【書評】『グーグルのマインドフルネス革命』(サンガ編集部)
お薦めの本の紹介です。
『グーグルのマインドフルネス革命―グーグル社員5万人の「10人に1人」が実践する最先端のプラクティス』です。
グーグルから始まった「マインドフルネス」革命とは?
グーグルが取り組んでいる瞑想法として、注目を集めている「マインドフルネス」。
最近では、多くの有名企業や有名大学が、能力向上のトレーニングとして導入しています。
マインドフルネスは、アメリカやヨーロッパを中心に、一大ムーブメントを巻き起こしています。
その理由は、どこにあるのでしょうか。
マインドフルネスの大切な特徴の一つは、「今の瞬間」に意識を向けることです。
マインドフルネスに取り組むとよいことがたくさんある、と実践者は言います。例えば、次のようなことです。
- ストレスが軽減され、仕事の生産性が上がる。
- 感情のコントロールができるようになり、感情的な判断ミスをしなくなる。
- 思いやりの気持ちが育ち、チームワークが向上する
- アイデアが湧く脳になり、創造力が高まる。
重要なポイントは、こういったマインドフルネスの効果が、個人の体験談ベースで語られるだけでなく、ハーバード大学やスタンフォード大学などの研究者によって、実証研究が行われ、脳との関係性などが証明されるようになってきていることです。
「科学的な実証を伴っていること」は、欧米において、マインドフルネスがメンタルヘルスケアのメソッドとして信頼を勝ち得ている一つの要因です。そしてこのような効果は、一部の特殊な人だけに限ったものではなく、取り組めば誰でも獲得できるものである、ということも証明されてきています。
それゆえ、欧米の企業では、社員が高度な仕事を達成するために、研修や福利厚生の一環として、マインドフルネスを広く取り入れるようになってきているのです。練習すれば、誰でも自転車に乗れるように、マインドフルネスも取り組みを続ければ、誰でもその恩恵に与ることができるといいます。
仕事で創造力やアイデア、スピードが求められているのは、何も欧米のビジネスパーソンに限ったことではないでしょう。日本で働くビジネスパーソンも同じように、チャレンジングな状況で、高い目標を掲げ、仕事をしています。その一方で、やはり強いストレスも感じていることでしょう。
わたしたちが今後、よりよい生き方、働き方をするために、今、欧米のトレンドであるマインドフルネスについて学ぶことは、意味のあることだと思います。日々のビジネスやプライベートをより充実させるために、マインドフルネスに本書で触れ、実践してみるのはいかがでしょうか。『グーグルのマインドフルネス革命』 第一章 より サンガ編集部:編著 サンガ:刊
ストレスへの耐性、感情のコントロール、思いやりの気持ち、創造力。
いずれも、現代社会において重視される能力ですが、マインドフルネスで強化することができるとのこと。
本書は、「マインドフルネス」の魅力を解説し、その実践方法をわかりやすくまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「意識のスポットライト」を当てる
マインドフルネスとは、瞬間、瞬間、今という時間に気づくこと。好奇心や親切な心、思いやりの気持ちに満ちているもの
。
マインドフルネスを経験的に知るには、「意識のスポットライト」という方法が効果的です。
マインドフルネスを理解するために、わたしたちの意識についてちょっと考えてみましょう。わかりやすくするために、「意識のスポットライト」というものを例に、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
意識のスポットライト。過去の出来事に光を当てて、思いを巡らすことがしょっちゅうありますね。時にはまだ起きていない。未来の出来事に光を当てることもあると思います。こんなことが起きたら嫌だなあとか、こんなことが起きたらいいのになあとかですね。現在に光を当てることもありますし、今考えていることに光を当てることもありますね。
マインドフルネスとは、この意識のスポットライトを「今ここ」に当てるということです。意識のスポットライトを「今ここ」だけに当ててみると、一体どのようなことが起きるでしょうか。
試しにちょっとやってみましょう。科学者のような好奇心を持って、意識のスポットライトを「今ここ」だけに当ててみてくださいね。「今ここ」にスポットライトを当てようとしたときに、自分がどうなるかを観察してみてください。
やり方を説明しますね。
- まず、椅子に座りましょう。意識は明瞭に、かつリラックスした状態で、座ります。旗を思い浮かべましょう。あなたの背骨が旗の支柱で、あなたの身体が旗のようなイメージです。できますか?
- 次に、自分の意識のスポットライトを、あなたの身体に向けてみましょう。椅子の上にある自分の身体の重さに気づきます。
- そっと目を閉じましょう
- あなたの頭の中には、いろいろな考えごとが浮かんできたのではないでしょうか。身体に向けていたはずの意識のスポットライトが、身体を離れて、さまよっている状態ですね。
- 意識が離れていることに気付いたら、もう一度、意識のスポットライトを、椅子の上の身体の、物理的な感覚に、そっと戻していきましょう。
- あなたが椅子に座っている間に、いろいろな感覚が起きてくることでしょう。痛みなどの不愉快な感覚が起きてきたときも、その感覚に興味を持ち、優しい気持ちで、どんな感覚なのか、観察してみましょう。
- 次にあなたの呼吸に意識を向けてみましょう。鼻の穴でもいいですし、喉でも胸でもお腹でも構いません。呼吸を感じやすい場所を見つけ、意識を向けていきます。
- しばらくの間、呼吸に意識を向けて、ただ呼吸を観察します。
- あなたの意識が呼吸を離れ、考えごとをしたりしてさまよい始めたら、もう一度、今この瞬間に、優しく意識を戻してみましょう。
・・・・はい。いかがだったでしょうか。
ほんの短い間でも、おそらく意識のスポットライトを「今ここ」に留めておくのは難しかったのではないでしょうか。意識のスポットライトは「今ここ」を離れ、あちこちへとさまよい、飛んでいったのではないかと思います。
でも心配しないでください。この体験こそが、あなたが現在の瞬間を生きるようになるための、大切な招待状なのです。『グーグルのマインドフルネス革命』 第二章 より サンガ編集部:編著 サンガ:刊
人間の心は、あっちからこっちへ、意識を向ける対象をめまぐるしく変化させます。
そして、その事実を当の本人も気づいていないことがほとんどです。
普段、いかに私たちの意識が「今ここ」になく、過去や未来をさまよっているか。
「意識のスポットライト」は、それを教えてくれます。
「生産性」と「マインドフルネス」
グーグルの人材開発部門に所属し、マインドフルネスを広げる活動をするビル・ドウェイン氏は、仕事におけるマインドフルネスの効用について、以下のように述べています。
ぼく自身、マインドフルネスの実践に時間を費やしたおかげで、仕事への取り組み方が明瞭になり、集中力が増し、対人関係のストレスが減り、よりエネルギッシュになりました。瞑想のために毎日45分座り、1ヶ月間のリトリートに参加することは、十分価値がある投資であると確信しています。
マインドフルになったおかげで、ミスをすることも少なくなりました。
特に、人間関係で、それが顕著に表れています。これまで、自分が怒ったり、同僚に対してひどいことを言ったりしたせいで、そのダメージを回復するのにものすごく時間を使ったと思います。それも1回ではなく、何度もありました。
マインドフルになり、自分の言葉をきちんと取り扱えるようになったおかげで、怒ったりひどいことを言ったりすることも減り、自分自身がかなり楽になったように思います。
その結果、純粋に、仕事に使える時間が増えました。グーグルでは、仕事の目標を、実現不可能だと思えるようなレベルに設定するのが常です。ある種、不合理だと思えるようなレベルに設定するのが普通なんですね。そのため、仕事は非常に困難なものになりますから、ぼくたちは、困難な問題に実際に対処できるためのスキルを身につける必要があります。
つまり、グーグルでは真にマインドフルネスを必要としているということなんです。
瞑想はわたしたちが困難なトレッキングに臨むときの登山服となっています。IT業界は「ドッグイヤー」と言われるように、変化のスピードの速い業界です。しかし、登山服のおかげで、私たちはただ素早く行動するのではなく、「精密かつ正確に」判断して行動することができるようになりました。
素早くと言っても、いろんなところに自分の意識が飛んでいって、わけがわからず混乱している状態とは、まったく違います。わたしたちは、素早く、しかし思慮深く行動することができるようになったんです。
もし、ただ単に素早く行動してしまった場合、私たちは自分が意図しないミスをたくさん起こしてしまうことになります。
しかし、思慮深く行動すれば、トラブルのリスクはゼロにはならないものの、トラブルが起きたときに、自分自身が対応する心の準備ができた状態になれるんですよね。マインドフルネスを実践することによって、ぼくは部下を率いるマネージャーとして、自分がもっとみんなの役に立つにはどうすればいいかをより意識するようになりました。
もし皆さんも、オフィスでどうすればもっと周囲の役に立てるかを毎日考えてみると、よりよい仕事ができるでしょうし、回り回って世界中の人たちのためにもなると思います。『グーグルのマインドフルネス革命』 第六章 より サンガ編集部:編著 サンガ:刊
マインドフルネスは、「困難なトレッキングに臨むときの登山服」。
働く環境が過酷になればなるほど、その真価を発揮します。
世界の超一流企業が、こぞって教育プログラムに組み入れようとするのも、うなずける話です。
「マインドフルネス瞑想」の実践
では、マインドフルネス瞑想とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。
グーグルで行った、初心者向けの瞑想指導会のやりとりから、その一部を抜き出してみましょう。
アンディー では始めます。
まず、自分が心地よく感じる体勢でゆったりと座りましょう。目は開いていても閉じていても構いません。途中でぼくが「目を閉じてください」と指示することがありますが、この指示は、皆さんの気が散らないようにするのが目的です。ですから、目を開けたままで続けていただいてもけっこうです。完全に皆さんにおまかせです。ではまず、まっすぐ前を見ます。ゆるやかに集中します。何か1点を見つめるのではなく、全体を見ます。横も、上も、下も見えますね。
では、ゆるやかな集中をキープしたまま、2、3回、大きく深呼吸します。鼻から吸って、口から息を吐きます。
鼻から吸ったとき、新鮮な空気を感じ、胸や肺が膨らむのを感じます。口から息を吐いたとき、身体が少しやわらぐのを感じます。深呼吸を続けます。鼻から息を吸い、そして口から吐きます。
次に息を吐くときに、ゆっくり目を閉じましょう。
目を閉じて、身体の感覚に気づいてみましょう。まず、触れている感覚に気づきます。椅子の上に身体があります。足の裏が床に触れています。手や腕は、足の上に乗っています。
もし、頭の中に、考えごとや、何かの感情がよぎったときは、それをただ、受け入れます。
わたしたちは、意識を身体の感覚に、ただ向けています。まわりの空間に気づきます。まわりの音にも気づきます。では意識を優しく身体の感覚に戻しましょう。
今から、身体をスキャンしていきます。
そっと身体に意識を向けて、上から順に、下に向かって意識を移動させていきます。30秒ほどかけて、頭のてっぺんから順にスキャンします。スキャンしながら、どのように身体が感じているかに、気づきます。心地よいのか、心地よくないのか。どう感じているかに、ただ気づきます。頭で考えるのではなく、ただ気づくのです。そのまま、つま先まで、スキャンを続けます。
呼吸に意識を戻す前に、一瞬止まりましょう。なぜ今これをやっているのか、何をしているのか。自分の感覚に気づきます。
そして、呼吸に意識を戻しましょう。
お腹や胸、肺で呼吸を感じます。もし呼吸をまったく感じられないときは、手をお腹に当ててみましょう。そして、呼吸の感覚に、ただ気づきます。
呼吸は長いでしょうか、短いでしょうか。呼吸は深いでしょうか、浅いでしょうか。
感覚に注意を向けたままの状態で、呼吸の数を数えます。吸うときに1、吐くときに2、と数えます。3、4、と続けて10まで数えます。10までいったら1に戻ります。ではやってみましょう。何か思考が湧いてきたとしても、そのままにしておきます。
もし、集中していないことに気づいたら、すぐにそっと意識を呼吸に戻します。
昇っていく感覚、降りていく感覚に気づきます。ここで、すべての集中を完全に解き放ちます。心を完全に自由にします。10秒から20秒ぐらい、完全に心のおもむくままにします。心が考えたいと思えば、考えるままにさせておきます。では、もう一度、意識をそっと身体に戻しましょう。身体の感覚に気づき始めます。身体の重さや、椅子に触れている身体に気づきます。床に接している足、腕の重さに気づきます。もう一度、まわりの音にも気づき始めましょう。
自分のまわりの空間にも気づきます。そうしたら、ご自分のペースでよいので、準備が整ったら、ゆっくりと、目を開けましょう。・・・・はい、皆さん。戻ってきていますでしょうか。
『グーグルのマインドフルネス革命』 第八章 より サンガ編集部:編著 サンガ:刊
無理に「考えないようにしよう」と思っても、思考は止められません。
いかに、「考える」から「感じる」に、意識のモードを切り替えることができるか。
ポイントは、バラバラになっている「心」と「身体」を一つに統合すること。
自分の体の感覚に意識を集中しつつ、リラックスした状態で行いましょう。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
グーグルには、5万人の社員がいて、そのうちの「10人に1人」がマインドフルネスを実践しています。
世界中から優秀な人材をかき集め、世の中を革新し続けるグーグルの社員が支持している。
その事実だけでも、マインドフルネスの有効性は証明されているといっても過言ではないです。
東洋で生まれ、西洋で育った人類の英知の結晶、マインドフルネス。
このブームの大きなうねりが、日本を呑み込むのは、時間の問題です。
巻末には、日々、マインドフルネス瞑想を実践するための導入用CDも付いています。
一足早く、“「今ここ」を生きるマインドフルな生活を体験したい。
そんな方にはうってつけの一冊です。
【書評】『人生を思うように変える呼吸法』(パム・グラウト) 【書評】『自分再起動』(クリス・ギレボー)