【書評】『育てる技術』(石田淳)

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 お薦めの本の紹介です。
 石田淳さんの『育てる技術』です。

 石田淳(いしだ・じゅん)さん(@Ishida_Jun)は、行動分析を基にしたマネジメント手法を独自の手法でアレンジし、「行動科学マネジメント」として確立されました。
 現在はその道の権威として、講師や執筆活動など多方面でご活躍中です。

今までの部下指導法は通用しない


 労務行政研究所が行った調査では、大卒の新入社員が課長に昇進するのは平均で39.4歳です。
 約17年で部下を持つ立場になるという計算になります。

 管理職の立場になると、自分に与えられた業務をこなすだけではいけません。
 部下のマネジメントもしなければならなくなります。

 自分自身で仕事をこなすこと。
 部下を育てながら仕事をこなせるようにすること。

 両者は、まったく別物です。
 上司の指導法をそのまま実践しても、たいていの場合はうまくいきません。

 石田さんが、今の時代に合った部下のマネジメント法として、紹介しているのが「行動科学マネジメント」の理論をベースとした方法です。

 行動科学マネジメントとは、人のやる気や態度や性格など曖昧でバイアスのかかりやすい要素に頼ることなく、行動に着目する科学的な手法のことです。

 行動科学マネジメントでは、できなかった「結果」ではなく、できなかった「行動」を重視し、問題の本質は部下の態度にあるのではなく、とるべき行動を教えてもらっていないことにあると考えます。

 本書は、行動科学マネジメントの手法を用い、自分がプレーヤーとして成績を収めながら、マネジャーとして成長するための方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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部下の気持ちを汲む必要はない


 多くの上司は、部下を褒めて育てるべきか、叱って育てるべきかで悩んでいます。
 石田さんに言わせると、「部下は教えて育てるもの」です。

 感情で動かそうとすると、褒めるか、叱るかの二者択一になる。どちらも育て方の手段の一つではあるが、その方法で根本が解決するわけではない。
 見え透いた褒め方をしても部下は嬉しくも何ともないし、むしろ不信感を募らせる。ガミガミ叱り続けていたら、部下はストレスがたまって出社拒否に陥るかもしれない。何より、感情をぶつけていたら上司自身が疲れてしまう。
 ただ褒めるだけでも、叱るだけでもダメである。それ以前に、部下にできていないことがあれば、教えればいい。
 そこに感情を交える必要はない。感情を交えるから、部下育成が大変なことに思えるのだ。何ができていないのかを明確に把握し、どうすればいいのかを具体的行動で教えればいい。
 感情ではなく、行動に焦点を当てる。
 それが行動科学マネジメントである。
 すべての結果は行動の積み重ねによって得られる。いい結果が出るのは、いい行動の積み重ねがあったからにほかならないし、悪い結果が出るのは途中の行動のどこかに問題があるからである。

 『育てる技術』 第1章 より 石田淳:著 日経BP社:刊

 できないことには、必ず、その行動のプロセスにおいて誤りがあります。
 それを見きわめて、指摘してあげることが重要です。

「こんなこともできないのか」
 そうイライラを募らせると、問題の本質も見えなくなります。

 あくまでも、冷静に。
 かつ、はっきりと明確に。

 心掛けたいですね。

「スモールゴール」を設定する


 部下を育てるためには、ゴールまで導き達成感を味わってもらうことが大切です。
 とはいっても、新人にいきなり大きなゴールを示したら潰れてしまいますね。

 そこで石田さんは、ビッグゴール(最終目標)の前にいくつものスモールゴール(中間目標)を設け、そのテープを切らせてあげるやり方を勧めています。

 たとえば、半期の売り上げ目標を立てたとき。その目標をクリアすることが部下にとってのビッグゴールだが、モチベーションはなかなか続かない。特に優秀でもない部下にとっては、日々の仕事がただでさえ大変なのに、半年先の数字など考えただけでプレッシャーになる。
 そこで、あなたがスモールゴールを設定する。
「まずは、顧客訪問回数を2割引き上げたらすごいじゃないか」
「1件、契約が取れたらお祝いだ」
 こうして、目に見えるスモールゴールに部下を導く。そして、部下がたどり着いたら声をかけてあげる。それを繰り返しているうちに、やがて部下はビッグゴールまで到達するはずだ。
 大切なのは、スモールゴールに到達した部下を上司が認めていることが、誰にでもはっきりとわかるようにすることだ。タイミングを逃さず、しっかり声をかけよう。このような小さな達成感を味わうことで、部下は確実に仕事をこなし、伸びていく。
 そして、スモールゴールをたくさん与える一方で、最終的なゴールのイメージをきちんと伝えよう。この作業もおろそかにしてはならない。
「おまえはまだ、そんなことは知らなくていい」
「目の前のことだけしっかりやっていろ」
 たとえ、1年目の新人に対してでも、こんな態度をとってはいけない。
 人間は終わりが見えない行動にストレスを感じる。よくわからない作業を黙々と続けるには、想像以上のエネルギーが必要だ。
 だから、上司は目前の行動を部下に指示するだけでなく、仕事の全体像がわかるようにしてやらなくてはならない。自分のしていることが、会社全体にとってどのような意味を持つのか、部下はそれを知りたがっている。時間を惜しまず語ってあげよう。
 いくつものスモールゴールの先に、素晴らしいビッグゴールが待っているのだという実感を持てれば、部下は頼まなくても自発的に動くだろう。

 『育てる技術』 第3章 より 石田淳:著 日経BP社:刊

 小さくても、何かをやり遂げた経験は「やればできる!」という自信につながります。
 その積み重ねが、部下を大きく成長させ、上司への信頼を高めることになります。

 この仕事はどういう意味があって、どう重要なのか。
 それをしっかり説明してあげることが大切ですね。

「60秒以内」にすかさず褒めろ


 部下にいい行動を繰り返してもらうためには、上司のフィードバックが不可欠です。

 人は「無視される」ことをとても嫌がるものです。
 注意を与えられるよりも無視されるほうが、精神的にはるかにこたえるからです。

 あなたに無視しているつもりはなくても、フィードバックをもらえないのは、部下からすれば「無視された」ことになる。それは、あなたが忙しいかどうかとはまったく関係がない。どれほど忙しかろうと、部下へのフィードバックを欠かしてはならない。
 とにかく、部下がいい行動をとったら、すかさず褒めることだ。
 たとえば、報告書や提案書を積極的に出してもらいたいと考えているなら、部下がそれらを持ってきたら、すぐに言おう。
「ありがとう。助かるよ」
「ご苦労様。すごい力作だな」
「今日もクレームゼロか。よくやっているね」
 時間にして10秒もかからない。
 間違っても「今忙しいから、そこに置いといて」などと言ってはいけない。たった10秒を惜しむがために、部下の自発性を著しく損ねることになる。
 行動科学マネジメントで言うところの「すぐに」とは、60秒以内である。60秒を過ぎると効果は激減する。丁寧に見てからフィードバックしたいときも、60秒以内に何かしておくべきだ。
「ありがとう。これから会議があるから、その後じっくり目を通させてもらうよ。なかなか面白そうじゃないか」
 こうした一言があるとないとでは、部下のモチベーションはまったく違ってくる。「たったそれだけのことで決まるのか」と疑問に思うかもしれないが、上司が想像する以上に、部下は上司の反応に敏感だ。あなただって、そうだったはずだ。自分のことを思い返してみよう。

 『育てる技術』 第4章 より 石田淳:著 日経BP社:刊

 思っているだけでは、気持ちは相手に伝わらないもの。
 感謝の気持ちも、その場ではっきりと口に出すことが大切です。

「ありがとう」のひと言が、部下のやる気を上げます。
 繰り返すことで、組織の動きをスムーズにする“潤滑油”の働きをしてくれます。
 習慣にしたいですね。

「マインドフルネス」によるセルフマネジメント


 人間のストレスの原因のひとつに、「認知の歪み」があります。
 認知の歪みとは、自分の頭のなかのネガティブな言葉(マインドトーク)によって、自分でつくり出した妄想の世界と、現実の区別がつかなくなることです。

 認知の歪みを客観的に正す「認知行動療法」で、新しい分野として注目されているのが、「マインドフルネス」です。

 マインドフルネスは、「意図的に、今この瞬間に注意を向ける」という意味です。
 認知の歪みを少なくするために必要なことは、『「現実」「今」に意識を戻すこと』です。

 頭の中に流れているマインドトークのせいで、私たちの心はつい、目の前の現実とは関係ない未来や過去へと飛んでいく。未来に行けば不安があおられ、過去に向けば後悔が募る。そして、どんどんストレスを製造していく。
 私たちにとって重要なのは、今を生きることだ。目の前にある現実の仕事に集中できているとき、私たちはストレスと無縁でいられる。
 具体的な方法はいくつもある。
 最も簡単なのは「呼吸」だろう。自分の呼吸に意識を向け、「1・2・3・・・」と数えてみよう。そこには、「今呼吸している自分」という現実しかない。
 呼吸をしている自分を実況中継してみるのもいい。「私は今息を吸っている、息を吐いている、今度は深く吸っている」と心の中で解説してみる。すると、未来や過去に飛んでいた心が、現実に引き戻されるはずだ。
「右手を握りしめる(もちろん、左手でもかまわない)」「目をぎゅっと閉じる」といったことでもいい。とにかく、今の自分の行動に意識を集中することで、余計な思考や感情を強制的に終了させるのだ。
 普段から「無になれる」習慣を持つことも効果的だ。
 ジョギング、水泳、自転車、ウォーキングなど、同じ動作を淡々と繰り返す運動はお勧めである。実際に私は、ジョギングの習慣を持つようになって、ストレスへの対処が格段にうまくなった。
 座禅を組んだり、書道や茶道などに打ち込むのもいいだろう。
 人の上に立つ立場になったら、セルフマネジメントも仕事の1つである。心身ともに健康でなければ、部下の指導も満足にできず、重要な場面での判断力も鈍る。

 『育てる技術』 第5章 より 石田淳:著 日経BP社:刊

 やるべきことがあるときには、目の前のことに集中すること。
 精神的にも落ち着くことができますし、仕事の能率もあがります。

 過去のことや未来のことは、たいていの場合、考えても仕方のないことです。

「マインドフルネス」という考え方。
 自分自身を守るためにも、ぜひとも身につけたいですね。

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 米国では、『メジャー・リーダー(Measure of a Leader)』という本が注目をされています。
 その内容は、「部下の行動を計測すれば、そのリーダーが優れているかどうかがわかる」というもの。
「部下の姿は上司の姿そのもの」だという考え方からきています。

 上司の「部下のできが悪いから業績が上がらない」という言い訳。
 それは、自分自身のできの悪さを示しているということになりますね。

 昇進するほど、自分が統括する組織が大きくなり、部下の人数も増えます。
 それにつれて、自分で業務をこなせる力よりも「人を育てる力」が重視されます。
 いざというときに困らないためにも、しっかりと身につけておきたい技術ですね。


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