【書評】『「やわらかい血管」で病気にならない』(高沢謙二)

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 お薦めの本の紹介です。
 高沢謙二先生の『「やわらかい血管」で病気にならない』です。


 高沢謙二(たかざわ・けんじ)先生は、心臓や血管などの循環器系がご専門の内科医です。
 日本循環器学会など多くの学会で評議員を務められ、その道の権威として著名な方です。

「サイレント・キラー(静かな殺し屋)」の脅威


 日本人の死因の1位はがん、2位は心臓病、3位は脳卒中。
 ともに、“血管事故”です。

 血管事故の原因は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病が積み重なることによる「動脈硬化」です。

 動脈硬化は、「血管の老化」で、心臓病や脳卒中の引き金になります。
 血管事故を防ぐには、血管をしなやかで、やわらかい状態に保ち、老化を防ぐことが何よりも肝心です。

 血管は、「沈黙の臓器」とも言われ、症状の悪化が自覚できない臓器です。
 動脈硬化は、「サイレント・キラー(静かな殺し屋)」という別名も付く、やっかいな症状です。

 高沢先生は、動脈硬化の魔の手から逃れるには、年1回の健康診断で血圧、血糖値、血液中のコレステロールや中性脂肪の値をチェックすることが大事だと述べています。

 さらに、これらの数値の意味を正確に読み取り、血管のアンチエイジングに役立つ生活習慣を身につけることが求められるとのこと。

 本書は、血管事故の起こるメカニズムの解説や、血管事故を予防するために身につけるべき生活習慣についてまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「平均血圧」と「脈圧」について


 血圧は、「上の血圧」と「下の血圧」の数値を測定して判断します。

 実際には、「平均血圧」「脈圧」で成り立っています。

 平均血圧は、上下の血圧の平均を取った血圧で、細い血管の老化による動脈硬化を示すサインとなります。

 平均血圧は、加齢とともに右肩上がりで上昇を続けます。
 動脈硬化は細い血管から始まり、太い血管に広がりますが、細い血管に動脈硬化が起こると平均血圧が上がります。

 平均血圧は次の計算式から求められます。

   平均血圧=下の血圧+(上の血圧ー下の血圧)÷3

 平均血圧の標準的な値は、90未満です。
 それを超えるレベルで、年々上がっているとしたら、動脈硬化が深刻化している恐れがあります。

 太い動脈血管の動脈硬化が始まると上昇するのが、「脈圧」です。

 脈圧とは、心臓が血液を送り出すときに生まれる圧のことです。
 心臓にかかる負担の大きさを示しています。

 脈圧は、以下の計算式から求められます。

   脈圧=上の血圧ー下の血圧

 脈圧の正常範囲は、だいたい60程度です。
 60を大きく超えた場合、太い血管の老化が始まっている恐れがあります。

 上の血圧が高いけど、下の血圧が低いから大丈夫。
 そう勝手に判断してはいけないということです。

 正確な知識を身につけて、血管事故を未然に防ぎたいですね。 

動脈硬化が進むメカニズムについて


 血管事故を引き起こす“主犯”である動脈硬化。

 とくに影響を及ぼす血液中の物質は、「コレステロール」です。
 コレステロールは、血漿中に含まれている脂質の一つです。

 コレステロールの中でも、比重の低いものを「LDLコレステロール(悪玉コレステロール)」と呼びます。
 悪玉コレステロール量が血液中に増えると、血管にも悪影響を及ぼします。

 悪玉コレステロールが、プラーク(コブ)を作り、動脈硬化を促進するメカニズムは以下の通りです。

 血管の内膜は内皮細胞という薄いタイルのような細胞で覆われていますが、コレステロールが過剰だとそのタイルが傷つき、剥がれた場所からコレステロールが内膜の内部に侵入します。
 内膜に侵入したコレステロールが活性酸素で酸化されると人体に悪影響を及ぼす「酸化コレステロール」に変化します。活性酸素は、呼吸で取り入れた酸素から生じる毒性の高い物質です。
 酸化コレステロールを放置するとまわりの細胞を破壊してしまうので、カラダは酸化コレステロールを除去しようとします。その主役となるのは、外的と戦う免疫反応を担う白血球の仲間「単球」です。
 単球は内膜に入ると「マクロファージ」という細胞に変化します。マクロファージは「大食細胞」とか「貪食細胞」といい、カラダの害になるウイルスや細胞を食べて掃除してくれる役割があります。
 マクロファージは酸化コレステロールを食べて処理しようとしますが、コレステロールが多すぎて満腹になると内側に脂質(脂質コア)を多く含むブヨブヨした細胞に変化します。泡のようにブヨブヨなので、これを「泡沫細胞」といいます。これが動脈硬化のコブ、すなわちプラーク発生の発端です。

 『「やわらかい血管」で病気にならない』 第4章 より  高沢謙二:著  ソフトバンク クリエイティブ:刊

 発生した泡沫細胞は、血液中の中性脂肪などを取り込み、どんどん巨大化していきます。
 そして、プラークが傷つき、破裂すると、血栓ができて、心筋梗塞や脳梗塞が引き起こされます。

カリウムでナトリウムを排泄する


 それでは、どうすれば、動脈硬化を防ぐことができるのか。

 高沢先生は、野菜中心の食事を心がけるよう、アドバイスします。

 野菜中心の食生活のメリットは、たくさんあります。
 その中の一つが、ナトリウムの「キレート作用」です。

 キレートとは、カニのハサミのような化学構造を持つ物質です。
 転じて、カニのハサミで挟むように、体内に不要な物質を排泄する作用を意味します。

 塩分に含まれる「ナトリウム」は、血管の壁に入り込み、なめし革のように動脈硬化を進める作用があります。

 このナトリウムを体外に排出するのに必要なのが、「カリウム」と呼ばれる成分です。

 成人では体重の60%前後は水分です。体内を満たしている体液には、ナトリウムとカリウムが一定の比率で含まれています。ナトリウムは細胞の外に多く、カリウムは細胞の中に多く、この濃度差はあらゆる細胞の活動に利用されています。
 このようにナトリウムとカリウムはワンセットになっています。このため、余分なナトリウムは腎臓から排泄されますが、ナトリウムはカリウムと一緒に排泄されるという性質があります。それゆえカリウムが不足すると、ナトリウムの排泄が滞るようになります。
 野菜にはカリウムが豊富に含まれていますから、過剰なナトリウムの排泄を助けて血圧上昇にブレーキをかけてくれます。さらにカリウムは血管を開く酵素の働きを活性化しますから、カリウムを含む野菜を食べると血管が開いて血管が下がりやすくなります。

 『「やわらかい血管」で病気にならない』 第4章 より  高沢謙二:著  ソフトバンク クリエイティブ:刊

 厚労省の資料によると、日本人成人の一日平均カリウム摂取量は、最大25%程度不足します。

 カリウムは、水に溶け出しやすく、調理の過程で損失する率が高いです。
 そのため、生野菜のままで食べるのがいいです。

 カリウムの多い野菜は、ホウレンソウ、モロヘイヤ、パセリ、セロリ、カボチャなどです。

「ミルキングアクション」で血液循環をよくする


 ストレス解消などのためにも、適度な運動を習慣付けることが大事です。

 とくにおすすめなのが、週2回20分程度の「ウォーキング」です。

 ウォーキングによる血管のアンチエージング効果に、「ミルキングアクション」があります。
 ミルキングアクションとは、ふくらはぎを中心とした筋肉の伸縮により、下半身の静脈血が心臓へ還流するのを助ける働きです。

 ミルキングアクションが活性化すると、心臓に戻る血液が増えて血液循環がよくなりますから、血圧が下がります。
 四足動物では全血液の7割は心臓より上にありますが、直立二足歩行をしているヒトでは全血液の7割は心臓より下にあります。心臓より下を流れる血液は重力に逆らって心臓へ戻りますが、心臓は血液を押し出す働きはあっても血液を吸い上げる機能はありません。そこで活躍するのがミルキングアクションです。脚が「第二の心臓」といわれるゆえんです。
 ウォーキングで脚の筋肉が収縮すると、周囲の血管が圧迫されて血液が上へ上へと押し出されます。これを繰り返すことで、バケツリレーのように血液を心臓に還流させるのです。静脈には竹の節のようにところどころに弁があり、筋肉が緩んだときに弁を閉じて血液が逆流しない仕組みになっています。

 『「やわらかい血管」で病気にならない』 第7章 より  高沢謙二:著  ソフトバンク クリエイティブ:刊

 長時間水分も取らずにじっとしていると、静脈に血液が留まる時間が長くなります。
 すると、血液濃度が高くなり、血の固まり(血栓)が生じやすくなります。

 この症状は、国際線の飛行機に乗ったときのように、同じ姿勢を続けると発症しやすいです。
「ロングフライト血栓症」、いわゆる「エコノミー症候群」と呼ばれます。

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 血管の長さは、ごく細いものまで足し合わせると、約10万キロメートル。
 地球2周分を回るほどの距離に達するといわれています。

 その血管すべてに、拳1つほどの心臓というポンプで血液が巡らされます。
 よくよく考えれば、ものすごいことですね。

 血管は、24時間休むことなく働き、替えの利かない「沈黙の臓器」です。
 もっと労って、血管事故の未然防止をしたいですね。

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