本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『ワクワクすることだけ、やればいい!』(奥田浩美)

 お薦めの本の紹介です。
 奥田浩美さんの『ワクワクすることだけ、やればいい!』です。

 奥田浩美(おくだ・ひろみ)さんは、起業家・実業家です。
 インドの大学院を卒業後、IT分野のイベントや国際会議の運営に携わり、多くのITスタートアップ企業の日本進出を支えられてきました。
 数億円規模のイベントをいくつも成功に導いた実績から、“IT業界の女帝”の異名を持つ方です。

「幸運の女神」を仲間にする方法とは?

 奥田さんは、これまで数多くのITスタートアップ企業のCEO達を支援してきました。
 その中で、成功する起業家も消えていく起業家も間近で目にしてきました。

 奥田さん自身も、3回の起業のなかで、たくさんの失敗経験を重ね、浮き沈みの人生を送ってきました。

 奥田さんは、自分を含む多くの人々の苦しみやもがき、浮き沈みを経験したことから、チャンスが見えるようになり、幸運の女神を仲間にできるようになったと述べています。
 それは、たくさんの課題と向き合って、心の訓練をしてきたからこその行動の結果です。

 動けない人の「あ・い・う・え・お」という言葉があります。以下の5つのことです。

  • 「あ」 あきらめ
  • 「い」 言い訳
  • 「う」 後ろ向き
  • 「え」 遠慮
  • 「お」 思い込み

 この「あ・い・う・え・お」の行動をとっていると、チャンスはほとんど浮かび上がって見えません。

 本書は、幸運の女神を仲間にし、チャンスを呼びこむための生き方・行動・考え方はどのようなものか、具体的にまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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人生は「音を立てて」変わる

 奥田さんが、チャンスに向かって自らとった人生最初の行動は、インド留学へのチャレンジです。

 大学4年のとき、妹と一緒に両親を訪ね、インドに数週間旅行へ行ったことがきっかけでした。

 ボンベイの道端には、手足のない子供達が沢山いました。私は障害児教育も専攻していたので、自分が学んだ障害児教育と大きくかけ離れた存在の子供達に、心から驚きました。障害児教育などと、そんな分野で語る以前の、生死の境をさまよう子供達です。
 片や、両親が住むフラットに帰ると、門番やメイドがいて、メイドにカバンを持たせて登校する子供達、アメリカ留学から帰省中の大学生達がいて、カルチャーショックなどというお定まりの言葉では表せない、混沌(こんとん)・混沌・混沌。そういったものを目にすることになりました。

 ふと、なにかが弾けた音がしました。人生のギアが入った音、といえばよいのでしょうか。

 本当に、聞こえたのです。私は人生の中で、数回そういう音を聞いたことがあります。
 後になって、多くの人から同じような経験をしたという声を聞きました。ひとりやふたりではありません。かなり多くの人から、「あるある!」「あった!」という反応がありました。

  • 人生のギアが入った音がした
  • ステージのドアが開く音がした
  • 関節がはまったような、ゴヅッという音がした
  • 組み立て家具のパーツが収まったような音がした
  • カチッと小さな音がした
  • ジャーンとドラのような音がした

 など、「ドラマ『ハゲタカ』のサウンドトラックが聞こえた」という人もいたので、本当に音が鳴るというより、自分の脳内に“音響さん”が待機していて、効果音を脳内再生しているイメージでしょうか。
 つまり、五感でチャンスを感じる訓練をして、自分で自分の背中を押す音を用意しているからかもしれません。

 『ワクワクすることだけ、やればいい!』 第2章 より 奥田浩美:著 PHP研究所:刊

 このインド旅行が、奥田さんの人生のターニングポイントになったことを考えると、単なる空耳ではないでしょう。
 人生を飛躍させるチャンスをつねに狙って努力を重ねている人にしか、この音は聞こえません。

 私たちも、“そのとき”に聞き逃さないよう、「五感でチャンスを感じる訓練」を怠らないようにしたいですね。

挫折と思っていた中に「力を付けるパーツ」があった

 インドに留学し、たった一人で言葉の通じない人々のなかで悪戦苦闘する日々を送った奥田さん。
 そのおかげで、二年間のインド生活から帰国すると、「外の世界が違って見えた」といいます。

 帰国後、奥田さんは、就職のために単身上京しますが、「なぜかまったく不安はなかった」とのこと。
 その言葉通り、上京の数日後には、ある国際会議の企画・運営会社への就職が決まります。

 この就職を通して気付いたのは、前述したように、インドであれだけ辛いと思っていた経験は、養成ギブスだったのではないか? ということです。
 大きな負荷がかかった後の人生というものは、非常に軽く動けるようになるのです。沢山の挫折と思っていた中に、力を付けるパーツがあったのだと思います。
 皆さんも辛いことのさなかにいるときは「大リーグ養成ギブス」と思うと、頑張る気力が湧いてくるかもしれません。

 そしてもうひとつ、気付いたことがあります。
 それは、フットワークが軽いことは、チャンスを得るための必要最低条件だということ。就職もなにも決まっていない状態で単身東京へ行き、履歴書を10枚書き上げたこの時のパワーが、私に希望の仕事を与えてくれたのだと思っています。
 フットワークが軽いということは、行動の量も生半可ではありません。チャンスはあくまでも確率論です。動いた分だけチャンスに触れる回数は多くなります。単純に打率と考えればいいでしょう。あるいは何回福引のガラガラ抽選器を回すかという表現でもいいでしょう。

 同期入社した4人の仲間は、それぞれアメリカ・イタリア・カナダへの留学・就職経験がある人達でした。国際会議の運営会社ですから当然といえば当然なのですが、それだけ多くの価値観の中で暮らしてきた人々と一緒にいることは、とても新鮮で、刺激を沢山受けました。
 囲まれる人によって人間というのは変わっていくものだなぁと強く実感したものです。

 『ワクワクすることだけ、やればいい!』 第3章 より 奥田浩美:著 PHP研究所:刊

 大きな苦労や挫折は、それを味わっているときは、とても辛いものです。
 ただ、それらも、過ぎてしまえば貴重な経験になります。

 これまで大変だと思っていたことが、「当たり前」になるということ。
 まさに、「大リーグ養成ギブス」のようですね。

こぼしても拾ってくれる人を味方につける

 奥田さんが、新しい会社を軌道に乗せるうえで、実感したこと。
 それは、力強いチームを作るときに大切なのは、「こぼしても拾ってくれる人」を味方につけることです。

 得意な人にどんどん頼って、その手法を獲得するのもよいでしょう。いろいろ試した結果、うまくいかなかったということについては、「うまく落とす」という決断も必要です。私は、これを後ろ向きに「引く」「退く」という感覚ではなく、「自然とこぼれ落ちていく」という意識でとらえています。
 なぜなら、スピード感を持ってどんどん進んでいくと、持つべきでないもの・不得意なもので自分でなくてもできそうなことは、自然とこぼれ落ちていく感覚が持てるようになるからです。
 人は、一度に沢山のものを抱えて進むことはできない生き物です。
 私の場合、10の事業をひとりでやろうと奮闘しても、自分でできることは限られてくるので、できないことが自然とこぼれ落ちていきます。
 それは決して悪いことだとは思っていません。上手に「落とす訓練」、あるいは「こぼす訓練」をしていれば、自ずと自分が手を動かすべきこととそうでないことがわかってくるからです。

 ちなみに、いまの私は子育てをしながら会社を2つ経営し、月に5回は出張。そして父の介護のためにかなりの頻度で鹿児島の実家に帰っています。
 そんなに沢山のことをやっていると、当然いろんなことがポロポロとこぼれます。
 あるプロジェクトで、1から5までやらないといけなかったことが、3をやる途中で他のプロジェクトに呼ばれたり、4までしかできないこともあります。けれども、「できない」とは言わずに奔走しながら頼る形でポロポロこぼしていくと、スタッフが「奥田さん、いつも忙しいですよね」と手を貸してくれたり、家族が「いろいろ大変だよねえ」などと言って助けてくれて、周りが拾ってくれる人(=助けてくれる人)だらけになります。
 つまり、見える形でこぼして、こぼすこと前提でチーム作りをすればいいのです。

 『ワクワクすることだけ、やればいい!』 第4章 より 奥田浩美:著 PHP研究所:刊

 一人で全部抱え込まないこと。
 それが新しい会社を軌道に乗せ、継続させるための秘訣ということです。

 会社に限ったことではありません。
 自分の不得意なこと、自分でなくてもできることは、どんどんこぼして、他の人に拾ってもらう。
 そんな感覚を身につけることが大切です。

 上手に「落とす訓練」、普段から意識していたいですね。

人が人を呼び、チャンスがチャンスを呼ぶ

 奥田さんは、これからの時代、周りの人の共感を呼びチャンスをつかむためには、社会に対して美しい態度をとること、“良い人”であろうとする姿勢が大事だと述べています。

「良い人であること」が、かつてないほど大きな効果を発揮するようになってきています。情報やチャンスをコントロールできる時代にチャンスを分けてもらう方法、それが「自己価値」です。自己価値とは、簡単にいえば信頼できる人であるということです。それは日々の行動と発信によって、知らず知らずのうちに周囲に伝わってゆきます。
「美しい姿勢」で「価値」が高い人の周囲には、同じく「価値」が高い人が集まってきます。特にネットによって類は友を呼ぶサイクルが加速します。
 そして、「価値」の高い人のもとに、チャンスがどんどん舞い込んできます。
(中略)
 私がビジネスで関わっている徳島県の山間部に、小さな町があります。そこは地方創生でいま脚光を浴びているのですが、その町を取材した時に、町の中心人物の方がおっしゃったことが心に残っています。
「地域資源が大事と言われるけど、それが最重要ではなくて、どんな人が集まるかがもっと重要。人をどう集めるか、どういう人に集まって欲しいかに力を注いだ方が、地域作りはうまくいく」
 逆にその地に居るだけで(居るだけとは言い過ぎかもしれませんが)、活動をしていると、面白い人が続々と向こうからやって来ます。それも、恐らく東京にいる時には会えないような人達です。そしてそこから新しいエネルギーが生み出されます。

 いまの時代は、実はとても人に巡り合いやすい時代です。ですから逆に、どういう人がフィルタされた形でその場に居るのか。そういう場の見える化が意味を持つ時代になりました。
 誰の近くに居るのか? それが価値でもあるのです。

 『ワクワクすることだけ、やればいい!』 第5章 より 奥田浩美:著 PHP研究所:刊

「類は友を呼ぶ」という言葉もあります。
 無責任なことを発信する人には、無責任な人しか集まりません。

 インターネットやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の普及で、誰もが自由に自分の意見を発信できる時代です。
 発信する内容には、普段の考え方や姿勢が表れるものです。

「社会に対して美しい態度をとる」こと。
 つねに意識していたいですね。

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 奥田さんは、「事業を続けられる経営者の3つの条件」として、以下を挙げられています。

  1. 素直であること
  2. 他人に頼れること
  3. 変われること

 どれも当たり前のことですが、実行するのはなかなか難しいことですね。
 事業に限らず、新しいことを始めてそれを継続させるためには、この3つの条件は欠かすことができません。

 チャンスはどこにでも転がっています。
 それを掴むためには、とにかく「チャレンジし続けること」です。

 失敗しても、すぐに起き上がって、また次のチャレンジをする。
 私たちも、軽快なフットワークで周りの人を巻き込みながら突き進む奥田さんを見習って、ワクワクする人生を送りたいものですね。

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