【書評】『「疲れない体」と「折れない心」のつくり方』(葛西紀明)

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 お薦めの本の紹介です。
 葛西紀明さんの『40歳を過ぎて最高の成果を出せる「疲れない体」と「折れない心」のつくり方』です。

 葛西紀明(かさい・のりあき)さんは、ノルディックスキー・ジャンプの選手です。
 2014年のソチ・オリンピックの個人銀メダリストです。
 40歳を過ぎてなお、世界の第一線でご活躍され、「レジェンド」として国内外から、多くの尊敬を集められています。

あなたは「年齢にふさわしい努力」をしていますか?


 一般的に、人間の体は20代をピークに衰えはじめる、といわれています。

 とくに、30代半ばを過ぎると、肉体面でも、精神面でも、無理がきかなくなってきます。
 20代までのやり方を続けていると、ほとんどの人がパフォーマンスを徐々に低下させていくことになります。

 葛西さんは、年齢を重ねるほど、自分にとって「正しい努力」を重ねることこそが重要だと指摘します。

 では「正しい努力」とは何なのか?
 私が長年の競技経験からたどり着いたポイントは、次の2つです。

①自分の努力は「目的に見合っている」か
 ひとつは「いまやっている努力が、本当に目的に見合った努力なのか」をきちんと確認することです。
 たとえば、スポーツ選手の場合、ある程度の筋力トレーニングが必要不可欠なのはいうまでもありません。
 しかし、スキージャンプは筋肉をつけすぎて体重が重くなると、飛距離が伸びなくなります。どんなに一生懸命に筋トレをしても、逆に悪い結果につながってしまうのです。
 つまり、無闇やたらに筋トレをしても、それは「間違った努力」になるわけです。
 スキージャンプ選手である私の場合、両手を使わないという競技の特性上、上半身の筋トレよりも、助走体勢や踏み切りに重要な下半身を鍛えるのが、「正しい努力」の方向になります。
 みなさんの中に「結果が出ない」と感じている人がいるならば、それは「努力の方向性」が間違っているのかもしれないのです。

②自分の努力は「年齢に見合っている」か
 そして、私が強調したい「もうひとつの正しい努力」というのは、「自分がやっている努力が、はたして年齢に見合った努力なのか」という点です。
 これは、多くの人にとって盲点かもしれません。
 スポーツ選手の中にも、「体力の限界」を理由に第一線を退く人は少なくありません。スボーツの特性によってその年齢はまちまちですが、「スキージャンプの選手寿命は30歳」ともいわれています。
 たしかに私自身、30歳は体力の衰えを感じはじめた時期でもあります。
 しかし、同年代の選手たちがどんどん引退していく中でも、現役を辞めようと思ったことは一度もありません。
 なぜなら、「年齢に見合った」効率的なトレーニングに移行することで、限界どころか、世界で十分勝負できるだけの体力と気力を維持できると確信しているからです。
 長い選手生活を続けるためには、年齢との戦いは避けられません。
 しかし、「やり方」「考え方」をちょっと変えるだけで、よりよくしていく方法はいくらでもあるのです。

「年齢に見合った正しい努力」というのはフィジカル・メンタル両面でいえることです。
 40代になると、体力と同時に気力や集中力、向上心も低下し、「がんばりたいのに、がんばれない。どうしたらいいんだ」と悩んでいる人も少なくないと思います。
 なかには、「がんばれないのは、自分の努力が足りないからだ」と、若いころと同じようにがむしゃらに気力を奮い立たせようとしている人もいるかもしれません。

 しかし、そう感じることができる人は、間違いなく「十分な努力」をしています。
 むしろ私が見るところ、ほとんどの人は、努力が「足りない」のではなく、努力を「向ける方向」と「やり方」が間違っている可能性が高いと思うのです。

『「疲れない体」と「折れない心」のつくり方』 はじめに より 葛西紀明:著 東洋経済新報社:刊

 本書は、葛西さんが35年を超える競技生活で、試行錯誤しながらたどり着いた「葛西式メソッド」を、わかりやすく解説した一冊です。

 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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体幹を鍛えれば、「疲れない体」が手に入る!


 40代以上のビジネスパーソンにとっての、「最高の体づくり」。
 それは、「疲れない体をつくる」ことです。

「疲れない体」をつくる最大のポイントは、代謝を上げることです。

 代謝を上げるために、まず意識すべきは「姿勢」です。

 葛西さんは、「背筋がまっすぐにぴんと伸びている」姿勢は、じつは最も疲れない、ラクな姿勢であることに気づいたと述べています。

 では、どうすれば背筋の伸びた「疲れない正しい姿勢」を維持できるのでしょうか。

 ポイントは、「体幹」にあります。

 体幹を鍛えることで「体の軸」が安定するため、自然と姿勢もよくなるのです。
 逆に、体幹が弱い人ほど、姿勢は悪くなりがちです。

 みなさんご存知のように、スキージャンプはストックを使わず、スキー板のみで行う競技です。自分の体だけでバランスをとらなければなりません。

  • スターティングゲートからアプローチ(助走路)までの助走体勢
  • カンテ(踏み切り台)で踏み切り、空中へ跳び出したら、きれいな姿勢を保ったまま飛行
  • ランディングバーン(滑走路)に着地すると同時に、テレマークポーズをとる
 この一連の動作を可能にするのが、なによりも体幹の安定によるバランス力です。
 そのため、体幹トレーニングは欠かせません。私自身、体幹トレーニングを非常に重視していて、それか日ごろの姿勢のよさにも一役買っていると思います。
 ほかのスポーツと比較して、スキージャンプの選手には姿勢のいい人が多いともいわれるのは、この体幹と大きく関係しているのではないでしょうか。

 体幹の重要性は、年齢を重ねるごとに実感するようになりました。
 ジャンプの技術に直結するだけでなく、ケガをしにくくなり、「疲れにくい体」をつくるためにも役立っていると感じるからです。

「体幹が弱くなる→姿勢が悪くなる(体が歪む)→代謝が悪くなる」という悪循環に入ってしまうと、座っているだけでも、立っているだけでも、むしろ休んでいるときでさえ、「疲れる体」をつくり上げてしまいます。前述したように、体が歪むと代謝低下を招き、疲労回復に時間がかかるからです。

 逆に、「体幹を鍛える→姿勢がよくなる→代謝が上がる」という好循環に入れた人は、「正しい姿勢」こそが「ラクな姿勢」になっていき、「疲れない体」を手に入れることができるのです。

 では、体幹を鍛えるにはどうすればいいか。
 ここでは、みなさんが自宅で気楽にできる、おすすめの「寝る前3分でできる! 体幹トレーニング」を紹介します。詳しくは次ページの図表を見てください(下の図1を参照)。

 このトレーニング方法の優れている点は、ベッドや布団さえあればできるということ。しかも寝る前の3分間でできます。
 普段のトレーニング後だけでなくオフの日なども、私の体幹を鍛える軸となっているトレーニングです。

『「疲れない体」と「折れない心」のつくり方』 第1章 より 葛西紀明:著 東洋経済新報社:刊

図1 寝る前3分でできる 体幹トレーニング 疲れない体 と 折れない心 第1章
図1.寝る前3分でできる!体幹トレーニング
(『「疲れない体」と「折れない心」のつくり方』 第1章 より抜粋)

 布団の中で、3分間の「体幹トレ」。
 ぜひ、習慣にしたいですね。

「最強のストレッチ」で、体の柔軟性を取り戻す


 肉体的な衰えで、「筋力不足」と並んで、大きな問題となるのが、「柔軟性」です。

 葛西さんは、「柔軟性のなさ」「体の硬さ」は、みなさんが思っている以上に「疲れやすい体」をつくり上げてしまうと指摘します。

 体の柔軟性の中でも、とくに気をつけるべきなのが、「下半身の柔軟性」です。
 とりわけ重要なのは、次の3つの筋肉です(下の図2を参照)。

 ①ハムストリング (大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋/太ももの後面)
 ②大腿四頭筋 (太ももの前面)
 ③内転筋


図2 下半身の柔軟性 に重要な3つの筋肉 疲れない体 と 折れない心 第1章
図2.「下半身の柔軟性」に重要な3つの筋肉
(『「疲れない体」と「折れない心」のつくり方』 第1章 より抜粋)

「①ハムストリング」と「②大腿四頭(しとう)筋」は、主に膝や股関節の曲げ伸ばしをするために必要な筋肉であり、「③内転(ないてん)筋」は股関節を動かすために大きな役割を担っている筋肉です。
 すでにお気づきの人もいるかと思いますが、小さな段差でもつまづいてしまったり、足がもつれたりするのは、自分が思っている以上に「足が上がっていない」からです。
 それはまさに、「3つの筋肉」が固まっている証拠なのです。

「筋力の低下」と勘違いし、筋トレを始めたみなさん。
 いったん筋トレは中止しして、まずはストレッチを始めてください。
 筋肉を柔らかくしてからでないと、質のよいしなやかな筋肉をつけることはできません。
 なによりも筋肉が硬いまま運動をすると、肉離れを起こしたり、腰や膝を痛めたり、ケガを誘発する原因になります。
 40代以上のビジネスパーソンがまずやるべきなのは、筋トレで「強い筋肉」をつけることではなく、ストレッチで「しなやかな筋肉」を手に入れることです。

 前述した「3つの筋肉」をほぐすことで、下半身の可動範囲が広がり、歩行やランニングなどの体を動かすのがラクになります。
 また、ケガの予防にもなるし、体をゆるめる行為のためリラックス効果も期待できます。当然、階段の踏み外しや、足のもつれも解消されるはずです。
 そして、なによりも代謝がアップし、疲労回復が早くなります
 40歳を過ぎたら、肉体面では「柔軟性」を最優先にケアするようにしてください。

 では、「3つの筋肉」をほぐして「柔軟性」を高めるために、どんなストレッチをすればいいのか。
 次ページの図表に、私が実践している葛西式「最強ストレッチ」をまとめました(下の図3を参照)。
 基本的にストレッチをする時間はいつでも構いませんが、寝る前など、疲れがたまっているときに実践すると、その効果を実感しやすいと思います。
 ただし、ストレッチは急激に効果が出るものではなく、地道な努力が必要です。
 ですから、無理なく続けるためにも、ストレッチの種類は増やさず、一つひとつのストレッチを丹念に行うことに意識を向けてください。

『「疲れない体」と「折れない心」のつくり方』 第1章 より 葛西紀明:著 東洋経済新報社:刊

図3−1 3つの筋肉をほぐす 葛西式 最強のストレッチ ① 疲れない体 と 折れない心 第1章
図3−1.「3つの筋肉をほぐす!葛西式「最強のストレッチ」①
図3−2 3つの筋肉をほぐす 葛西式 最強のストレッチ ② 疲れない体 と 折れない心 第1章
図3−2.「3つの筋肉をほぐす!葛西式「最強のストレッチ」②
(『「疲れない体」と「折れない心」のつくり方』 第1章 より抜粋)

「年齢を重ねると、体は硬くなるもの」

 そんな思い込みや諦めが、老化を早めるのですね。

 誰でも簡単にできる、葛西式「最強ストレッチ」。
 お風呂の後に10分間、気軽に、毎日続けたいですね。

「食べ方」を変えれば、「やせた体」は十分維持できる!


 40代になると、若いころと同じように食べても、太りやすくなる。
 その最大の原因は、「代謝の低下」です。

「太らない体」を手に入れようとと思ったときに、不可欠なのが「食事コントロール」です。

 葛西さんは、「食べ方」を変えれば、40代以降も「やせた体」を維持することは十分可能だと述べています。

 葛西さんが、食事コントロールで、以下の「3つの基本」を実践しています。

①「腹八分目」は基本中の基本だが、効果大
 実践するうえでの最大の基本は、全体的な量を7〜8割程度に減らすことです。
「腹八分目に医者いらず」ということわざもあるほど、誰もが知っている健康的な食べ方の「基本」ですが、なかなか実践できていない基本でもあります。
 当たり前のことをあえて書いているのは、40歳を過ぎてからのダイエットは、代謝が落ちている以上、「腹八分目」を守らない限り、成功は難しいと感じるからです。
 私自身もそうでしたが、やはり「腹八分目」に留めるのは、最初はつらいものです。
「もっと食べたい」「満腹になるまで食べたい」という気持ちにどうしてもなります。
 しかし、人間の体というのは意外に順応が早いものです。
 数日もすれば、7〜8割の量が当たり前になり、食間の空腹感もおさまってきます。
(中略)

②まずは主食から、少し減らす
 これも言うに及ばずですが、まずは主食から減らすと効果が大きいと思います。
 私も白米などの炭水化物は、できるだけ減らすようにしています。
 朝食で2枚食べていたトーストを1.5枚に減らし、夕食で白米をおかわりしていたのを1.5杯にしました。
 私は残すことに抵抗を感じてしまうタイプなので、外で定食を食べるときは、「大盛り」ではなく「ご飯少なめ」に最初から替えてもらいます。
 ただし、これは後述するように「オン」の日の食べ方です。「ご褒美デー」のオフの日は、我慢せず好きなだけ食べて、ストレスをためないようにしています。
 オフの日に「たくさん食べられる」と思うから、普段我慢できるのです。

③1日に食べた物を書き出し、食べた量を「自覚」する
 厳しい言い方になってしまうかもしれませんが、ビジネスパーソンには圧倒的に食べすぎている人が多いのではないでしょうか。
「そんなに食べているつもりはないんだけど・・・・・」と思っている人もいるかもしれませんが、そう感じている人は一度、1日に食べた物をすべて記録してみてください
 仕事中、同僚にもらったお菓子を無意識に食べていても、それを食べた物にカウントしていない人は少なくありません。
 私が見るところ、そもそも「1日にどれだけの量を食べているのか」きちんと把握していない人が、かなり多いように思うのです。

『「疲れない体」と「折れない心」のつくり方』 第2章 より 葛西紀明:著 東洋経済新報社:刊

 人は、歳とともに、体質が変わっていきます。
 いつまでも「若いころと同じように」と無理しては、どこかでしわ寄せがきます。

 その最たる例が、「食事」です。

 年齢に見合った食事を、心がけたいですね。

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 葛西さんは、どんなに失敗しても、何度敗れても、諦めずに続けていれば、必ず報われるときが来るとおっしゃっています。

 数々の挫折、試練を乗り越え、オリンピックに8度も出場した。
 そんな葛西さんの言葉だからこそ、強い説得力を持っていますね。

 挑戦し続けるのに、なくてはならないのが、「疲れない体」と「折れない心」です。

「心・技・体」を、最高の状態に保つこと。
 それが、年齢関係なく、第一線で活躍するための必要条件です。

「いくつになっても、若い人に負けずに頑張りたい」
「いくつになっても、若々しい心と体を持っていたい」

 本書は、そんな果てなき野望を持つ、すべてのビジネスパーソン待望の一冊といえます。

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