上手くいくと、すぐに天狗になる傾向がありますね。
その点、タモリさんは自分が一流タレントになっても、姿勢を少しも崩していない。これは、凡人には真似のできるものではない。 もし私がタモリさんだったら、少しでも売れて人気が出てきたら、すぐに偉ぶって嫌なヤツになっていたと思う。そしてすぐに業界から姿を消していたであろう。 食事をしたり、お酒を飲んだりするとき、「俺は、客なんだぞ」という顔をする人は、たいていお店の人から嫌われる。「ここでお金を使ってやる」という態度ではなく、むしろ「お金を使わせていただきます」というぐらいの謙虚な姿勢をとっていたほうが、いいお客さんになれるし、お店の人にも選ばれるのである。 仕事を受けるときにも、「やってやる」ではなく、「やらせていただく」という謙虚な姿勢を持っている人のほうが、どんどん仕事が舞い込んでくる。謙虚な姿勢を見せているのに、仕事がうまくいかない、ということは絶対にないのである。
『なぜ、タモリさんは「人の懐」に入るのが上手いのか?』 第1章 より 内藤誼人:著 廣済堂出版:刊
相手に敬意を表して、謙虚な姿勢をとり続けること。
「自分はまだまだ・・・」という意識を保ち続けること。
それが結果的に、自分を成長させるだけでなく、周囲の評価を高めることにもなります。
職場の人の悪口は絶対に言うな!
タモリさんは、好き嫌いをはっきり口にするタイプです。
しかし、ジョーク以外で他人の悪口を言うことはありません。
高校生の頃から、「自分は有名人になるのだから、有名人の悪口を言うのはやめよう」と心に決めていた
そうです。
タモリさんが人に好かれる理由は、他人の悪口を言わないからである。 悪口を言われて喜ぶような人はいない。だから、自分も悪口を言わないような人間になろう、とタモリさんは語っているわけであるが、これは心理学的にも正しい。 実は、人の悪口ばかり言っていると自分の評価まで下がってしまう、というデータがある。「あいつはイヤな人間なんだよね」などと他人の悪口を言っていると、その人ではなくて、ほかならぬあなた自身がイヤなヤツだと思われてしまいかねないのだ。(中略)「あいつは本当にイヤなヤツだ」と他人の悪口を言っていると、「お前のほうが、ずっとイヤなヤツだよ!」と思われてしまうということである。だからこそ、他人について悪口など言わないほうがいいのだ。 職場でも、陰でこそこそと人の悪口を言う人がいるが、そういう人ほど周囲の人からは嫌われてしまうものである。私も、そういう人が嫌いだ。どうせ悪口を言うのなら、本人がいる目の前で、やればよい。そのほうが、まだしも陰湿ではないから許せる。「人を呪わば、穴ふたつ」とはよく言ったもので、他人を呪うような言葉を口にしていると、自分自身が嫌われてしまうことに注意しよう。 人に好かれたいなら、悪口を言わないこと。このルールを守るだけでも、みなさんは魅力的な人間になれるはずである。
『なぜ、タモリさんは「人の懐」に入るのが上手いのか?』 第2章 より 内藤誼人:著 廣済堂出版:刊
悪口は、言われると嫌なものです。
それを聞いている周りの人も、あまりいい気はしません。
自分が嫌がることは、人にはしないこと。
それが誰からも嫌われないための秘訣です。
悪口を言うことは、天井に向かって唾を吐くのと一緒です。
いずれ自分に返ってくるということを、忘れないようにしたいですね。
相手が打ち返しやすいところにボールを投げろ
タモリさんの魅力は、何といっても、トークの巧みさです。
初対面の人とでも、楽しい会話を成立させ、しっかり笑いも取ります。
内藤さんは、タモリさんが意図的に相手が答えやすい話題を選んでいるから
だと指摘します。
タモリさんがやっている話法は、細かいことをいうと「ストックスピール」(stock spiel)というやり方である。「ストック」というのは、「蓄積されたもの」という意味で、「スピール」というのは、「流暢なおしゃべり」とか「客寄せ口上」という意味である。ストックスピールというのは、相手がすでに経験していたり、すでに考えたことがあったりして、ものすごく話しやすい話題をとりあげる話法である。 たとえば、相手が40代の人なら、「あなたは、これまでに一度くらい、転職や独立を考えたことがあるんじゃないですか?」と質問すれば、だいたい当たる。そして「実は、そうなんですよ!」と答えてくれて、面白いように色々としゃべってくれるのである。(中略) ストックスピールという話法は、このように相手が打ち返しやすい場所にボールを投げ込んであげる技術なのだ。 会話が上手な人は、このストックスピールという話法をよく使っている。クラブのホステスさんや、ホスト、あるいは占い師など、お客の心をつかむのが上手い人は、相手が打ち返しやすい球を投げてあげるのが上手いのである。 タモリさんがゲストを相手にしゃべっている内容も、よくよく聞いていると、すべてストックスピールである。
『なぜ、タモリさんは「人の懐」に入るのが上手いのか?』 第3章 より 内藤誼人:著 廣済堂出版:刊
何気ない会話にも、つねに相手への心遣いがあったのですね。
タモリさんが、みんなから好かれる理由がわかります。
私たちも普段の会話で応用したいですね。
嫌いな人とは、“さりげなく”距離を置け
好感度抜群のタモリさんですが、人間ですから、嫌いな人はいます。
そのような相手に対しては、「距離を置く」作戦をとっています。
タモリさん曰く、「話せば、わかる」ではなく、「離せば、わかる」
ということです。
嫌いな人と接するときには、当たり障りなく、とはいえ表面的にはにこやかに接するのがポイントだと言えるだろうか。それだけで十分にソツなくやっていけるのだから、たいして難しくはない。 私は、「嫌いな人まで好きになりなさい」などとムチャクチャなアドバイスはしない。 そんなことは不可能である。(中略) 小麦アレルギーを持つ人に対して、「小麦には栄養があるんだから、我慢して食べなさい」などと無茶なことは言わないであろう。 人間に対するアレルギーもそうで、嫌いな人と無理に付き合おうとしないほうがいいのである。嫌いな人間は、自分にとってのアレルゲン(アレルギーを引き起こす原因)だと考えて、そっと距離を置くのがよいのだ。 何事も、ムリをしないのが一番。 人間関係でもそれはあてはなるのであって、「あ、俺、こいつ苦手だな・・・・」と思ったときには、その人はあなたにとってのアレルゲンなのだと割り切って、精神的にムリをしてまでお付き合いしなくていいのではないかと思う。
『なぜ、タモリさんは「人の懐」に入るのが上手いのか?』 コラム より 内藤誼人:著 廣済堂出版:刊
人の好き嫌いは、アレルギーと一緒。
たしかにその通りですね。
簡単に克服できませんし、ムリに好きになろうとすると、逆に症状を悪化させます。
何事もムリをしない。
それが一番だということです。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
人間関係では、距離感が、とても大事です。
タモリさんは、「相手との間合いの取り方」が抜群に優れています。
トーク番組を多数こなしてきた経験から得られた、職人芸と言えますね。
最初は、ちょっと離れた位置にいる。
でも、いつの間にか、距離を詰めて、懐に飛び込んでいる。
そんな離れ業を、難なくこなしてしまうタモリさん。
すでに武道の達人の趣がありますね。
芸能人ではない私たちも、見習うべきところが多いです。
タモリさんのこれからのご活躍にも期待したいです。
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