【書評】『リーダーの一流、二流、三流』(吉田幸弘)

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 お薦めの本の紹介です。
 吉田幸弘さんの『リーダーの一流、二流、三流』です。

 吉田幸弘(よしだ・ゆきひろ)さんは、コミュニケーションデザイナー、人材育成コンサルタントです。
 人材育成、売上改善の方法を中心としたコンサルティングの分野で幅広くご活躍されています。

リーダーになってうまくいく人のうまくいかない人の差は?


 プレイヤーとして大活躍したけれど、リーダーに昇格した途端、別人のように変わってしまった。
 どんな組織においても、このようなケースは少なくありません。
 一方で、リーダーになっても順調に仕事をして、より活気があふれる人もいます。

 リーダーになってうまくいかない人とうまくいく人。

 吉田さんは、この両者の違いは、リーダーの役割を知っているかどうかだと指摘しています。

 リーダーになってつまずく人は、プレイヤーの延長で仕事をします。
 そもそもリーダーに昇格できるくらいですから、プレイヤーとしては素晴らしい業績をあげています。だからすべてにおいて部下に勝とうとする、部下の助言は一切聞かない、弱みを見せない、上下関係をはっきりさせる・・・・・こうやって失敗するのです。

 一方で、成功するリーダーは、自分よりできる部下がいるのは当然だと思っています。
 年上の部下には、リスペクトしながら、その人の力を借りて、大きな戦力になってもらいます。
 うまく仕事を進められない部下でも、仕事はとり上げず、上手に誘導していきます。

 実際、リーダーの仕事は非常に魅力的で楽しいものです。
 プレイヤーのときより権限は大きくなりますし、個人の成長度合いよりチームの成長度合いのほうが格段に大きいので、やりがいもあります。
 また、リーダーというポジションは、出世のスタート地点とも言われています。
 もちろん、リーダーに昇格したこと自体が出世ではありますが、経営層への道ということで考えると、まさに出発点なのです。

『リーダーの一流、二流、三流』 はじめに より 吉田幸弘:著 明日香出版社:刊

 吉田さんは、リーダーとしての素養は、後天的に自分の努力次第で身につけることができると述べています。

 本書は、吉田さんが関わってきた「一流のリーダー」に共通する行動・習慣・思考をわかりやすくまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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一流は「部下の成長」を重視する


 多くのリーダーは「性悪説」で考え、とくに部下に厳しく接します。

 ほめずに叱ってばかりだと、部下はリーダーを恐れて、自発的に動くことをやめてしまいます。
 言われたことしかやらなくなりますから、当然、部下は育ちません。

 一方、できるリーダーは、部下が仕事を楽しめるようにしようと考えます。仕事が楽しければ、どんどん自発的にとり組むようになるからです。
 具体的には、次の3つの方法をとり入れると、部下が前向きに仕事をするようになります。
①成功体験を味わってもらう
 難易度の高い仕事ばかりやらされると、モチベーションは低下してしまいます。仕事が楽しいと思わせるためには、部下に成功体験を味わってもらうのです。
 そこで、部下ができる難易度の仕事を与えるようにします。

②ほめる
 期待に沿った仕事、期待以上の仕事をしてくれた部下に、心の底から感謝し、それを示します。うまくいったときは、ほめるようにしましょう。ほめることで、部下のモチベーションは上がります。

③工夫する
 仕事の成果を互いに称え合う場をつくったり、おもしろい仕事のアイデアを出し合う会議をしてみましょう。仕事を「楽しくする」アイデアは、一見するとムダなようにも思えますが、心にゆとりをもたらし、ポジティブな気持ちを生み出します。メンバーの心の中がポジティブな気持ちで満たされると、不思議なくらい生産性が高まります。

 これらの方法で部下に仕事を楽しんでやってもらうことは重要ですが、それだけではまだまだです。一流のリーダーは、もっと先のことまで考えます。
 現在は、終身雇用を保障できる時代ではなくなりました。よって、どこの会社でも通用できるポータブルスキルを磨かなくてはならなくなっています。
 そこでリーダーは、成長につながるような仕事を部下にさせる必要があります。

 仮に部下の力が100だとして、もちろん150の仕事をひとりでやらせるのは不可能です。でも、110の仕事だったら、きついかもしれませんが、挑戦意欲も増すでしょう。適度な負荷を与えるということです。
 無理をさせると、そのときは感謝されないかもしれませんが、3年後、5年後、きっと部下に感謝してもらえるようになります。
 元プロ野球監督の野村克也氏の名言のひとつです。
「財を遺すは下、事業を遺すは中、人を遺すは上なり」
 人を育てるのは、リーダーの大切な仕事ですね。

『リーダーの一流、二流、三流』 Chapter 1 より 吉田幸弘:著 明日香出版社:刊

 部下に気持ちよく仕事をさせることは、リーダーの大切な役割です。
 ただ、それだけでは、「一流のリーダー」とはいえません。

 適度な負荷を与えて、部下の成長を促すこと。
 それが部下のためでもあり、自分自身、ひいては組織全体のためになります。

「自分がやってしまったほうが早く終わるし、間違いもない」
 そういう仕事でも、あえて部下に任せてみる。

 リーダーには、そんな忍耐強さも必要だということです。

一流は、「求められたアウトプット」だけを出す


 資料作成は、自己満足に陥りやすいものです。
 資料を作成するだけでは、価値を生み出しません。

 せっかく時間をかけて丁寧につくっても、提出期限が守れなければ本末転倒です。

 一流のリーダーは、付加価値をつけようとしません。それよりも依頼者の要望に応えることを最重要視します。資料作成をする場合は、次のことにこだわります。

  • Q(クオリティ)
     成果物の質です。正確な数値を把握したいのか、全体像がわかりやすいようにしたいのか、選択肢をいくつ欲しいのかなど、相手を満足させるポイントです。
  • C(コスト)
     どれくらいの時間をかけるのか、調査にお金をかけるのかなどです。
  • D(デリバリー)
     納期、いつまでに仕上げるかです。
 これらをわかりやすく、漏れなくやるために、5W2Hで書き出します。部下に指示するときにも有効です。
  • WHO(誰が使う、誰に)岩崎部長が使う
  • WHERE(どこの、どこで)役員会で
  • WHAT(何を)過去3年間のA商品、B商品、C商品の売上げ報告書
  • WHEN(いつ、いつまでに)来週水曜日の10時までに
  • WHY(なぜ必要なのか)商品Bのとり扱いを判断するため
  • HOW MUCH(金額・コスト)経費はなし
 このようにすれば、依頼者の求めているものができあがります。
 資料作成は、相手のニーズを満たすものをつくることが目的です。
 どうしてもこだわりを持ちたいなら、時間(納期)を優先順位に据える、このように部下に指示しましょう。

『リーダーの一流、二流、三流』 Chapter 2 より 吉田幸弘:著 明日香出版社:刊

 成果物の質(Q)、時間とお金(C)、納期(D)。

 この3つは、つねにトレードオフ(二律背反)の関係にあります。
 すべてを十分に満たす条件は、基本的にはあり得ないといっていいでしょう。
 だからこそ、作業を始める前に、これらのことをきっちり決めておく必要があるということですね。

 自分自身の仕事についてもそうですが、部下に仕事を頼む際にも、具体的に指示を出すことが大切です。

一流は、あらかじめ用意した「予備時間」で対応する


 一流のリーダーは、急に依頼された仕事にも、きちんと迅速に対応します。
 その秘訣は、「予備時間の確保」にあります。

 一流のリーダーAさんは、常に予備時間を確保して対応していました。
 予備時間とは、いわゆる予定が入っていない空白の時間です。
「空白の時間をつくるなんて、サボっているのと同じではないか?」と、思われた方は、注意が必要です。むしろ予定がびっしり詰まったスケジュールにしていては、一流のリーダーとは言えません。それどころか、リーダー失格です。「調整」というリーダーの仕事をする機会が持てません。
 金融経済用語で「イベントリスク」という言葉があります。イベントリスクとは、事前に予測できない出来事によって引き起こされる混乱のリスクのことを言います。
 一般社員に比べてリーダーは、このイベントリスクがかなり多くなります。
 何かというとすぐに相談してくる部下、不意にチームの状況を知らせてくれと言ってくる上司からの予測できない仕事は、多く発生します。
 一流のリーダーは、このリスクにそなえた「予備時間」をあらかじめ用意しています。
「予備時間」で、急な上司からの依頼、急なお客様からの依頼、部下からの相談に対応するのです。
 仮に割り込み仕事が入らなければ、新しい企画を考えたり、新規顧客のリストアップをしたりといった時間にあてればいいのです。
 特にリーダーは、ルーティンワーク以外の新しい商品を生み出す仕事や、利益を生み出す仕事を求められます。そういった意味でも、予備時間は必ずとっておく必要があります。

『リーダーの一流、二流、三流』 Chapter 4 より 吉田幸弘:著 明日香出版社:刊

 自動車のハンドルには、必ず「遊び」があります。
 遊びがなければ、急な方向転換で車体を制御することが難しいですね。

 同様に、仕事のスケジュールにも「遊び」の部分が必要です。
 多くの部下をケアしなければならないリーダーにこそ、調整時間の確保が必須です。

 余裕のあるスケジューリングで、突発の仕事も無難に切り抜ける、見事な「ハンドルさばき」を身につけたいですね。

一流は、「全体像さえ把握しておけばいい」と考える


 現代は、仕事が複雑化、多様化し、上司が部下の仕事をすべて理解するのが難しくなっています。
 とはいえ、まったく部下の仕事を把握しようとしないのは問題外です。

 もし、自分のよく知らない部門のリーダーに就いた場合、どう対応をすればいいのでしょうか。

 経験を積んだ人が、別の知識にない部門でリーダーになった場合、当然リーダーは部下より知識が劣っています。そんなとき、今さら仕事を一から学ぶより、管理経験を活かしながら、効率的にチームを動かそうと考えてしまうのです。
 このような考え方では、次のような弊害が生じます。

①部下との信頼関係の構築ができない
 部下だって、リーダーがすべての知識を身につけているとは思いませんが、部下の仕事をまったく知らない、例えば商品知識も得ようとしない、そんなリーダーを信頼しようとは思わないでしょう。
 リーダーが部下の仕事を理解しようと質問したり、前向きな姿勢を見せれば、部下との信頼関係は構築されます。
 部下はリーダーの知識が足りないことではなく、部下の仕事まで降りてくる、というやる気を見ているのです。

②新しい仕組みをつくることができない
 ビジネスの変化のスピードの激しい現代において、チームが継続的に成果を出し続けるためには、仕組みづくりをしていかなくてはなりません。
 仕組みをつくるためには、リーダーはメンバーより一歩高い視点で俯瞰的に業務を見る必要があります。業務の断片的な知識しかわからないのでは、仕組みをつくれません。
 チーム全体を見てどんな仕事があるのか、どの仕事に負荷がかかっているのかを把握する必要があります。

③部下のモチベーションが上がらない
 部下の仕事を知らない状態で、部下に指示を出しても、モチベーションは上がりません。
 メンバーが担当している仕事がどこにつながるか、誰の役に立つか、仕事の意義をきちんと伝えるためにも、部下の仕事を把握しておくことが必要です。

 知識もスキルもすべてにおいて、部下に負けないようにしようとするリーダーかたまにいます。
 しかし、すべてにおいて、部下に勝とうとする必要はありません。そもそも、それは不可能です。
 部下に勝てない部分は、サポートに回ればいいのです。
 こう考えることは、部下へのリスペクトにつながります。

『リーダーの一流、二流、三流』 Chapter 6 より 吉田幸弘:著 明日香出版社:刊

 まずは部下の仕事を知ろうとすること。
 それが、部下との信頼関係を築くうえでのカギとなります。

 押さえるべきところは、押さえる。
 任せるべきところは、任せる。

 そのメリハリをしっかりつけることが大切ですね。

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 吉田さんは、一流のリーダーは、自分のできていないことを自己開示しているとおっしゃっています。

 リーダーとはいっても、完璧な人間はいません。

 自分の弱みを認めつつも、自己研鑽を怠らない。
 そんな姿を部下に見せることも、リーダーとしての務めなのかもしれません。

「ローマは一日にしてならず」

 コツコツと一歩ずつ、試行錯誤しながら、一流のリーダーを目指したいですね。


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