【書評】『一気に伸びる人の自己投資のキホン』(安井元康)
お薦めの本の紹介です。
安井元康さんの『会社では教えてもらえない 一気に伸びる人の自己投資のキホン』です。
安井元康(やすい・もとやす)さんは、会社経営者です。
02年に入社したMCJでは、同社のIPOD実務責任者として、東証マザーズ上場達成。
26歳でCFO(執行役員・経営企画室長)を務められています。
現在は、同社の取締役社長兼COO(最高執行責任者)としてご活躍中です。
「学歴」と「職歴」にとんでもない差ができた理由とは?
ごく普通の都立高校から、ごく普通の中堅大学に進学。
安井さんは、そんな「ごく普通の学歴」の持ち主です。
一方、20代で上場企業2社で役員、30代後半で上場企業の社長。
そんな「他を圧倒する職歴」を有しています。
なぜ、「学歴」と「職歴」に、ここまでの違いが出たのでしょうか。
安井さんは、その理由を、「自分は学歴で勝負できない」という現実を直視し、職歴で勝負しようと思い立った
ところから始まったと述べています。
つまり、自分が勝てる場所と勝てるやり方を常に探りながら、自分自身に投資をし続け、焦らずに地道に、そしてがむしゃらに努力を続けた
結果だということです。
自分が現在置かれた状況を受け入れ、将来を過去と現在の延長として見るのではなく、常に未来思考、つまり成功している自分からの逆算で、その時々にやるべき自己投資をしてきました。
自己投資は、決して今日明日に、すぐに効果の出るものではありません。
目先の結果にこだわるものではなく、5年後、10年後も第一線で活躍するための、本当の実力を身につけるのが目的です。
また、仕事や人生においては、誰にでも当てはまる成功の方程式なんてものは存在しません。そのため、自己投資は自分で考え、“テーラーメイド”の自己投資の対象と手段を選定する必要があるのです。
(中略)
私は、20代のときから、ひたすら自分に投資したことで、人生において多くの選択肢を得ることができました。
仕事を含む人生において、様々な選択肢を持てているか否かは、心の余裕や幸せの度合いに大きな影響を与えます。
「自分らしく」という言葉が世の中にはあふれています。
自分らしくあるためには、人生のあらゆる面において自己投資をし、自分にとっての現実的な選択肢を増やすという、投資期間が必要なのです。投資なくしてリターンなし。
仮に、現状に不満があるのであれば、適切な自己投資をすることで、年齢に関係なく人生を変えることができます。たとえ最初は小さな一歩だったとしても、地道に続けていくことで、必ず結果が出ます。誰にとっても、人生は一度きりです。
そして人生とは、幸せの追求をする旅なのです。
だからこそ、楽しく、生きがいを持って生きていきたいものです。
ぜひ、みなさんも、自分自身の可能性を最大まで広げる、自己投資の旅に乗り出していきましょう。『一気に伸びる人の自己投資のキホン』 はじめに より 安井元康:著 すばる舎:刊
本書は、自分が望むキャリアを歩むための、スキルアップに直結する「自己投資」のノウハウをまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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武器になる「自己投資」とは?
安井さんは、「自己投資」について、以下のように説明しています。
形はどうあれ、共通するのは、現時点で自分ができていないことを身につけたい、という願望です。
もっと仕事ができるようになりたい、もっといい体形になりたい・・・・・。
まだ出会えていない、将来の自分の姿の探求です。未知の可能性を広げるための様々な取り組みなのです。そして、それは、人生における選択肢を増やしてくれる行動です。
仕事ができるようになれば、職業上の選択肢も増えますし、体形も良くなれば着られる服の選択肢も増えるでしょう。がんばって勉強して、良い会社に入った。その先は安泰だ。
もはや、そういう時代ではありません。
何もせずにいたら、現状維持はできません。必ず後退します。
勉強して覚えたことも使わないと、徐々に忘れていってしまったり、がんばって筋トレして筋肉質な体をつくり上げても、さぼっていたら元より太ってしまったり・・・・・。
そういった話は身近にあふれていると思います。
仕事も人間関係も、いや人生を取り巻くすべてが同様です。
経営を取り巻く環境や、個々人の価値観の変化が速い今の時代においては、一度職や難関資格を得ても、その後も努力していかなければ振り落とされてしまうのです。海外の超有名ビジネススクールでMBAを過去に取得したが、今はぱっとせず「彼一応◯◯出身なんです」ということがネタになっている方に、何人も会ったことがあります。どんなに難しい資格保有者であっても、まったく仕事につながっていない人も多くいます。
やはりいったん何かを成し遂げたとしても、そこで立ち止まってしまえば、現状維持は困難です。かつての栄光で一生安泰なんてことはもはやないのです。『一気に伸びる人の自己投資のキホン』 第1章 より 安井元康:著 すばる舎:刊

図1.努力しないと現状維持すら難しい・・・
(『一気に伸びる人の自己投資のキホン』 第1章 より抜粋)
変化が激しく、スピードと競争を意識せざるを得ない、今の世の中。
生き残るには、常に時代の流れを読みつつ、時代の変化に応じて微調整を行い、自分自身を革新させ続ける
ことが重要です。
そのために欠かせないのが、「自己投資」だということですね。
安井さんは、自己投資とは、人生における最大の防衛手段でもあり、今の社会を生きる社会人の必修科目
だと述べています。
どこでも活躍できる「3つの基礎スキル」
仕事において実績を上げるために、具体的に意識すべきことは何でしょうか。
安井さんは、特に重要な「普遍的な能力」として、以下の3つを挙げています。
- インプット量
- 段取り力
- コミュニケーション力
この3つが、仕事で結果を出すために、どんな業界・会社でも、社会人として持っておくべき基本的なものです。
なかでも、もっとも意識しておきたいのが、インプットについてです。これは誰よりも多くの「質の高いインプット」をできるかどうかであり、残りのふたつは「アウトプット」をするうえで基本的資質です。
誰よりも多く、良質な知識・経験をインプットし、それを一番効率の良い方法でアウトプットする。この3つはそういった関係にあります。自己投資と聞くと、知識を頭に入れる「インプット」だけに注目が集まってしまいそうですが、前述の通り、難関資格や学位を取っても、活躍できていない人が多いのは、このインプットとアウトプットのバランスが崩れているからです。
たとえば、弁護士や公認会計士、MBA等の難関学位を持っていても、まったく活躍しておらず、その知識を活かせていない人は多くいます。
そのようなケースでは、資格取得などに注力してきたあまり、どのようにそれを活用するのかイメージできていないことが考えられます。具体的には、事前準備が不足している場合や、マーケティング視点がなく、同じ有資格者間における差別化まで頭が回っていないことが挙げられます。ほかに、基本のコミュニケーションや発信力に問題があるケースもあります。仕事ができる人というのは、常にインプットに対するアウトプットのイメージを持っています。
何のためのインプットなのか、そのイメージを持っていることで、インプットするときのポイントや優先箇所が見えてくるからです。たとえば、私は学生時代から数値スキルに関わる勉強をしてきた言いましたが、何も経理マンになろうとしたわけではありません。
あくまでも数値分析を経営に活かす、という視点から、会計でも管理会計に軸足を置いていました。仕事も、予算策定や予実分析といった、管理会計の知識や経営視点を養うことができるような分野から入っていったのです。
インプットとは、アウトプットをするために行うことですから、両者のバランスと手法の整合性が取れていることが非常に重要です。自己投資においても同様です。
アウトプットのイメージを常に明確に持っておくために、「実践×学習」という仕事に直結した形が大切なのです。
資格を取得して初めて、アウトプットをどうするかを考えるようでは、つかえるかどうかわからない武器を大枚はたいて買っているようなものです。
お金はまだしも、費やしてしまった時間だけは取り返しようがありません。時間的制約と格闘せざるを得ない社会人としては、致命的なミスとなりかねません。『一気に伸びる人の自己投資のキホン』 第2章 より 安井元康:著 すばる舎:刊

図2.仕事で結果を出すための3つのポイント
(『一気に伸びる人の自己投資のキホン』 第2章 より抜粋)
「将来役に立ちそうだから」
「貴重価値があるから」
そんな理由からだけで、難関資格の勉強を始めても、ムダに終わる可能性が高いです。
その資格・専門的知識を、どう仕事に活かしたいか。
それを常に、頭の中にイメージしながらインプットすることが大切です。
仕事と勉強に通ずる「守・破・離」
安井さんは、勉強を開始した初めのうちは、基礎となる足腰を鍛えることが目的で、スマートさよりも泥臭さのほうが重要
だと述べています。
「学問に王道はなし」
簡単に身につけようとか、考えないほうがいいということですね。
「寝ながら英会話」や「サルでもわかる◯◯」という類の、ショートカット系の参考書等で勉強して、その分野のプロになった人を私は知りません。
また、戦略コンサル会社にやっとのことで入社したものの、簿記や経済学、統計学といった基本を学ぶことを疎かにしている人も多くいました。
見よう見真似だけでコンサル気取りをしていたものの、やはり基本がなっていなかったがために、アウトプットに行き詰まり、ほとんどの人はあえなく退職することになってしまいました。資格や肩書だけでなく、その道のプロとして活躍していくのであれば、基本を疎かにしてはなりません。
修行期間なしに、いきなり本番で結果を出すのはあり得ないということです。仕事においても、最初はとにかく上司や先輩のやり方を徹底的に繰り返し、マスターする。
それを完璧にこなしていけば、自ずと改善点などが見えてきます。やがて、“自分フレーバー”を発揮することができるようになるのです。
武道で言う「守破離」ですね。まずは、基本型を上司や師匠からきちんと学び、型を「守る」ことから始める(基本部分の構築)。
そのうちに、型をベースとしつつも、自分なりのフレーバーを加味して、固まった基本型を「破る」ことで、自己流に昇華させる(理解して自己流に転換)。
そして、最後に形式そのものから「離れる」ことで、物事を極める(理解を超えて、知恵のレベルにまで持っていく)。
何事も、基本がしっかりしてないうちに、自己流や自分なりのアレンジはあり得ません。本当の知恵として自分のものにすることは困難でしょう。
最初のうちに、どれくらい詰め込む知識の物量を増やせるかが、将来の自分の土台となります。
躊躇せず遠回りして、どんどん頭に基礎栄養素を叩き込むことを意識しましょう。『一気に伸びる人の自己投資のキホン』 第3章 より 安井元康:著 すばる舎:刊

図3.仕事と勉強に通ずる「守破離」
(『一気に伸びる人の自己投資のキホン』 第3章 より抜粋)
どんなスキルにも、守るべき「型」があります。
当然、仕事においても、同じですね。
守るべき「型」を無視して、我流で勉強する。
それは、基礎工事をせずに、高いビルを建てようとするのと同じです。
何を学ぶにも、まずは徹底的に真似をする。
「自分らしさ」を出すのは、それが身についてからです。
人脈は、自分の魅力度を映す「鏡」
ビジネスにおいて、「役に立つ人脈」を作るには、どうすればいいでしょうか。
安井さんは、活きた人脈をつくる上では、自分自身が価値のある人間になることが一番の近道
だと述べています。
社内はもちろん、業界内でも名の知れた存在になることを目指すべきです。お互いにとってWIN―WINの関係ほど強固な関係はありませんし、何よりもお互いがお互いに価値を感じるからこそ、矢印が双方向の活きた人脈になりうるのです。
解決できる問題が増えれば増えるほど、自分の問題を解決してくれる、活きた人脈である素晴らしいアドバイザーに出会うことができます。
素晴らしい人に出会いたい、素敵な人と一緒に仕事をしたい。
そう考えてしまいがちです。
しかし、その前に私たちは皆、自分自身に問うべきなのです。
「自分は素晴らしい人なのか」と。
自分自身が他人にとって魅力的であればあるほど、魅力的な人が周りに集まってきます。
つまり、人脈とは突き詰めると、自分自身の魅力度を映す鏡なのです。
決して、魅力のない自分を防御する盾ではありません。一方的な片思いの関係では、勝手に片方が相手に価値を感じている状態ですから、相手にとっては何のメリットもないのです。わざわざ時間を使って、一方的な「援助」をしてもらえる可能性は非常に低い。
これでは、具体的解決につながらないのはおろか、再度会えるかどうかすら怪しいものです。このような関係を、ビジネス上の人脈とは言えないのは明白でしょう。
素敵な人に出会いたければ、まずは自分自身が素敵な人間になる。素敵な人間とは、小さくても良いので、相手にとって何かしらの価値を提供できる人間のことです。そのために、第3章で述べたように、好きなことや得意なことを突き詰めて、何かしらの分野で突出し、自分のアイデンティティの核を確立する。
特徴のない「誰か」から、印象に残る「あの人」になるのが一番です。
これが人間関係の法則であり、素晴らしい人脈形成のための大前提です。『一気に伸びる人の自己投資のキホン』 第4章 より 安井元康:著 すばる舎:刊
人間関係は、ある意味「ギブ・アンド・テイク」です。
自分が、一緒にいてメリットを感じない人と仲良くなろうとは思いませんね。
相手に何かを求める。
それより、まず、自分自身が価値ある人となる。
効果的な人脈形成の秘訣であり、自己投資は、そのためにやるべきことです。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
最初から、自分のやりたいことができる会社などありません。
安井さんは、やりたいことができる会社には、自分自身でしていく。仕事をおもしろいものに、自分自身でしていく。そういった気概で仕事に向き合わないことには、おもしろい仕事になんて出会え
ないとおっしゃっています。
自分のやりたい仕事を任されるには、仕事で結果を残すしかありません。
結果を残したうえで、自分の得意な仕事や好きな仕事を周知させることが、一番の近道。
自己投資は、そのためにすべきです。
それに、自己投資なしに、自分の強みを磨くことはできません。
これからの時代のビジネスパーソンに必須の、“戦略的”自己投資術。
私たちも、ぜひ身につけたいですね。
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