本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『潜在意識をアップデート』(ティーモン・フォン・ベアレプシュ)

お薦めの本の紹介です。
ティーモン・フォン・ベアレプシュさんの『潜在意識をアップデート』です。

潜在意識をアップデート

ティーモン・フォン・ベアレプシュ(Thimon von Berlepsch)さんは、ドイツ人で、プロのマジシャン・催眠術師です。

潜在意識をプログラミングし直す

「自分はこういう人間だから」

そう思い込んで、不本意なから、これまでの人生の延長線上を生きている。
そんな人は、意外と多いのではないでしょうか。

これまで不可能だと思っていたことを信じられるようになる。
そんな夢のような話も、“潜在意識のアップデート”をもってすれば可能です。

 自分の人生における特定のものごとは、そのままずっと変わることはないのだと彼らは信じ込んでいる。
しかし実際には、ただ気づいていないだけなのだ。別の生き方ができるということに。恐怖症から解き放たれた人生や、嫉妬や悲観主義や完璧主義に悩まされることのない日常や、自らの意志で人生をコントロールし、満ち足りた人生を送る妨げとなるすべてのものから自由になれる可能性があることに。

この本の冒頭には、『鏡の国のアリス』の一部を引用してある。このなかで白の女王は、
「不可能なことを信じるには、練習が必要なの」と言っている。
この言葉は、まさに的を射ている。
いまの自分を変えることをーーいまとは違った感情や信念を持ち、別の習慣や行動パターンを身につけることをーーあなたが不可能だと考えているかぎりは、何ひとつ変えることはできない。あなたはこれからも同じような生活を送り、同じような経験を繰り返すことになる。
不可能を可能にできる方法を見つけ出すには、不可能なことを可能だと思えるようにならなくてはならない。
「自分が変われるかどうか」ということに疑問を感じない状態でなくてはならない。
この本で私がお伝えしたいのは、基本的にはどんな人間でも変わることができるということだ。
私たちがどんな人間か、どんな行動をとるかをつかさどっているのは、私たちの脳だ。その脳を、私たちは文字どおりつくり変えることができる。
それも、自分の思考の力だけを使って。そして脳が変わるということは、私たち自身が変わるということでもある。

次章以降を読んでいただければ、あなたにもきっと、自分も変化できるのだということがおわかりいただけるはずだ。
いまあなたがどんな癖や思考パターンに悩まされていようと、あなた自身に欠陥があるわけではない。
あなたの思考や行動や感情を生み出す源となっているのは、あなたの頭のなかにある“ハードディスク”に保存されているいくつもの古びたプログラムだ。
かつてインストールされたそれらは、いまでは“最新版”といえないばかりか、あなたの人生にもそぐわなくなっている。それらのプログラムを更新すれば、あなたはもっと生きやすくなり、人生をもっと楽しめるようになるはずだ。

それから、なんらかの恐怖症に悩まされていたが催眠コーチングで症状が改善した、そのほかの私のクライアントについてもお話しようと思う。脳がどのように機能するかを理解するには、恐怖を例にとるのが一番わかりやすいだろう。
原則的に恐怖というのは、意識的に引き起こされるプロセスではない。潜在意識によって引き起こされる反応の極端な形だ。だが潜在意識が反応を生じさせるプロセスは、恐怖症特有だというわけではなく、あなたの人生の制約となる行動パターンはすべて、似通ったプロセスを経て引き起こされている。

この本の目的は、あなたの精神の力とトレーニングの助けを借りて、あなた個人にとっての「現実」を変える方法をお伝えすることにある。あなたの脳がどのように機能しているか、どのメカニズムを自分のプラスになるよう役立てることができるかわかっていれば、今後それらの知識を活用して、自分が望むとおりの行動をとったり、感情を抱いたりできるようになる。
さまざまな現象を体系化したモデルもご紹介していくつもりだが、ひょっとしたら、あなたはすでにそれらのうちのいくつかについて、どこかで読んだり聞いたりしたことがあるかもしれない。
その場合は、該当する箇所を復習や確認のために利用して、その知識を日常生活で実際に使ってみてほしい。
知識は使わなければ意味がない。それが習慣になるまで何度も使って、意識しなくても得た知識を実践できるようにしよう。

私はあなたに、いまのところあまりうまくいっているとはいえない人生の領域に対する自分の姿勢を見直して、アップデートしてほしいのだ。今後あなたがその領域で、いまよりも満足のいく、自信に満ちたふるまいが出るようになるために。そしてもちろん、いまよりも満ち足りた気分になり、自信を持てるようになるために。

『潜在意識をアップデート』 プロローグ より ティーモン・フォン・ベアレプシュ:著 安原実津:訳 サンマーク出版:刊

潜在意識は、私たちのなかに眠る、夢を叶える魔法の力。

本書は、脳科学に基づいた、潜在意識をアップデートし、“ランプの精”を呼び出すためのノウハウをわかりやすく解説した一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「情動」は変えられないが「感情」は変えられる!

脳には、さまざまな領域がありますが、潜在意識のアップデートに関連があるのは、「爬虫類脳(脳幹)」「大脳辺縁系」「大脳新皮質」の3つです(下の図1を参照)。

図1 脳の領域について 潜在意識をアップデート 第1章

図1.脳の領域について
(『潜在意識をアップデート』 第1章 より抜粋)

爬虫類脳は、約5億年前に発達しはじめた部位で、心臓の鼓動や呼吸、血液循環、食物の摂取や消化などの生命の維持に必要な領域のほか、あらゆる種類の反射もコントロールしています。

大脳辺縁系は、哺乳類脳とも呼ばれていて、その名のとおり、哺乳類にしか見られない特徴をコントロールしている部位で、ホルモンと自律神経をつかさどる領域でもあります。

大脳新皮質は、「理性脳」とも呼ばれ、人間が持つ論理的思考、計画力、決断力、長所と短所を慎重に検討する能力、適切な言葉を選び出す能力をつかさどっています。

それでは、「感情」とは何で、どこで発生しているのでしょうか。

 すべてのはじまりは「刺激」である。ここでいう刺激とは、あなたの脳のなかでなんらかの反応を引き起こす情報のことだ。
あなたが自分の感覚器官を通して知覚したり、自分の思考によって引き起こしたりする刺激は、信号となってあなたの脳に、もっと正確に言えば、大脳辺縁系にたどり着く。
そして大脳辺縁系では、その刺激に応じた生化学的なカクテルが放出される。それらのカクテルを、ポルトガル人の神経学者、アントニオ・ダマシオは「情動」と名づけている。
つまり情動とは、何かを知覚したり、考えたりした結果として大脳辺縁系で引き起こされる化学反応ということになる。

情動はあなたの血管網に放出され、あなたの大脳新皮質にたどり着く。
すでにご存じのとおり、大脳新皮質はあなたの理性や論理的思考をつかさどる脳の領域だが、記憶や思い出もこの部位の管轄下にある。
情動によって情報がもらたらされると、大脳新皮質はそれらに手を加えるーーあなた個人の思い出や確信や評価を補足する。
そうしてできたものをダマシオは「感情」と名づけている。つまり感情とは、大脳新皮質によって分析と加工を施され、私たちの意識に知覚される生化学的な反応のことなのだ(下の図2を参照)。

今度は、このプロセスをたとえを使って説明しよう。
あなたは何かを知覚するーーたとえば、焼きたてのパンの匂いを嗅いだとする。あなたの鼻を通してその刺激は神経網に到達し、電気信号に変換されて、あなたの脳に伝達される。大脳辺縁系で化学物質のカクテルがつくられ、情動が発生する。
情動は大脳新皮質で加工され、個人的な思い出やあなたが過去に感じたことなどが補足される。パンの匂いを嗅いであなたが思い出したのが、いつも一緒にパンを焼いていた祖母のことだったとしたら、その瞬間、情動は「幸福感」という感情に変化する。
あなたもおそらく想像できると思うが、あなたの脳は一日中、夢のなかでも刺激を受け取り、情動をつくり出している。そして、そうした長く複雑なプロセスの最後にあなたが知覚するのが感情だ。だが、あなたがそれを感じるのは大脳新皮質においてではない。なぜなら、あなたは脳で”感じる”わけではないからだ。

感情を知覚するのは、ホルモンや化学伝達物質が到達した器官がある体の各部位である。怒りではらわたが煮え繰り返ったり、心が痛くなったり、悲しいときにのどに何かが詰まったような感じをおぼえたりした経験は、だれにでもあるはずだ。

人間がどんな感情をどの体の部位で感じるかをあらわす図を作成し、体のどこで何を感じるかはどの文化圏でも共通であることを証明した研究者たちもいる(注2)。たとえば、リトアニア人もパプアニューギニア人も、強い不快感をおぼえたとときには口や胃でそれを感じるものなのだという。
情動と感情は精神だけでなく、体にも作用するということを、この研究結果は明確に示している。
だがこの研究結果がなくても、人前で恥ずかしい思いをしたことのある人なら、すでにその事実には気づいていたはずだーー気まずい思いをすると、人の顔は決まって赤くなるものだから。

情動には、進化的な意義がある。外部から、もしくは内部(思考)から受ける刺激を評価してそれに対する反応を導き出すことで、私たちが確実に生き延びられるようにしてくれているのだ。
たとえば、夜、暗い道を歩いているときに、あなたはあやしげな物音を聞いたとする。するとあなたの近くは即座に情動に加工され、情動はあなたの体を反応させる。耳がよく聞こえるようになり、脈拍が速くなり、注意力もアップする。この反応は反射的に起こるものなので、私たちがそれに影響を及ぼすことはできない。
しかし生きていくうちに私たちはこの反応を「恐怖」と名前で呼ぶことを習得し、それにともなって、無意識の反応は意識できる感情に変化する。

この変化は、私たちの大脳新皮質が状況の評価を行ったときに起きる。評価の基準となるのは、私たちがそれまでに積んだ経験である。
そして後になって、その物音をたてたのは猫だったことがわかると、大脳新皮質は状況の評価をあらため、体のその他の部分に警報解除の信号を送る。危険が去ったことで、体はまたもとのリラックスした状態に戻る。

あなたに情動を変えることはできないーーそれは人間の装備の一部として、あなたが生まれる前にすでにインストールされていた古いプログラムだからだ。まだ洞窟に住んでいた私たちの祖先にも、このプログラムは備えつけられていた。
しかし感情は、それよりもずっと新しい部位である。大脳新皮質の働きによって発生する。それはつまり、感情はあなた自身によってつくられているということでもある。

あなたがある感情に徹底的に執着すると、あなたは生化学のカクテルを自分の血液のなかに注(つ)ぎ足しつづけることになるため、その感情が消えることはない。外部からの信号がまだ存在しているからではなく、大脳新皮質が活動しているために感情が維持されるのだ。
私たちは、感情というのは不変のものだと考えているーーだが、感情は変えることができるのだ! あなたがどう感じるかを決めるプロセスには、あなたの理性も大いに関与している。思考を変えれば、感情も変化するのである。

情動と感情が同じものではないということを習得すれば、感覚器官を通して知覚する刺激が私たちの感情を左右するのではなく、その刺激に私たちがどんな意味を与えるかで感情が決まるのだということも理解できるようになる。
私たちの感情を決めているのは私たちの評価であって、出来事ではない。今度あなたが優先道路を運転しているときに、わき道から別の車が突っ込んできて、頭に血がのぼるのを感じたときには、そのことを思い出すようにするといい。

感情は、道案内の標識板の役割も果たしてくれる。どの思考パターンや記憶があなたに影響を及ぼしているかを突き止める手がかりになるのだ。
たとえば、あなたは誰かと議論をするたびにいつも嫌な気持ちになるのたとしたら、次にその気持ちを感じたときには、その感情をあなたにとっての道しるべだと考えて、こんなふうに自問してみてほしい。
いま自分には何が起きているのだろう?
たったいま経験したことについて、自分はどう考えているだろう?
自分は、これからも議論のたびにいまのような気持ちになることを受け入れてもいいと思っているだろうか、それとも自分には、嫌な気持ちにならずにすむように変化する用意があるだろうか?
いま頭に浮かんだトラウマになっている経験の記憶を消して、もういまのように感じたり反応したりせずにすむようになるにはどうすればいいだろう?
自分の感情の責任は自分にあるということを、自分は認める気があるだろうか。それとも、不快感の責任をこれまでどおり周りに押しつけて、犠牲者の役割に浸りつづけたいだろうか?

『潜在意識をアップデート』 第1章 より ティーモン・フォン・ベアレプシュ:著 安原実津:訳 サンマーク出版:刊

図2 刺激 から 感情 が生まれるメカニズム 潜在意識をアップデート 第1章
図2.「刺激」から「感情」が生まれるメカニズム
(『潜在意識をアップデート』 第1章 より抜粋)

大脳辺縁系から生じる「情動」は、私たち人間の先祖が積み重ねてきた記憶から生じる、無意識に起こる人類共通の反応です。
一方、大脳新皮質から生じる「感情」は、個人が積み重ねてきた記憶から生じる、顕在意識に起こる個別の反応です。

情動という化学物質のカクテルを、感情という形に加工するのが大脳新皮質です。
大脳新皮質の情動の加工パターンを変えることで、受け取る感情も変わってくるということ。

「顕在意識」と「潜在意識」の役割とは?

私たちの脳は、その働きにおいて、大きく2つに分類されます。
「顕在意識」「潜在意識」です。

ベアレプシュさんは、この2つの意識の違いについて、以下のように解説しています。

 あなたの顕在意識は、論理と理性と意志力と創造力をつかさどっている。ものごとを予測し、計画し、慎重に吟味するときに働いているのは顕在意識だ。コンピュータでいえば、RAM[オペレーティングシステムがそのとき開いているプログラムを一時的に保存し、処理する場所]のような役割を担っている。私たちが意識的に行うことはすべてここで処理されていて、私たちの決断の5%はここで下されている。

脳の働きの大部分は潜在意識において行われる。私たちが過去に経験したことや、その経験を私たちがどんな情動と結びつけたかはすべてここに保存されているのだ。私たちの持つ習慣や能力がすべて保存されているのもここで、コンピュータでいえばハードディスクに該当する。

私たちが何かを変化させようとするときは、潜在意識に働きかけなくてはならない。新しいプログラムを構築できるのも、古いプログラムを書き換えたり完全に消去したりできるのも、潜在意識においてだからだ。そこで何かを変化させると、私たちの生活ぶりには必ず何らかの作用があらわれる。しかも潜在意識には、私たちの知覚を瞬時にがらりと変える力もある。
催眠術ショーで観客を驚かせているように、誰かにそこにいないユニコーンの幻覚を見させることも、熟した甘いりんごを食べるようにレモンを食べさせることも、よい香りを放つ花束の匂い嗅ぐように隣の椅子にすわっている人の匂いを嗅がせることもできる。

変化が起きるとその影響は広範囲に及ぶため、潜在意識は批判的な精神の持ち主によって保護されている。脳にはドアマンのような役割を果たしている、潜在意識を守るための担当部局があるのだ。ドアマンは、その“クラブ”に本当にふさわしい客以外はなかに入ってこられないように目を光らせている。
誰かにその人のためになる変化を起こそうとするときに、その人を催眠にかけるのは、催眠状態にあるときにはドアマンが潜在意識への道を開いてくれるからだ。催眠状態にある人の脳で何が起きているかは、MRIで、もしくは脳波測定を行えば、画像として具体的に表示させることができる。

私たちの脳は、さまざまな周波数の電気信号を発している。この周波数の揺れを測定して記録したものが脳波だ。脳の働きが活発になればなるほど、つまり、神経細胞間のコミュニケーションが活発になればなるほど、出される脳波も強くなる。
私たちは、1日のほとんどの時間をベータ波の意識状態で過ごしている。注意力と知力の働きは平均程度からやや高めの、通常の覚醒時の意識状態だ。ストレスレベルが上がったり、命がおびやかされたように感じたりすると、脳波はベータ波のなかでも周波数の高い領域に移行する。

軽くリラックスし、低めの周波数の脳波が出ている状態は、アルファ波状態と呼ばれる。白昼夢に浸っているときや眠りに落ちる少し前に陥る状態で、あなたの注意力は内側に向くようになり、リラックスした気持ちになる。
あなたがもの思いにふけっているときや心地よい達成感を味わっているとき、視線が何かに吸い寄せられているときやあなたの自動操縦装置がオンになっているとき、すでに身についている単純な動作をしているときにも(編み物や壁のペンキ塗りやジョギング、水泳など)、あなたはアルファ波状態にある。

瞑想や浅く眠っているとき、催眠にかかっているときは、脳はシータ波状態にある。この状態をあなたは、少なくとも日に2回は自然な方法で経験している。眠りかけで、深いリラックス状態に入りつつあるとき(デルタ波の段階である、深い眠りに落ちる直前)と、朝、目覚めた直後だ。
もしかしたらあなたはこの段階を「夢うつつの状態」としてすでにご存じかもしれない。つまり催眠状態というのは、催眠術師の導きがなくては陥ることのできない状態ではないのだ。

催眠を用いると、この深くリラックスした状態にごく短時間のうちに到達することができる。催眠に少し気味の悪さをおぼえる人が多いのはそのためだ。 しかし催眠にかかっているときは、心からリラックスできる。自力でこの状態に到達できる場合もあるが、催眠を使ったほうが時間は短縮できる。

私はときどきこんな質問をする人に出会うことがある。
「でも、もし私を催眠状態から戻せなくなったら、どうなるんです? 私はずっと催眠にかかりっぱなしになるんですか?」

自宅のノートパソコンで、私がゲストとして呼ばれていたトークショーの動画を見たという女性から、こんな話を聞いたこともある。
その番組で私は、画面の向こうの視聴者に、ちょっとした催眠トレーニングに参加するよう呼びかけていた。興味を持った女性はそれを試してみようと思ったらしいのだが、そこでこんな恐ろしい考えが浮かんだそうだーー。
突然、番組の配信が中断したらどうしよう?
インターネットの調子が悪くなったりしたらどうしよう?
そうしたら自分は一生パソコンの前にすわったままで、誰も催眠から解き放ってくれないのだろうか?

同じようなことを考えたことがある人は、安心してほしい。舞台の上やテレビ画面のなかの睡眠術師が突然ばたりと倒れて死んでしまったとしても、あなたは自力で催眠状態から抜け出すことができる。
眠りに落ちるときや目覚めるときと同じように。このこともまた、映画館で映画を見ているときに置き換えて考えてみるといい。
映画が佳境に差しかかってから20分ほど経ったところで、上映がいきなり中断してしまったとする。あなたはその後どれくらい椅子に座ったままでいるだろうか? 5分? 10分? それとも一生? そのとおり、もちろんすぐに席を立つはずだ!

催眠術師があなたに話しかけるのをやめた時点で、自然とあなたの顕在意識が介入してきて、映画のチケットの払い戻しを求めるように指示を出してくれるのだ。

「催眠(ヒュプノーゼ)」という言葉は、古代ギリシャ語で「眠り」を意味する「ヒュプノス」に由来している。しかしいまでは、催眠状態にある人が眠っているわけではないということはあなたもご存じだろう。もし眠っているのなら、その人はデルタ波状態にあるはずだ。
あなたの「批判的な精神の持ち主」、つまりあなたのドアマンは、控えめになっていて活発に働いてはいないが、それでも、完全に動きを止めているわけではない。一歩下がって、遠くから全体を眺めているだけだ。何かドアマンの気に入らないことが起きるとーーたとえば何かがあなた自身のモラルに反するなどーー、ドアマンはすぐにまた持ち場に戻って、あなたがその暗示を実行することを妨げてくれる。

研究者たちが突き止めたところによると、催眠状態にあるときは、あなたの行動をコントロールする脳の部位と、あなたの行動を評価する脳の領域の接続がダウンしているらしい。催眠にかけられている人が、なんの疑問も持たずにこっけいなことや奇妙なことをしてしまうのはそのためだ。
つまり、夢を見ているときと同じような状態なのであるーー夢を見ているときあなたは、自分の行動を評価せず、自分が飛べるということをあっさりと受け入れているはずだ。さらに外部からの刺激を知覚し、評価する脳の領域の働きも低下する。
催眠状態にあるとき、人は、外部からくるものがまったく気にならないほど自分の世界に没入しているということだ。自分の内側の世界のほうが、外よりも現実的に感じられるのである。

『潜在意識をアップデート』 第2章 より ティーモン・フォン・ベアレプシュ:著 安原実津:訳 サンマーク出版:刊

図3 顕在意識と潜在意識 感情をアップデート 第2章
図3.顕在意識と潜在意識

図4 脳の周波数の種類 潜在意識をアップデート 第2章

図4.脳の周波数の種類
(『潜在意識をアップデート』 第2章 より抜粋)

私たちの習慣や行動を支配しているのは、潜在意識です。
その潜在意識に働きかけるには、その前に立ちはだかる「ドアマン」に脇にどいてもらう必要があります。

ドアマンが働かずに、潜在意識への道が開いているタイミング。
それが脳波が「シータ波」や「デルタ波」の状態のときだということです。

催眠術は、この仕組みを利用して、潜在意識に直接命令します。
そのため、不可能と思われることを現実にすることができるのですね。

ネガティブな感情を解消する「迅速なEFT」

恐怖症などの、ネガティブな感情を解消する。
ベアレプシュさんが挙げている方法のひとつが「迅速なEFT」です。

EFTとは、感情解放テクニック(Emotional Freedom Technique)の略で、アメリカ人のゲイリー・クレイグによって開発された、苦痛となる感情を解消するためのテクニックです。

迅速なEFTのプロセスは、潜在意識に存在していて、問題を引き起こす要因となっている情報を変化させる。問題が存在するということは、その問題を「問題」として成立させている証拠(経験したことの記憶や記録)と感情が存在するということだ。
問題が「問題」になるのは、それを問題だとみなす感情が存在するからだ。そしてそれを問題だと感じさせているのは、その対象である何かに対するあなたの潜在意識のとらえ方である。

たとえば、ある人が停めてある車のなかから聞こえてくるうるさい音楽に腹を立てていたとしても、別の人はその音楽を楽しんでいるかもしれないーー同じうるさい音楽を聞いても、その人はそれを心地よく感じるのだ。
どちらの場合も、潜在意識の指示によって生じる反応である。停めてある車から聞こえるうるさい音楽が、ネガティブな評価と結びついているか、ポジティブな評価と結びついているかが参照され、その結果に見合う情動を生じさせるための化学物質をつくり出すよう脳が各器官に信号を送っているのだ。

迅速なEFTには、体の各器官と結びついているツボに精神を集中させることで、脳と各器官の間の信号を断ち切る働きがあるだけでなく、脳にある情報や不快な感情を引き起こす原因が保存されている記憶装置を書き換える作用もある。
つまり、うるさい音楽を不快に感じる人が、自動的に起こるこの反応を変化させたい場合には、音楽が聞こえてきたときに迅速なEFTを使って、怒りのもととなる化学物質の生産をストップさせればいいというわけだ。
そうすれば、潜在意識におけるうるさい音楽の意味を「無作法」や「煩わしい」(あるいはその人が教え込まれたなんらかのネガティブな印象)から、「楽しい」や「よろこび」に変化させることができる。

私はいまから、その具体的な手順をお伝えしようと思う。
日常において感情的に疲弊するような出来事があったときには、いつでも適用できるテクニックだ。私にとっては鞄に入れて常に持ち歩いているマスターキーのようなもので、潜在意識のプログラムが私の意思に反した動きをしようとしたときは、いつもこの手法を使ってコントロールを取り戻すようにしている。
もちろん、迅速なEFTを経験豊かな施術者に施してもらう場合と自分の手で行う場合では、得られる効果に違いがある。プロの助けを借りればもっと深いところまで入り込めるし、変化を長期にわたって維持できる。
それでも、次にお教えする基本的なテクニックを使えば、あなたのなかで生じるさまざまな反応をポジティブに変化させることはできるはずだ。迅速なEFTは、情動や感情に振り回されそうになったときにいつでも使えるすばらしい道具だ。
自分の感情に責任を持ち、現状に満足しないようにしよう! 自分をつくり変えるのだ。
では、手順の説明を始めよう。

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トレーニング 8 迅速なEFT

過去の出来事を思い出したり、これから起こることを想像したりして不快な反応をおぼえたときには、迅速なEFTを使ってみよう。もちろん、感情のコントロールを失いそうになったときに、その場で使ってみるのでもかまわない。
基本的には、あなたのなかに望まない感情が生じたときにはいつでも適用できるテクニックだ。悲しみ、怒り、嫉妬、恐怖、ねたみなど、あなたが不快に思う感情ならどんなものに対しても効力を発揮する。

ステップ①
次のふたつのことを自分に問いかけよう。

質問1:自分がいま問題を抱えていることを、自分はどこで感じ取っているだろう?
自分のなかにある問題が、心身のどんな反応としてあらわれているかを知覚しよう。その感情があなたのなかに存在することがどうしてわかるかを感じ取るだけでいい。
あなたはそれを心で感じているだろうか、体で感じているだろうか、それとも両方で感じているだろうか?
あなたは震えているだろうか?
呼吸が浅くなっているだろうか?
膝ががくがくしているだろうか?
それとも、鼓動が速くなっているだろうか?

問題を抱えていることがわかる部分に注意を向けよう。アップデートが必要なのはその箇所だ。

質問2:その感情の強さはどれくらいだろう?
ゼロから10までの目盛りを思い浮かべよう。ゼロは何も感じない状態、10はこれ以上ないほど強く何かを感じている状態を意味している。あなたのなかで起きている反応の強さはどのくらいかを評価しよう。

ステップ②
人差し指と中指をそろえて伸ばし、指先で次の場所を10回ほどタッピングする。タッピングしているあいだは、肌に触れる指の感覚に意識を集中させよう。

(1)眉間
(2)目の横の眉毛が終わるあたり
(3)目の下の頬骨の上
(4)鎖骨の上

タッピングしながら、「それを解き放ちなさい」と声に出して言う。
さらに「それを解き放っても大丈夫」、あるいは「それを解き放っても問題は起こらない」「それを解き放ってしまいなさい」とつけ加えてもいい。

ステップ③
片方の手首をつかんで深呼吸する。息を吐くときには、心地よい気分になれるような過去のよい出来事を思い出し、「平穏」と言う。

ステップ④
あなたの問題に意識を戻し、それがどのように変わったかを感じ取る。気分は変化しただろうか?
あなたのなかに生じた心身の反応は、まだいくらか残っているだろうか?
もし残っているのなら、その強さはゼロから10までのどのレベルだろうか?
レベルがまだゼロまで下がっていない場合は、もう一度タッピングを繰り返す。その後もう一度、心身の反応のレベルをチェックする。
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この一連の手順を、あなたの反応のレベルがゼロになるまで繰り返す。この点はとても重要だ! 10分か、あるいはそれ以上時間がかかったとしても、レベルがゼロにならないうちはやめてはならない。そうしないと、潜在意識で起こる反応に持続的な作用を及ぼすことはできないからだ。

新しい習慣を身につけるのに2カ月から8カ月を要するということは、もちろん、一度迅速なEFTのタッピングを行ったり、たった一度だけ催眠セッションを受けたり、新しい信念を一度思い浮かべたりするだけではあなたの問題は治癒しないということだ。残念ながら、脳を変化させるには労力を費やさなくてはならない。

つまり、長年あなたの潜在意識の妨げとなってきた古い道を行くかわりに、あなたが行きたいと思う道を、あなた自身が意識的に何度も繰り返し選ぶ必要があるということだ。
変化を起こしたければ、それを実現するための何かをしなくてはならない。

『潜在意識をアップデート』 第4章 より ティーモン・フォン・ベアレプシュ:著 安原実津:訳 サンマーク出版:刊

図5 迅速なEFT 潜在意識をアップデート 第4章

図5.迅速なEFT
(『潜在意識をアップデート』 第4章 より抜粋)

感情は、いかなるものも、情動から生まれる反応にすぎません。
反応の仕方を変えてしまえば、どんな恐怖症でも克服できるということです。

ネガティブな感情につながっている経路を、ポジティブな感情につながる経路に切り替える。
そのための方法として、この「迅速なEFT」は有効だということですね。

「瞑想」でストレスをなくす!

ベアレプシュさんは、原則的に、あなたが不快な感情をおぼえるときは常にストレスホルモンが放出され、その濃度はだんだんと上昇していき、ストレス下で放出される化学物質のカクテルが体内で分解されなかった場合、それらは毒として作用すると述べています。

ストレスホルモンの分解を促し、ストレスを緩和するための方法のひとつが「瞑想」です。

瞑想とは、あなたの心の内側へ向けて落ち着かせ、精神を集中させる一方で、外側の世界がフェードアウトしていくプロセス全体を指す言葉です。

 朝、ベッドに横になったまま10分間意識を内側に向けて、これから始まる1日のために心の準備をしたとしたら、それは瞑想をしていることになる。
オフィスの机にすわって5分間目を閉じて、自分の内側へ目を向けて自分の呼吸を観察すれば、それも瞑想だ。夜、ソファでくつろぎながらその日に感じたさまざまなことをありのままに観察すれば、それであなたは瞑想をしていることになる。
瞑想をするのに長年の訓練は必要ないし、ヨガ行者になるための修行を積む必要もない。誰にでもその方法を学ぶことができ、実践することもできる。

瞑想中に意識を向けるのは、あなたとあなたのなかで起きていることだけだ。重要なのはいまだけで、過去や未来は関係ない。
上司のことや住宅ローンの次の支払いのことや、あなたを夜眠れなくさせるような思考はそこには存在しない。このメンタルトレーニングのおかげで体からはストレスが取り除かれ、体はようやく安らぐことができる。
あなたという存在は抽象化し、具体的な問題からは遠ざかって、曖昧さのなかへ入り込んでいく。生きていくためには、こうした時間を持つことは不可欠だ。ヨガでも、サウナやスパでも、散歩でも、このプロセスを経験するための手段はなんでもいい。こうした時間を持てば、あなたはようやくまたリラックスすることができるし、あなたの体もホメオスタシスの状態に戻ることができる。

心を静める時間はとても重要だ! まだ、自宅の上を通過中のハリケーンのことをおぼえているだろうか?
もしそのハリケーンがそのまま過ぎ去ることがなかったら、と想像してみよう。
その場合、あなたがバスルームの棚のちょうつがいを修理する機会は二度と訪れないだけでなく、あなたの家はその間ずっと屋根がないままで、前庭の補修のことは話題にすらならないだろう。
だから、意識してリラックスする時間をつくることは重要なのだ。

そうでなければ、化学物質は血液中にとどまったままになり、あなたはストレスを抱えたままになる。ホメオスタシスの機能が働くことはほぼなくなって、自然治癒力も発揮されなくなる。
なぜならたったいま学んだように、ストレスモードにあるときは、自己再生プロセスは作動しないからだ。だが瞑想をすれば、「洞窟の前にサーベルタイガーは待ち伏せてない、だから自然治癒プロセスを始めていいのだ」ということを、自分の体に知らせることができる。

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トレーニング 9 感謝の瞑想

感謝の気持ちを持つトレーニングを定期的に行うと、ポジティブなことに目を向ける習慣が身につくだけでなく、常にほがらかで幸せな気分で過ごせるようになる。
私たちは大きな幸運が舞い込むことばかり期待して、小さな幸運を見過ごしてしまいがちだが、感謝の瞑想をすれば、あなたは自分の人生を新しい視点からとらえ、いまよりも多くのよろこびを感じることができるようになる。

①周囲にある電子機器の電源や、集中を妨げるような音はすべて切っておく。

②楽な姿勢ですわる。あなたにすでに決まった瞑想の姿勢がある場合は、その姿勢ですわるといい。

③深呼吸をする。

④あなたの内側に目を向けよう。あなたの心や体は、いまどんな状態にあるだろう? いまどんなことが心地よく感じられるだろう? もしかしたらそれは、いま自分だけの時間のなかで誰にも邪魔をされずに瞑想ができていることかもしれない。いまこの瞬間を楽しんで、過去や未来に関する思考はすべて解き放とう。

⑤ほほえもう! 目は開いていても、閉じていてもいい。笑みを浮かべ、体中をほほえみで満たそう。

⑥あなたの体を感じようーー顔も、首も、上半身も、両腕も、両足も。日々あなたに尽くし、あなたを生かし、あなたという人間を内包してくれている体に感謝しよう。このところ特に忙しく働いてくれている体の部分がある場合は、その部位にも感謝しよう。

⑦鼓動を感じ、心臓と心に感謝しよう。どちらも絶えずあなたのために働いてくれている。またその際に、自分を大切にし、自分自身に注意を払うことも心に誓おう。

⑧精神にも感謝しよう。あなたの精神は、あなたという存在をいついかなるときもサポートしてくれている。新しいアイディアをもたらしたり、反省させたり、頭のなかの情報同士を結びつけて新しいひらめきや着想を与えてくれたり、思い出を管理したり。精神に感謝を贈ろう!

⑨今日、何か特別によいことがあっただろうか? あるいは、よろこびを感じたり、誇りに思ったりすることがあっただろうか? それらの出来事に対して感謝しよう。

⑩あなたの目をもう一度体に向けよう。体は変化しただろうか? 温かくなっている体の部分はあるだろうか、あなたの内側からはよろこびがあふれているだろうか、体のなかにやすらぎが広がっているだろうか? 何も感じられなかった場合でも、体の変化に感謝しよう。

⑪次は、うまくいかなかったすべてのことに感謝しよう。あなたの敗北に敬意を表し、それらに感謝するのだ。そうすれば自分をたたえられるだけでなく、自分自身にも感謝を贈ることができる。ネガティブな出来事のなかにポジティブな何かを見いだすのは必ずしも容易なことではない。だから、その何かを見つけるために集中しよう。それはどこかに隠れていて、すぐには姿をあらわさないときもある。非常に小さなものである場合もある。それでも、ポジティブなことは必ずどこかにあるはずだ! 見つけ出して、それに対して感謝をしよう。

⑫最後にもう一度深呼吸をする。そして笑みを浮かべて、あなたのほほえみと、このささやかな瞑想を行う機会が持てたことに感謝しよう。
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『潜在意識をアップデート』 第5章 より ティーモン・フォン・ベアレプシュ:著 安原実津:訳 サンマーク出版:刊

瞑想には、私たちの気分と記憶力と認知能力と集中力と視空間認知能力[視覚情報からものの位置や向きなどを認識する能力]をアップさせる働きがあります。
さらには、ネガティブな情動の影響を減少させる効果まであるとのこと。

私たちにさまざまなポジティブな効果をもたらしてくれる「瞑想」。
習慣にして続けない手はないですね。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

私たちは、人格と性格を同じものと見なしがちですが、完全に同一のものではありません。

ここでいう人格とは、あなたという存在の核をなすすべての部分のことです。
一方、性格とは、人格のなかでも、私たちが生きてきた過程において作られる部分を指します。

ベアレプシュさんは、私たちの性格は、育った環境や、私たちを取り巻く周囲の状況や、私たちが体験するたくさんの出来事を通して形成されるため、性格は変えることできるとおっしゃっています。

性格を変えるために、過去の体験を変えることはできません。
ただ、それらの体験と結びついている感情を変化させることならできます。

今の自分は、古い意識のとらえ方から形作られた性格によるもの。
新しい意識のとらえ方をすれば、これまでとはまったく違う自分に生まれ変わることができます。

「自分はこういう人間だ」

そう決めつけているのは、私たち自身の思い込み、つまり潜在意識のとらえ方です。

人生を縛っている鎖を断ち切り、自由に飛び回る。

潜在意識を自由自在に操る催眠術の魔法の力を、あなたもぜひ試してみてください。

潜在意識をアップデート


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