本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『勝ち続ける意志力』(梅原大吾)

 お薦めの本の紹介です。
 梅原大吾さんの『勝ち続ける意志力』です。


 梅原大吾(うめはら・だいご)さんはプロの格闘ゲーマーです。
 1998年にゲーム会社主催の世界大会に優勝し、17歳の若さで世界一の称号を獲得します。
 2010年に日本人で初めてのプロ契約を締結し、「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロ・ゲーマー」としてギネスに認定されるなど、ご活躍を続けています。

 梅原さんは、途中ブランクの時期もありましたが、それでも10年以上世界のトップレベルの実力を維持し続けています。その強さの秘訣は何でしょうか。

 本書は、勝負事で勝つ方法、勝つための努力の仕方、勝てるようになった過程で学んだことなどについて、梅原さん自身の考えをまとめた一冊です。

 梅原さんは、ゲームという極めて特殊なジャンルで培ったものではあるけれど、そこに人が関わり、なおかつ競い合い、勝敗という形で明確な結果が出る以上、勝つための思考法は、一般の生活や仕事にも応用がきくものであると思う、と述べています。
 ただ勝つのではなく「勝ち続ける」ことに主眼を置いているという梅原流の「勝負哲学」。
 その中から印象に残った部分をいくつかご紹介します。

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なぜ世界一になるほど没頭できたか

 5歳位の時からゲームを始め、その面白さにハマってゲーマーの道を進み続けてきた梅原さん。
 世界一に到達するまでゲームに没頭できたのは、周囲のゲームに対する偏見に対する反発も大きな理由だと述べています。
「ゲームなんだから、どうせ大した取り組みはしていないだろう」
 そう思われたくないという思いが、ゲームと向き合う際のエネルギー源になっていた、と告白しています。

 ただし何度も書いてきたように、迷わずゲームに打ち込んでいたわけではない。また、人よりもゲームが上手いからと言って自信をもつこともなかった。
 僕にとって何が自信につながったかと言えば、それはゲームの上手さや強さではなく、苦手なものを克服しようとしたり、あえて厳しい道を選んだりする自分の取り組み方、高みを目指す姿勢を貫けたという事実があったからだ。
 手を抜かず徹底的に追求することが、自信を持つ何よりの糧となったのだ。
 もちろん、苦手なこともたくさんあった。初対面の人とは上手く話さえないし、勉強も好きではない。本気で運動に打ち込んだ人と比べれば、気がつくと足が遅くなり、力も弱くなっていた。
 それでも変にオドオドしたり、卑屈になったりする必要はないと思えるようになった。
 苦手なことにも臆せずぶつかって、真摯に克服していったことで自信がつき、ひとりの人間として堂々と振る舞えるようになったのだ。
 苦手なことのない人、何でも器用にできる人にとっては、チャレンジ精神という話はピンとこないかもしれない。だが、子供の頃からコンプレックスの塊だった僕としては、チャレンジ精神を持って取り組むことこそが鍵だった。
 格闘ゲームというバーチャルな世界でしか輝くことができない僕が、なんとか一般の世界と結びついていられたのは、そして普通の人と対等に話ができたのは、自分自身の努力、取り組み方に自信を持っていられたからだ。
 「誰に見せても恥ずかしくない努力をしている」
 そう断言できたからこそ、途中で諦めていった人たちとは違ってどこまでもゲームに没頭し、世界一という高みにまで辿り着くことができたのだろう。
 チャレンジ精神を持って努力を重ね、物事をとことん追求できる。そこが僕の最大の長所で、そうした姿勢があるからこそ、いまは自分を好きでいられるのだと思う。

  『勝ち続ける意志力』 第一章 より   梅原大吾:著   小学館:刊

 どんなことでも「これだけは誰にも負けない」という特技を身につけること。
 それが自分の中にブレない一本の軸を作り、それが大きな自信につながります。
 その特技が他人に認められるかどうかは問題ではありません。自分の中で「誰に見せても恥ずかしくない努力をしている」、そう思えることが重要だということでしょう。 

王道も必勝法もない

 格闘ゲームというのは、基本的に個人競技です。スポーツや芸術の世界と異なり、監督もコーチも、学ぶべき偉大な先人たちもいません。
 自分にどれだけポテンシャルがあるのか、どうすればそれを活かせるのか、持ち味を伸ばす練習方法は何か、すべて自分で考えなければならない、孤独で厳しい世界です。
 責任はすべて自分にかかってきます。「自分をどこまで信じられるか?」という究極的な自問に答え続けなくてはならない世界で、梅原さんが常に掲げている信条は「行動を惜しまない」ということです。

 僕は「これが正解だ!」と閃くタイプではない。
 そういう意味では、絶対にゲームの天才ではないと断言できる。だから、コツコツと努力し、歩き続けるしか方法はない。
 「梅原大吾の最大の武器は何か?」
 そう聞かれたら、
 「どれだけ殴られても、諦めずに起き上がって戦うところ」
 自信を持ってそう答える。
 だから、練習においてはすべての可能性を試していくような取り組みしかできない。必勝法はないと確信しているからこそ、次から次へと手を替え品を替える。
 この方法はダメだと思うけど、実際に試さないと本当にダメかどうかは分からない。ひとつのことを試してみる。ダメだと分かる。次のことを試してみる。これは使えると分かる。そうやって初めて、このやり方をとりあえず柱にしてみようと思える。とにかく、できることを片っ端から試していくのだ。
 隅から隅まで徹底的につぶしていくので、どれが良くてどれがダメなのか。自分の経験として体が覚えていてくれる。
 普通、人はこっちの方向に何かあるはずだと当たりをつけて進むものだと思う。しかし、僕の場合は自分の足で全方向に歩くようにしている。
 正解がどちらの方向にあるのか、迷う必要すらない。すべての方向を探り尽くすから、どこかで必ず正解が見つかるのだ。

  『勝ち続ける意志力』 第二章 より   梅原大吾:著   小学館:刊

 
「すべての方向を探り尽くす」
 言うのは簡単ですが、それを実際にやり通せる人はなかなかいなのではないでしょうか。
 人はどうしても最短距離で正解を出そうとし、安易な解決方法を探ってしまいがちです。
 しかし、本当の実力をつけるためにはそれでは不十分なのでしょう。
 すべての失敗をやり尽くせば、最終的に残るのは成功だけです。そのような意識を見習いたいですね。

目の前のことに全力を!

 梅原さんは、日の目を見ない閉じられた世界に幻滅して、ゲームの世界を離れた時期があります。
 友達の誘いを断りきれずにゲームセンターに3年ぶりに足を運んだことがきっかけで、再びゲームの世界に戻ってきます。
 以前はゲームがすべてだった梅原さんは、再開後は考え方が少し変わったそうです。

 僕が成長するきっかけを与えてくれたのはゲームだし、ゲームに感謝する気持ちも忘れていない。この先も、ゲームでチャレンジできるうちはゲームを続けようと思っている。
 しかし、その一方で、そこまでゲームに固執する必要はないのだろうとも感じている。
 チャレンジできなくなったり、そこに自分の成長を見いだせなくなったりしたときには、少しの未練もなくゲームを捨てることができるだろう。
 何よりもゲームが好きな僕が、結局は「ゲームじゃなくてもいい」と言い出せてしまう。裏を返して考えると、最初はそれほど好きではない仕事でも、一生懸命打ち込んでいくことで好きになれる可能性はあるということだ。
 あるいは、仕事そのものとは別のところに幸せを見つける人もいるだろう。
 だから、夢や希望がなかったとしても、まずは目の前にあることに、とことん向き合ってみるのも悪くないと思う。
 子供の頃、ゲームを選んでしまい、ゲームを呪った僕自身のように「なんで俺の周りにはこんなものしかないんだ」と嘆くのではなく、目の前にあることに価値を見いだし、全力で取り組むという方法だ。
 目の前のことに没頭し、工夫を凝らし、努力を積み重ねてみればいい。そうすれば新たな思い、それこそ思いのほかポジティブな気持ちが芽生えてくるような気がする。
 例えば、とにかく3年は打ち込んでみる。3年後、
 「分かった! やっぱり好きじゃない。どうしても好きになれない」
 そのことに気づけただけでも、素晴らしい発見だと思う。
 自分にとって何がいいのか思い悩むだけではなく、まずは行動する。漠然と変化を待つのではなく、行動によって環境そのものを変えてしまうのだ。
 とことん行動し、その分野で努力を怠らなければ、自分が本当は何がしたいのかということが少しずつ、でも確実に見えてくる。

 『勝ち続ける意志力』 第四章 より   梅原大吾:著   小学館:刊

 目の前にあることに価値を見いだし、全力で取り組むこと。
 それを続けていくことで、自分の長所も、短所も、好きなことも、嫌いなことも分かってきます。
 変化を望むのならまず行動を。それもとことんまでやってみる。頭に刻み込んでおきたいですね。

機が熟すのを待つ

 梅原さんは、世の中に出るべくして出ることができないのなら、むしろ出るべきではないと考えています。
 出るべくして出ていない人は、いずれ大きな壁に突き当たるからという理由からです。

 これはゲームの世界でも言えることだ。
 本当は勝てる力がないのに、強いと思われたいから大会で背伸びをする。その結果、なんとか勝てたとしても、その強さを維持することはできない。
 実力が備わっていないのに注目されるのは不幸だと思う。下手に注目されるよりも、機が熟すのを待つべきではないだろうか。世に出られないことへの我慢も、憤りも、本人の実力を磨くためにの苦い良薬になっているはずだ。
 僕はいま、ちょっと遅めに世の中に出るくらいがちょうどいいのではないかとさえ思っている。「アイツは力があるのに、なかなか認められない」と噂される人の方が、いざ表舞台に出たときに堂々と戦える。「どうぞ向かってきてください」という心の準備できている。つまり、自信を持って勝負することができるからだ。
 それに、実力に見合った出方をしないと、たいていの人は勘違いを起こしてしまう。満足して天狗になってしまうのだ。その一方、潜伏期間が長い人は出てきたときの爆発力があるし、苦労しているぶん簡単には自分を見失わない。気持ちの持ち様も含めて、実力が備わっていて、常に感謝と努力を忘れない。
 いつか必ず訪れる、その日を信じて待つこと、そして目的と目標を明確に分けて、日々の生活・成長に少しずつの幸せを見つけること。そのようにいられる今日の生活を、僕は1日1日噛み締めるように生きている。

  『勝ち続ける意志力』 第四章 より   梅原大吾:著   小学館:刊

 小さな頃から地道にゲームの特訓を重ね続け、多くの屈辱をバネに様々な大会で活躍することで、30歳を前に日本初のプロ・ゲーマーの地位を手に入れた梅原さんだからこその実感でしょう。
 周りの評価は気にせずに、まずは、実力をとことんまで磨くことが重要だということです。人と違う輝きを放つ人は自然と周りが放っておかなくなります。
 感謝と努力を忘れずに、日々成長していけるようにしたいですね。

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 梅原さんは「生きることとは、チャレンジし続けること、成長し続けること」だとおっしゃっています。
 失敗から学べること、失敗からしか学べないことがあることは知っておいた方がいい、と強調します。
 どん底から立ち直った人間は、顔つきが違います。
 目に力が宿っていて、絶対に負けを認めない信念を感じるといいます。
 どの分野であれ、他を圧倒する実力の持ち主は、対戦相手以前に自分自身と戦わなければなりません。

 勝ち続けるための最も重要なこと。
 それは、競い合う者すらいない状況で、いかに自分自身を高めていけるかです。
 自分自身の限界を追い求め続ける“孤高の勝負師”、梅原さんの今後のご活躍にも期待したいですね。

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