【書評】『こういう時に人は動く』(ボブ・バーグ)

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 お薦めの本の紹介です。
 ボブ・バーグさんの『こういう時に人は動く 影響力5つの原理』です。

 ボブ・バーグ(Bob Burg)さんは、米国の経営コンサルタントです。
「影響力の行使」に関する第一人者で、その道30年以上の大ベテランです。

「究極の成功法則」を伝授しよう!


 才能や努力。
 野心や勤勉さ。
 情熱や創造性。
 粘り強さや寛容さ。

 ビジネスに成功するための要件は、いろいろあります。
 しかし、それらだけでは、決定的なものが欠けています。

 それは、「人を動かす力」です。

 バーグさんは、人を動かすことができなければ、人生のどの分野でも成功の見込みはごくかぎられたものになると指摘します。

 私はそれを「究極の影響力」と呼んでいる。つまり、相手を気分よくさせて好印象を持ってもらい、望んでいる結果を手に入れる能力のことだ。
 本書では、日々のストレスを軽減して人生をより快適にし、より大きな恩恵を得るためにすぐに実行できる5つの原理について説明する。それを実践すれば、人々から好かれ、尊敬され、人を動かすことができる。

「強者とは、自分の感情をコントロールし、人を味方につける人のことだ」という格言がある。
 つまり、自分の感情をコントロールして初めて本当の強さが身につき、人を動かすことができるということだ。その結果、真の強者となり、抜き差しならない状況を打開して全員に利益をもたらすことができるのである。
 もちろん、人を味方につけるためには自分の感情をコントロールするだけでは不十分だが、それが必要条件になることは間違いない。
 私たちの前には多かれ少なかれ、目的達成に立ちふさがる人が現れるだろう。しかし、私たちにとって、そういう人は人生の修行の一部であり、排除すべき邪悪な存在ではなく歓迎すべき貴重な存在なのだ。
 日本の偉大なホームランバッター、王貞治は相手投手を「ホームランを打つためのパートナー」とみなしていたという。私もそれにならって、対立する相手を「成功を収めるためのパートナー」とみなすことにしている。実際、私たちはふだんの生活の中でそういう人を味方に変えることによって成功を収めることができる。
 成功を収めるためのパートナーには多種多様な人々がいる。家族、友人、上司、同僚、部下、雇い主、従業員、販売員、見込み客、顧客、チームメートがそうだ。
 人々は扱いづらく、ときには敵対的な態度をとることもある。だが、そんなときこそ、双方の利益になる解決策を見いださなければならない。また、やっかいな人を敵に回さないように配慮することも重要だ。いずれにしろ、本書ではさまざまな状況を打開するための効果的な方法を紹介している。

『こういう時に人は動く』 はじめに より ボブ・バーグ:著 弓場隆:訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

 バーグさんは、人生の成功は1割が専門技術で、9割が人間関係だと述べています。

 本書は、人間関係を武器にする「人を動かす技術」を「5つの原理」としてまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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感情的にならない


 人を動かすために、もっとも大切な「第一の原理」。
 それは、「感情的にならないこと」です。

 駐車場にはゆったり車を停められる十分なスペースがあった。ところが、私は急いでいて周囲をよく見ていなかったため、停めてあった車から男性が出てくるのに気づかなかった。私は急ブレーキを踏んだので、男性を驚かせてしまった。その瞬間、男性は「気をつけろ」と言わんばかりに私をにらみつけた。
 当然のことながら、男性は感情的に反応したのだ。そのとき、私には2つの選択肢があった。自分も同じように感情的に反応して応酬するか、理性的に対応して不愉快な状況を克服し、相手を味方に変えるか、である。
 私は理性的に対応することを選んだ。そして、すぐに手を振り、ほほえみながら「すみません」という口ぶりをした。
 すると男性はすぐに同じように笑顔を見せて手を振り、「大丈夫です」という口ぶりをした。私が車を降りて近づくと、男性は「こちらこそすみません。車を降りるときにもっとよく周囲を見るべきでした」と言ったのである。

 衝撃的だった。私はいまだにこのできごとを忘れることができない。特殊なことだからではなく、大変よくありがちなことだからだ。一大事に発展しかねない状況でも、小さなできごとにとどめることがいかに簡単かを思い起こさせてくれたできごとだった。
 どの状況も千差万別だが、基本的な原理はまったく同じだ。自分の感情をコントロールし、感情的に反応するのではなく理性的に対応すれば、ほとんどの人間関係を好転させることができるのである。
 人を動かす達人になろうとするなら、自分の感情をコントロールすることがつねに何よりも先だ。
 自制心を発揮してセルフコントロールすれば、あらゆるやりとりで成功を収める準備を整えることができる。このことをよく覚えておこう。

『こういう時に人は動く』 第1の原理 より ボブ・バーグ:著 弓場隆:訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

 人間は、「感情」で動く生き物です。

 頭では、「正しい」とわかっている。
 それでも、心が、それを受け入れなければ、動けません。

 こちらが感情的に出れば、相手も感情的に反応する。
 これも当たり前といえば、当たり前です。

「短気は損気」

 結局は、自分自身のメンタル・コントロールにかかっています。

「信念」と「真実」の違いを意識する


「自分は正しい」

 そう確信を持っていたのに、それが間違っていたとわかる。

 そのようなことが起こる理由は、信念体系(もののとらえ方、考え方)に支配されたわずかな情報にもとづいて判断し決定をくだしているからです。

 バーグさんは、信念体系にうまく対処するためには、信念と真実の違いを理解することがたいへん重要だと述べています。

 真実とは、「事実」のことで、それ自体は中立的であり、感情がないものです。
 例えば、『1+1=2』や『地球上では重力が働く』ということですね。

 信念体系は、主観的な、その人固有の考え方です。
 いったん確立すると、変えることはたいへん難しいです。

 それは、主に無意識のレベルで機能しているからです。

 言い換えると、ほとんどの人が知らず知らずのうちに思い込みをして決定をくだしているということだ。
 これは99.9%の人が知らないことである。彼らは自分でも気づいていない信念体系に縛られているのだ。そして、それはたいてい私たち自身にもあてはまる。
 前述したように、すべての信念が有害だとはかぎらないが、有害な信念が多いのはたしかだ。そして、それは真実を見えにくくし、最悪の場合、成功を遠ざけてしまうおそれがある。
 私たちは対象をあるがままに見ない。なぜなら、私たちは自分の信念体系をもとに対象を見るからだ。
 たとえば、人間関係を愛にあふれた楽しいものとみなそうと、傷つけあう苦しいものとみなそうと、人々はどちらも人間関係に関する真実だという信念を抱くことになる。
 お金が悪であり、裕福になる唯一の方法は他人を利用することだと教えられようと、お金が善であり、裕福になる方法は多くの人に大きな価値を提供することだと教えられようと、人々はどちらもお金に関する真実だという信念を抱くことになる。
 相手に損をさせても自分さえ得をすればいいと教えられようと、双方が得をすることが最もいいと教えられようと、人々はどちらも他者との関わり方に関する真実だという信念を抱くことになる。
 その結果、人々はそれらの信念にもとづいて無意識に行動することになる。たとえそれが自分の幸せを阻害するはめになったとしても、である。
 それを理解すれば、人々の行動原理がわかり、多くの人が人間関係に支障をきたしやすい理由が納得できるだろう。
 その解決策は簡単ではないがシンプルである。
 つまり、意識することだ。人間の言動のすべてが信念の結果である(それはあなたも含む)。そこで、その言動が意識的な信念か無意識的な信念のどちらによるものかを自分に問いかけてみよう。
 そうすることによって、自分の人生で変化が起き、他者とポジティブに関わることができ、人を動かす能力が高まることがわかるだろう。

 人間関係の問題を抱えたときは、次の4つの質問を自分に投げかけよう。

  • 私の信念体系は真実を歪曲していないか?
  • 相手の信念体系は真実を歪曲していないか?
  • 私は相手の信念体系を理解するためにどんな質問をすればいいか?
  • 私の信念体系を相手に理解してもらうためにどんな情報を提供すればいいか?
 これらの質問を通じて、あなたは真実を発見し、理解、尊敬、信頼、平和を促進することができる。

『こういう時に人は動く』 第2の原理 より ボブ・バーグ:著 弓場隆:訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

「正しい」とか「間違っている」。
 それはあくまで、その人にとっての正しさであり、誤りですね。

 絶対的な「正義」もなければ、絶対的な「悪」もない。
 人の数だけ信念体系があり、人の数だけ価値観がある。

 その事実を頭の中に入れておくだけでも、コミュニケーション能力は大幅にアップします。

相手に恥をかかせてはいけない


 人を動かす達人は、人々の自尊心がたいへん傷つきやすいことを肝に銘じて行動します。

 バーグさんは、彼らは、特殊な状況でないかぎり、相手に恥をかかせるようなことはけっしてしないと指摘します。

「明らかに事実に反することがわかっているなら、相手の間違いを指摘するのは当然ではないか」とあなたは反論するかもしれない。それはその場の状況による。
 相手の間違いを指摘する際は次のことを考慮しよう。

  • その間違いは指摘する必要があるほど重要なことか?
  • わざわざ人前で間違いを指摘するだけのメリットはあるか?
  • そうすることは有益か有害か?
 たとえば、誰かが「テッド・ウィリアムズは大リーグ史上最強の打者だ。1940年に打率4割6厘というすごい成績を残している」と言ったとしよう。
 正しくは1941年である。もし2人の友人同士のやりとりなら、間違いを指摘してもたぶん問題はない。しかし、人前で相手に恥をかかせることになるなら、間違いを指摘してはいけない。あとで2人きりになったときに言うべきかどうかは状況次第だが、もしそれをするなら、「私の思い違いかもしれないが」と前置きしてから「もしかすると、それは1941年ではなかったかと思う」とやんわり事実を指摘すればいい。
 もし相手が真実にこだわるなら、自分で調べるだろう。
 たしかに、これはとてもささいな例である。しかし、人々がなんの得にもならないのに人前で他人の間違いを指摘して、人間関係を台無しにしているのを目撃した人は少なくないはずだ。あなたもそういうことをした経験がないだろうか。逆に、誰かにそういうことをされた経験はないだろうか。あなたはその人にどんな感情を抱いただろうか。
 ここで肝に銘じておこう。人を動かすためには、その前提条件として、その人があなたに好意を抱き、あなたを信頼する必要があるのだ。
 もし相手に恥をかかせたら、その人はあなたに好意と敵意のどちらを抱くだろうか。また、もし相手があなたに恥をかかされることを恐れているなら、その人はあなたを信頼するか敬遠するか、どちらだろうか。
 もちろん、どの状況も異なっている。しかし、どうしても自分の正しさにこだわるなら、相手の感情を傷つけないように配慮することがつねに最善の策である。

『こういう時に人は動く』 第3の原理 より ボブ・バーグ:著 弓場隆:訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

「嘘も方便」という言葉もあります。
 いつも正しいことや真実を口にすることが、正解だとは限らないということですね。

「正しい、正しくない」は、二の次。
 相手のプライドを傷つけないこと。

 コミュニケーションを潤滑にするための秘訣です。
 頭に刻みつけておきたいですね。

「笑顔」で相手の協力を引き出す


 交渉相手から、自分のニーズを満たすような行動を引き起こしたい。
 そのためには、相手がそうしてくれることを予想して行動するといいです。

 つまり、自分が望んでいるものを相手が与えてくれることを確信しながらアプローチするということです。

 あなたが相手の協力を予想したからといって、相手が変わるわけではない。それはあなたを変えるのだ。そして、それが相手を変えるのである。

 つまり、自分の心の中で相手の協力的な姿勢をあらかじめ想定することによって、あなたはそれにふさわしい態度をとるようになる。あなたがそれによって変わることで、相手が態度を変えるように働きかけることができるのだ。
 なぜなら、相手の協力的な姿勢に対して事前に感謝の気持ちを表せば、相手はそれに応じようとするからだ。
 つまり、あなたが相手の問題解決能力に敬意を表すれば、相手は高い評価を与えてもらっていることを感じ取ってモチベーションをアップさせるのである。

 同じ状況に対する次の2つのアプローチを比較し、その結果を考察してみよう。
 あなたは問題解決のために役所に行って担当者に面会するように指示を受けた。ところが、その人はとても厳格で、規則どおりになんても処理しようとするタイプらしい。あなたは口論になることを予想して身構え、相手への嫌悪感を隠しつつも険しい表情で話し合いをはじめる。
 しかし、もし相手の好意的な姿勢を予想しながら笑みを浮かべて丁寧にあいさつをしたらどうなるだろうか。
 どちらの態度が人を味方につけるのに役立つだろうか。人を動かすという目的に合致するのはどちらだろうか。
 後者であることは言うまでもない。このやり方は事実上すべての状況で、ほとんどの人に驚異的な成果をもたらす。
(中略)
 仕事であれプライベートであれ、人間関係の試練の大半は、笑顔と相手への気づかいでたいてい平和裡に解決するものだ。ほとんどの人がそれを実行していないという現実は、あなたが容易にその他大勢から抜け出せることを意味している。
 なんらかの問題が起きて相手の上司と話をしなければならないとき、あなたの笑顔は相手の抵抗をやわらげ、双方が得をする話し合いにつながって好結果をもたらす。
 なぜなら、そういう状況で大多数の人は怒りながら相手を威嚇するような目でにらみつけるが、あなたは包み込むような優しい笑顔で相手を迎え入れるからだ。
 ダニエル・ゴールドマンは『EQ こころの知能指数』の中でこう言っている。
「ほほえみはすべてのシグナルの中で最も影響力が強く、相手がほほえみを返したくなるように働きかける強い力を持っている」
 まったくそのとおりだ。
(中略)
 幸い、上手にほほえむ方法を学ぶことはとても簡単である。しかし、どうしてもできないなら、思わず嬉しくなるようになことを想像するといい。何度か練習すれば、自然に笑みを浮かべることができるようになる。
 とくに理由がないのに笑みを浮かべる人はごくわずかしかいない。しかし、あなたはそうであってはいけない。誰かと話をする際には、笑みを浮かべる習慣を身につけよう。上司、配偶者、子ども、役人、給仕係、販売員など、すべての人に対してそれを心がけるといい。相手はあなたに好意を抱いてほほえみを返してくれるはずだ。
 次のことを覚えておこう。

 笑顔はポジティブな環境をつくる究極のツールである。

 いつもこのシンプルな行為を実践すれば、驚異的な成果を上げることができるだろう。どの人からも特別扱いされて喜びを感じるに違いない。誰からも手厚くもてなしてもらえるのは、誰もがあなたの笑顔によって好影響を受けるからだ。

『こういう時に人は動く』 第4の原理 より ボブ・バーグ:著 弓場隆:訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

 相手から何かしてもらったことに対して、お返しをしてあげたくなる。
 人間には、もともと、そのような心の仕組みが備わっています。

 心理学では、それを「返報性の法則」と呼びます。

 感謝の気持ちを表せば、相手から感謝が返ってきます。
 笑顔で対すれば、当然、笑顔が返ってきます。

 変えるべきは、相手ではなく、まず「自分」。
 人間関係の「肝」ですね。

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 バーグさんは、人を動かす達人になりたいなら、周囲の人が気軽にフィードバックできるように配慮すべきだとおっしゃっています。

 普段から、人の意見に耳を貸し、アドバイスに感謝する習慣をつけること。
 それが、人間関係の達人になる秘訣だということですね。

 それとともに、自分自身でも、改善のフィードバックをする。
 つまり、PDCAのサイクルを回すことが必要です。

 人間関係において、過ちを犯した場合、自分自身でそれに気づく。
 その相手に対して、すぐに謝罪をし、二度としないよう心に刻む。

 その繰り返しが、成功するための「正のスパイラル」を生み出します。
 私たちも、本書を片手に、「人を動かす」達人を目指したいですね。

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