【書評】『潜在能力が開花する速聴インプット術』(井上裕之)
お薦めの本の紹介です。
井上裕之さんの『潜在能力が開花する速聴インプット術』です。
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井上裕之(いのうえ・ひろゆき)さんは、歯学博士、経営学博士です。
世界初のジョセフ・マーフィー・トラスト公認グランドマスターであり、本業の傍ら世界的な能力開発プログラム、経営プログラムを学ばれ、独自の成功哲学「ライフコンパス」をつくり上げられ、「価値ある生き方」を伝える著者として全国各地で講演を行われるなど、ご活躍中です。
今、「速聴」によって能力を高める環境が整ってきた!
能力開発、自己啓発、成功哲学などの学習、語学や資格試験のための勉強をしてきたけれど、思うように結果が出ない。
そんな悩みを抱えていた井上さんが、たどり着いた答えが「速聴」という聞き慣れないメソッドでした。
CD付きの本を出版したときと比べ、現在ではオーディオブック市場が拡大し、ビジネス書のオーディオブックもかなり増えました。
2020年1月の調査によると、2024年にはオーディオブックの市場規模は約260億円と推計されています。2018年では50億円にも満たなかったことを考えると、驚くべき成長スピードです。
かつては速聴をしようにも、オーディオブック版がある書籍がほとんどなかったため、習慣化することが難しいといった声をたくさんいただきました。しかし今、速聴によって潜在能力を引き出せる環境が、ようやく整ったといえます。
私もオーディオブックを購入していますが、音声もすばらしいうえに倍速設定も自在にコントロールできます。すでにオーディオブックを倍速再生して聴いており、その効果を実感している人も多いはずです。
また、ユーチューブやネットフリックスなどの動画配信コンテンツも簡単に倍速できます。
これらを積極的に「学び」に活用しないのはもったいないことです。情報や知識のインプットは当然のことと、脳トレのように脳の働きを活性化させることだってできます。
もちろん、私は小説などの文芸作品、映画やドラマ、バラエティ番組については作品の魅力を存分に味わいたいので倍速にすることはありませんし、オススメもしません。しかし、それ以外の情報提供を中心とした学びとなるコンテンツについては、2倍速、3倍速で聞いても問題ないと考えています。
速聴をすることによって効率的に知識を吸収できる、タイムパフォーマンスが優れているので時間を有効に活用できるといったメリットがあることは想像しやすいでしょう。本書では、そうした効果をより効率的に得られる方法についても記すものの、速聴によって自分の中に存在していた多くの能力を引き出し、鍛えることに主眼をおいて書きました。
本文でも記しますが、私が速聴を始めたのはおよそ25年前、カセットテープからCDへの移行期でした。
当然、オーディオブックは充実していませんし、倍速再生ができたとしても聴き取れるようなクオリティの音声を実現できるプレイヤーもありませんでした。そうした環境の中でも、私は自己啓発系プログラムの教材だったカセットテープや、自分でお金を払ってつくったオーディオブックを速聴することで、ビジネスにおいてもプライベートにおいても、さまざまな困難を乗り越えてきた自負があります。私の本業は歯科医師です。25年前、一介の歯科医師として日々奮闘していたころ、この「速聴」に出会い、歯科治療の最新技術の研究はもちろん、先にも記したジョセフ・マーフィー、ナポレオン・ヒルなどの教えを吸収することに情熱を注いできました。
そして現在も本業の他に、溝口メンタルセラピストスクールのロイヤルマスターメンタルセラピストとしてコーチングなど「社会貢献」を人生の目標として、医学・経営学・心理学・マーケティング・成功哲学など幅広く学び続けています。
おかげさまで、公演の依頼をたくさんいただき、週末になると地元の帯広から東京をはじめ全国さまざまなところへうかがっています。これらはすべて、速聴をしたことによる賜物です。
ぜひみなさんも、速聴という未知の体験をとおして、日々の活動、そして人生にお役立ていただければと願っています。『潜在意識が開花する速聴インプット術』 まえがき より 井上裕之:著 フォレスト出版:刊
本書は、井上さんが「速聴」の体験をとおして得ることができた効果と能力、そしてその方法をシェア
した一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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速聴によって開花する能力とは?
速聴によって得られる能力はたくさんあり、井上さんは、それを以下のようにまとめています。
効果が出るまでが速く、実感しやすい能力
①相手の気持ちを汲(く)み取り、最適な返答ができるコミュニケーション能力。
②短時間でタスクをこなす集中力。
③以前よりも速く本が読めるようになる速読力。効果が出るまで遅く、実感しにくい能力
④自分にとって最良の選択がすぐにできるようになる判断力。
⑤並行して異なる作業を行うマルチタスク能力。
⑥ワーキングメモリ(作業や動作に必要な情報を一時的に記憶・処理する能力)の容量が増えることでアップする記憶力。記してあるとおり、わりと速く実感できるものもあれば、反復することでようやく得られるものもあります。また、能力が上がったにもかかわらず自分では実感できず、まわりからの指摘でようやく「ああ、そうか」と気づくものもあります。
速聴を何回か試すと、あることを感じます。それは、速聴したあとの時間の流れの遅さです。これが、「効果が出るまでが速く、実感しやすい能力」の正体です。
速聴が習慣になると、速聴をしていないときの生活が非常にスローに感じます(下の図1を参照)。たとえるならば、時速100キロメートルで走行した高速道路から一般道路へ減速して降りたときの体感速度です。スピードメーターが示す時速60キロメートルよりも、遅く感じるという人が多いはずです。まさに速聴も同様で、高速音声に頭が慣れると等倍速に戻したときはもちろん、会話したり、テレビを見たりするのも、しばらくゆっくりに感じます。
それは「頭の中に余裕が生まれている状態」とも言い換えることができます。すると、思考の言語化や、複雑な概念の理解などがスムーズに行えるようになるのですが、これがコミュニケーション能力や集中力、速読力のアップに直結するのです。
(中略)
一方、後者の「効果が出るまで遅く、実感しにくい能力」は、速聴の積み重ねや反復によって脳の神経ネットワークが強化され、徐々に発達していく能力です。
前者の能力と比較して、主観的に評価することが難しいために自分ではなかなか気づきにくく、「あらためて考えてみると、あの選択をしていてよかった」とか、テストの点数が以前と比べて確実に上がったなど、事後に感じるものや、他人から言われて初めて気づいたりします。
速聴をすることを漫画「ドラゴンボールZ」に出てくる「精神と時の部屋」に例えている実践者がいました。
私は知らなかったのですが、「精神と時の部屋」とは、現実世界の1日で1年分の時が流れる部屋のことです。つまり、この部屋に入ると現実世界の1日で1年分の修行ができ、自分の能力をものすごいスピードで伸ばせるようになるということです。さすがに1日で1年分のインプットができるとはいいませんが、速聴で2、3倍速で情報をインプットすることは、通常のスピードで文章を目で追いかけるよりも、圧倒的に吸収する量が多いことは間違いありません。『潜在意識が開花する速聴インプット術』 第1章 より 井上裕之:著 フォレスト出版:刊
(『潜在意識が開花する速聴インプット術』 第1章 より抜粋)
速聴は、脳の大部分を効率よく刺激できるということですね。
聴くだけで、想像を超える効果を得られる優れたツール。
ぜひ、試してみたいですね。
「速聴速読」の驚くべき効果とは?
速聴によって高められる能力の一つが「速読」です。
井上さんは「速聴によって速読力を上げる」には、2つの意味合い
があると指摘します。
1つは「速聴速読」という方法のことです。読んで字のごとく、オーディオブックを2倍速、3倍速で聴きながら文章を目で追う方法です。音声がペースメーカーとなり、当然のこと、通常の2倍、3倍の速さで本が読めるようになるわけです。
だったら、紙の本や電子書籍を読まず、オーディオブックだけ聴いていればいいではないか、という当然の疑問も出てくるでしょう。
しかし、耳で音声を聴きながら、目で文章を追うというスタイルのほうが、確実に理解度は増します。音が文字という「形」として認識できるわけですから、より記憶に残りやすいですし、同音異義語などは音で聴くよりも目で見たほうが瞬時に判別できます。
また、速聴速読では、音声という聴覚への情報が脳の聴覚野を刺激し、文字という視覚からの情報が脳の視覚野を刺激します。
脳の異なる2カ所を刺激するので、どちらか一方の刺激を受けているときよりも、脳は活性化します。後に解説しますが、人が情報を受け取る際の認知特性には差があるので、「聴覚だけ」「視覚だけ」という感覚の使い方ではなく、その2つを同時に使ったほうが効率的といえるのです。
こうした相乗効果があるため、私はオーディオブックだけ、紙の本や電子書籍だけ、という読み方よりも、耳と目の両方から情報をインプットする「速聴速読」をオススメしています。
現在市販されているオーディオブックの多くは、図版などを除いてテキストと一緒には販売されていません。したがって速聴速読をするのであれば、オーディオブックと紙の本、あるいは電子書籍もセットで購入することになります。とても贅沢(ぜいたく)な読書方法ですので、すべての本で実践するのは難しいでしょう。しかし、「分厚いけど、この本だけはしっかり読んで、情報を吸収したい」という特別な本に出会った時に、ぜひ試してください。
(中略)
ペースメーカーとしての音声といっしょに目で文章を追う「速聴速読」とは異なる意味で、速聴によって速読能力が上がる2つめの意味合いとは何でしょう?
それは、速聴を習慣化することで、脳の高速情報処理が可能になることです。頭を速く回転させることに慣れることで、本を読むときもまた、その回転スピードに合わせるように文字情報を処理しようとするので、自然と速読力が上がるわけです。
理屈はわかるものの、頭の中を見ることはできないから、いまいちピンとこないという人もいるかもしれません。
そこで一度、オーディオブックを2倍速か3倍速で数十分聴いたあと、今度は等倍速で聴いてみてください。イライラするくらい遅く感じます。頭はフル回転しようとしているのに、入っている情報は遅く、しかも少ないので、急ぎたいのに渋滞に巻き込まれたような焦りに似た心地がしてきます。
速聴に慣れてからの読書も同じで、普段の自分の読書スピードだと遅く感じてしまうのです。
普通、速読するときは「できるだけ速く読まなければ」と自分にプレッシャーをかけて行うものでしょう。しかし、速聴に慣れた人が本を読むとき、そんなプレッシャーをかけるまでもなく、頭のほうが勝手に「速く、速く」と読みたがるのです。『潜在意識が開花する速聴インプット術』 第2章 より 井上裕之:著 フォレスト出版:刊
(『潜在意識が開花する速聴インプット術』 第2章 より抜粋)
速聴だけでも、速読の能力は高まります。
しかし、それに「読むこと」を合わせると、より効果を高めることができます。
読書スピードを上げたい人は、「速聴速読」を試してみてください。
「速聴速読」で頭の回転が速くなる理由とは?
井上さんは、聴覚も使ったほうが、情報のインプットはより効率的になる
と述べています。
その理由は、聴覚がどのように音を認識しているのか
を知ることで理解できます。
じつは、そもそも音というのは空気中に存在しません。単なる波動です(波動といってもスピリチュアルではなく、あくまで物理学用語としてです)。それを耳(鼓膜)で受け取り音として認識します。しかし、この段階ではその音が何を意味しているのか、何の音なのかは理解していません。
その後、耳から届いた音声情報は脳の聴覚野につながり、その感覚情報がウェルニッケ中枢(感覚性言語野)において脳に蓄積されているデータと照合されることで、初めて「意味をともなった音」として認識されます。
この流れをある音楽家は「すべての音は心から生まれる」と語ったそうです。
情報が一方的に注ぎ込まれるために受動的な作業としての印象を受けがちな速聴ですが、私たちは耳から入ってきた波動を脳、つまり自分の心の中で情報化するという、能動的でクリエイティブな働きをしているのです。
そして、速聴によって情報をインプットすればするほど、脳の神経回路がしっかりしたものになり、音の意味を認識するまでのスピードも速くなります。
わかりやすく、「声」を例にしてみましょう。
身近な人の声であれば、顔を見なくても「父親の声」「わが子の声」などと、すぐに認識できます。それは、身近な人のデータがもともと脳に蓄積されているからです。一方、あまり身近ではない人の声の主はなかなか思い出せません。これは、脳の中のデータが少ないために照合に時間がかかってしまうからです。
このように、同じ「音」でも、脳に蓄積された情報量で認識するまでのスピードが大きく変わるのです。
この特性を使えば、読書でいえば専門性を高めるために同じジャンルの本を読む「固め読み」ならぬ、速聴によって「固め聴き」をすることで、情報をインプットするスピードを格段に上げられます。というのも、同じジャンルに頻出する言葉や概念が脳にデータとして蓄積されていくので、音声との照合がスムーズに行われるからです。
私自身、ナポレオン・ヒルやジョセフ・マーフィーをはじめ、ジグ・ジグラーやポール・J・マイヤーなどの成功哲学のジャンルの本を固め聴きしたことで、効率的に情報をインプットしました。
ぜひ、専門性を高めるためだったり、何かしらの目標がある場合は、それに合致するようなジャンルの本の固め聴きを試してみてください。速聴によるさまざまな効果を一言で有り体にいえば、「頭の回転が速くなる」となるでしょう。
では、脳のどの領域が「回転」しているのでしょうか。
それは脳の前部分にある「前頭葉(ぜんとうよう)」の中です。ちなみに前頭葉は12歳でピークを迎え、その後だんだんと衰えていきます。しかも、老化にともなって最も機能が低下していく部位として知られています。
さて、この前頭葉は、人間の知的能力、身体能力をつかさどる「前頭連合野(ぜんとうれんごうや)(前頭前野)」「運動連合野」「運動野」という領域に分かれており、とくに前頭連合野はさまざまな情報を一時的に保存・結合・分割したりして、思考・行動・計画・推論・・・・・などをつかさどる、最も重要な役目をする脳の司令塔です。
進化した哺乳類ほど大脳に占める割合が大きくなっており、チンパンジーが17%であるのに対し、人間は29%を占めています。つまり、人間が最も人間らしく生きるための機能といえます。
人間の五感である視覚・聴覚・嗅覚・触覚・味覚から入ってきた刺激は、最初に各感覚の感覚野、そして感覚連合野に伝わって「情報」として認知されます。そして感覚連合野から伝えられた情報が前頭連合野に運ばれます。
そして、この前頭連合野の中に「46野」という領域があります。ここが第1章で解説したワークキングメモリをつかさどります(下の図5を参照)。
ワーキングメモリは言葉を理解したり、計算することが主な仕事なので、日常はもちろん、コミュニケーション、感情のコントロール、勉強、ビジネスで頻繁に使われる能力です。いわゆる「頭の回転が速い」というのは、このワーキングメモリが発達していることを指します。
逆にワーキングメモリが弱い人の特性としては、頻繁に忘れ物をしたり、「何度も同じことを聞かないで!」と怒られたり、感情を抑えられずパニックになることが多かったりします。ワーキングメモリの容量が小さいため、情報の処理が間に合わなかったり、どんどん押し出されてしまうことが原因です。
しかし、このワーキングメモリは訓練することで鍛えられることが明らかになっています。大人になっても脳トレをすると新しい神経細胞のシナプスが増えて、神経回路が鍛えられることが知られています。
そのための一番の方法が速聴であり、効果的にワーキングメモリの容量を増やすことができるのです。ワーキングメモリの能力を高くするためには、筋トレと同様に負荷をかけることです。筋肉に適度な負荷を与えることで筋繊維が成長し、筋肉が大きくなります。では、ワーキングメモリにとっての負荷とは何でしょう? その1つがスピードです。
たとえば、制限時間内に百ます計算を解く、英単語を5つ暗記する、というのも効果的な負荷になります。スピードに追われることで、ワーキングメモリの情報処理能力が鍛えられます。とはいえ、必死に迫られなければ、こうしたゲームのようなことをやってみようとは思えないでしょう。
そこで、自分が読みたいと思った本で速聴、そして速聴速読をすれば、楽しみながらモチベーションを高く維持できるので、ワーキングメモリを鍛える訓練としては最適なのです。
脳科学者の久保田競(きそう)先生がおっしゃるには、楽しんで取り組むと脳の腹側被蓋野(ふくそくひがいや)や側坐核(そくざかく)が活性化し、快楽を伝達する脳内物質のドーパミンが分泌されるそうです。するとその影響によってワーキングメモリがある前頭連合野はもちろん、身体の動きをつかさどる運動連合野、記憶を助ける海馬(かいば)の働きもよくなるのです。
同じく脳科学者の定藤規弘(さだとうのりひろ)教授も楽しむことでワーキングメモリの増強につながる可能性を示唆しています。というのも、楽しいことをしているときのポジティブな感情で活性化する脳の領域(吻側前部帯状回)は、ワーキングメモリがある脳の領域の一部だからです。
本書に付属のオーディオブックでもかまいませんし、自分が聴きたい、学びたいと思ったオーディオブックでもかまいません。自分の成長が感じられるものであれば楽しんで試せるはずです。
筋トレも、適度な重さから挑戦しないと、ケガをしやすいですし、成長を感じられません。速聴の場合も、遅すぎず、何とか聴き取れるくらいの速さから始めて、どんどん負荷をかけていきましょう。『潜在意識が開花する速聴インプット術』 第3章 より 井上裕之:著 フォレスト出版:刊
(『潜在意識が開花する速聴インプット術』 第3章 より抜粋)
(『潜在意識が開花する速聴インプット術』 第3章 より抜粋)
(『潜在意識が開花する速聴インプット術』 第3章 より抜粋)
視覚と聴覚は、違う神経回路を通って、前頭前野を刺激します。
両方使えば、それだけ多くの脳の部位を働かせることができます。
速聴速読で、脳に負荷をかけて、楽しみながら能力を高めていきたいですね。
速聴には「人生を大きく変える力」がある!
心には、以下の3つの領域があります。
・顕在意識
・前意識
・潜在意識(≒無意識)
顕在意識とは、「自分が意識していることを意識できる」領域のこと。デカルトの「我思う、ゆえに我あり」を感知できる部分で、脳の大脳皮質に由来しています。
オーディオブックだったら、その意味を理解しながら聴いている領域です。テストのために暗記した言葉や、夕食の献立のために買うべき食材を覚えているような、作業記憶が保存されているワーキングメモリもここにあります。
前意識とは、意識の周辺にある心の領域で、自覚的には感知していない情報が入ります。
たとえば、読書やテレビに集中しているとき、空調や冷蔵庫の音、外から聞こえる自動車が通る音や子どもたちのにぎやかな声は、ほとんど顕在意識からスルーされます(図と地でいえば地)。こうしてスルーされた情報が前意識へ入るわけです。
そして、潜在意識とは、顕在意識や前意識にはのぼらない、意識ができない領域のことです。意識できない=存在しない」というわけではなく、意識していないことにも脳が反応し、記憶もしているので、その存在自体は否定しようのないものです。
しかし、自覚できないゆえに、心理学や脳科学の分野でも未解明なことが多いとされています。
諸説ありますが、意識全体の中で顕在意識の占める割合は10%で、残りの90%は潜在意識と前意識が占めているといわれています。よく意識全体を氷山にたとえられますが、海面に少し出ている頭の部分が顕在意識で、それ以外のほとんど海の中に沈んでいる部分が前意識と潜在意識ということになります。
したがって、私たちの何気ない言動や思考は顕在意識のみの働きによって生まれると考えがちですが、じつは潜在意識が大きく影響を与えています。
潜在意識は古い神経機構に由来しており、意識化が困難で、心の奥底に横たわっています。しかし、意識全体の土台となっているので、海底を流れる深層海流が海上の波のうねりを生み出すように、表層部分の意識へ多大な影響を与えているとイメージできます(下の図6を参照)。急に潜在意識などという言葉が出てくると、うさんくさい、科学的根拠が曖昧など、警戒する人もいることでしょう。とくに、スピリチュアルに興味がないビジネスパーソンは、拒否感を持つのではないでしょうか。
たしかに、「潜在意識」という言葉はある意味マジックワードです。
「成功したのは(失敗したのは)あなたの潜在意識によるものです」「引き寄せたのはあなたの潜在意識です」と、なんでもかんでも「潜在意識」に紐(ひも)づければ、ある程度の説得力を得られるからです。
潜在意識は目に見えないですし、学術的な研究においてもまだ道半ばです。誰もがその存在の全体像を把握していないために、その主張が疑わしくても反証ができないため、非常に使い勝手のいい言葉です。
中には、「量子論」といった科学的な用語を用いて、引き寄せと潜在意識の関係を解説しようとする人もいます。その理論については、個人的には一部共感できるところもあれば、無理筋に感じる部分もあります。もちろん、物理学の研究者にしてみれば、矛盾点だらけに見えるでしょう。
とはいえ、うっちゃるわけではありませんが、自分の人生を好転させよう、能力を上げようとするうえでは、潜在意識に科学的根拠を求めてもあまり意味がありません。それは人生を豊かなものにするという目的の前では本質ではないからです。
「科学的な理屈はよくわからないが、速聴をしたら人生が好転した」という成果こそか重要なのです。
私は、ナポレオン・ヒル、ジョセフ・マーフィーという潜在意識に関する世界的権威のプログラムを長年学びました。彼らも、潜在意識の定義をいたずらに複雑には語りません。単に「エネルギー」など、内側から自分を変える力として考えています。
したがってここでは、「潜在意識にはのぼらない、無意識のうちに自分を突き動かす心」程度で解釈してください。潜在意識をシンプルに定義すると、私たちが普段生活するうえで、潜在意識が大きく関係していることを、より実感できるようになります。
「1億円と1万円なら、どちらが欲しいか」とか、「ホワイト企業とブラック企業だったら、どちらに就職するべきか」といった、非常にわかりやすい選択肢であれば、100人中ほとんどの人が、意識的に同じ選択肢を選ぶことでしょう。
しかし、人生はイエス・ノーチャートをシンプルに選んでいけば、最終的に成功して「上がり」、というほど単純なマス目でできたゲームではありません。
「嫌なヤツだと思っていたのに、好きになってしまった」とか、「ボールに触れるだけでゴールするのはわかっているのに、身体が動かなかった」とか、「いじめはいけないと思っていても、冷たく接してしまう」とか、似たような経験は誰にでもあるはず。
後から振り返ると、自分でも、なぜそうした選択肢を選んだのかわからない場合はたくさんあります。
そうした不合理な選択をさせている原因の1つが、潜在意識の力なのです。
ある信念や思考を繰り返し植え付けられた潜在意識は、行動にも影響を与えるようになります。それか良いものでも、悪いものでも、現実は無意識のうちに潜在意識によって形づくられているのです。
ある研究によると、一般的な家庭で育った人は、成人するまでに否定的な言葉を14万8000回聞かされるといいます。とくに小学生になってからは、家庭や学校、テレビなどから、日々大量にネガティブな情報を浴び続けながら成長していきます。
また、2005年に発表された米国の研究所のデータによると、人間の脳は1日1.2万〜6万回の思考を行っており、そのうちの約80%はネガティブなものだそうです。計算上、多いときは1日におよそ4.8万回もネガティブなことを考えていることになります。
さらに1日の思考の95%は前日と同じことを繰り返し考えているそうで、ネガティブ思考を断ち切らなければ、毎日4万回以上ものネガティブ思考に支配されることになりかねないのです。
「自分には無理」「どうせダメだ」「できっこない」・・・・・といった自己否定の言葉を何万回も聞くわけですから、潜在意識もそうした言葉に説得されてしまいます。おそらく、多くの人がこれまでの人生で、無意識のうちに何度も自分の可能性を自分で閉じてきたのでしょう。私たちは無意識のうちに潜在意識に生かされているのだとすれば、これまでの自分の生き方に満足できない理由もまた潜在意識にあるということになります。
たとえば、潜在意識が「自分には無理」という思考によって固められている人は、新しいことに挑戦することをためらいがちになります。反対に「自分にはできる」とポジティブな思考で満たされていれば、自分を成長させるためにさまざまなことに挑戦するようになるでしょう。仮にそれが失敗したとしても「次こそは」と立ち直るまで時間はかからないはずです。
では、もし潜在意識が成功哲学によって満たされていたとしたら・・・・・?
きっとその人は満足した人生を送れるようになると思いませんか?
ここで問題になるのは、潜在意識によって日々の生活、人生が左右されるのであれば、生まれ持ったもともとの潜在意識によって人生が決まってしまうのではないか、ということです。
まず、この疑問には1つ間違いがあります。
「もともとの潜在意識」とありますが、潜在意識における潜在能力は生まれ持っているものではありません。赤ちゃんとしてこの世に生を受けてから、親の教育やまわりの環境、経験の積み重ねによってつくられていくものです。
では、「潜在意識によって人生が決まってしまう」というのはどうか。
これは真実です。
しかし、残酷な結論に思わないでください。赤ちゃんが成長し、子どもとなり、大人になるにしたがって潜在意識を育ててきたように、今からでも潜在意識を変えることはできるのです。では、こうした過去の情報によってつくられた潜在意識を変えるためにはどうすればいいのでしょうか。
自己啓発書を読んでも変わらないという人がいます。私も、そういう人が大半だろうと思います。そもそも読むだけでも相当なモチベーションが必要です。
そのうえで、書かれていることを行動に移せるエネルギーがある人はどれくらいいるものでしょうか(本来、自己啓発書は読後の行動の結果と併せて評価されなければなりません)。そして、行動したとしても、最後までやり遂げる強い意志や素直さがなければ変わることはできません。
同様に、何十年も生きてきて築き上げた潜在意識を変えることは容易なことではありません。それこそ、意識して変えようとしても、その思いはスムーズに潜在意識には届かないものです。
中村天風先生の本にも書いてありますが、ネガティブ情報を溜めてしまうと、原因と結果の法則そのままに、マイナスの結果ばかりが生まれ、さらにそれがマイナスの情報として蓄積されてしまいます。投資にたとえていえば、マイナス情報を複利で増やし続けるようなものです。
潜在意識の影響で無意識に形づくられた自分の性格特性や、出来事に対する解釈の仕方にも習慣性があるので、いくらポジティブなことを教えたとしても、とらえ方がねじ曲がっていたら、情報はネガティブに変換されます。まるでアクセルとブレーキを同時に踏んでいるようなもので、成果はなかなか出ません。
にっちもさっちもいかないとはこのことですが、この行き詰まりを打開する方法は1つです。
膨大なポジティブ情報をインプットし続けるのです。
さらに、それを絶対達成したいと強く思う明確な自分のミッションなり目的がなければ続きません。このままでは自分の人生が悲惨なものになるというぐらい追い込まれたらおそらく変わるのでしょうが・・・・・。『潜在意識が開花する速聴インプット術』 第4章 より 井上裕之:著 フォレスト出版:刊
(『潜在意識が開花する速聴インプット術』 第4章 より抜粋)
私たちの人生は、心の大部分を占める潜在意識が創り出してます。
潜在意識は、意識の奥、自覚できないので、とてもやっかいですね。
潜在意識を変えるには、これまで植え付けられたネガティブな思考をすべて弾き出してしまうくらい大量のポジティブな情報をインプットする必要があります。
そのためにうってつけの方法が「速聴速読」だということですね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
これまで敷居が高く、面倒なイメージがあった「速聴」ですが、IT技術の進歩でかなり身近な存在となってきました。
スマホ一つでいつでもどこでも聴ける。
しかも、運転など他の作業をしながらでも聴ける。
「速聴」は、そんな“タイパ重視”の今どきのインプット法といえます。
ぜひ、皆さんもお試しください。
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