【書評】『決断する力』(猪瀬直樹)

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 お薦めの本の紹介です。
 猪瀬直樹さんの『決断する力』です。

 猪瀬直樹(いのせ・なおき)さん(@inosenaoki)は、政治家、ノンフィクション作家です。
 現在は、東京都副都知事を務められています。
歯に衣着せない発言と豊富なアイデアで、石原慎太郎都知事の右腕として、日々奮闘されています。

震災で発揮された「決断力」とは?

 

 猪瀬さんの大きな武器のひとつが、「決断力」です。
 それが最大限に生かされたのが、2011年3月11日に発生した東日本大震災です。

 未曾有の大惨事で情報が錯綜し、行政システムが麻痺し混乱が広がる。
 そんな中、猪瀬さんはツィッターなどを通じ、必要と思われる情報を拡散します。

 また、通常のルートを介さずに、東京消防庁の消防艇を出動要請するなど、獅子奮迅の活躍でした。

 多くの行政機関のトップが、あまりの情報の少なさに行政判断を下せなかった。
 そんな中、猪瀬さんは、なぜ、迅速な意思決定を下すことが出来たのでしょうか。

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『決断力』の源は?


 猪瀬さんは、以下のように述べています。

 ほんとうは「たらたら生きる人」はいないはずである。職場の規則にがんじがらめにしばられて意志が萎えたと思いこんでいる人も、自分を見失って生活や家族をしがらみだと釈明する人も、「20代に根拠のない自信とそれに対する迷いを抱えた経験」があった、ただそれを忘れているだけのことなのだ。
 決断は、外見では非連続思考のように見えるが、そうではない。粘り強さの果てに、ようやく飛躍することのできる蓄えられた力の結果である。アスリートの肉体が日頃の鍛錬のたまものであるように。

  「決断する力」 まえがき より  猪瀬直樹:著  PHPビジネス新書:刊

 決断力は、その場その場での、臨機応変な対応が要求されます。
 それを鍛えるには、日頃からの鍛錬が必要です。

 普段からの心掛けが、有事の際にも動じずに、冷静な判断を下せる精神力を作ります。

刻々と変化する状況に対応する


 有事に遭遇してした際に、意思決定者が行わなければならないことについて。

 危機は一瞬で過ぎ去るものではない。刻々と変わる状況に合わせて、次々と手を打たなければ、機会はどんどん失われ、場合によっては手遅れとなる。そのためには、できるだけ正確な情報をつかむこと、集まってきた情報をもとにその場で決断を下すこと、そして結論をすみやかに関係者と共有すること、の3点である。
 現場の情報を1カ所に集め、そこで決断して、関係者に伝達する。現場は現場で動いているから、情報の流れを整理して、必要な人に必要な情報が行き渡るようにする。情報を吸い上げる仕組みと情報を伝達する仕組みが両方そろっていないと、適切な対策が打てない。

  「決断する力」 Ⅰ即断即決で立ち向かう より  猪瀬直樹:著  PHPビジネス新書:刊

 日本の行政は、有事の際の危機管理マネジメントが、まったくされていなかった。
 それが白日の元に晒されたのが、今回の震災です。

 とくに、情報伝達の混乱には、目を覆いたくなるほどでした。

 猪瀬さんは、ツィッターなどのSNS(ソーシャルネットワークサービス)を利用した、災害時の非常用情報伝達システムの必要性も訴えます。

通常ルートを端折って伝える必要


 非日常だから、何でもあり。とにかく「何でもあり」をやらなければいけない。思いついたことをすぐに実行に移す。
 そのためには、情報を求める人たちのニーズにどれだけ敏感かが大事になる。情報が届かずに空白が生じているとしたら、その間を埋める想像力を働かせなければならない。
 もうひとつ、後から責任を追及されると思うと、人間は萎縮して思い切った行動がとれなくなるものだ。「責任は俺がとるから思い切ってやってみろ」という上司の下では部下も力を発揮できるが、「そんなことを許可した覚えはない」と後で梯子を外されることがわかっていたら、誰も大胆な行動はとれなくなる。

  「決断する力」 Ⅰ即断即決で立ち向かう より  猪瀬直樹:著  PHPビジネス新書:刊 

 災害時には、たとえ、上位の意思決定者と連絡が取れなくても、現場の責任者が「やるべきだ」と思ったことは、その場で「やる」と判断すること。
 これも今の行政システムだと、なかなか出来ないことです。

 システムを変えることも、もちろんですが、個人レベルでの意識の変化も、必要です。

「変人」の混ざり具合が重要


 猪瀬さんは、有事の際には、「秀才」タイプの人間よりも周りから「変人」と言われるような独自の考えを持つような人物の方が頼りになると指摘します。

 日本国として何をしなければいけないか、自分独自の価値基準を持っている人は、まわりの人たちから「変人」と呼ばれるけれども、ひとつの世界観を持っているわけだから、まったくブレない。
 いっぽう、秀才というのは、隣を見て判断しようとする。他人の物真似は得意で、短期間にそれなりの成果は出すけれど、自分独自の価値基準を持っていない。だから、他人の評価に弱いし、日和見主義になりがちだ。
 有事には、秀才は機能しない。危機管理という意味では、ブレない「変人」のほうが緊急時のリーダーに向いている。要するに、組織の中にどれくらい「変人」がいるか。「変人」の混ざり具合が重要だ。

  「決断する力」 Ⅰ即断即決で立ち向かう より  猪瀬直樹:著  PHPビジネス新書:刊

 猪瀬さんは、「変人」であることを、自ら認めています。

 世間一般と少し違う価値基準で生きていて、信念がブレない人。
 そういう人を「変人」と呼ぶのなら、私も賛成です。

 日本で「秀才」タイプがもてはやされるのは、戦後の教育システムの弊害ですね。

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 最後に、猪瀬さんは、以下のようにおっしゃっています。

 震災を通して、むき出しの自然の暴力に向き合わなければならないことを、日本人は思い出した。災害を想定外にすることは、戦争を想定外にすることと同じく、戦後社会を蝕んでいた「甘さ」だった。自分たちの甘さに気付いたいま、日本はリスクを想定内として考え、真の主権国家を目指していかなければならない。
 同時に、災後社会は「自己責任の時代」ということである。それは個人がすべてを負うのではなく、日本列島で災害を生き抜いてきた記憶を持つ一員として、責任を分担するという意味だ。
 震災後には、人々の間で「国難」という言葉が自然に出てきた。災害を生き抜く日本人の共通の記憶が呼び起こされたからだろう。孤立した個人ではなく、共通の基盤、認識の上に立つ個人として戦っていく「災後型の自己責任社会」が求められている。

  「決断する力」 Ⅲリスクをとって攻めに転じる より  猪瀬直樹:著  PHPビジネス新書:刊

 ただ、国や会社にしたがって生きていけばいい。
 そういう時代は、この震災を機に、完全に終わりを告げました。

 これからの時代、国にも企業にも、個人レベルでも求められるのは、「決断力」です。

 自ら状況を判断し、迅速な決断を下すこと。
 すべての人が意識しなければいけない時代です。

 いざという時のために、普段からの準備が大事。
 非常食などの防災グッズと共に、いざというときに頼りになる「決断力」を常備しておきたいです。

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