【書評】『「他人に怒れない」をやめる6つの方法』(内藤誼人)

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 お薦めの本の紹介です。
 内藤誼人さんの『「他人に怒れない」をやめる6つの方法』です。

 内藤誼人(ないとう・よしと)さんは、社会心理学の知見をベースに、実際のビジネスへの応用を主に研究されている心理学者です。

怒るべきときは、怒ったほうがいい


 日本人は普段、「怒り」を表現することはあまりありません。
 それは、小さいころから「怒ってはいけません」という、しつけや教育をうんざりするほど受けて育つからです。

 そのため、「怒ること=悪」という図式が完全にできあがっているのが実情です。
 内藤さんは、そのことに疑問を投げかけています。

「怒るべきときには怒ったほうがいい」というのが基本的なスタンスの内藤さん。

 怒るにしても、「いい怒り方」と「ダメな怒り方」があり、そのルールを守っている分には、怒りを表現することは大きな恩恵をもたらしてくれると指摘します。

「怒ってはいけません!」としか言えないのは、「いい怒り方」を知らないからです。
 それは、泳ぎ方を知らない人が「危ない水場には近づくな」という以上のアドバイスができないのと一緒です。

 本書は、コミュニケーションの「危ない水場」における上手な泳ぎ方を教えてくれる一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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人を「説得」するには、怒るのが最も効果が高い


 オークランド大学のニコラ・オヴェラル教授は、「怒りを示す」という方法が、相手を変えるということにおいては、他のいかなる方法より効果的なやり方であることを実験で証明しました。

 つまり、自分の意見を人に伝えて、意図通りに動いてもらうためには、「怒ること」は大きな武器になることが科学的にも裏付けられたことになります。

 人に言うことを聞かせたいのなら「かしこい怒り方」を身につけなければならない。そのほうが、絶対に自分にとって利益があることを保証しよう。
「怒るのはよくない」と考えている人に、「それでは、あなたは怒ったときの効果と、やさしくしたときの効果を、きちんと比較してみたことはあるのか?」と質問すると、間違いなく「そんなことはしたことがない」という答えが返ってくるはずだ。
 彼らは、自分では試したことがなく根拠がないにもかかわらず「怒るのはよくない」と思い込んでいるだけなのである。

 おそらく、読者のみなさんの多くも、自分では試したことがないのに「むやみに怒ってもしょうがない」「怒らないにこしたことはない」と思っているのではないだろうか。
 しかしオヴェラルの実験が示したように、怒るのは相手を変えるのにものすごく有効な方法である。
 まずはそう考えるところから、意識改革をはじめよう。
 せっかくの武器を使わないのは、非常に「もったいない」ことなのだと理解してほしい。まずこれがわからなければ、怒ることに積極的になれない。
 ここはとても大切なポイントだから、しっかりと覚えておいてほしい。

 『「他人に怒れない」をやめる6つの方法』  第1章 より  内藤誼人:著  大和書房:刊

「怒ること」が、相手の反感を買って、意図通りに動いてもらえなくなる。
 それは単なる「思い込み」です。

「怒ること」は、相手に自分の気持ちを伝える、効果的な手段である。
 まずは、それを認識することが大事だということですね。

必ず「約束ごと」を決める


 世のなかには、「怒っても嫌われない人」と「怒ると嫌われる人」がいます。
 その理由は、「予測可能性」にあります。

 仮に怒るとしても、その怒りが予測可能であれば、それほど嫌われません。
 逆に、行動が予測しにくい怒りっぽい人は、いつ怒り出すかわからないから煙たがられます。

 内藤さんは、自分の行動を予測できるようにしてあげれば、怒りっぽい人でもそうそう嫌われたりはしないものだと指摘します。

①どういう状況で、②どういう行為をすると、③自分はどう怒るのか、を相手に伝えておこう。前もってそれを伝えておけば、相手も受け入れる準備ができる。
(中略)
「キミは約束を守らなかったんだから、○○するよ」ということで、粛々と罰を与えればいいのである。これなら、温厚なタイプの人でも怒れるだろう。
 罰せられる相手も、その結果は目に見えていたわけだから「しかたないか」ということで、あなたの怒りを受け入れてくれるのだ。
 仕事で相手に不利益なことを受け入れさせる場合も同じだ。
「3回遅刻したらクビ」
 などとあらかじめ伝えておけば、たしかにクビにされること自体は不愉快なことでもあるが、相手も納得して受けれざるを得なくなるのである。

 『「他人に怒れない」をやめる6つの方法』  第2章 より  内藤誼人:著  大和書房:刊

 いつ襲ってくるかわからない、都市部のゲリラ豪雨。
 決まった時間に降る、熱帯地方のスコールのような豪雨。

 両者では、同じ集中豪雨でも、怖さも迷惑度も、雲泥の差です。

「そろそろ来るかな・・・」

 どうせなら、そう周りに思わせられる怒り方をマスターしたいですね。

怒る方針をひとつに決めてしまう


 今までまともに怒ったことがない人が急に怒ろうとしても、どうやって怒っていいのか戸惑ってしまいます。

 怒るときのコツは、「自分の行為は100%正しいと信じること」です。
 少なくとも怒っている最中は、「怒るのは相手に100%責任があるからだ」と思い込まなければなりません。

 そういう気持ちがないと、本気で怒ることはできません。
 そのためには、「怒る方針」ともいうべきものを自分の中で持つことが大前提となります。

 コーチングや指導法の本を読めば読むほど、著者によって言っていることが食い違っていて、何をどうすればいいのかわからずパニックになる。
 こんなときには、「これだ!」という指導法をひとつ決めてしまって、そのやり方を100%信じるようにしたほうがいい。
 部下がそのルールから外れた行動をとったときには、厳しく怒るのである。そうすれば、説得力のある怒り方ができる。
 この世の中に唯一絶対の指導法などないのだから、いろいろと吟味した後は、どれかを信じるしかない。
 それがどんなルールであれ、自分が信じた方法は絶対に正しいのだ。そう思い込まなければ、しっかりと人を怒ることはできないだろう。

 『「他人に怒れない」をやめる6つの方法』  第3章 より  内藤誼人:著  大和書房:刊

 自分の中にしっかりした判断基準があって、それに従って怒ることが大切です。
 それがないと、怒られる方も、何で怒られたのかが釈然としないため、効果は半減します。

 また、公平性に欠けてしまい、周囲から余計な恨みを買うことになりかねません。
 気をつけたいですね。

モチベーションは「怒り」から生まれる


「怒り」というものは、人間の持つ感情の一つです。
 怒りの感情は、「ナニクソ!」「負けるか!」という気持ちを引き出す、人間のモチベーションやバイタリティにつながる生命エネルギーです。

 物事をやり抜くうえで絶対に必要となる「努力」や「根性」を支えているもの。
 それも、「怒りの感情」です。

 スポーツの世界でも怒りっぽい人のほうがよい成績を残せるのは、「負けたら悔しい」「絶対に勝ってやる」というやる気が高いからであろう。プロ選手で、負けず嫌いで怒りっぽくない人などいないのである。
 いや、スポーツの世界にかぎらずどの世界でも、一流の人間はみな負けず嫌いで怒りっぽい。それくらいの気持ちがないと、プロの世界ではやっていけない。
 試合で負けても「ああ、負けちゃったね。しかたないね」とすぐにあきらめてしまうような人はいつまでたっても強くならない。
 ふがいない自分に対して、あるいは打ちのめしたい相手に対して怒りを覚えなければ、どうしたってやる気は湧いてこない。
 最近の若者は無気力でやる気がないとは、ずいぶん前から指摘されるようになった。その理由は、怒りの感情を抑制させるような教育を受けているからではないだろうか。
 怒りの感情を抑制すると、やる気まで失われてしまうのである。
 だからこそ私は、時代と逆行するようだが、「もっと怒ったほうがいい」と主張しているのだ。

  『「他人に怒れない」をやめる6つの方法』  第5章 より  内藤誼人:著  大和書房:刊

「怒りの感情」を持つこと自体は、決して悪いことではありません。
 そのエネルギーをいい方向へ発散させることで、有効な活力源になります。

 怒りの感情は、無理に抑え込もうとすると、体にも悪いです。
 上手くつき合っていきたいですね。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 人と言い争ったり、感情をあらわにしてやりあったりする。
 そんなことは、多くの人は好きではないでしょうし、好ましいことではありません。

 しかし、言いたいことを言えずに抑え込んだ感情は、自分の中に蓄積されていきます。
 耐えきれなくなると、いつのときか爆発することになります。

 それが、「キレる」ということです。
 最近、キレる人が増えているのは、上手く怒れる人が減ってきて、ストレスを与えることだけが増えていることが大きな理由の一つです。

「怒ること」は、コミュニケーションの立派な手段です。
 上手く使えれば、意思伝達の手段として最高のツールにもなり得ます。


「よく怒るけど、なぜか憎めない」

 私たちも、そんな「怒り上手」を目指したいですね。


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