【書評】『薬を使わずに胃を強くする方法』(小林びんせい)
お薦めの本の紹介です。
小林びんせいさんの『薬を使わずに胃を強くする方法: 寿命の太さは「お腹の強さ」で決まる!』です。
小林びんせい(こばやし・びんせい)さんは、ナチュロパシー(自然療法)がご専門の医師です。
ナチュロパシーは、ホメオパシー、薬草学、鍼灸などの自然療法に、西洋医学や中国伝統医学の知見を付加し、患者に最適の手段で心身の健康を取り戻す支援をする療法
です。
「胃が強い人」が長生きする!
小林さんは、肉や魚を多くとる食事こそ「健康寿命」(健康上の問題がなく生活できる期間)を延ばすためには欠かせない
と述べています。
しかし、中高年を過ぎて高齢になるほど、肉を苦手に感じる人が増えてきます。
その原因は、「胃の健康状態」にあります。
健康に過ごすためには、体を作り、エネルギー源となる栄養素を毎日の食事から摂取する必要があります。
ただし、誰もが当たり前のように食べている食事も、適切に消化吸収されなければ、体内に取り入れることはできません。食べていれば体内に吸収されると思いがちですが、口に入りさえすれば、すべてが栄養になると思ったら大間違いなのです!ただでさえ栄養不足になりがちな現代の食生活で、消化吸収まで低下していれば不健康になるのも仕方がありません。食べていても栄養を適切に吸収できなければ、体に栄養分が行き届かず、健康を維持できなくなります。不調が不調を呼び、ますます栄養を取り入れる力が低下してしまいます。
こうした不調を招かないためにも、注目したいのが「胃」なのです。
ここ数年、腸内環境を整えることが話題になっていますが、人間の消化器官は腸だけではありません。口から入った後、腸に届く前に最初の大きな消化を促す「胃の状態」に注目する必要があるのです。『薬を使わずに胃を強くする方法』 第1章 より 小林びんせい:著 三笠書房:刊
本書は、薬に頼ることなく、胃を強くするための方法をまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
[ad#kiji-naka-1]
胃にしかできない、大切な働き
胃のいちばん大切な役割は、殺菌とタンパク質を消化する
ことです。
胃は、食べたものに含まれるウイルスなどを胃酸で殺菌し、消化されにくいタンパク質をペプシンという消化酵素を使ってドロドロにして、腸での吸収を助けます。
胃酸は、胃の中を酸性に保つたいへん強力な酸です。食物を消化するだけでなく、食物とともに体内に入ってきた菌を殺す働きをします。
胃酸は「殺菌」のほかに、「タンパク質分解酵素の活性化」「ホルモンへの刺激」「肝臓への刺激」「ビタミン・ミネラルの吸収」などに関与します。「アレルギーの原因はタンパク質」と、よくいわれますね。
胃が適切に働かないと、未消化のタンパク質はアレルギーを起こすだけでなく腸内で異常発酵し、発がん性のある物質(ニトロソアミンなど)を生成させます。その結果、がんや心臓発作まで起きるのです。
それでは、胃弱な人はタンパク質の摂取を避けたほうがいいのでしょうか。
それは正しくありません。肉や魚、卵にたくさん含まれるタンパク質は細胞の新陳代謝に欠かせないもので、免疫機能を作る材料にもなります。タンパク質が不足すれば体は機能障害におちいってしまうのです。さて、胃酸の分泌には、食行動が大きく影響します。
まず、食べ物を口に入れたときに出る唾液によって胃酸分泌を促す刺激が起こります。すると、胃酸が出たことで肝臓やすい臓が刺激され、胆汁(たんじゅう)やすい液が作られます。胆汁やすい液は糖質やタンパク質、脂質を分解する働きをします。そして、腸内を流れるすい液は消化酵素とpH(水素イオン指数)を整え、腸は栄養を吸収する・・・・・というように消化吸収を促すために、内臓は連動して動いていきます。
胃の働きは、その要となるのです。どんなにバランスのよい食事を意識してとっても、胃が弱ければ体内への吸収につながらず、そのまま排泄されるだけ。結果的に、食べていても栄養不良を招きます。
肝臓が担当する解毒機能においても、タンパク質が分解されてできるアミノ酸が重要な解毒物質となります。胃酸不足によりタンパク質が吸収されないと、解毒機能まで低下してしまうのです。
シジミが二日酔いに効くのも、シジミに含まれるタンパク質(アミノ酸)の一種、メチオニンが働くからです。つまりアミノ酸が、解毒の働きをサポートするわけです。
このように、体に必要な栄養が不足すれば解毒機能にも影響し病気になりやすく、回復も遅れがちになります。『薬を使わずに胃を強くする方法』 第1章 より 小林びんせい:著 三笠書房:刊
食べたものを、消化・吸収する器官は「腸」です。
しかし、腸でどれだけ栄養が吸収できるかは、その前段階である「胃」の働きにかかっています。
胃と腸。
どちらの機能が弱まっても、健康的な生活は送れないということです。
「瞳」からわかる、胃酸分泌チェック法
胃の働きを大きく左右する要素のひとつが、「胃酸」です。
胃酸の出る量が少ないと、胃の働きも弱まり、動物性タンパク質をとっても消化できずに不調が起こり
ます。
実際に、胃酸がどれくらい出ているのか、自分で確かめるにはどうすればいいのか。
小林さんは、その方法のひとつとして、「瞳(瞳孔)の様子から確認する方法」を挙げています。
図表5.瞳から胃の状態がわかる
(『薬を使わずに胃を強くする方法』 第1章 より抜粋)
人はストレスを感じているとき、交感神経が強く働いて瞳が大きくなります。夜になれば副交感神経が働いて瞳は小さくなります。このように自律神経の働きによって瞳の大きさは変わります。大きさ以外にも、微細な模様の変化としても現れます。
瞳の外側で、瞳の開き具合を調整する筋肉を虹彩(こうさい)といいます。
この虹彩をよく見ると、瞳から3分の1ほど離れたところにフリルのようなリングがあるがわかるはずです。これを小虹彩輪(しょうこうさいりん)といい、クリスマスにドアに飾るクリスマスリースに似ているので、「リース」とも呼ばれます。
虹彩の様子で健康状態を観察するイリドロジー(虹彩学)では、フリルのような線で覆われた小虹彩輪のエリアを、「ニュートリゾーン」と呼びます。
このニュートリゾーンには、胃の状態が映し出されます。小虹彩輪の内側と外側の色は本来同じなのですが、もし上の図表5の左側のように、内側が明るい場合は、胃への刺激が強すぎて胃酸過多の可能性があります。
反対に、図表5の右側のように内側のほうが暗い色の場合は、胃酸の出が悪かったり、胃への神経の伝達が悪かったりします。
実際、低活発の胃の人の瞳は、右側のように中央が暗く見えます。
私が右側のような瞳を持つ人の内視鏡画像を確認したところ、胃壁のひだがありませんでした。つまり、胃への神経伝達がかなり低下していたのです。
このときの胃酸の量は正常でしたが、話を聞くかぎり、ふだんは胃酸の分泌も少なかったようです。食べることが好きで食事はしっかりとっているものの、胃の状態が悪いことから栄養分が吸収できなかったのか、栄養失調による免疫低下が起きていました。
こうしたケースでは、まず栄養を充実させることが先決です。胃の状態の回復を待つうちに、さらに栄養状態が悪化する可能性があるため、サプリメントなどを用いて栄養状態を早く回復させることが重要です。胃酸の分泌が適切かどうかは、瞳の状態を確認するとともに食べた後に胃がもたれる、膨満感がある、胸やけがするなどの症状や、食事中に酸っぱいものを食べると気分がよくなるか悪くなるか、などからも判断できます。気分がよくなると、胃酸の分泌は足りません。胃酸が逆流したとき、りんご酢を食前に口に含んでもらい、食後の状態を見るのも簡単な胃酸の検査方法です。
『薬を使わずに胃を強くする方法』 第1章 より 小林びんせい:著 三笠書房:刊
胃酸の量は、多すぎても、少なすぎても、よくありません。
自分の胃酸分泌状態を把握できれば、対処のしようもあります。
「瞳」を鏡で確認するだけでできる「胃酸分泌チェック法」。
ぜひ、皆さんも試してみてください。
胃が強くなる「牡蠣の食べ方」
胃弱の人は、亜鉛を適切に吸収できていない
こともよくあります。
食材の中でも亜鉛が多いのが牡蠣(かき)です。ただし、牡蠣はとり方によっては亜鉛をまったく吸収できません。
レモンとの相性がいいので、牡蠣にレモンをかけて食べると亜鉛を吸収しやすいのですが、グラタンのように牛乳を使った料理にすると吸収されません。牛乳に含まれるカルシウムが、亜鉛の吸収を邪魔してしまうからです。
牡蠣の味がミルキーでおいしいから好きという人もいるようですが、実はそういう人は亜鉛不足の傾向にあります。
ミネラルは、もともとあまり口においしいものではないのです。そのため、体に十分な亜鉛がある人は生牡蠣を苦く感じます。生牡蠣がおいしいと感じるのは、体が亜鉛不足ということです。
(中略)
また、亜鉛は遺伝子にも強く影響しています。
染色体は分裂するときに折りたたんだ糸をほどき、転写すると再び巻き戻します。このとき使う器官にジンクフィンガー(亜鉛の指)という部品があります。
これをつけたり離したりすることで、長い染色体を折りたたむのです。つまり、亜鉛がないと細胞分裂がうまくいきません。
風邪やアレルギーで鼻水が出たり、のどが痛かったりするときも、亜鉛のサプリメントの大量投与で症状がやわらぐことがあります。
亜鉛が不足していると、わずかな刺激で体内にある大量のヒスタミンが放出されてしまい、大きな炎症が起きるのです。さらには毛髪の問題にも関係します。
慢性的なストレスは、ホルモン分泌にかかわる副腎を疲労させ(副腎疲労)、亜鉛、マグネシウム、カルシウム不足を引き起こします。その結果、甲状腺機能を低下させることになりますが、甲状腺機能低下の症状のひとつに抜け毛があります。
インドのある研究では、甲状腺ホルモンは亜鉛吸収に大きな役割を果たしており、亜鉛をサプリメントで補わないと脱毛は治らないといいます。
そのほか、腸の問題としてリーキーガット症候群がありますが、これも亜鉛で改善したという報告があります。
このような亜鉛不足は低胃酸だけでなく、条件によっては多くの人に起こります。
早産や低体重児、母乳や食べ物中に亜鉛が少なかった幼児、妊娠中や授乳中の女性、静脈注射を受けている患者、食欲減退や過食症など栄養不良の人、重症や慢性の下痢をしている人、慢性腎疾患のある人、鎌状赤血球のある人、貧血の人、抗生物質や骨粗しょう症などでビスホスホネートを含む薬を服用している人、高齢者、厳格な菜食主義の人、カルシウムのサプリメントをとっている人などには、亜鉛不足の傾向があります。
すでに述べたように、亜鉛を補うための食べ物はなんといっても牡蠣です。牡蠣は100g中に70mgと大量の亜鉛を含んでいます。2つも食べれば、1日に必要な亜鉛の摂取量を補えます。牛肉やナッツにも多く含まれています。
70mgだと、1日の必要量を超えると心配する人もいますが、亜鉛が足りていれば、牡蠣をまずく感じて量を食べられなくなるものです。『薬を使わずに胃を強くする方法』 第2章 より 小林びんせい:著 三笠書房:刊
ミネラルの中でも、とくに重要なもののひとつである、亜鉛。
普段の食生活で、不足しがちな栄養素でもあります。
牡蠣や牛肉、それにナッツ類。
意識して、食べるようにしたいですね。
何度もかめば、消化力も上がる!
胃を強くする習慣のひとつが「食事のときにたくさんかむこと」です。
ひたすらかみ続けると、それに刺激されて胃酸が出ます。胃酸がいっぱい出ると、胃酸に刺激され胆汁もたくさん出ます。これでおもな消化液が十分に分泌されます。
長い時間をかけてかみ続けると、食べ物の味がなくなるのでおいしく感じませんが、私の知人でこの方法だけで20kgもやせた人がいます。この「やせた」というのは、「余分な脂肪が落ちた」という意味です。
唾液には水分やムチン質、酵素などが含まれています。よくかんで食べると唾液が大量に出ます。1日1.5Lほどの唾液が出るそうですが、このうちの99.5%は水分だといいます。唾液のなかにはアミラーゼも含まれています。アミラーゼは大根にも含まれる消化酵素で、糖質を分解します。口の中で糖質をしっかり分解しておくと、胃や小腸でガスが発生しにくくなり、逆流などを防いでくれます。大根には同様の消化酵素が含まれているので、ほかの食品と一緒に食べると効果が上がります。
かむことには、食べたものを小さくかみ砕く役割もあります。
タンパク質は胃に入ってから消化されるのに時間がかかります。そこで口と胃で、まずかたまりをほぐすのが先決です。口の中でかむことで物理的にほぐし、胃の中では塩酸によって化学的にほぐすわけです。
胃での滞留時間は食べ物の大きさなどで決まりますが、胃の内容物の半分が空になるのに2.5〜3時間、全部が空になるのに4〜5時間程度です。
よくかんで小さく分解された食べ物は、胃での消化時間が早くなります。
胃に入ってからも唾液に刺激され、胃酸も大量に出ます。胃酸が大量に出るとそれに刺激されて、すい臓ではすい液、肝臓では胆汁がいっぱい作られるようになります。すると、この後の腸ではぜん動運動が自動的に始まっていきます。
このような一連の消化機能を高める最初のポイントがそしゃくなのです。『薬を使わずに胃を強くする方法』 第3章 より 小林びんせい:著 三笠書房:刊
では、一口で何回ぐらい、かめばいいのか。
小林さんは、年の数くらいかんでください
とアドバイスしています。
「最近、胃が弱いな」
そう自覚している人は、ぜひ実践してみましょう。
[ad#kiji-shita-1]
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
小林さんは、日本人にいま、もっとも欠けているのは栄養
だと強調されています。
物質的に恵まれ、食べたいものを、食べたいときに食べられる。
そんな日本で、栄養失調が深刻な問題になっているのは、驚くべき事実ですね。
やせているから良い、太っているから悪い。
そう単純には言い切れないのが、健康管理の難しいところです。
胃は、植物でいえば、「根っこ」の部分に当たります。
栄養のあるものを食べるのはもちろん、それを消化し、吸収しやすいものに変える力が、健康維持には不可欠です。
本書を読んで、胃を強くし、いつまでも快適で豊かな生活をエンジョイしたいですね。
(←気に入ってもらえたら、左のボタンを押して頂けると嬉しいです)
【書評】『ピッと宇宙エネルギーにつながる方法』(リリー・ウィステリア) 【書評】『90秒にかけた男』(高田明、木ノ内敏久)