本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】「伝える力」( 池上彰)

 お薦めの本の紹介です。
 池上彰さんの『伝える力』です。

 池上彰(いけがみ・あきら)さんは、ジャーナリストです。
 長年NHKの報道記者を勤められて、05年からフリーのジャーナリストとして、多方面で活躍されています。

「伝えること」の重要性とは?

 池上さんの名前が、全国的に認知されるようになったのは、NHKの子供向け番組「週刊こどもニュース」の“お父さん”役で出演したことがきっかけです。

 毎週、この番組で、日々のニュースを分かりやすく解説し、一躍、人気者となりました。

 池上さんは、この番組に出演していた11年間で「分からない人に分かるように教えること」がどれだけ難しいことかを学んだと述べています。

 この番組では、子供達がデスクであり、先生だったとのこと。
 池上さんの説明の分かりやすさは、この時に鍛えられた部分が大きいです。
 
 池上さんは、最初に、「伝えること」の重要性、必然性について、以下のように述べています。

 人は誰でも、おもしろいことや感動したこと、珍しいことなどを見たり、体験したりしたときには、他の人に伝えたくなるものです。あなたも、心揺さぶられることがあれば、それを誰かに伝えたくなるのではないでしょうか。
 子供のころを振り返れば、「ねぇねぇ、聞いて、聞いて。あのね・・・・」と誰もが言っていたでしょう。この気持ちは、大人になっても多くの人が持ち続けているはずです。
 ほかの人に何かを伝えたい。その思いは、人間が社会的動物である以上、当然のことです。
 無人島に1人やってきて、きれいな夕日を見たとしたら、感動した後、その感動をすぐに伝える相手がいないことに寂しさを覚えるはずです。その光景をきっと誰かに伝えたくなるでしょう。
 
  「伝える力」  はじめに より   池上 彰:著  PHP研究所:刊

 さすが、池上さん。
 例えの使い方も、本当に、分かりやすいです。

 人類がどれだけ進歩しても、「感動を伝えたい、想いを伝えたい」という気持ちがなくなることはありません。

 本書は、コミュニケーション能力を上げ、意思伝達を向上させる、具体的な方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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必要なのは、「謙虚になること」

 こうして見てくると、「伝える力」を高めるためには、自分が深く理解するとことが必要であるとわかります。
では、理解を深めるにはどうしたらよいのか。そのためには、まずはその前段階として「自分がいかに物事を知らないか」を知ることからスタートするしかありません。そして、事実に対する畏れ(おそれ)を持つことも大切です。
(中略)
 知ったつもりになっても、実は知らないことは、誰しも山ほどあります。謙虚になれば、それが見えてきます。逆にいうと、謙虚にならないと見えてこないし、成長も上達もしません。
 
  「伝える力」  第1章 より   池上 彰:著  PHP研究所:刊

「伝える力」を高めるには、物事を深く知る必要があります。
 そのためには、「謙虚になること」が必要だということです。

 古代ギリシャの偉大な哲学者ソクラテスも、「自分は何も知らない。ただ、自分が何も知らないことは知っている」と言っていました。
 この「無知の知」の精神が、多くを学ぶための秘訣です。

 まず「自分は何も知らない」ことを知り、他者から謙虚に学ぶことです。この姿勢させ持ち続けていれば、コミュニケーション能力は確実に向上していきます。
 特に若いときは、相手を怒らせたり、傷つけたり、誤解を与えたり・・・・・といった失敗を何度もするでしょう。でもそのときに、自分の殻に閉じこもることなく、へこたれることなく、心を開き続けて、コミュニケーションをとり続けてほしいのです。そうすることで、「伝える力」はきっとどんどん伸びていくことでしょう。
 また、若い人は特に、今のうちに「大いに恥をかく」ことです。
 20代の若手ビジネスパーソンはもちろん、場合によっては、30代、40代の中堅であっても、恥をかくことを恐れずに、わからないことは教えを請う気持ちで仕事に取り組むべきです。
「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」と言いますが、その通りですね。謙虚に教えを請うことで、新たな知識を吸収することができる上に、こうした人の好感度は間違いなくアップします。
 
  「伝える力」  第1章 より  池上 彰:著  PHP研究所:刊

「伝える力」を高めることは、コミュニケーション能力を高めることと同じです。

 人は、1人では生きられません。
 社会生活を営んでいくうえで、さまざまな人と関わっていく必要があります。

 その中で失敗は、避けては通れません。
 ときには、イタい思いもすることでしょう。
 
 しかし、そこで自分の殻に閉じこもってはいけません。
 そういう経験をした時こそ、他人とコミュニケーションを取り続ける必要があります。

 努力なしには、コミュニケーション能力の向上は、ありえないということです。

「失敗を恐れず、心を開き続ける」

 その意識は、つねに持っていたいですね。

「読書」の重要性について

 池上さんは、「読書」の重要性について、以下のように述べています。

 読書をすることが重要なのは、ビジネスパーソンも同じです。豊かな表現力や説得力のある文章を書くには、本を読むことがどうしても必要です。
(中略)
 今日からでも明日からでも、本を読んで、それを習慣にしてください。
 本を読む時間がないという人がよくいますが、そんなことはないはずです。
 電車通勤であれば、行き帰りの電車の中、新幹線での出張の車中、寝る前15分、昼休みの10分、あるいはレストランの1人ランチで、昼食が運ばれてくるまでの10分・・・・・・
「読む気」さえあれば、時間はいくらでも見つけられるはずです。
(中略)
 読書量を増やすには、何も速読術をマスターする必要はありません。1文字1文字読んでいくオーソドックスな方法でも、毎日、本を読んでいると、読むスピードは間違いなく速くなるのです。

  「伝える力」 第8章 より   池上 彰:著  PHP研究所:刊

 本を読むメリットは、単に知識を得ることだけではありません。
 知らないうちに、著者の文章表現力を学べる、ということにもあります。

「時間がない」は、言い訳です。
 池上さんの述べている通り、時間を作ろうと思えば、作れます。

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 対話などの直接的なコミュニケーションは、言うに及びません。
 加えて、ITの発達により、文章でのコミュニケーション能力が問われる時代となります。

 近い将来、おそらく、語学力などよりも、重視されるようになるでしょう。
 
 人と人との関わりは、感情の部分が多くを占めます。
 そこは、技術の進歩が入り込めない部分です。

 分からないからといって、本やネットで調べられないのが、「伝える力」です。

 コミュニケーション能力を磨くには、実践あるのみ。
 それしかありません。

 そういう私も、偉そうなことは言えません。
 まだまだ修行の身です。
 これからも池上さんを見習い、「謙虚」に学んでいきたいです。

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