【書評】『自分再起動』(クリス・ギレボー)

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 お薦めの本の紹介です。
 クリス・ギレボーさんの『自分再起動』です。

 クリス・ギレボー(Chris Guillebeau)さんは、作家・起業家であり、世界すべての国を訪れた経験を持つトラベラーです。

人生を変える冒険、「クエスト」とは?


 世界のすべての国を訪れるという壮大な計画を実行に移したギレボーさん。
 世界中を旅しているうちに、「こうした挑戦をしているのは私ひとりではない」ということに気づきます。

「誰も考えつかないような目標を立てて、それに向かう」

 そのような自分の内面を変え、人生に大きな変化をもたらす挑戦を、ギレボーさんは、「クエスト」と名づけました。

 5つの大陸で私はクエストに挑戦する人たちを探して話を聞いた。インタビューや調査では、彼らがある特定の目標に長期間集中することに決めた理由を尋(たず)ねた。彼らは何を学び、途中でどのように変化したのだろうか?
 どんな取り組みであっても、クエストを追求する人にいくつかの共通点が見られた。
 たとえばひとりで何千キロも歩いたり、自転車に乗ったり、ヨットで航海したりする人たちがいた。私自身は何千キロも歩くのも、自転車に乗るのも、ヨットに乗るのもご免こうむりたい(飛行機に乗るほうがいい)。
 そういう旅をしたがる人は、私が対処しなければならない問題にはたぶん興味がないだろう(何日も空港の床の上で睡眠を取ろうとしたり、不正を働く係官と緊迫した状況でやり合ったりしたくないだろう)。しかしチャレンジそのもの――目標を追求する意欲や、前進し続けるためなら何でもしようという欲求――は共通していた。
(中略)
 旅以外では、学習、記録、スポーツの分野もまた、説明するまでもないだろう。
 あるカナダ人はマサチューセッツ工科大学(MIT)の4年間のコンピュータサイエンスのカリキュラムを独学し、テストの点数をそのつどブログに公開しながら1年で修了しよう決めた。これは明らかに学習を目的にしたクエストだ。馬術の世界大会に出場する若い女性は、特に扱いにくい馬を選んで調教し、ヨーロッパの大きな選手権で優秀な成績をあげた。これはまぎれもなくスポーツ分野のクエスト。
 実生活の冒険は世界を旅することだけではないし(本書に登場する体験談の多くは旅にまつわるものだが)、クエストは必ずしも故郷を離れる必要があるわけではない(安全地帯から飛び出すことは多いとしても)。
 本書で、みなさんはいくつもの驚くべきストーリーを目にする。これらの大半は、驚くべきことをやり遂げたごく普通の人々の物語だ。
 生まれつきの才能で成し遂げたのではなく、自分が選んだことに打ち込んた結果できたことなのだとわかるだろう。

 『自分再起動』 第1章 より クリス・ギレボー:著 本田直之:監訳 飛鳥新社:刊

 人生を根本から変えてしまう、大きな冒険。
「クエスト」への扉は、誰にでも、いつでも開かれています。

 本書は、「クエスト」の具体例を挙げながら、人生を変える大きな“冒険の旅”に出るための方法についてまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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なぜ? と聞くところから始めよう


 それまでの安定した人生を捨て、“旅”に出ることを決心した人たち。
 彼らを突き動かした原動力は、何だったのでしょうか。

 ときに、彼らの選択は深刻で重大なものだ。望んでいる人生経験を得るためには、彼らは何かをあきらめなければならなかった。そこまでさせるほど心を駆り立てるものの正体はいったい何だろう?
 世界中の人々に「なぜ?」という質問をしてみたが、答えはたいていどうどうめぐりで、不十分でさえあった。
「そのときはそうすべきだと思ったんです」という答えもあった。要するに「やりたかったからやったんです」という意味でしかない。
 行動の原動力をさらに掘り下げてみたとき、本当の答えが見つかった。私が話を聞いた人の大半は、何らかの形で日常生活に大きな不満を感じていた。
 彼らはこれまで知らなかった、あるいは経験したことがなかったような本質的な何かを望み、それを見つけるか、作り出したのだ。
 体重が180キロを超えるトラビス・エネイクスは、熱心に太極拳を学び、1000日間食べたものをすべて記録した(単なるダイエットはクエストに入らない、先にことわったが、ここまでくると話がまったく違う)。
 変わらなければいけないと思うようになったいきさつを、トラビスはこう語っている。
「こんなふうに生きるのはもういやだと思ったんです。どうせやるならちょっとだけではなくて、新しい生き方を見つけるためにすっかり方向転換しようと思いました
 不平不満は口にするな、ひたすら現状に感謝しなさい、という考え方もよく聞く。不満を口に出すと、まるで悪人のように言われることさえあるが、クエスト的な思考に照らせば、こう言い返すべきだ。
「いやいや。不満はポジティブな変化のもとだ」
 ただし、不満だけでは、やる気を起こさせ、クエストを始めさせる力はない。不満を抱えたまま生きている人はたくさんいるが、大半は人生に根本的な変化を起こそうとしないし、ましてやクエストにとりかかる人は少ない。
 くすぶっている火を燃え立たせるには、誰もやろうと思わないぐらいのスケールのことで、不満を解消するアイデアを考えてみる必要がある。計算式にすれば次の通りだ。

 不満+大きなアイデア+行動=自分を変えるクエスト

 『自分再起動』 第2章 より クリス・ギレボー:著 本田直之:監訳 飛鳥新社:刊

「今の自分を変えたい」
 自分の内側から湧き上がる大きな衝動が、「クエスト」に通じる重い扉をこじ開けます。

 それまで自分の心にフタをし、本当にしたいことせずに我慢していた人。
 そんな人ほど、ちょっとしたきっかけで、とてつもなくすごいことを成し遂げる可能性があるということですね。

「100万枚の写真」を撮る


 忙しい仕事を持ち、妻と4人の子供を抱えるトーマス・ホークさん。
 彼の人生を賭けた大きな目標(クエスト)は、「100万枚の写真を撮って発表する」こと。

 どこに行くにもカメラを携え、いろいろな場所に出かける。週末ごとに飛行機でアメリカの100大都市のひとつに飛ぶが、100都市を制覇するには少なくとも10年かかりそうだ。ホームレスから小銭を要求されたときは2ドルと引き換えに写真を撮らせてもらい、路上生活者の真の姿を写した写真のコレクションに加える。
 世界を旅している間、私はたくさんの写真をスマートフォンで撮るが、たいして技術はいらない。トーマスにとっての目標は単に100万枚の写真を撮ることではなく、100万枚写真を現像し、ウェブでも公開することだ。
 目標を達成するためには、少なくとも10倍のシャッターを切らなければならないと彼は考えている。写真は最後には大勢の目で評価される。仕上がった写真はすべてオンラインで公開し、数千人に閲覧され、他の写真家からたくさんのコメントが送られてくる。
「この目標は何よりも、人生の大部分を芸術の創造のために捧げることを意味します」
 トーマスはサンフランシスコの自宅から私にそうメールしてくれた。
「私の人生で写真が意味を持たなくなることは、死ぬまでありません。それは芸術を人生の中核に据えて生きるための、ひとつの方法なんです」
 世界中の国を訪れているうちに発見したのだが、いったん目標を立ててしまうと、それに向かって進んでいくことは予想より簡単な場合が多い。実はトーマスの場合も、最初の目標は50万枚の写真を撮ることだった。やっているうちに、100万枚もやってやれないことはないと考えた。投げ出さずに続ければいいだけだ。
「疲れたときも写真を撮りつづけます」
 この言葉が説明してくれると言わんばかりだ。
 多くの人はトーマスに対して、こんな疑問を抱くだろう。
「どうすれば仕事と家庭を持ちながら趣味でもそんな挑戦が全部できるのだろう? すべてをこなす時間をどうやって作るんだろうか?」
 私も同じように不思議だ。私自身もかなり忙しい毎日を送っているけれど、トーマスにはとても及ばない。本人の答えはこうだった。
はっきり言えるのは、何もかもやる時間はないということです。何かを犠牲にしないと。いつも睡眠不足だし、家族は二の次だと妻はこぼすでしょう。私はアメリカの100大都市を撮っているところです。もう24かそこらまで撮りました・・・・・3年以内に残りを終わらせたいと思っています。人生では、やりたいことがいつも綱引き状態になります。できるだけうまくこなして、ストレスを乗り切っていくしかありません」
 トーマス・ホークはひとりで何もかもこなすドキュメンタリー作成マシーンだ。どこに行こうと、1枚1枚写真を撮りながら目標に向かって少しずつ近づいていく。
 目標を追求するための環境づくりや数値目標が力になるのは間違いない。しかし、何よりも力になるのは、一瞬一瞬を無駄にしてはいけないと心に刻むことだ。
 ホスピスで最期の日々を過ごす患者のために働くキャスリーン・テイラーのセリフ――終わりが近いと知れば、人はつまらないことをしている暇はなくなります――をもう一度思い出してみよう。
 しかし、つまらないこと――あるいは後悔――をしている暇はないと、最期を迎えるよりずっと前に自分で決めたらどうなるだろう? あなたが人生のどの段階にいようと、望んでいる通りの人生を送るとたった今誓ったらどうだろうか?

 『自分再起動』第4章 より クリス・ギレボー:著 本田直之:監訳 飛鳥新社:刊

 自分の本当にやりたいことが明確になる。
 すると、何とかそれをする時間をつくり出そうと、頭をひねるようになります。
 そして、生活自体がそれ中心になり、活力に満ちあふれてくるのですね。

 誰にとっても、「時間」は限られた資源です。

 何かを成し遂げるためには、別の何かを犠牲にしなくてはならない。
 この、トレードオフの関係に改めて気づかせてくれるのも、「クエスト」の大きなメリットです。

「気に入らないカップ」をあえて壊す


 今までの慣れ親しんだ習慣を捨てて、自分の「クエスト」に挑戦する。
 それは、とても勇気がいることです。
 とくに、最初の一歩を踏み出すのは難しいですね。

 ギレボーさんは、そんな不安を断ち切り、それまでの習慣から抜け出すための方法について、以下のように述べています。

 ジュリアン・スミスは『ためらい(The Flinch)』という短い著書の中で、自分自身の人生の実験を紹介し、読者にも試してみるように勧めている。その中で私が好きなのは、家の中のものをあえて壊すという次の部分だ。
「キッチンに行って気に入らないカップをひとつ手に取る。カップを持ったまま、床の固い所へ行く。カップを持った手を体の前に伸ばす。カップに別れを告げる。さあ、カップを落とすんだ。あなたがたった今カップを落とさないために並べているどんな理屈も、あなたの弱点だ。その弱点を覚えておこう。きっとこれから何度でもあなたはその弱点にめぐりあうだろう。くだらないカップを落とすんだ。やってみたかい? それならひとつわかったことがあるだろう。体に染みついた約束事を破るには、瞬間的な力が必要だってことが
 キッチンでカップを割るほかに、どんな人生の実験が私たちを揺さぶって、好ましい変化を与えてくれるだろうか?
 ざっと考えただけでも、次のようなものが考えられる。

  • 見知らぬ人に話しかけてみる
  • 1週間冷たいシャワーだけをあびる
  • 目覚まし時計が鳴ったらすぐにトレーニングウェアを手に取る習慣をつける(スヌーズボタンは使わないこと!)
  • 普段と違う方法で、あるいは違う交通機関で出勤する
  • リビングや寝室の家具をすっかり並び替える
  • サイコロを転がしてエクササイズを選び、いつものトレーニングの順番を変えてみる
  • 無料の外国語の集いに参加する
  • 定期的なミーティングで、あえていつもと違う席に座る
  • 普段ミーティングで活発に発言する人は発言を控え、普段あまりしゃべらない人は積極的に話す
  • フェイスブック、ツイッター、あるいはオンライン上で友達の集まる場所ならどこでも、「何かできることはないかな?」と投稿しよう。できるだけたくさんの依頼に応えよう。
  • 犬のおやつを公園に持って行き、知らない人(特に犬を連れている人)にあげる
  • 雨の日に傘を持っていくのをやめる。濡れるだろうが、だからといって溶けることはないだろう
 これらのうちいくつかは、ばかばかしい、あるいは的外れなアイデアに思えるかもしれない。
 興味が持てるものだけを選び、もしひとつもなければ、自分で作ればいい。

 『自分再起動』第6章 より クリス・ギレボー:著 本田直之:監訳 飛鳥新社:刊

 習慣という慣性の力を振り切り、新しいステージに飛び立つためには、「瞬間的な力」が必要です。

 最初は、小さなことでもいい。
 これまでの自分の人生で経験していないことを、思い切ってやってみる。

 その繰り返しが、“冒険”に旅立つ勇気をくれるのですね。

「原点」を大切にする人はいつまでも成長する


 ギレボーさんは、『小さいことでも、磨き続けることで、「クエスト」につながる』と述べています。

 国民的名声を得て銀行に数億ドルのお金がうなっている有名コメディアンなのに、舞台に出て人を笑わせる地味な仕事をずっとやりつづけている人がいると知って驚いた。
 たとえば週5日テレビに出演し、数百万人の視聴者を獲得したにもかかわらず、ジェイ・レノは「トゥナイト・ショー」の司会を務めていた最後の数年間、マイナーな舞台への出演準備をしながら週末を過ごした。毎週日曜日にはのんびり過ごす代わりにカリフォルニア州のハモサ・ビーチにあるコメディ・アンド・マジック・クラブの舞台に立ち、伝統的なコメディの型通りの仕事をこなした。なぜわざわざそんなことを?
 レノはこの型にはまった仕事を一種の「自己評価の場」とみなしている。クラブの仕事がちゃんとできれば安心というわけだ。逆にうまくいかなければ心配になる。雑誌のインタビューに答えて、レノはこう語っている。
「テレビの仕事をしていると、ときたま小さな紙に書かれたメモを受け取るんだ。メモには9歳から13歳までの男の子とに受けているとかいないとか、猫の飼い主にもっと番組を見てもらえるように、猫ジョークを増やせとか書いてある。だけど1500席の劇場に入ったときは、満席なら自分がいい線いっているのがわかるし、3分の2しか埋まっていなければ、どこかまずいところがあるんだと言われなくてもわかる」
 一方、同じく国民的コメディアンのジェリー・サインフェルドは推定8億ドルの資産の持ち主でありながら、定期的に飛行機に飛び乗ってアメリカ中の小さなクラブの舞台に立っている。またもや、どうしてそんなことを? という疑問が私に浮かぶ。
 自分が人気者であることを確かめて安心するのがサインフェルドの目的ではない。そうするのはむしろ、腕を磨くためだ。
 彼は『ニューヨーク・タイムズ』のインタビューで次のように語っている。
「2週間舞台に立たないと、すぐに腕が鈍ったと感じる。何年か前に読んだ記事によると、スポーツはたくさん練習すればするほど、文字どおり脳の神経回路がブロードバンドになって、たくさんの情報を一度に送れるようになるらしい。でも練習をやめた途端に、神経回路はもとの太さに縮みはじめるんだ。それを読んでから僕の人生は変わったよ。昔はどうしてこんな舞台で演じる必要があるんだろうと思っていた。今さらこんなことやらなくてもいいじゃないかってね。それは違うんだ。練習は続けなけりゃいけない。やめた途端にブロードバンドが狭くなりはじめるからね」
 サインフェルドもレノも、観客の目の前で体を張ること自体に意義があると信じている。どんなに少人数だろうと、そこにいる観客の心をひとつに結びつける尊さ。
 サインフェルドによれば、目指しているのは「それ自体のために小さなことを磨いていくこと」。彼は小さな町を訪れて、ちっぽけな会場で予定にないショーをやるのをやめるつもりはさらさらない。
 このふたりの最高のコメディアンに共通するもの。それは、「小さなことを磨きつづけなければならない」という信念であり、それ自体が十分にクエストになる。

 『自分再起動』第9章 より クリス・ギレボー:著 本田直之:監訳 飛鳥新社:刊

「千里の道も一歩から」
 どんな長い道のりでも、一歩一歩の積み重ねです。

 未来を悲観せず、過去に慢心しない。
「原点」を忘れない姿勢を持ち続ける。

 それが、前人未到の地にたどり着く秘訣だということですね。

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「クエスト(冒険)」と聞くと、壮大な目標に向かって苦難を乗り越えていくというイメージを持つかもしれません。
 しかし、実際には、「好きで好きでたまらないことを続けていたら、いつの間にか、誰も到達していない場所に到達した」ということの方が多いようです。

 最初は、“小旅行”程度のつもりだったものが、どんどん膨らんで、ついには未知なる領域への“冒険”へと変わっていく。
 その途中、様々な困難を乗り越える過程で、“冒険者”は、たくましく成長していきます。

 大事なことは、「最初の一歩」を踏み出す勇気を持つこと。

 皆さんも、心の中に眠らせていた情熱を呼び起こし、自分だけの「クエスト」に挑戦し、『自分再起動』してみませんか。


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