【書評】『1日ひとつだけ、強くなる。』(梅原大吾)

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 お薦めの本の紹介です。
 梅原大吾さんの『1日ひとつだけ、強くなる。 世界一プロ・ゲーマーの勝ち続ける64の流儀』です。

 梅原大吾(うめはら・だいご)さんは、日本初のプロ・ゲーマーです。

「勝ち続ける」ために必要なこと


 梅原さんが、ゲームの世界で初めて日本一になったのは、14歳のとき。
 以来、20年の長きにわたって、トップゲーマーとして君臨し続けています。

 日本では、「ゲームは、遊びの一種」であり、プロ・ゲーマーの認知度はまだまだです。
 しかし、ゲーム先進国・アメリカでは、スポーツの1ジャンルとして確立し、賞金付きの大会も数多く開催されています。

 梅原さんは、ギネスから「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロ・ゲーマー」の認定を受けるほど、息の長いプロ・ゲーマー生活を続けています。

 反射神経や頭の柔軟性が要求されるゲームの世界。
 30歳を過ぎてなお、世界の第一線で活躍しているのは、極めて異例です。
 シビアな勝負の世界で生き残る秘訣は、どこにあるのでしょうか。

 本書は、梅原さんが、この20年間続けてきた「勝ち続ける」ための取り組みや考え方を、具体的な体験をもとにまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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どうにもならないことは、受け入れる


 梅原さんは、もし勝ちたいのであれば、自分ではどうにもならないことに感情を動かされないよう努力したほうがいいと述べています。

 ゲームの話でいうと、これは何も対戦中に起こるさまざまなことについての話だけではない。勝負はそれ以前のところから始まっているようなところがある。

 たとえばこういうことである。
 今はどこのゲームセンターであっても、最新式の専用筐体(きょうたい)に入ったメンテナンスの行き届いた環境で遊ぶことができるが、昔はそうでなかった。ひどい状態のレバーやボタンで選ばされることが、往々にしてあったものだ。店員に頼んでメンテナンスしてもらったとしても、希望通りの仕上がりになることはまずないと思ったほうがいい。そもそも「ボタンもきくし、レバーも動くよ」と取り合ってもらえないことのほうが、圧倒的に多かった。
 その店のメンテナンスが嫌なら遊ばなければいいのだけれど、その台で遊ぶと決めた以上は、これはもう絶対に受け入れるしかない。しかし、いつまでもどうにもならない台の不備に文句をつけているような人がいた。こういう人で対戦が強かった例はほとんどない。試合の中で過ぎてしまったミスや選択を引きずるタイプが多かった。
 これは偶然ではないと思う。台の不調も過ぎてしまったミスも、どうにもならないという点では同じだからだ。

 ましてローカルな大会であればどの台を使用するかなんてことは、ほとんどこちらには発言権はなかった。ひどい状態の台で大会が開かれたりもする。大会の場で「あの台は嫌だなあ」という気持ちは、それだけではっきり不利だ。闘う前から負けている。そんなことで集中力を欠いているヒマがあったら、さっさと切り替えて現実を受け入れるべきだろう。それにコンディションは全員同じなのだ。

 昔も今も大会では自分ではどうにもならないことがよくある。僕とリッキーの試合もそのひとつだ。
 最近のことだが運営側のミスで、大会用ではないバージョンによって試合が進められたことがあった。途中で気がついて数試合がノーコンテストとなってやり直しとなってしまったのだ。実は僕も勝った試合を没収されたが、冷静にプレイを進めることができたと思う。結果はたまたま勝てたが、そこは重要ではない。普通にできたということが良かった。
 没収前とは逆の結果になって負けてしまった選手もいた。没収によって、プレイにも少なからず影響があったのではないだろうか。顔には出さなかったが、自分の責任ではないので悔しい気持ちはあったと思う。しかし必ずそれが彼にとって良い経験になるはずだ。僕にだってできたのだから、彼も次はもっとうまくやるだろう。

 『1日ひとつだけ、強くなる。』 GAME02 より 梅原大吾:著 KADOKAWA:刊

 ゲームの世界は、コンマ何秒の反応の遅れが、ダイレクトに勝敗に影響します。
 感情の乱れは、集中の乱れです。

 周囲の雑音に左右されず、いかに自分のやるべきことに専心できるか。
 ゲームに限らず、結果を出すためには大切なことです。

人のアドバイスは、まず100%信じてみる


「見る力」「聞く力」「行動力」

 強いプレーヤーは、この3つの力が揃っています。

 梅原さんは、成長するためには、「人から受けたアドバイスは、素直に聞き入れて、試してみる」ことが大切だと述べています。

 人が誰かにアドバイスをするときは、その内容にかなり確信を持っているものだ。わざわざ「こうしたほうがいいと思うよ」と口に出すときは、その人から見て「絶対にそう思う」というくらいのことが多いだろう。
 自分の立場に置き換えてみても、誰かにわざわざアドバイスするときは、かなりの確信を持って言っている。だから、自分が言われたときも「何かあるはずだろう」と思って、それについてしっかり考えるようにしている。嘘でもいいからまず100%信じてみるという感じだろうか。
 何でも相手の言う通りにするというわけではない。相手の言っていることが間違っている可能性も、当然ある。しかし、相手が自分にあえて言ってこれたことだから、試しにそのことをやってみる。あるいは「本当にそうなのか」「なぜそんなふうに見えているのか」と、スルーせずに検証してみる。
 これは、相手がどのような立場の人でも関係ない。特別いい加減な人でなければ、一度は言ってくれたことを検証したほうがいいと僕は思っている。特に、その人が自分の経験に基づいて言っているときは要注意。きちんと聞いておいたほうがいい。損はしないはずだ。

 感情や思い込みによって見る目が曇り、自分を客観視できなくなって判断が偏ったりすることは珍しくない。たとえば、自分が時間を費やしてきたことについて「これだけやってきたのだから間違いないはずだ」と、根拠のない自信を持ってしまうことがある。過信ならばまだいいけれど、これが不安を誤魔化すためにそういうふうに言い聞かせているのなら目も当てられない。これは正しいやり方を考えずに、ただ頑張ることに逃げ込んでいるような状態だ。
「これだけやってきたのだから大丈夫」という、いい意味の自信とはまったく違う。
 一見すると同じ物言いだから、少し突っ込んだ言い方をすると「これだけの量をやってきたのだから大丈夫」と「これだけ正しいやり方をしてきたのだから大丈夫」というニュアンスの違いだろうか。前者は量の問題で、後者は質の問題になる。

 第三者の目は客観的で冷静なことも多い。案外、理屈が通っているものだ。僕が得意としている格闘ゲームのことでも「その組み合わせはこういうふうにすべきだよ」「こういうふうに戦ったほうがいいんじゃないの?」と言われたら、なるべくそこについて考えるようにしている。
 まずは素直に聞き入れ、試すなり考えるなりしてみる。アドバイスが正しいか間違っているかは、それほど重要ではない。大切なのは一度自分の体を通して、他人の考えについて吟味してみること。その過程に、何か成長や変化のヒントが隠されていることも多い。

 『1日ひとつだけ、強くなる。』 GAME03 より 梅原大吾:著 KADOKAWA:刊

 当事者には近すぎて見えないことも、周りの目からはよく見えます。
 その人たちからの意見を素直に聞き入れて、活かせるかどうかで、成長のスピードはまったく変わってきます。

 まずは、「人から受けたアドバイスは、素直に聞き入れて、試してみる」。
 謙虚な姿勢を忘れないようにしたいものです。

1日ひとつだけ、メモを取る


 梅原さんがゲームを続けるモチベーション。
 それは、成長を実感することによる喜びや楽しさです。

 成長の実感→モチベーション(及び練習)→成果→成長の実感→モチベーション(及び練習)

 この「成長のループ」の循環を、安定して継続することを第一に考えて実践しています。

 僕がやっている方法は「新しい発見を毎日メモして、成長を確認する」というもの。これは「最近自分に成長がないな」と思っている人にもお薦めしている。
 とりたてて難しいことをするわけではない。シンプルに「今日1日を思い返してみて、なにか気づいたことはないか」と自分に問いかけ、思いついたことをメモする。大きな発見だけでなく、小さなことでもかまわない。いや、むしろ小さなことのほうが大切くらいの気持ちがいい。何ごともレベルが低い間は発見も多く、成果が目に見えて分かるのでモチベーションが保てる。しかしそういった時期はつかの間のことだ。

 小さな気づきを見逃さずに意識できるようにする。それは成長に対する感受性を上げるということでもあるけれど、これにはコツがある。
 大切なのはハードルを下げること。僕がやっているメモを例にとると「1日1個」という成果を自分の中でルールを決める。1日1個であれば続けやすい。ところが、やがて物足りなくなり、ついついハードルを上げてしまう。だから、思っているより簡単なことではない。
 成長することが難しい時期でもなければ、よく目を凝らすと小さな発見が2つ3つとあることも多い。しかし、欲張って2つ3つと増やしてしまうと、発見がひとつしかなかったときに、小さいとはいえ挫折感(ざせつかん)を味わうことになる。

 ハードルを下げろと言うと「こんな低いハードルを越えても結局自己満足だし、誰も評価してくれないから自信なんか持てないよ」という人もいるだろう。
 そのような感じ方は環境によって作られた、一種の癖のようなものではないだろうか。周囲の環境がどうであれ、たとえわずかでも昨日の自分より前進があるのなら、その事実を肯定することをためらう理由はないように思う。

 小さな成果は、誰も評価してくれない。だから、自分のやっていることは誰よりも自分が評価しなくてはならない。
 これは他者の評価を聞かなくていい、ということではない。あくまで軸は自分の内に置くということにポイントがある。軸を外に置いた場合のデメリットは数え挙げればきりがない。何より疲れるし、そういった価値観は巡り巡って、生き方そのものまで人任せにしかねない怖さがある。

 『1日ひとつだけ、強くなる。』 GAME04 より 梅原大吾:著 KADOKAWA:刊

 モチベーションを維持するためには、内側から湧き上がる力を利用することが大切です。
 やらされるのではなく、自分が主体となって積極的にやることがポイント。

 成長し続けるためには、小さな一歩を積み重ねるしかない。
 それを改めて教えてくれる方法ですね。

最後まで「何かある」と思って探し続ける


 梅原さんは、勝負の前に「勝つ根拠」を持つことが、何よりも大切だと述べています。

 ときには、努力しても、「勝つ根拠」が見えてこないときもあります。
 それでも、最後まであきらめずに探し続けることで、必ず道は開かれます。

 ゲームに限らず「これはもう無理だ」「可能性がないだろう」と思ってしまうことは、日常の中でもあるものだ。そこで「本当にどうしようもない」と考えると、可能性が途絶えてしまう。それではもったいないし、つまらない。
 本当に何もないのだろうか。そのときの自分に分からないだけかもしれない。どれだけ経験があったとしても、見落としていたり、気づけていない可能性がある。

「何かあるはず」と思って探していると、大抵の場合は何かがある。
 それは僕が、ゲームを通し体験した実感だ。それがあるから「これは無理だ」とつい思ってしまうようなときでも「今は分からないかもしれないし、すごく難しいかもしれない。だけど、どうしようもないということはないだろう」そう思い直す癖がついている。

 見つからなくても、自問自答を繰り返す。そうすると「もしかしたらこういうやり方が有効かもしれないな」という思いつきが何かあるはずだ。本当に解決したいのであれば、何もない、ということは決してない。
 何も出てこないのはどうしてだろう。うまくいかなくて視野が狭まっているのかもしれないし、こびりついた習慣や常識が、自由で客観的な発想を邪魔しているのかもしれない。
 自分の立場から離れてみるのもいい。自分はどん詰まりだと感じているかもしれないが、他人はそう感じていないかもしれない。それはどうしてだろう。そういうところにもヒントはある。

 思いついた、だけでは足りない。そうしたら、それを試してみる。駄目なら、また別のやり方を考えて試す。
 すべての選択肢をやり尽くす覚悟さえあるのなら、そうそう伸び悩むことはないと思う。うまく行かなかったやり方とは違うことを試すわけだから、いずれいい答え、いいやり方が見つかる可能性が高い。
 これは才能の問題ではない。ただ根気よく、次、次と新しいことを試すチャレンジ精神、諦めない気持ちがあれば、いずれ何かに突き当たる。

 根気はあるけれどあまりうまくいかないという人は、同じことを繰り返していないかどうか、振り返ってみるといい。新しいことを試しているつもりになっているだけかもしれない。それで、同じ失敗を繰り返している可能性がある。

 『1日ひとつだけ、強くなる。』 GAME05 より 梅原大吾:著 KADOKAWA:刊

 多くの人は、1つの方法でやってうまくいかないと、「これは無理だ」と判断してしまいがちです。

 しかし、現実の問題は、学校のテスト問題と違って、決まったやり方や答えはないものがほとんどです。
 発想や問題の切り口を変えることで、思わぬところから突破口は見つかるもの。

 大切なのは、「何かあるはず」と新しいやり方を試し続けること。
 ゲームオーバーとなる、その瞬間まで、あきらめずに立ち向かう姿勢を身につけたいですね。

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『「勝つ」ことと、「勝ち続ける」ことはまったく違う』

 梅原さんが、つねに強調されている言葉です。

 新製品が続々と開発される、日進月歩のゲームの世界。
 才能のある若手も次々と現れます。
 その中でトップレベルの実力をキープすることは、並大抵の努力では難しいです。

 梅原さんの本当の強さは、勝負を超えた部分にあります。

 つねに成長し、進化し続けること。
 そして、その過程を楽しむこと。

 つねに真剣に、そして謙虚に、ゲームと向かい合う梅原さん。
 その姿から、私たちも見習うべきことは多いですね。



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