【書評】『「腰割り」で体が若返る』(白木仁)
お薦めの本の紹介です。
白木仁先生の『「腰割り」で体が若返る 肩こり・腰痛・ひざ痛など体の不調を改善するお手軽体操』です。
白木仁(しらき・ひとし)先生は、スポーツトレーナーです。
日本体育協会公認アスレティックトレーナーマスターであり、多くのトップアスリートのコンディショナーとしてご活躍されています。
股関節周りの筋肉を鍛えれば体の不調は改善する
多くの日本人を悩ませる腰痛、ひざ痛、肩こり。
これらのつらい体のトラブルは、股関節周りの筋肉の衰えが引き起こす場合が少なくありません。
股関節は、体重の重心のほぼ左右に位置します。
股関節周りの筋肉は、体の重心を安定させ、姿勢を保つなどの重要な働きをします。
白木先生は、股関節周りの筋肉が衰えると、重心がぐらつき、すべての運動がスムーズにできなくなり、腰や膝や肩など各部に余計な負担をかけることになる
と指摘しています。
股関節周りの筋肉を無理なく鍛えることができる大変優れた運動
が、「腰割り」です。
腰割りとは、立った姿勢から足を左右に開き、ひざを曲げて腰を下ろして上げるだけの簡単な運動
のこと。
相撲の「シコ」の基本形となる運動です。
本書は、足腰を効率的に鍛えられる「腰割り」をわかりやすく解説した一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「腰割り」が腰痛やひざ痛などに効く理由
白木先生は、腰割りの効果を確認するため、8人の参加者に、3ヶ月間、自分のペースで1日5回〜10回程度(だいたい1分くらい)の腰割りを行ってもらう実験を行いました。
その結果、ほとんどの参加者が、「体重や体脂肪率の減少など健康面の改善」しました。
他にも、腰痛やひざ痛、冷え性や肩こりなどの体調面での不調の改善も見られたとのこと。
腰痛やひざ痛が改善した理由は何でしょうか。腰痛、ひざ痛は、股関節の筋肉が硬くなるのが原因で引き起こされる場合も多く、股関節周りの筋肉をストレッチすると改善することがしばしばあります。腰割りの動きには、股関節の筋肉のストレッチが含まれていますので、その効果が表れたのだと考えられます。
肩こり、冷え性、むくみ、食欲が改善したのは、股関節周りの筋肉がまんべんなく若々しく活発になって、新陳代謝(しんちんたいしゃ)が上がったことに起因していると考えられます。
以上が参加者が体験した健康効果です。ほかに、私が聞いたことのあるケースでは、うつっぽい気持ちが晴れることもあるそうです。これは脳と関係があるのかもしれません。股関節周りの筋肉がこり固まっていると、その動きを司る脳機能も低下してしまいます。これが腰割りを繰り返し行うことで、脳が股関節をきちんと認識できるようになり、それに伴って脳機能が上がり、判断力や思考力に影響を与えたものと考えられます。
腰割りを1日1分程度行っただけで得られる効果がこれだけあるわけですから驚くべきことです。これは、加齢でさまざまな症状が出やすくなっている中高年にとってはうれしい驚きでしょう。『「腰割り」で体が若返る』 1章 より 白木仁:著 ソフトバンククリエイティブ:刊
1日1分のトレーニングだけで、これだけ多くの改善効果が見られるのは驚きですね。
股関節周りの筋肉を鍛えることがいかに重要かを示唆する実験結果です。
重心が安定して動きがスムーズになる
腰割りを続けると、健康や体調以外でもさまざまなプラスの効果が現れます。
白木先生は、その一つに、「運動能力の向上」が挙げています。
人間が前後左右に運動するときには足を使いますが、足の上に乗っている胴体は、かなり重たいものです。この重い胴体がぐらぐらしないように支える役割をするのが、股関節周りの筋肉です。胴体を支えきれないままで運動をすると、全身がぶれてひざも足首も本来の動きをしにくくなります。これは、ケガの原因にもなります。
体操でもウォーキングでも、胴体がなるべくぶれないように重心を股関節で調整しながら運動する必要があるのです。
重心とは骨盤の中、昔で言う「丹田(たんでん)」のことです。武道の世界では、丹田に気を集めると体が瞬時に反応できる態勢になると言われています。
(中略)
また、腰割りを継続して行うと運動がスムーズになる効果も期待できます。
筋肉の繊維は、神経組織と連結しているので、筋肉が使われると神経も刺激されます。運動を繰り返し行うことで、脳と筋肉の間の神経に「回路」が作られます。回路は毎日繰り返し刺激を与えないとなかなか作られませんが、うまく作れれば脳からの命令が筋肉に伝わりやすくなり、運動がスムーズにできるようになるのです。
特に、腰割りは、腸腰筋(ちょうようきん)という姿勢を保ったり足を上げる役割を果たす運動にとっていちばん根本となる筋肉を目覚めさせますので、毎日しっかり行えば見違えるほど運動しやすい体になります。『「腰割り」で体が若返る』 1章 より 白木仁:著 ソフトバンククリエイティブ:刊
股関節周りの筋肉が硬くなると、足首への負担が大きくなってしまいます。
ブレない体幹が動きやすい体をつくります。
腸腰筋などの股関節周りの筋肉は、体を支えるために大事な役割を担っています。
それらを鍛えることが、姿勢や動作を美しくする秘訣だということですね。
簡単にマスターできる正しい腰割り
白木先生は、「正しい腰割りのやり方」を以下のように説明しています。
正しい腰割りのやり方は次のとおりです。
①腕を胸の前で組んで両足を肩幅より少し広くして立ち、つま先を45度くらいに開きます。このとき、上体はまっすぐに起こして、背すじを伸ばします。
②ひざをゆっくりと曲げて腰を下ろしていきます。このときひざがつま先と同じ方向を向いていることを確認します。ひざを90度くらい曲げて、床と両足で五角形ができるくらいまで腰を下ろしたら、①の姿勢にゆっくり戻る。これを8~10回行います。ここでも上体を前に倒さないように気をつけます。ねこ背になってしまうと股関節が開きませんので、背すじをきちんと伸ばすようにしましょう。また、お尻がつき出てしまうのにも十分注意しましょう。
『「腰割り」で体が若返る』 2章 より 白木仁:著 ソフトバンククリエイティブ:刊
図1.「腰割り」のやり方(『「腰割り」で体が若返る』 2章 より抜粋)
「状態を前に倒さず、背筋をきちんと伸ばしたまま行う」のがポイントです。
自分ではちゃんとやっているつもりでも、実際にはできていないことも多いです。
最初は、鏡で確認しながら、正しい腰割りのフォームを身につけたいですね。
「股関節回し」で股関節の機能をアップさせる
股関節と股関節の筋肉を十分にほぐす体操
として、「股関節回し」があります。
股関節と股関節の筋肉を十分にほぐす体操を紹介します。寝た姿勢で足を大きく回す「股関節回し」です。この姿勢だと下半身に自分の体重がかからないので、動かしている部位が意識しやすくなります。
①頭の下に枕を当てて仰向けになり、両手を左右に広げます。片方のひざ(イラストでは左ひざ)を曲げて左足を体の上に引き上げます。
②股関節を開く意識で、上げた左足をゆっくりと外側に倒します。右手で床を押さえて、肩や腰が浮かないようにしましょう。
③左ひざを伸ばしながら、左足をゆっくりと下方向に動かしていきます。ひざで大きく円を描くつもりで動かします。
④左ひざを曲げてゆっくりと引き上げながら左ひざを右に倒し、そこからひざを体の上に上げて①の姿勢に戻ります。息を止めたりせず、普通に呼吸しながら行ってください。これを繰り返し8~10回行います。同じ要領で反対の足も行います。
この体操で、大腿四頭筋や腸腰筋などの股関節の筋肉が柔軟になります。『「腰割り」で体が若返る』 3章 より 白木仁:著 ソフトバンククリエイティブ:刊
図2.「股関節回し」のやり方(『「腰割り」で体が若返る』 3章 より抜粋)
腰痛は、股関節など腰周りの筋肉が硬くなっていることが原因で起こることが多いです。
「股関節回し」に加えて、背中や太もものストレッチや「腰割り」を行うことで腰痛が改善します。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
昔から「老いは足腰から来る」といわれます。
逆にいうと、足腰が丈夫だと老いを感じないということですね。
実際、足の筋力は二十歳頃を境に上半身の2〜3倍の速度で落ち続けていくと言われます。
足腰の筋力を鍛えることが、若さを保つための秘訣。
誰でも簡単に、無理なく安全にできる「腰割り」は、そのための最適なトレーニングです。
マスターして、日々の生活のちょっとした時間にできるよう、習慣づけたいですね。
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