【書評】『前に進む力』(ダグラス・パーヴァイアンス)
お薦めの本の紹介です。
ダグラス・パーヴァイアンスさんの『前に進む力』です。
ダグラス・パーヴァイアンスさんは、ミュージシャンです。
結成から45年以上活動する、グラミー賞常連の有名ジャズバンドのトロンボーン奏者であり、そのバンドのリーダーです。
「自分でなんとかできる」ものを見抜く
パーヴァイアンスさんは、最初に、自身の人生の指針とした言葉を紹介しています。
世の中には変えられるものと、変えられないものがあります。
絶対に抗えない、悲しみながら受け入れるしかない出来事も、人生にはたくさん起こります。
一方で、自分の力でなんとかできるものや、乗り越えられることもたくさんあるのです。
「人生の最中に与えられる“チャレンジ”のうち、
どれが『自分の力でなんとかできる』もので、
どれが『自分の力でどうしようもない』ものなのか、
大切なのは、その“違いを見抜けるようになることだ」
私は若いころにこの言葉を知り、この考え方に、つねに助けられてきました。
違いを見抜けるようになることで、
大きな出来事にも覚悟を決めて対峙できるようになり、
“逃げる”以外の選択肢を自分の人生に持つことができるからです。「前に進む力」 まえがき より ダグラス・パーヴァイアンス:著 跡部徹:訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊
「自分の力でなんとかできる」もの。
それを見抜き、全力で立ち向かう。
パーヴァイアンスさんが言いたいことを、大きく分けると次の4点です。
- コンフォートゾーンを離れろ(一歩踏み出す勇気を!)
- 自尊心を持て(自分のあるがままを好きになれ!)
- 自分で選んだ道を進め(自分の好きなことをとことん追求しろ!)
- 完璧を求めるな(その途中過程に合った可能な限りのベストを尽くせ!)
本書は、それを忠実に守り、自らの道を切り開いてきたパーヴァイアンスさんが、私たちに向けたアドバイスをまとめた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「コンフォートゾーン」を離れろ
1つ目の“コンフォートゾーンを離れろ”。
慣れ親しんだ環境から、離れる勇気を持つ。
それは、難しいことです。
しかし、その勇気を持たない限り、成長するチャンスを逃してしまいます。
誰にでも「コンフォートゾーン(居心地の良い場所)」というものがある。長年同じようなことをやってきて、その分野においては成果を出せる、自分にとっては難しくもないし、普通にやるだけでお金ももらえる、そういった仕事や環境のことだ。
コンフォートゾーンは、その人にとってとても慣れ親しんだ、安全な場所だ。
しかし、居心地の良い場所に居続けては、何も起こらない。そしてあなた自身も成長できない。ドキドキ、ハラハラする必要のない、楽にこなせる繰り返しの仕事になっているからだ。居心地の良いところから一歩踏み出したところに、成長はある。
最初はむずかしかったことでも、できるようになり慣れてくると、あなたにとってのコンフォートゾーンになってしまう。「居心地の悪い場所」が「居心地の良い場所」になったら、それは、また次に一歩踏み出すことを考えはじめる時期だ。居心地が良い場所から、一歩踏み出して挑戦する。これが重要なポイントだ。「前に進む力」 第1章 より ダグラス・パーヴァイアンス:著 跡部徹:訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊
「コンフォートゾーンから一歩踏み出す」とは、言いかえれば「リスクを取ること」。
人生では、思ってもみなかったチャンスが自分の目の前にやってくることがある。
それを成功させることで、自分がステップアップできるような仕事だ。しかし、そのチャンスを手に入れるためには、リスクを取って、コンフォートゾーンから飛び出す決断が必要になる。
いつまでも安全なところにいては、成長なんかできない。「前に進む力」 第1章 より ダグラス・パーヴァイアンス:著 跡部徹:訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊
新しい世界へ飛び込まない限り、新しい経験はできない。
すなわち、成長できないということです。
「一歩踏み出す勇気」を持ちたいですね。
自尊心を持つこと
2つ目の“自尊心を持つこと”。
これも重要です。
自分を価値ある人間だと思えない人が、自らの力で、道を切り拓くことはできません。
パーヴァイアンスさんも、若い頃、アルコールに溺れ、自暴自棄になりました。
しかし、自尊心を取り戻すことによって、あるがままの自分を受け入れられるようになりました。
新しいことにチャレンジできるようになるためには、自分の失敗を許し、挑戦したことを褒めてあげられる心の余裕が必要となる。
この心の余裕がどこから来るのかというと、「自尊心」だ。自尊心がないと、自分のことを責めてしまう。「ただでさえダメな自分が失敗するなんて・・・・・ 」というネガティブな気持ちにどんどん陥ってしまう。
(中略)
「自尊心」を持っている状態というのは、言いかえると、自分の失敗を許すことができ、自分が完璧である必要はないと思える状態だ。「前に進む力」 第2章 より ダグラス・パーヴァイアンス:著 跡部徹:訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊
自分の選んだ道を進むこと
3つ目の“自分の選んだ道を進むこと”。
自分が心からやりたいこと、納得していることに、限りある人生の時間を使ってチャレンジできること―それこそが私たちの最大のよろこびだ。私たちは他人の人生ではなく、自分の人生を生きるべきだ。他人から良く見えるように生きよう、というのは、他人の人生を生きているようなものだ。
そのためには、まず「自分が本当にやりたいこと、なりたい姿」に気づく必要がある。自分が本当にやりたいことに気がついたら、そこへ向かって一生懸命努力を続ければいい。どんなに壁があろうとも、自分を信じて打ち込むことが、解決の糸口をみつけることになる。私が伝えたいのは、「自分が本当になりたいと思っていること、自分が心からやりたいと思っていることを選んでほしい」ということだ。私の場合はそれが音楽だった。
あなたも、あなたの心に聞いていみてほしい。本当にやりたいと思っていることは何なのか、を。
本当には、あなた自身も薄々気がついているんじゃないだろうか。「前に進む力」 第2章 より ダグラス・パーヴァイアンス:著 跡部徹:訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊
悔いのない人生を送る。
そのためには、「自分は本当に何をしたいのか」を知る必要があります。
ただ、最初から「無理だ」とあきらめている人が多いですね。
本当に無理なのか。色々な可能性を探ってみた結果なのか。
ここで諦めず前に進むか、諦めてしまうか。
それが、自分の望む人生を歩めるかどうかの、分かれ道です。
好きなこと、本当にしたいことなら、絶対に投げ出さないし、最大限の努力をするでしょう。
その熱意が、進むべき道を切り拓きます。
完璧を求めないこと
4つ目の“完璧を求めないこと”。
Progress not Perfection(完璧じゃなくてもいいから、前進しよう)
人生に「完璧」を求めすぎるのは良くない。完璧を求めていたら、自分も他人もダメなところばかりが気になってしまう。「あるべき主義」に陥らずに、その場その場でベストを尽くすことに集中することが大切だ。
(中略)
自分のできている部分に自信を持って、前に進んでいこう。
そして、尻込みせずにチャンスをつかみにいこう。
そして、チャンスをつかんだ以上は、それをモノにするために全力で取り組んで、相手の期待を超える結果を残すことに努めることだ。
その過程で、あなたは必ず成長している。尻込みしてチャンスをつかみにいかなければ、成長する機会を得られない。「前に進む力」 第3章 より ダグラス・パーヴァイアンス:著 跡部徹:訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊
謙虚であることは、本当にすばらしい日本の文化だ。しかし、あまりに完壁なものを求めすぎて、せっかくの実力を外で表現しなければ意味がない。
私が出会った日本人たちは本当にすばらしい人たちばかりだ。だからこそ遠慮せずに、どんどん力を発揮したらいいのに・・・・・と、もったいなく感じた。
(中略)
覚えておいてほしい。謙遜したり遠慮することで自分の実力を発揮しないことも、あなたのエゴだということを。「前に進む力」 第3章 より ダグラス・パーヴァイアンス:著 跡部徹:訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊
日本人は、とかく、完璧主義な方が多いです。
「人前で失敗するのが、恥ずかしい」
そんな心理が働くのでしょう。
パーヴァイアンスさんのいうように、謙遜や遠慮で実力を発揮しないのは、その人のエゴです。
目的地までのすべての信号が、青に変わるのを待っている。
それでは、いつまでたっても発車できません。
目の前の信号が変わったら、まず、アクセルを踏んで前に進むこと。
その進む過程で、いろいろ学ぶことができます。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
パーヴァイアンスさんは、「人生を楽しみなさい」と強調されています。
自分の意志で、切り開いた人生を歩むことで得られるもの。
それは、「人生を楽しむ」という感覚です。
もちろん、辛いときもあるでしょう。
しかし、それも含めて人生で起こる出来事を楽めるようになります。
私の人生観の根底にあるのは、「せっかくの人生なのだから、もっと楽しもう」というものだ。人生をリラックスして楽しんでいない人が多すぎる。一生懸命にやっている人に限って、神経質になりすぎたり、肩に力が入りすぎている。
仕事に真剣さは必要だ。しかし、楽しむことも重要ではないだろうか。
(中略)
あなたの周囲にも、人生をリラックスして楽しんでいる人がいるだろう。そういった人たちは、なぜか人を惹きつける力を持っていて、集まってきた人もその人のリラックスした空気感に変えてしまう。
人は誰だって人生を楽しんでいる人の近くにいたいもの。そして、自分も人生を楽しんで過ごしたいと思っているはずだ。
せっかくなら、あなた自身が、肩の力を抜いて人生を楽しむ人になろう。
そして、周囲の人も楽しくして、幸せに過ごせる人を増やしていく存在になってみてはどうだろうか。「前に進む力」 第6章 より ダグラス・パーヴァイアンス:著 跡部徹:訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊
私たちも、そういう存在になりたいですね。
どんなときも、前を向いて進んでいきましょう。
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