【書評】『一生、毒をためない体のつくり方』(岡本裕)
お薦めの本の紹介です。
岡本裕先生の『一生、毒をためない体のつくり方』です。
岡本裕(おかもと・ゆたか)先生は、医師です。
以前は悪性腫瘍(がん)の臨床、研究に携わられていましたが、従来の医療・医学の考え方と手法に疑問と限界を感じて臨床医をお辞めになっています。 その後、「21世紀の医療・医学を考える会」を仲間ととも発足させるなど、現在に至るまで、「薬に頼らない医療・治療法」の普及に尽力されています。
「体内の毒が自然となくなる」体をつくろう
日々の食生活や生活習慣にも「病気になりやすい体」を招く「毒」が潜んでいます。
岡本先生は、それらの「毒」に対抗するためには、とにかく「健康度を高める」習慣をつけること
だと強調します。
短絡的に善悪を決めつけると本質を見誤ることが多いように、短絡的に「毒か薬か」を決めつけてしまうと、やはり物の本質を見誤り、ややもすれば、かえって健康を脅かしてしまう恐れすらあるのです。「毒か薬か」の見極めは、たいていが微妙な境界線のもとに成り立つものであり、一つのものが「毒と薬の両面」を備えていることも少なくありません。同様に、それだけ摂取していれば万事OKというような「絶対的な薬」もありません。 そんななかで、私たちがいつまでも元気に働き、よく遊び、存分に長生きするためにできることは何でしょう。毒を体の外へ出そうとすることではなく、どうあっても毒とともにあらねばならない「肉体」のほうを、この上なく丈夫にしていくことではないでしょうか。「防御は最大の攻撃」とも言います。 とにもかくにも、免疫力を高め、健康度を上げる。そうしているうちに体内の毒は自ずと弱まっていきます。私の言う「毒をためない体」とは、そうしてつくられていくものだということを、最初にはっきり申し上げておきます。
『一生、毒をためない体のつくり方』 1章 より 岡本裕:著 三笠書房:刊
世の中には、「つき合い方」次第で、体の「毒」にも「薬」にもなるものであふれています。
大切なのは、それらの「毒になる境界線」「薬になる境界線」を知り、その知恵を日常生活に取り入れることです。
本書は、体を自然な状態に戻すことで「健康度の高い、強い体」をつくり、体内の毒が自ずと弱まるように導くための実践的な知恵が詰まった一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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糖は一定量を超えると「猛毒」になる
頭が疲れたときには、「糖分補給が効果的である」といわれます。
糖が、脳のエネルギー源であることは事実です。
しかし、摂り過ぎると体にとってかなりの毒
となります。
糖が、脳のエネルギー源であることは事実です。しかしだからといって、糖をとればとるほど、脳が活性化するかといえば、それは大きな間違いです。 簡単に言いますと、糖が体内にありすぎると、いろいろなたんぱく質にくっついていきます。これを「糖化」と言います。この糖化には、一つ、非常にやっかいな特徴があるのです。 普通、体内では、酵素が働いてさまざまな体に必要な化学反応を起こします。たとえばたんぱく質をアミノ酸に変えたり、いずれ尿となって出るアンモニアに変えたりなど、酵素の働きによって、体に必要な物質がつくられ、また不要な物質が体外に排出されているのです。これを「酵素反応」と言います。(中略) ところが、糖化が起こると、糖がたんぱく質にくっつき、化学反応が止まってしまいます。しかも反応は不可逆的で、糖がくっついたたんぱく質は何の役にも立たなくなるうえに、そのまま排出されることなく溜まっていくのです。 この溜まっていく物質のことをAGEs(Advuxanced Glycation End Products:最終糖化生成物)と言い、蓄積されるほどに、さまざまな健康障害を招きます。 たとえば、血管のなかでAGEsが溜まると、、血管の壁が硬くもろくなって動脈硬化の原因になったりしますし、そのAGEsを処理しようと白血球が集まってきてかたまりになると心筋梗塞・脳梗塞の原因にもなりかねません。 またAGEsが目に溜まれば白内障に、骨なら骨粗しょう症、脳ならアルツハイマー病に・・・・・と、さまざまな健康障害を引き起こします。そのほかにも、しみ、しわ、歯周病から、ひいてはがんの原因になることもあるという、とてもやっかいな代物なのです。
『一生、毒をためない体のつくり方』 2章 より 岡本裕:著 三笠書房:刊
糖分の摂り過ぎは、インスリンを過剰分泌させるため、糖尿病の原因になります。
それ以外にも、糖そのものも、体内の化学反応に悪影響を及ぼすということですね。
「甘い誘惑」には、くれぐれも気をつけなくてはいけません。
「ミトコンドリア」の重要性と「活性酸素」
人間が生きていくために欠かせない物質である酸素にも「毒」の側面があります。
それは「活性酸素」と呼ばれるものです。
活性酸素とは、酸素からエネルギーを生む体内の反応の際に生まれるものです。
過剰な活性酸素は、さまざまな慢性病や老化の大きな原因となります。
体内の活性酸素を減らす。
そのためには、活性酸素の素である摂取カロリーを減らすこと。
つまり、「節食」が一番です。
一般的に、私たちは、およそ30%の余計にカロリーを摂取しています。
そのため、今までの3割減程度の節食が好ましいとのこと。
活性酸素は、細胞内の「ミトコンドリア」と呼ばれる生命体が、酸素とブドウ糖からエネルギーを生み出す際に発生します。
ミトコンドリアには、「アポトーシス」という重要な働きがあります。
アポトーシスというのは、手際よく、不要な細胞が消えてなくなることです。 たとえば、みなさんが風邪をひいて熱を出しているとしましょう。風邪のほとんどの原因となっているのはウイルスです。ウイルスに感染した細胞は、ミトコンドリアの指令が出てアポトーシス、つまり壊れて死んでしまいます。 もちろんウイルスもろともに壊れて消えてしまいますので、ウイルスの増殖も防げて、ほかの元気な細胞にウイルスが伝染していくこともなく、風邪は治癒に向かいます。というような具合に、ミトコンドリアは私たちの体が、元気で長く維持できるよう、必要のない細胞をすみやかに処理してくれているのです。 ミトコンドリアが活躍するのは、風邪を治すところだけではありません。がんの抑制においても、ミトコンドリアの働きは非常に有用なのです。 たとえばミトコンドリアのあり方によって、がんの転移が大きく左右されます。また、転移だけでなく、がんの発生そのものにも深く関わっているのではないか、とも言われています。 私たちの体のなかでは、がん細胞が、1日に数千個の単位で発生していると言われています。もちろんリンパ球などの免疫細胞が、発生したがん細胞をやっつけてくれるのですが、そもそもちゃんとミトコンドリアがうまく働いてくれていれば、アポトーシスが働き、不要な細胞ががん化せずに、すみやかに消えてなくなってしまうのです。
『一生、毒をためない体のつくり方』 3章 より 岡本裕:著 三笠書房:刊
健康のためには、細胞内のミトコンドリアを増やし、活性化させることが重要です。
ミトコンドリアは、「活性酸素に非常に弱い」という性質を持っています。
やはり、「腹八分目」が健康に一番ということなります。
抗生物質は、基本的に「毒」と思う
風邪を引いたり、少し体調が優れない。
それだけで、すぐに風邪薬などの抗生物質を服用する人は多いです。
岡本先生は、それについて疑問を投げかけます。
抗生物質は、風邪の原因となっている菌とともに、もともと腸などに存在する常在菌までも殺してしまうからです。
腸のなかにいてくれる常在菌のおかげで、私たちは効率よく栄養を吸収することができ、悪いものは選別して排出することができます。さらには、常在菌のおかげで、私たちの免疫力、抵抗力は保たれているのです。 それなのに、ちょっと風邪をひいたからといって、安易に抗生物質を飲んでしまう。もっとも風邪ごときに抗生物質を処方する医者も医者なのですが、飲むほうも飲むほうです。ほんのちょっとしたことで医者にかかり、ありがたく薬を飲むという悪い習慣が私たち日本人に根強く残っているのは、本当に由々しきことです。 抗生物質は、私たちと共生している細菌たちにとって、きわめて悪質な天敵です。消化管内の常在菌のほとんどは、抗生物質によって死滅してしまいます。これは彼らとの共生の約束を無視した、私たちのルール違反なのです。
『一生、毒をためない体のつくり方』 4章 より 岡本裕:著 三笠書房:刊
現代社会は、「滅菌・殺菌」を奨める風潮があります。
しかし、「過ぎたるはなお及ばざるがごとし」。
過度な「滅菌・殺菌」は、人間が元々持っている抵抗力を弱めてしまいます。
適度な衛生状態を心掛けたいものです。
一生「毒をためない」心もつくろう
岡本先生は、メンタル面の「毒」についても言及しています。
適度な「ストレス」は、健康を保つ上で有効です。
過剰なストレスは、言うまでもなく「毒」になります。
ストレス負荷を極力少なくする。
そのための工夫として、「いい人にならない」を挙げています。
具体的には、自分の本音をしっかりと主張することだ、と述べています。
NOはNOと最初から自己主張しておかないと、「いい人」のレッテルを貼られてしまいます。そして、いったんいい人のレッテルが貼られてしまうと、いろんな頼みごと、悩みごと、トラブルが集中しはじめます。なぜなら、いい人は我慢のキャパシティが大きい人と見られ、水が高いところから低いところへ流れるように、いくらでも「やっかいなこと」が流れてくるのです。 いい人は、やっかいなことを押しつけられやすい。これは人間の絶対法則と言ってもいいでしょう。 ですから、いい人を廃業し、ストレスを弾き飛ばしてしまえばいいのです。そうすればストレス負荷がゼロにはならないでしょうが、かなり弾き飛ばされてしまいますので、自分の負担分は相当少なくなるはずです。
『一生、毒をためない体のつくり方』 5章 より 岡本裕:著 三笠書房:刊
「嫌なことは嫌だ」と主張するのは、慣れない人にとっては勇気のいることです。
一時的に、より大きなストレスを抱え込むかもしれません。
しかし、それよりも問題なのは、「いい人」を続けて小さなストレスを蓄積させてしまうことです。
そのほうが、長い目で見たとき、はるかに有害です。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
体にとって、これが「毒」だ。
それがはっきりわかるなら、体内に毒をためないことは、それほど難しくはありません。
しかし、本書を読むと、「少量ならば薬、過剰になると毒」になるものがほとんどです。
規則正しい生活、少なめの食事、適度な運動、精神的な安定。
それらが、さまざまな「毒」から自分の体を守るための、最も有効な方法だと改めて実感します。
「毒」の素になるものを、身の周りから遠ざけることはできません。
だからこそ、日頃から、体の中に「毒」を増やさない、ためない生活習慣を身につけていきたいですね。
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