【書評】『SPRINT 最速仕事術』(ジェイク・ナップ)

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 お薦めの本の紹介です。
 ジェイク・ナップさんの『SPRINT 最速仕事術――あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法』です。

 ジェイク・ナップ(Jake Knapp)さんは、GV(旧グーグル・ベンチャーズ)のデザインパートナーです。

1週間で「数か月×巨額のコスト」の価値のある仕事をする


 これまで数多くの革新的なサービスを世界に送り出してきたグーグル。
 その大きな原動力となったのが、ナップさんが開発した「スプリント(SPRINT)」です。

 スプリントとは、GVが活用しているプロセスで、アイデアをプロトタイプのかたちにすばやく落とし込み、それを顧客とテストすることによって、たった5日間で重要な問題に答えを出す手法です。

 よいアイデアはなかなか見つからない。またどんなによいアイデアでも、実世界で成功するかどうかはわからない。このことはスタートアップの経営にも、クラスの授業にも、大企業で働くことにもあてはまる。
 一口に「実行」といっても、簡単なことじゃない。どこに一番力を入れるべきか? そもそもどこから手をつければいいのか? このアイデアを具体化するとどうなるのか? それを考えるのに、有能な1人を任命するのがいいか、チーム全体でブレーンストーミングをしたほうがいいのか? 会議や議論を何度くり返せば確信がもてるのか? そしていったん決定したら、誰が責任をもって実行するのか?
 投資先のスタートアップがこういう重大な問題に答える手助けをするのが、GVのパートナーである僕らの使命だ。
 僕らは時間給のコンサルタントじゃない。投資家だ。スタートアップの成功が、僕らの成功になる。スタートアップがすばやく問題を解決し、自立するのを助けるのが目標だ。
 そのためにスプリントのブロセスを調整して、最小限の時間で最大限の結果を出せるようにした。
 このプロセスの何がいいかといえば、チームにすでにそろっている人材、知識、ツールを活用できる点だ。
 スプリントを行うスタートアップは、堂々めぐりの議論をすっ飛ばして、たった1週間で数か月分の仕事をやってのける。試用(ベータ)版の製品を公開するまでアイデアの検証を待つ代わりに、リアルなプロトタイプを使って明快なデータをすばやく手に入れる。
 スタートアップは、スプリントからとてつもない力を得ている。なにしろ巨額の投資を行う前に、未来へ時間を早送りして、完成した製品と顧客の反応をかいま見られるのだ。リスキーなアイデアがスプリントで成功すると、莫大(ばくだい)な成果が得られる。
 だが費用対効果が最も高いのは――もちろん痛みは伴うが――失敗したときだ。たった5日間の作業で重大な欠陥を発見できるのは、効率の極みだ。実地の経験を通して、しかも手ひどい損をこうむらずに学習できるのだから。

『SPRINT 最速仕事術』 INTRODUCTION より ジェイク・ナップ:著 櫻井祐子:訳 ダイヤモンド社:刊

 スプリントの5日間の基本的な流れは、以下のとおりです。

  • 月曜日・・・問題を洗い出して、どの重要部分に照準を合わせるかを決める。
  • 火曜日・・・多くのソリューションを紙にスケッチする。
  • 水曜日・・・最高のソリューションを選ぶという困難な決定を下し、アイデアを検証可能な仮説のかたちにする。
  • 木曜日・・・リアルなプロトタイプを完成させる。
  • 金曜日・・・本物の生身の人間でそれをテストする。
 本書は、グーグルが生み出した最速の仕事術「スプリント」の具体的方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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課題は大きければ大きいほどいい


 スプリントでの、最初の大きなタスクは、解決すべき課題を見つけることです。
 とくに次の3つのような厄介な状況で役に立ちます。

  1. リスクが高いとき
  2. 時間が足りないとき
  3. 何から手をつけていいかわからないとき

 僕らはスタートアップにスプリントを説明するとき、最も重要な問題にとりくむことを勧めている。スプリントには相当なエネルギーと集中力が必要だ。小さな成功を狙うアイデアやおまけ的なプロジェクトだと、誰も本気でとりくんでもらえない。そもそもスケジュールを空けてもらうのさえ難しい。
 逆に、大きすぎる問題はあるだろうか?
 スプリントがウェブサイトやソフトウェア関連の課題に有効なのはわかるが、大規模で複雑きわまりない問題はどうだろうか?
 ジェイクは少し前、ポンプ・噴霧器(ふんむき)メーカーのグラコの副社長を務める、友人のデイビッド・ロウに会いに行った。グラコは小さなスタートアップじゃない。創業90年を超える巨大多国籍企業だ。
 グラコは組立ラインで使う新しい工業用ポンプを開発中だった。デイビッドはスプリントによってプロジェクトのリスクを軽減できないかと考えた。なにしろ新しいポンプの設計と製造には、18か月と数百万ドルもかかるのだ。正しい軌道に乗っていると確信できればどんなに安心だろう。
 ジェイクは工業用組立ラインのことは何も知らなかったが、好奇心からエンジニアリングチームのミーティングに参加した。
「正直いうと」ジェイクは口をはさんだ。「工業用ポンプは、1週間でプロトタイプをつくってテストするには複雑すぎるような気がするよ」
 だがチームは引き下がらなかった。5日間しかないなら、ポンプの新機能を紹介するカタログのプロトタイプをつくって、営業訪問で試してみればいい。こんなテストでも、売れるかどうかという問題に答えを出せるはずだ。
 でもポンプ自体のテストはどうする? ここでもエンジニアが名案を出した。使いやすさをテストするには、新型ノズルを3Dプリンターで出力して、既存のポンプに装着したらどうだろう。設置具合をテストするには、近くの製造工場にケーブルとホースをもっていき、組立工の意見を聞けばいい。完璧なテストとはいいがたいが、ポンプの製造を開始する前に重大な問題に答えを出せるだろう。
 ジェイクはまちがっていた。工業用ポンプはスプリントに複雑すぎるということはなかった。エンジニアのチームは5日間という制約のもとで、専門知識を駆使してクリエイティブに考えた。課題をいくつかの重要な質問のかたちに落とし込むと、近道が現れた。

『SPRINT 最速仕事術』 第1章 より ジェイク・ナップ:著 櫻井祐子:訳 ダイヤモンド社:刊

 ナップさんは、大きすぎてスプリントで扱えないような問題はないと述べています。

 問題が大きければ大きいほど、集中して取り組むことができ、想定外の大きな成果を挙げることができるということですね。

 まず「プロトタイプ」をつくって感触を試してみる。
 この方法は、組織のプロジェクトだけでなく、個人の場合にも応用できますね。

こうして「メンバー」を決める


 ナップさんの経験上、スプリントの理想的な人数は7人以下が望ましいとのこと。

 具体的に誰を含めるべきか、以下のようにまとめています。

 メンバー選びはとても難しいから、虎の巻をつくってみた。ここに挙げた役割をすべて含める必要はないし、同じ役割の人が2、3人いてもいい。でもできるだけ多様なメンバーにするのを忘れずに。

決定者
 チームを代表して決定を下す人。会社のCEOや、プロジェクトの最高責任者がいいだろう。決定者が最初から最後までスプリントに参加できない場合は、節目ふしめで顔を出してもらい、常時参加できる代理の決定者を1人(か2人)任命してもらう。
 例:CEO、創業者、プロダクトマネジャー、デザイン責任者

財務の専門家
 お金がどこから来るのか(どこへ出て行くのか)を説明できる人。
 例:CEO、CFO、事業開発責任者

マーケティングの責任者
 会社のメッセージを考える人。
 例:CMO(最高マーケティング責任者)、マーケティング担当者、PR責任者、コミュニティマネジャー

カスタマー業務の専門家
 顧客と日常的に話す人。
 例:リサーチャー、営業担当者、カスタマーサポート担当者

技術/ロジスティクスの専門家
 会社が何を構築し、何を提供できるかを一番よく理解している人。
 例:CTO(最高技術責任者)、エンジニア

デザインの専門家
 製品をデザインする人。
 例:デザイナー、プロダクトマネジャー

「チーム」なんていうと安っぽく聞こえるが、スプリントチームは正真正銘のチームだ。なにしろ5日間肩を並べて働く仲間だ。金曜日には全員が課題と有望なソリューションをきっちり理解して、問題解決マシンの歯車になっている。この協力的雰囲気があるからこそ、スプリントは必ずしも意見が合わない人を含める絶好の機会になる。

『SPRINT 最速仕事術』 第2章 より ジェイク・ナップ:著 櫻井祐子:訳 ダイヤモンド社:刊

 できるだけ少ない人数で、しかもできるだけ多様な人材を含む。
 それが「スプリント」を成功させる秘訣です。

 単なる仲良しグループではだめです。
 さまざまなポジションの利害関係が一致しない人たちを集めて、真正面から議論を戦わせる。
 それが革新的な解決策を生みだします。

「中断」が生産性を急落させている


 スプリントでは、1つのプロジェクトについて、5日連続で同じ場所(会議室など)に閉じこもってワークを行います。

 隔離されているので、他から邪魔が入ることもありません。
 そのため、長時間集中して、目標まで突っ走ることができます。

 スプリントの1日はこんな感じだ(71ページの図、下の図1を参照)。
 スプリントは10時に始まり、途中1時間のランチをはさんで、17時に終わる。そう、スプリントの典型的な1日の仕事時間は、たった6時間だ。
 長く働けば成果があがるってものじゃない。
 適切な人材を一堂に集め、活動を体系化し、気が散るものをとり除けば、無理のないスケジュールで急速に前進できるのだ。
 スプリントには相当なエネルギーと集中力が必要だから、ストレスや疲労で参っていたら全力でとりくめない。
 開始時間を遅めの10時にすることで、1日が始まる前に全員がメールをチェックし、通常の業務の状況を確認できる。疲れ果てる前に1日を終えることで、1週間を通して高いエネルギーを保てる。
(中略)
 スプリントチームは月曜日から木曜日の午前10時から17時まで、同じ部屋ですごさなくてはならない。これはあたりまえだが重要なことだ。金曜日のテストは少し早い午前9時から始める。
 なぜ5日間なのか?
 僕らはもっと短いスプリントも試してみたが、疲弊したうえ、プロトタイプをつくってテストする時間がなかった。
 6週間や1か月、10日間のスプリントもやってみたが、1週間に比べて格段に高い成果があがったことは一度もなかった。
 週末をはさむと連続性が失われ、注意散漫と先延ばしが忍び寄ってきた。また仕事に時間をかければかけるほど、自分のアイデアに愛着を感じ、その分同僚や顧客から学ぼうという意欲が失せた。
 5日間という期間には、焦点を絞り、無駄な議論を避けることを促す緊迫感と、燃え尽きるまで働かなくてもプロトタイプをつくってテストできる余裕がある。またほとんどの企業が週5日制をとっているから、5日間のスプリントは既存のスケジュールに組み込みやすい。
 チームは短い午前休憩(11時半ごろ)と1時間のランチ(13時ころ)、短い午後休憩(15時半ころ)をとる。休憩は「ガス抜きバルブ」のようなもので、メンバーはその間脳を休め、ほかの仕事の進捗を確認できる。
 スプリントルールでは全員がスプリントの課題に全力で集中する。チーム全体がラップトップを閉じ、携帯電話をしまわなくてはならない。

『SPRINT 最速仕事術』 第3章 より ジェイク・ナップ:著 櫻井祐子:訳 ダイヤモンド社:刊

図1 スプリントの1日 第3章P71
図1.スプリントの1日

図2 スプリントは5日間 集中して行う 第3章P72
図2.スプリントは5日間、集中して行う
(『SPRINT 最速仕事術』 第3章より抜粋)

 気を散らすものがない場所で、目標を1点に絞り、期間を定めて全力疾走する。
 そのような状況で、人は最大の集中力を発揮します。

 スプリントは、まさにそのような環境を意図的につくり出しているといえます。

「長期目標」を定める


 スプリントでは、初日の月曜日はまるまる計画をことに費やします。
「適切な目標を定める」ことが、それだけ重要だということですね。

 月曜日は、「終わりから始める」というエクササイズから始まります。
 まずは、長期目標と、答えを出さなくてはならない難問を打ち出すことが大切です。

 話し合いの口火を切るには、こんな質問をするといい。
「僕らはなぜこのプロジェクトをやっているんだろう? いまから半年後、1年後、5年後にはどうなっていたいのか?」
 話し合いは30秒から30分程度ですませる。目標になかなか合意できないことも、目標がはっきりしないこともあるだろう。でもきちんと話し合って決めておこう。スピードを緩めるのは歯がゆいかもしれないが、明確な目標を立てたという満足感と自信は、1週間の支えになる。
 長期目標はあっさり決まることもある。ブルーボトルコーヒーの長期目標ははっきりしていた。「新規顧客によいコーヒーをオンラインで届けること」だ。
 もっと単純に、「オンラインストアの売上を伸ばすこと」をめざしてもよかったが、顧客体験の質を落としたくなかったし、既存のファンだけでなく新規顧客の開拓にも果敢(かかん)にとりくみたかった。そこでこうした抱負を盛り込んだ長期目標を立てた。
 長期目標を定めるために、簡単な議論が必要になることもある。サヴィオークがお届けするロボットのリレイによって成し遂げたい目標はいろいろあった。
 フロントスタッフの業務効率化をめざすべきだろうか? それとも、できるだけ多くのホテルにロボットを納入するのを目標にするべきだろうか?
 サヴィオークは顧客であるホテルに照準を合わせ、ホテルと同じ目標をめざすことにした。「ゲストによりよい体験を提供すること」だ。
 長期目標は、チーム方針と野心を反映したものでなくてはいけない。背伸びした目標でもかまわない。目標がどんなに大きくても、スプリントのプロセスを用いれば、よい出発点を決め、ゴールに着実に近づくことができる。
 長期目標が決まったら、ホワイトボードの一番上に書いておこう。そうすればスプリントの期間中灯台となって、全員と同じ方向に導いてくれる。

 さて、次は考え方をがらっと変えよう。長期目標を書くときは楽観的になって、バラ色の未来を思い描いた。今度は悲観的になる番だ。
 想像してほしい、いまから1年先に時計の針を進めたら、プロジェクトが大失敗に終わっていた。失敗の原因は何だろう? なぜ目標に到達できなかったのか?
 どんな目標にも危険な前提が潜んでいる。前提を検証せずにいると、失敗のリスクはどんどん高くなる。スプリントは、前提を洗い出し、それを質問のかたち、に落とし込み、答えを見つける絶好の機会なのだ。
 サヴィオークは、ロボットが顧客体験の向上につながるはずだと思っていた。だが賢明な彼らは、その前提がまちがっていて、ロボットが顧客を困らせ混乱させる未来も想像することができた。彼らはこれを3つの大きな質問のかたちにした。
「ロボットは支障なくお届けができるだろうか?」(答えはイエスだった)、「ゲストはロボットに困惑するだろうか?」(答えはノーだった。ただし反応の鈍いタッチスクリーンの評判はいまいちだった)、そして大胆な質問として、「ゲストはロボットに会うだけのためにホテルに泊まるだろうか?」(驚いたことに、イエスと答えた人たちがいた)。
 こうした質問を、「スプリントクエスチョン」と呼ぼう。
 スプリントクエスチョンは長期目標と同じで、スプリントの間中、ソリューションを考えたり決定を下したりする際の指針になる。チェックリストのようにしょっちゅう参照し、金曜日のテストが終わったらふり返ろう。

『SPRINT 最速仕事術』 第4章 より ジェイク・ナップ:著 櫻井祐子:訳 ダイヤモンド社:刊

 さまざまな立場の人たちが、短期間で意見を集約し、一定の成果を出す。
 そのためには、絶対にぶれない大きな目標が必要となります。

「長期目標」と「スプリントクエスチョン」を最初に決める。
 覚えておきたいですね。

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 今の世の中は、変化が激しく先が読みにくい時代です。
 そのなかでビジネスチャンスをモノにするために大切なこと。
 それは、「プロトタイプ」を早期に投入し、改善を重ねることです。

 時間をかけて100点満点の製品を作り上げても、それが利用者に受け入れられなければ、また、一からのスタートとなります。

 それよりも、完成度は60点で構わないから、できるだけはやく製品化して利用者の反応を見る。
 そして、クレームや意見を吸い上げ、ブラッシングして完成度を高めていく。

 グーグルは、まさにそのような「プロトタイプ方式」のやり方で成功を積み重ねてきました。

 数多くの実践で磨き上げられた「スプリント」という最速の仕事術。
 ぜひ、皆さんも、その効果のほどを自分の体験として確かめてみてください。


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