【書評】『医者に殺されない47の心得』(近藤誠)

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 お薦めの本の紹介です。
 近藤誠先生の『医者に殺されない47の心得』です。



 近藤誠(こんどう・まこと)先生は、がんの放射線治療がご専門の医師です。
 特に、乳がんにおける乳房温存療法のパイオニアとして著名な方です。

「治療」は患者のため?それとも・・・


 日本人は、世界一医者好き国民です。
 年間一人平均14回前後、先進国平均の2倍以上も、病院に行っています。
 しかし、医者は本当に僕らの病気を防いだり、治したりしてくれているのか、という問いに、近藤先生は「ノー」と答えています。

 たとえば、高血圧について。
 日本には、高血圧患者が4千万人もいます。高血圧の基準が、たいした根拠もなく下がり続けた結果です。
 以前は「上が160」以上が高血圧の基準でしたが、今では「上が130」まで引き下げられて、それ以上の人は降圧剤を飲んで「治療」させられるハメになるのだそうです。
 その結果、ホクホクなのは薬品業界。1988年には降圧剤の売り上げがおよそ2千億円だったのが、2008年には1兆円を超えるまでに“成長”しています。

 近藤先生は、問題は、血圧を薬で下げると、数値は改善しても早死するリスクが高くなることが、世界中の、数万人規模の追跡調査ではっきりしていると指摘しています。
 このような事実は、がんも含め、あらゆる病気でもみられることなのだそうです。
 もし本当に、検診に意味がなく、病気の治療自体が苦しみを生み出し、寿命を縮めるものだとしたら・・・。

 本書は、ムダに苦しむだけの治療や、悲惨な医療死から逃れる「心得」を47の項目にしてまとめたものです。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「早期発見」は、実はラッキーではない


 ハイテク機器や新しい検査方法が次々に生まれて、「がんは治る病気になった」といわれるまでになりました。
 しかし、実際には、がんで亡くなる人の数は減っていないのが実情です。
 1960年代から、50年、人口に占める全がん死亡率は下がらず、がんは日本人の死因のトップにい続けています。
 その理由について、近藤先生は、「検診が、何の役にも立っていないからだ」と言い切っています。
 詳しく検査するほど、最新鋭機を使うほど、がんはいくらでも見つかりますが、そのほとんどは「もどき」で、そのまま放っておいても問題ないものばかりなのだそうです。

 多くの健常な人々を集めて、くじ引きで「検診」「放置」などのグループに分けて研究、追跡する方法を「くじ引き試験」と言います。これは信頼度の高い方法です。
 欧米では肺がん、大腸がん、乳がんのくじ引き試験が多数行われ、「検診をしてもしなくても、死亡率は同じ」と実証されています。
 肺がんでは、アメリカのメイヨークリニックで9千人のヘビースモーカーを11年間、旧チェコスロバキアでは喫煙男性6300人を3年間、くじ引き試験で追跡したら、いずれも検診群の死者のほうが多かった。
 日本では、1989年に「がん検診をやめた村」、信州の泰阜村で明らかにがん死が減りました。胃がんなどの集団検診をやめたら、その前の6年間は、胃がんの死亡率が村民死亡者数の6%、89年からの6年間は2.2%と半分以下に激減しています。
 検診を受けると不要な治療をされて、手術の後遺症、抗がん剤の副作用、精神的なストレスなどで早死にする人が多くなる、と考えられます。
 よく「がんが見つかったけど早期だったから、手術できれいに取ってもらえた。おかげで5年たった今でも、再発せずに元気でいる。私はラッキー」という人がいますが、実は無駄な手術で損をしたんです。どんな最新鋭機を使って早期発見をしても、本物のがんはそのはるか前、できてすぐに、あちこちに転移しています。

 『医者に殺されない47の心得』 第1章 より  近藤誠:著  アスコム:刊

「がん検診をやめたら、がん死が減った」
「切って再発しないがんは、“がんもどき”で、本物のがんはできてすぐにあちこちに転移している」

 事実ならば、ショッキングな話です。
 がんを「早期発見」するための検診が逆に、がん死を早めたり、やらないでいい手術を作り上げているのだとしたら、皮肉な話です。

一度に3種類以上の薬を出す医者を信用するな


 近藤先生は、自分のすべての患者さんに「一度に3種類以上の薬を出す医者を信用しないように。5種類以上を一度に飲むような行為は極めて危険」と伝えているとのこと。

 何種類も服薬していてずっと体調がすぐれないという患者さんや、お年寄りで認知症、ふらつきなどの症状が出ている場合は「薬を全部やめてみてください」とアドバイスします。やめても薬効はしばらく続き、なだらかに下降していくので「禁断症状」が出ることはなく、ほぼ全員の体調が好転します。
 薬は毒物です。すべてに副作用のリスクがあります。少量、短期の服用なら、肝臓や腎臓が薬毒を処理してくれることが多い。しかし習慣化すると、副作用が確実に現れます。そして短期でも、少量でも、服用する人の健康状態にも関係なく、薬が毒物である以上、いつ副作用となって現れるかはまったく予測がつきません。
 たとえば水面下で病気が進行していたり、神経系や心臓の生理機能が弱ったりしている場合、服用と同時にショック死に至ることがあります(アナフィラキシーショック)。
 何気なく飲んでいる市販の風邪薬さえ、重大な副作用が出ることがあります。

 『医者に殺されない47の心得』 第2章 より  近藤誠:著  アスコム:刊

 近藤先生によると、薬害防止対策が甘い日本では、出回る薬の種類が世界的に見ても大変多いです。
 WHO(世界保健機関)は「270種類もあれば十分」としているのに対し、日本では1万種類以上も認可されています。

 2010年度の医療費総額は36兆6000億円、そのうち23.6%が総薬剤費と概算されています(厚生労働省発表)。

 薬を出せば出すほど、病院側の利益になる今の医療保険制度も含めて、根本から見なおすべきときなのかもしれませんね。

乳がん検診の結果はすべて忘れなさい


 日本では10月を「乳がん月間」と定められ、10月1日のピンクリボンデーには、日本各地で政府主催の大イベントが繰り広げられています。
 ところが、この大キャンペーンをあざ笑うかのように、乳がんはこの10年間激増しているのだそうです。

 マンモグラフィー(レントゲン撮影による乳がん検査)の大規模なくじ引き試験でも、やはり検診と死亡率は無関係です。カナダの5万人調査ではむしろ、「総死亡率は検診群のほうが少し多い」という結果でした。
 僕は、乳管内の「がん」が縮小・消失したケースを数多く見てきました。そして、世間で乳管内がんとされている病変はがんではなく、女性ホルモンに対する反応が、ある人に強く出た「乳腺症」という結論に至っています。
 マンモグラフィでしか発見できないがんは、99%以上が「がんもどき」。しかし、どの病院の外科でも、手術で乳房を全部切り取られる可能性が高いんです。手術を受けたとしても寿命が延びることはないし、治療を受けなかったとしても、寿命が縮むわけではないから、患者さんには「乳がん検診の結果は、すべて忘れなさい」と言っています。
 しかし、僕の提案はなかなか広まらないと思います。困る人が大勢いるからです。
「乳管内のがんは良性で、一種の乳腺症」という提案を受け入れたら、がん検診体制の根幹がゆらぎ、放射線診断医を含めマンモグラフィ業界が困ります。
 組織診断のための生検や「治療」のために手術をする外科医も困ります。
 乳房を切り取られた患者さんの乳房再建術をする形成外科医も困ります。
 また乳管内がんを良性としてしまうと、病理診断体系の一貫性も崩れて、困ったことの連鎖が起きます。だから多くの専門家たちが大反対するのです。

 『医者に殺されない47の心得』 第3章 より  近藤誠:著  アスコム:刊

 近藤先生は、良性なのに乳房を切り取られる危険を避けるには、自発的にマンモグラフィ検診から遠ざかるしかありませんと述べています。
「3.11」での福島第一原発事故では、経済産業省と電力会社や原発関連会社を中心とした大きな「原子力ムラ」の存在がクローズアップされました。
 がん検診システムでも、厚生労働省と医学会や大手薬品会社を中心にそれと同じような「ムラ」の存在が見え隠れします。

大病院にとってあなたは患者ではなく被験者


「病院には近づかないほうがいい」

 そうはいっても、お世話にならなければならないことも時にはあります。
 近藤先生は、大学病院、日赤など、いつも病院ランキングの上位にいる大きい病院はおすすめできないと述べています。

 ひとつは、患者数が多い有名な病院になるほど、ひとりひとりの患者に対しては、扱いがどうしてもぞんざいになるし、流れ作業的になるからです。
 二つ目は、大きい病院ほど実験的なことに力を注ぐようになっています。
 たとえばがんという病名がつくと、インフォームドコンセントを徹底しています。それによって、新薬の実験がやりやすくなる。すると製薬会社からお金が入ってくるから、病院の経営上も都合がいいわけです。
 三つ目。病院のランクが高いほど、メンツにかけて病気を見逃すわけにはいかない。
 すると患者さんは、どういう目にあうか。行ったら最後、徹底的に検査されます。
 検査項目の多くに「基準値」があり、健常人でも5%が「基準値外」になる設定です。すると10項目検査すると、少なくとも1項目が「基準値外」と診断される人は78%。8割が「病気」「「異常」になってしまう。
 そしてとことん治療されます。がんなら「手術も放射線も抗がん剤もやろう」みたいなことになって、結局どれも患者さんが苦しんだだけ、というケースが多いです。
 最高の治療を受けるつもりで行って、過剰医療の標的になってしまう。皮肉なことに、社会的なステータスの高いほうがむしろ、「任せておけば、うまいことやってくれるだろう」と専門家を信じきって、犠牲になりやすい傾向があります。

  『医者に殺されない47の心得』 第5章 より  近藤誠:著  アスコム:刊

 「任せておけば、うまいことやってくれるだろう」と専門家を信じきって、起こったのが福島第一原発事故でした。
 「みんなやっているから大丈夫」という論理が通用しないのは、病院選びでも一緒です。
 いざという時のために、しっかり自分の目と耳で信頼の置ける医者や病院を探しておきたいところです。

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 近藤先生は、最後に「リビングウィル」を書くことを勧めています。
 リビングウィルとは、自分の死のまぎわにどういう治療を受けたいかを、判断能力のあるうちに文書にしておくことです。
 意識を失ったあとも、家族や医師に、延命医療についての自分の意志を伝えることができます。
 自分で説明できなくなったときの「どう死にたいか」の希望を、なるべく具体的に書いて、身内の同意をもらい、毎年更新していくのだそうです。

「どう死にたいか」を考えることは、「どう生きたいか」を考えることに結びつきます。
 自分自身の健康への意識を高める上でも、役に立ちそうな方法です。

 病院のベッドの上で苦しみながら最後を迎えないようにするためにはどうしたらいいか。

「備えあれば憂いなし」

 今から準備できることは忘れずにしておきたいですね。

 (↓気に入ってもらえたら、下のボタンを押して頂けると嬉しいです)

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