本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『人間関係をしなやかにする たったひとつのルール』(渡辺奈都子)

 お薦めの本の紹介です。
 渡辺奈都子先生の『人間関係をしなやかにする たったひとつのルール はじめての選択理論』です。


 渡辺奈都子(わたなべ・なつこ)先生(@natsuko_w )は、心理カウンセラーです。
 女性クライアントを中心に、恋愛、結婚、子育て、家庭と仕事の両立などについてカウンセリングをされています。

変えられるのは自分だけ!「選択理論」

 渡辺先生は、人間関係の背後には立場の異なる2つの心理学が働いている、と指摘します。

 ひとつは、「選択理論心理学」
 もうひとつは、「外的コントロール心理学」です。

「外的コントロール」とは、簡単に言うと「相手を外側から変えようとすること」です。
 人は、しばしばこの外的コントロールを利用して「相手を変えよう」とか「こちらの思い通りに動かそう」とします。
 しかし、このような試みは、ほとんどうまくいきません。

 本書で紹介されている「選択理論」は、「人は自分の行動しかコントロールすることはできない」と捉える理論です。

 選択理論では、「私たちは自分で自分の行動を選んでいて、その行動には自分なりの目的がある」と考えます。
 もう少し付け加えるならば、選択理論では「人は内側から動機づけされており、自分の願っているもの(=目的)を手に入れるために行動している」と説明できます。
 そして「自分が相手が手にしたり言ったりすることは、数ある情報のひとつに過ぎず、それに対して、どんな行動や態度を選択するのかは相手次第である」と考えます。これは、自分と相手の立場をひっくり返しても同じことです。
 こう考えると、自分は他者からコントロールされているわけではないし、自分も相手を思うようにコントロールすることはできない、ということになります。

 選択理論を採用している人は、
「あの人が文句ばっかり言うから、私は一日憂うつでしょうがない・・・・」とは考えず、
「あの人は文句ばかりだけれど、私はできることをして元気に過ごそう」と考えます。
(中略)
 こんな風に考える人は、他人や状況に振り回されることが少なくなります。また、「相手をコントロールすることはできない」と理解しているので、相手が自分の意見と異なる状況であっても、「相手の意見を変えよう」ではなく、おたがいの違いを話し合い、調整して「より良い関係を保とう」という方向にエネルギーを注ぐでしょう。
 私たちは、自分に操作的に関わってくる人は嫌いですが、自分と良い関係を作ろうと努力してくれる人との関わりは心地よく感じるものです。

 『人間関係をしなやかにするたったひとつのルール』  第1章 より  渡辺奈都子:著  ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

 渡辺先生は、どちらの心理学の考え方を選択するのかによって、コミュニケーションの方法も、他者との距離感も変わって、さらには人生におけるストレスの増え方や幸せの捉え方も、大きく変わってくると強調します。

 本書は、「選択理論心理学」と「外的コントロール心理学」という2つの心理学の違いをわかりやすく解説した一冊です。
 その中から印象に残った部分をいくつかご紹介します。

「外部コントロール島」の人たちの習慣

 外的コントロール島の「住人」の、人との関わり方の特徴。
 それは、「相手は私の言うことを聞くはずだ」という思い込みから、相手をコントロールしようとすることです。

 渡辺先生は、それらの基になっている習慣を、「致命的な7つの習慣」(「文句を言う」、「脅す」、「責める」、「罰を与える」、「批判する」、「褒美で釣る」、「ガミガミ言う」の7つ)と呼びます。
 それぞれの頭文字を並べて、「もんおせばひほうが(門おせば悲報が)」と覚えます。

〈外的コントロール〉の背後には、「私は正しい、相手は間違っている。だから私の思う通りにコントロールしよう」という思いが隠れています。
 ということは、単純に「強い口調や威圧的な表現」か「優しい口調や承認する表現」かどうかで、外的コントロールか否かが決まるわけではないということです。
 どんなに優しい口調で相手を認めるような発言をしていたとしても、「私は正しい、相手は間違っている、だから私の思う通りにコントロールしよう」という信条のもとに関わっていたとするなら、それは外的コントロールの域を出ていません。
 外的コントロール島の人たちの関わり方には、
 「はやい! やすい!! マズい!!!」
 というキャッチフレーズがぴったりです。
 結果を「素早く」もたらしてくれ、とても「使いやすい」。けれど使い続けていると「関係をマズくする」のが〈外的コントロール〉の特徴だと言えます。

  『人間関係をしなやかにするたったひとつのルール』  第2章 より  渡辺奈都子:著  ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

 外的コントロールの習慣を長年使い続けてきたこの島の「住人」も、この暮らしの方に満足しているわけではありません。
 他に考え方を知らなかったので、「仕方なく」あきらめている人がほとんどです。

「選択理論アイランド」の人たちの習慣

 もう一つの島、選択理論アイランドの「住人」の基本的な考え方は、「私は自分だけをコントロールすることができる」というものです。

 選択理論アイランドの真ん中には、記念碑となる塔が建っていました。
 見に行ってみると、そこには、
「責任とは、他人の欲求充足の邪魔をしないで自分の欲求を満たすこと」
 と書かれていました。これは、この島を発見したグラッサー博士という人の言葉です。
 そして、ぐるっと裏側に回ると、
「より良い責任とは、他人の欲求充足のお手伝いをしながら自分の欲求を満たすこと」
 と書かれていました。
 これはこのアイランドの長老が、選択理論アイランドをもっと素敵なところにするために奨励している暮らし方だと説明されています。
 もう一度、手に持っていたニュースレターを眺めてみます。
「我慢は、自分の欲求充足を怠る行動です」「忍耐は、あなたを目標へと近づけます」
 確かにそう書いてあります。
 どうやらこの島では、自分の「欲求」というものや、自分の「目標」となるものを理解することが、幸せな生き方をするために重要な鍵となるようです。

 『人間関係をしなやかにするたったひとつのルール』  第3章 より  渡辺奈都子:著  ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

 選択理論アイランドの人たちは、「つねに主体的に考え、欲求充足に必要な行動を選ぶこと」を大切にします。

 渡辺先生は、それが「自分の人生に責任を持つこと」であり、「自分で自分を幸せにする」始まりになると述べています。

 この「島」で日常的に使っている関わり方は、関係を良くする「身につけたい7つの習慣」(「耳を傾ける」、「励ます」、「尊敬する。敬意を払う」、「受け入れる」、「違いを交渉する。調整する。話し合う」、「信頼する」、「支援する」の7つ)と呼ばれます。

 この7つの習慣は、それぞれの頭文字を並べて、「みみはとうとく うちはしんし(耳は尊く内は紳士)」と覚えます。
 他にも「感謝する」「微笑む」「リクエストする」「友好的に関わる」といった習慣を大切にします。

「外的コントロール島」と「選択理論アイランド」の両方同時に住むことはできません。
 根本的な部分(他人をコントロールすることができるかできないか)において、信じていることが異なるためです。

 どちらの島の「住人」になるかは、自分の考え方次第です。

人間の「行動」を決める4つの要素

 私たちの行動には必ず「行為」「思考」「感情」「生理反応」の4要素が存在します。
 この4つの要素は、連動して切っても切り離せない関係にあり、全体的に動いているととらえます。

 選択理論では、人間の行動を〈全行動(=total behavior)〉と呼んでいます。

 渡辺さんは、この〈全行動〉の概念を、車に例えて説明しています。
 行動を構成する4要素は、4つのタイヤです。

 とくに重要なポイントは、前輪に「行為」「思考」があり、後輪に「感情」「生理反応」が配置されていることです。

 4つのタイヤのうち、ドライバーが操作できるのは前輪だけです。後輪は、前輪が向かった方向についてくるというしくみがこの車のイメージで表されています。

 私たちの行動には、直接コントロールできるものとできないものがあります。
 自分の意志で直接コントロールできるものは、〈行為〉と〈思考〉という前輪です。前輪はハンドルを動かすことで向きを変えることができます。
 後輪に相当する〈感情〉と〈生理反応〉を変化させるためには、前輪の〈行為〉と〈思考〉をコントロールしなくてはならないということです。
 4つのタイヤの関係を知ることで、セルフコントロールのスキルは格段に上がります。
(中略)
 4つのタイヤのうち、自分の意志で直接コントロールできるものとできないものがあります。どのタイヤに注目してエネルギーを使うと効果的に変化が起こるのかを知っておくことは、セルフコントロールの基本となるものです。

 『人間関係をしなやかにするたったひとつのルール』  第4章 より  渡辺奈都子:著  ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

 自分の行動を変えたいのなら、「行為」と「思考」を変えることに集中すること。

「感情」や「生理反応」は、後から自然とついてきます。

〈上質世界〉という、自分だけの理想のアルバム

 選択理論心理学では、脳の中に、自分にとって気分の良いものや心地よいものをストックしておく特別な場所があると考えます。
 そのような「自分にとって気分の良いイメージ写真」を貼っておく「アルバム」のようなところを、〈上質世界〉と呼びます。

〈上質世界〉は、生まれたときには、何も貼られていない白紙の状態で、成長と共に、絶え間なく作り直されます。
 この〈上質世界〉に貼られるイメージ写真が、通常〈願望〉と呼ばれるものです。

 私たちは、自分の〈のめり込み〉が相手の欲望を駆り立てる人に憧れます。
 つまり、自分が目指しているものに対して今も憧れて、飽きずに学び続け、突き進んでいる人ですね。

 これは選択理論で考えてみると、自分の〈上質世界〉にある大好きなものに対して、自分自身が一生懸命に取り組み、挫けることなく瞳をキラキラさせてハンドルを向かわせているような状態であると、その姿を見ている人の〈上質世界〉に入りやすいということだと思います。

 選択理論の講座や学習会に通い始めたお母さんたちからよく耳にするのは、
「学ぶのが楽しくなって時間を惜しんで本を読んだり、自分が出かけるために家事をさっさと済ませたりするようになったら、子どもが私のそばに来て自分から宿題をしてみたり、夫が協力的になったりして、ちょっと驚いています」
 というご家庭の様子です。
 どうやら、自分の〈上質世界〉に「のめり込めるもの」を持っているということは、間接的ではありますが、より良い関係を作ることに貢献しているようです。これは、家庭でも職場でも言えることでしょう。人は「自分の欲求充足に責任を持っ」てがんばっている人には好意を持ちやすい、「人生の質を上げる」モデルにしやすいのです。

  『人間関係をしなやかにするたったひとつのルール』  第6章 より  渡辺奈都子:著  ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

〈上質世界〉に、どのようなイメージ写真を貼っておくか。
 つまり、どのような〈願望〉を抱いているかが、いかに重要なことかということですね。

「人間は自分の思った通りの人間になる」

 それも、〈上質世界〉の考え方から理解できます。
〈上質世界〉に貼られるイメージ写真は、具体的で鮮やかなものほど実現しやすいです。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 人は一人では生きていくことができません。
 それは、「人と関わることなくして幸せになることはできない」ことを意味します。

 選択理論の創始者であるグラッサー博士は、選択理論は、私たちが人間関係の中で自由を得るためのひとつの提案だとおっしゃっています。

「たとえ周りが変わらなくても、じぶんの人生を変えることができる」

 そういう考え方には共感できますし、とても魅力的です。

 本書に書かれた内容を日々の生活で実践し、選択理論アイランドの「住人」として日々穏やかに過ごしたいですね。

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