【書評】『コーチングが人を活かす』(鈴木義幸)

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 お薦めの本の紹介です。
 鈴木義幸さんの『コーチングが人を活かす』です。

 鈴木義幸(すずき・よしゆき)さんは、チーフエグゼクティブコーチで、国際コーチ連盟マスター認定のコーチです。
 企業の管理職を対象とするコーチング研修、経営トップへのエグゼクティブ・コーチングを手掛けられています。

部下を成長させる、「コーチング」の切れ味


 部下や周りをうまく活かすには、具体的にどのような方法をとればいいのか。
 多くの管理職は、そんな悩みを抱えながら、日々の仕事に取り組んでいます。

 部下の開発に向けた心構えは巷(ちまた)にたくさん溢れ、成功者のみなさんがさまざまな媒体を通じて声高に叫んでいます。しかし、日々、上司は部下と面と向かい、言葉を投げ、言葉を受けるわけです。

 そのやり取りをどうするのか。

 スタンスはわかったけれども、どのように受けてどのように返すのか。「そんなことは管理職なんだから自分で考えろ」というのは、もっともな弁ですが、実際管理職は、そして、経営陣でさえ、それを知りたいのです。
 どのような言葉のやりとりをするのかで、部下のモチベーションは上がりもすれば下がりもします。部下は、未来に向けてリスクのある行動をとってみようとも思いもするし、現状維持でもいいや、とも思う。

 どんなに社長が全体で魅力的な話をしても、それは、せいぜい四半期に1回。部下に一番影響をあたえるのは、「日々の上司とのインタラクション」です。言葉の受け答えです。

 コーチングを学んだ多くの方が、新しいインタラクションを部下に試し、そして驚きます。自分の「言語」を変えることが、こんなにも人に影響を与えるのか、と。

 新しいコーチングという言葉を学び、その「切れ味」を体感した管理職は(繰り返しますが、経営陣も)、さらに一層部下の成功と成長に向けて学習を加速させ、行動を進化させていきます。

 『コーチングが人を活かす』 はじめに より 鈴木義幸:著 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

 本書は、「コーチング」というコミュニケーション・ツールを、日々の仕事に活かすためのノウハウをまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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相手の中から「引きだす」


 コーチングの基本は、相手から能力を「引き出す」こと。
 コーチングの定義で「引き出す」とは、相手さえもまだ自分の内側に眠ることに気づいていない情報を引き上げ、新たな行動の指針となる知識に変えていくことです。

 では、具体的にはどのようにすれば、人から引きだすことができるでしょうか。人と人が向かい合えば、たとえそれが親子であったとしても、ある種の摩擦が生じます。人は基本的に自分以外の人間に対して防衛を働かせているからです。厚いシャッターが下りたままでは、その向こう側にあるものを引きだすのは容易なことではありません。
 引きだすための第一歩は、相手が下ろしているシャッターを少しでも上げることです。そしてシャッターを上げるには、常日頃から「通りがかりの一言」を大切にする必要があります。「おはよう」「ありがとう」そんな当たり前の一言にどれだけ気持ちをこめられるかで、シャッターの上がり下がりは変化します。向かい合ってからはじめて重く閉ざしたシャッターに手をかけるのでは遅すぎます。

 その上で、引きだすために質問をします。そして、ひとつ答を受けとったら、受けとったことをちゃんと相手に伝えます。
「そうなんだね」「そんなふうに考えていたんだね」それからさらに相手を自由にします。「それで」「それから」「もっときかせてくれよ」話の細部に対して関心が生まれたら、また質問します。
 そしてまた、受けとって、受けとったことを伝え、促し、質問する。この過程が繰り返されることによって、相手は引き出されたという実感を持ちます。
 目の前の人の能力や気持ちや考えを引きだしてみよう、そう思った瞬間に、あなたはその人にとっての、その瞬間における人生最大のパートナー(コーチ)となるのです。

 『コーチングが人を活かす』 PART 1 より 鈴木義幸:著 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

 相手から「引き出す」には、相手の心のシャッターを上げる必要があります。
 心のシャッターは、心の交流なしに、上がることはありません。
 日頃からの何気ない言葉のやりとり、大事にしたいですね。

人は、「四つのタイプ」に分けられる


 人には、それぞれ個性があります。
 同じアプローチで、誰もがやる気を起こすというわけではありません。
 つまり、相手のタイプや個性に応じて、接し方を変える必要があるということ。

 コーチングでは、主として対人関係上の特徴を切り口に、人のタイプを以下の4つに分けています。

  • コントローラー
  • プロモーター
  • アナライザー
  • サポーター

 1 コントローラー・タイプ
 行動的で、自分が思った通りに物事を進めることを好む。他人から指図されるのをなによりも嫌う。物いいは単刀直入、時に他人から攻撃的であるといわれることもある。
 このタイプの人に対しては、こちら側でコントロールしないようにすることが大切。話をするときは結論から、そして相手の攻撃性に惑わされないようにする必要がある。
 2 プロモーター・タイプ
 自分のオリジナルなアイデアを大切にし、人といっしょに活気のあることをするのを好む。自分ではよく話すが、人の話しはあまりきかない。
 自分のアイデアに対して非常な自信を持っているため、それを却下するような否定的なアプローチをしないことが重要。独創性を発揮できる自由な環境を与えることが、能力を引きだすことにつながる。
 3 アナライザー・タイプ
 行動に際して多くの情報を集め、分析し、計画を立てる。物事を客観的にとらえるのが得意で、小さな達成をこつこつと積み上げていく。大きな変化を要求せず、彼らの変化のペースに歩調を合わせることが大切。
 人と関わるときも彼らは慎重で、あまり感情を外側に表さない。むりやり自分の気持ちをいうように仕向けるのは逆効果。
 4 サポーター・タイプ
 他人を援助するのを好み、協力関係を大事にする。周りの人の気持ちの変化に敏感で、気配り上手。自分がしたことを認められたいという欲求が強いので、十分な評価を与える必要がある。
 一方で彼らは周囲の期待に応えようとするあまり、自分本来の願望を見失うことがある。なにを望んでいるのか聞いてあげると、信頼関係が深まる。

 タイプ分けは「あの人はこのタイプだからこう関わればいい」といった、マニュアル化のためのものではありません。自分のタイプをまず知り、いろいろなタイプの人とどう関わればお互いのいい部分を最大限に活用できるかを考えてみましょう。

 『コーチングが人を活かす』 PART 2 より 鈴木義幸:著 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

「己を知り、敵を知らば、百戦して危うからず」

 この兵法の格言は、人間関係にも通じる部分がありますね。

 誰もが、この4つのタイプに分類分けできるとは限りません。
 しかし、相手との信頼関係を築くための、とっかかりとして役に立ちます。

相手の価値を見出し、やる気を高める


 相手のやる気を出すアプローチのひとつが、「価値観を見出す」ことです。

 まずは次の単語のリストを見てください。どの行動を起こしているとき、あるいは状態にいるときが、皆さんがいちばん生き生きしているときでしょうか。同じような意味の言葉もありますが、より自分にしっくりくるのはどちらでしょう。ベスト3を選んでみてください。

 探求する 冒険する 優雅である 輝いている 触れ合う 共にいる
 影響する 勇気づける 極める 卓越している 奉仕する サポートする
 創造する 工夫する 遊ぶ 指導する 説明する 勝つ 達成する
 気づく  観察する 洞察する 支配する 説得する つながっている

 人はそれぞれ無意識のうちに「価値」を置いている行動や状態があります。目標達成のための行動はできるだけその人が価値を置いているもの、いい換えれば自然に楽しんでやれるような行動であることが望ましいことになります。無理なく続けることができるからです。価値に合わないような行動を目標達成のための手段として選ぶと、継続が大変になってしまいます。

 ちなみに私が価値を置いている行動は「冒険する」であったり「工夫する」であったりします。このことをはっきりと認識してからは、仕事が以前よりも百倍楽しくなりました。以前は誰かのやりかたを踏襲することもあったのですが、今では一切していません。
 先人のやりかたのほうが効果的なこともあるかもしれませんが、それを受け継いでしまうと「冒険」や「工夫」が排除されて、やる気が一挙にしぼんでしまうのです。ですから目標に向けての自分の行動には必ず「冒険」や「工夫」が要素として入るようにいつも気をつけています。

 ぜひコーチングする相手の価値に目を向けてみてください。右(上)のようなリストを見せてもよいでしょう。「どうしてやらなかったんだ!」と語気を荒げることは少なくなると思います。

 『コーチングが人を活かす』 PART 3 より 鈴木義幸:著 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

 自分自身の価値観は、意外と理解できていないものです。
 同じことをするのでも、価値観に沿ってやるのと、そうでないのでは、大きな違いがありますね。

 自分の価値観に気づく。
 すると、他人は自分とは違う価値観で動いていることに気づくことができます。

ほめ続けて、モチベーションを上げる


 コーチングでは、とにかく、ほめ続けます。
 相手を承認することで、不安を取り除いて、モチベーションを上げるためです。
 一方、「叱る」という手段は使いません。

 多くの管理職は部下の育成には「ほめる」ことと同時に「叱る」ことが必要だと思っています。ほめてばかりいたら成長などあるはずがない。叱られてはじめて自分の過ちに気づき、成功に向けた新しい一歩を踏み出せるのだと。私は叱るという行為を否定しているわけではありませんが、「叱らない」育てかたの可能性について、もう少し考えてみてもいいと思います。

 シドニー五輪で優勝した女子マラソンの高橋尚子選手が、インタビューで彼女を育てた小出義雄監督の育成方法を評し「小出マジック」といいあらわしていました。「とにかく監督はほめてくれるんです。たとえタイムが悪くても「いいねえ〜」とか。そうするともっとがんばろうって思っちゃうんですよね」
 あなたが育成される立場にあるとしたらどうでしょう。自分と上司の関わりについてちょっと想像してみてください。あなたの上司が来る日も来る日も本当にほめ続けてくれたら、あなたの仕事に対するモチベーションはどうなりますか? 上がりますか、それとも下がりますか?
「叱るな」とはいいません。でももう少し、ほめることの効用について想いを馳せてみてください。
 そしてもしその気があれば、自分の部下をひとり選んで、半年くらいほめ続けるというのを試してみてください。オリンピック級の成果をあげるかもしれませんよ。

 『コーチングが人を活かす』 PART 5 より 鈴木義幸:著 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

 人は誰でも、ほめられると嬉しくなるものです。
 その人のためにも、がんばろうという気になります。

 相手の内側からのモチベーションを、最大限に引き出す。
 それには、「ほめる」というテクニックを使うこと。
 ぜひ、実践したいですね。

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 コーチングの基本は、相手の力を「引き出す」ことです。

「答えは相手の中にある」
 と信じ、相手をとことんまで信頼すること。
 それが、コーチングの効果を最大限に発揮するポイントです。

 コーチングは、難しいものはありません。
 どれも、訓練すれば、簡単に身につけることができるものばかり。

 ビジネスにかぎらず、さまざまな場面で応用できる、優れたコミュニケーション・ツール。
 それが、コーチングです。
 皆さんも、ぜひ、その“切れ味”を試してみてください。

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