【書評】『シンプルに結果を出す人の 5W1H思考』(渡邉光太郎)

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 お薦めの本の紹介です。
 渡邉光太郎さんの『シンプルに結果を出す人の 5W1H思考』です。

 渡邉光太郎(わたなべ・こうたろう)さんは、人材開発・組織変革がご専門のビジネスコンサルタントです。

6人の正直な召し使い


「さまざまなフレームワークや思考法を学んだけれど、うまく活用できていない」
「フレームワークを使っても、いまひとつ仕事のパフォーマンスが上がらない」

 そんな悩めるビジネスパーソンを救うのが、「5W1H思考」です。

「いまさ5W1H!?」という声がすぐにでも聞こえてきそうです。
「5W1Hって小学校の国語の授業とか中1の英語の授業なんかで習ったあれ?」
「仕事で5W1Hが使えるのって、せいぜい“行動プラン”を作るときくらいでしょ?」

 確かに、こんな感じで軽く見られることも多いものです。実際、この魔法のツールを真に活用している人はほとんどいない、というのが私の実感です。
 しかし軽視することなかれ、この5W1Hをばらして、くずして、組み合わせて、使いこなすことによって、あなたの仕事のパフォーマンスは飛躍的に上がります。
 フレームワークをすでにいくつも使っている人は、本書に触れることで一層効果的にフレームワークを使える(パワーアップできる)ようになります。
 またフレームワークをまだ知らない人は、難しそうなフレームワークをたくさん覚えるよりも、いや、むしろ覚える前に本書を読んでいただくことで、広くて深い“頭の使い方”のベースができ、思考の生産性を格段に上げることができます。

 I keep six honest serving-men
(They taught me all I knew);
 Their names are What and Why and When
 And How and Where and Who.

 私には、6人の正直な召し使いがいる。
(私の知りたいことは何でも教えてくれた)
 彼らの名前は、What(何)、Why(なぜ)、When(いつ)、
 そして How(どうやって)、Where(どこ)、Who(誰)である。

 これは『ジャングル・ブック』で有名な英国のノーベル文学賞作家、キプリングが、『Just So Stories』(日本語訳で『なぜなぜ物語』)という著作の中の「The Elephant’s Child」という何でも知りたがる子ゾウの話の最後に添えた詩の一節です。

 山の向こうや、海の向こう、東の国、西の国・・・・・世界のどこにでも、つかわせば何でも知ることができるとされるWhat、Why、When、How、Where、Who。

 キプリングはこの「5W1H」を“6人の召し使い”と言っていますが、私は、ビジネスシーンに逗(とど)まらず、この世の森羅万象について、さまざまな示唆を与えてくれる“6賢人”だと確信しています。

『シンプルに結果を出す人の 5W1H思考』 はじめに より 渡邉光太郎:著 すばる舎:刊

 本書は、「5W1H」思考の価値を再認識し、それを使いこなすノウハウをまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「目的のそのまた目的」まで突き詰める


 表層的な目的ではなく、核心的な目的を追求する。
 本質を突き詰める思考を身につける。

 そのために必要なのが、「Big-Why」です。
 Big-Whyは、いつも認識しているレベルから一段、二段高いところにある、より上位の目的やゴール、真のニーズをとらえます。

 渡邊さんは、Whyを上へさかのぼっていった結果が“Big-Why”だと述べています。
 では、「上へさかのぼる」とはどういうことでしょうか。

 たとえば「痩(や)せたいから(Why)」「毎日朝晩3キロ走る(What)」という直接的な目的と手段は考えていても、「なぜ痩せたいのか?」そう思った本当の理由、つまり、痩せることによって真に実現したいこと(Big-Why)を常に明確に意識している人は少ないでしょう。
 また、スーパーなどで顧客が「惣菜を買う(What)」目的は、「調理を簡略化したいから(Why)」。ではもう一歩突っ込んで「何故調理を省きたいのか、手間を省くことで何を実現したいのか(Big-Why)?」まで考えている業者はほとんどいないのではないかと思います。
 しかし、より本質的な問題解決や幅広い発想を得るのであれば、ここからもう一段、二段上へとさかのぼる思考が必要なのです。
「痩せたい」の例で言えば、痩せることによって真に実現したいこと(Big-Why)にまでさかのぼって言語化してみる。
 たとえば、「心身ともに美しくなって、周囲から注目されたい」「生活習慣病を防ぎ、健康を維持したい」というように、はっきりと大目的を意識すれば、別の手段や合わせ技も視野に入ってきます。
 また、「惣菜」の例では、さらに「なぜ調理を省きたいのか?」「手間を省くことで何を実現したいのか?」と、問いを重ねてみるわけです。実際にはさまざまな理由があるでしょう。たとえば「キッチンを油で汚したくないから」「貴重な家族団欒(だんらん)で会話の時間を持ちたいから」「深夜に水回りや調理の騒音を防ぎたい」など。
 Big-Whyをさかのぼり、こうした高次のニーズにまで踏み込めれば、惣菜屋さんやスーパーはいろいろな差別化の手が打てます。現に、夜遅くまで利用可能な広いイートインスペースを設置するスーパーが出始めているのも、こうしたところまで突き詰めたからこそと言えるでしょう。
(中略)
 これは職場での日常の業務でも同じです。お客様から「◯◯が欲しい」(What)と言われたら、あるいは、上司から「◯◯という資料を作ってほしい」「◯◯について考えてほしい」(How)と「行為」を命じられたら、何の疑いもなく盲目的にそれに従うのではなく、「なぜそれが欲しいのか」「それによって何を達成したいのか」「何のためにそれを考えるのか」(Why)、その目的(ゴール)の「状態(ありかた)」がビジュアル化できるくらい明確なイメージを持ちたいのです。

『シンプルに結果を出す人の 5W1H思考』 CHAPTER1 より 渡邉光太郎:著 すばる舎:刊

図表1 2 一段 二段さかのぼって考えてみると シンプルに結果を出す人の 5W1H思考 CHAP1
図表1-2.一段、二段さかのぼって考えてみると・・・?
(『シンプルに結果を出す人の 5W1H思考』CHAPTER1 より抜粋)

 ただ、言われていることをそのままやっているだけでは、革新的なアイデアは浮かびません。

 何を(What)どのように(How)の前に、なぜ(Why)を考える。
 さらにその上にある「真の目的」(Big-Why)を追求する。

「上にさかのぼる」思考を身につけたいですね。

ブレイクスルーを生む「新価値創造の5Wハンドル」


 渡邊さんが、アイデア発想のヒントとして活用していただきたいと勧めているのが「新価値創造の5Wハンドル」です(下の図表2−6を参照)。

図表2−6 新価値創造のための 5Wハンドル シンプルに結果を出す人の 5W1H思考 CHAP2
図表2−6.新価値創造のための「5Wハンドル」
(『シンプルに結果を出す人の 5W1H思考』CHAPTER2 より抜粋)

 使いこなすためのコツは、真ん中にあるWhatのスイッチをいきなり押さないことです。

 渡邊さんは、4Wを軸に、従来のシチュエーションを考え、できるだけそれと反対方向に要素を振ってみる。その上で、あらためてWhatに戻ることが大切だと述べています。

 ここで一つ例を紹介します。What以外の「4W」による成功事例です。近年ブームになっている、ビールテイスト飲料(ノンアルコールビール)。皆さんの中にも、以前よりずっと、このカテゴリーを口にするようになった方が増えたのではないかと思います。最近は、単に糖質ゼロ、カロリーゼロ、プリン体ゼロだけではなく、脂肪や糖の吸収を抑えるなど、高機能の戦いになっています。
 さて、本格的なこのビールテイスト飲料市場に先鞭をつけたのが、2009年に発売された「キリンフリー」でした。アルコール0.00%と味の良さで「ビールを飲む(好きな)人が飲めないシーン(運転時など)」を標的に、一気に市場を広げました。
 しかし、その翌年(2010年)にサントリーが投入した「オールフリー」は、「キリンフリー」のシェアを奪取すると同時に、ビールテイスト飲料の市場をさらに広げ、4年連続トップシェアをキープしています。
 この2つを、5W1Hで比較すると、その理由がよくわかります。次の表を見てください(下の図表2−7を参照)。
 オールフリーは、もちろんWhat(製品)自体も工夫して、糖質ゼロ・カロリーゼロなどの要素を加え、よりヘルシーさを訴求していますが、それ以上に他の4Wの転換が勝因です。
 当該市場を広げたキリンフリーの後追い(模倣)でもそれなりのパイを奪うことは可能だったはずですが、サントリーはあえてそれまでのビール(ビールテイスト飲料)の呪縛から逃れ、思いっきり反対のことを行なったのです。
 キリンフリーが、「ビールを飲む(好きな)人」が「ビールを飲める場所」や「これまでビールを飲むとき」の、あくまでも“ビールの代替飲料”という位置づけなのに対し、オールフリーは、「ビールを飲まない人(でもビール味は大丈夫な主婦などの女性)」が、「これまではビールを飲まない場所やタイミング」で、「ゆったり、のほほんとする」ための、“まったく新しい飲料(ビールの代わりでない飲料)”という逆バリで、市場をさらに広げました。
 もちろん、What(製品の成分や味)で違いを出したり、How much(価格)を工夫したりするのもありですが、その前に大きく4Wで思考キャンバスを広げていくこと。これこそが、成功へのカギになるのです。

『シンプルに結果を出す人の 5W1H思考』 CHAPTER2 より 渡邉光太郎:著 すばる舎:刊

図表2−7 新ビールテイスト飲料2つを比較すると シンプルに結果を出す人の 5W1H思考 CHAP2
図表2−7.新ビールテイスト飲料2つを比較すると・・・?
(『シンプルに結果を出す人の 5W1H思考』CHAPTER2 より抜粋)

 ほんの少しの一工夫が、大ヒットを生み出す。
 サントリーの「オールフリー」は、その典型的な例といえますね。

 アイデアに決定的な”違い“を生み出す「新価値創造の5Wハンドル」。
 ぜひ、試してみたいですね。

説明上手は「Why-What-How」の3点セットを使う


 5W1Hは、コミュニケーションのツールとしても威力を発揮します。
 渡邊さんは、中でも“Why-What-Howの3点セット”は、コミュニケーションを前提とした思考の枠組みとして特に有効だと述べています。

(前略)あらゆる物事は、この3点セットで説明できるからです。
 CHPTER1で、ご紹介したBig-Why思考の図を思い出してください。WhyはWhatの目的やゴールに、WhatはWhyの手段に当たるということ述べましたが、同様に、WhatはHowの目的やゴールに、HowはWhatの具体的手段になるという相対的関係が成り立ちます。
 つまり、上方向、Whyの方向に行くほど本質的なものに、Howの方向に行くほど具体的なものになるということですね。

 日頃からあらゆる物事について、こうした階層構造でとらえることをクセにしていれば、たとえば次のようなさまざまな場面やテーマでも、スムーズに説明のロジックを組み立てることができます。
(中略)
 何かを説明するときは、いきなり細かいHowの話に突入してしまうのではなく、先述の3層構造の上から下に、Why⇒What⇒Howの順番で伝えることが基本です。
「どうもあなたの話はわかりにくい」と言われたり、「なんでそれが大事なの?」「この資料、要は何を言いたいの?」と、よく相手から尋ねられてしまう人は、この基本形を押さえてみましょう。
 実際の説明では、相手の状況や与えられた時間によって、WhatやHowから始めたほうがよい場合もありますが、いずれにせよ、この3層で自分の思考を整理・構造化するクセをつけることが大切です。

『シンプルに結果を出す人の 5W1H思考』 CHAPTER3 より 渡邉光太郎:著 すばる舎:刊

図表3 1 Why What Howの3層構造 シンプルに結果を出す人の 5W1H思考 CHAP3
図表3-1.Why-What-Howの3層構造
(『シンプルに結果を出す人の 5W1H思考』CHAPTER3 より抜粋)


図表3 2 Why What How の3点セット活用例 シンプルに結果を出す人の 5W1H思考 CHAP3
図表3-2.「Why-What-How」の3点セット活用例
(『シンプルに結果を出す人の 5W1H思考』CHAPTER3 より抜粋)

 説明やプレゼンに自信がない。
 そんな人は、ぜひ活用したいノウハウですね。

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 渡邊さんは、5W1Hレベルのシンプルにして強力な「問い」こそが、私たちに新しい発見や説得力を与えてくれるとおっしゃっています。

 情報技術(IT)の進歩は、とどまるところを知りません。
 世の中には、情報があふれかえり、社会は複雑化するばかりです。

 高度で複雑な文明社会で、物ごとの本質を失わずに生きる。
 そのためには、世の中の動きに惑わされず、シンプルさを忘れないことが重要です。

 5W1H思考は、複雑な問題をわかりやすくシンプルに分析してくれる、便利なツールです。

 まさに、情報化社会のジャングルを切り拓いて進む、“万能ナイフ”のような存在。
 ぜひ、私たちも手に入れて、さまざまな場面で活用したいものですね。


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