【書評】『脳はバカ、腸はかしこい』(藤田紘一郎)

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 お薦めの本の紹介です。
 藤田紘一郎先生の『脳はバカ、腸はかしこい』です。


 藤田紘一郎(ふじた・こういちろう)先生は、感染免疫学の第一人者です。

「脳」は、だまされやすい臓器


 脳は、実は主観的ですぐに勘違いする、「だまされやすい臓器」です。
 一方、腸は、だまされたり、勘違いしない「かしこい臓器」といえます。
 腸は、「便通」などを通して、健康になるための信号を発信して警告をならしています。
 それにも関わらず、脳はすぐに誘惑に負け、身体に悪いことを平気でやってしまうからです。

 その理由は、腸と脳の発生の歴史が違うことに起因します。

 地球上で最初に生物が生まれたのは約40億年前です。
 さらに、脳を獲得したのは5億年前。
 つまり、生物の歴史上、8~9割の期間は生物は脳を持ちませんでした。
 したがって、藤田先生は、私たち人類も腸はうまく使っているけれど、歴史の浅い脳はうまく使いこなせていないのではないかと指摘します。

 藤田先生はさらに、「脳の暴走」を抑えることで健康になり活力が戻されて、身体全体で心地よさや楽しさを実感できるようになると述べています。
 脳をコントロールするときに大切な役割を果たすのが「腸」です。

 本書は、「脳」と「腸」の関係を解説し、腸を元気にするための方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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腸は「第二の脳」ではない


 腸は、しばしば「第二の脳」といわれます。
 しかし、藤田先生はそうではなく、腸の思考力は脳よりも上だと考えます。

 人間の腸には大脳に匹敵するほどの数の神経細胞があります。それは本章でも述べてきたように、脳の祖先が腸から始まったことに起因しています。私は、腸が脳よりはるかに賢いと思っています。
 脳は食べ物が安全かどうかはどうかは判断できませんが、腸にはそれができるのです。食中毒菌が混入した食物でも、脳は食べなさいとシグナルを出します。しかし腸は菌が入ると激しい拒絶反応を示します。腸に入った食物が安全かそうでないかは腸の神経細胞が判断しています。安全なものでないとすぐ吐き出したり下痢を起こしたりして、なるべく早く人間の身体を中毒させないように反応を起こしています。
 心を病む多くの人たちが偏った食物ばかり食べるようになるのは、脳がそのような食事を摂るように命令しているからです。
 ポテトチップやファストフードにはまる人もそうです。これらの食品には脳が喜ぶ物質が多く含まれているのです。
 脳死したとしても、腸の生命は終わりません。腸は独立して機能し続けることができるのです。しかし腸が完全に死んでしまうと、脳の働きも完全に停止してしまいます。

 『脳はバカ、腸はかしこい』 第1章 より  藤田紘一郎:著  三五館:刊

 腸は、病原菌を排除したり、生きるために必要なビタミン類を合成し、免疫力を作り、脳内の幸せ物質であるセロトニンやドーパミン合成し、その前駆体を脳内に運ぶという重要な役割を担っています。
 藤田先生は、「幸せ」を作っているのは脳ではなく、実は「腸」である、と強調します。
 人間は幸せになるために生きているとするならば、脳よりも腸の方が賢いという考え方は理に適っているようにも思えますね。

「腸」は脳からの指令なしに独自の命令が出せる


 藤田先生は、腸内環境の悪化がうつ病や不安神経症を促している可能性を示唆し、脳の健康は腸の健康であると同時に、腸の健康は脳の健康であると考えられるようになったと述べています。

 幸せ物質であるセロトニンが90%腸に存在していることは何度も述べました。腸内に危険な物質が入ってくると、腸内のセロトニンが働いて脳に危険な物質を胃から吐き出せと命令を出させると同時に、脳を介せず下痢という手段で体内から危険な物質を排泄しようとします。
 このように脳から指令がなくても、独自のネットワークによって命令を発信する機能を持っているのは、臓器の中でも腸だけです。腸のセロトニンの働きが心の健康にも重要な影響を与えているということです。
 腸は身体にストレスを受けると、不安を打ち消すためにセロトニンを分泌します。そのときセロトニンが急激に増えると腸が不規則な収縮を繰り返し、動きが活発になります。ストレスを感じたときに男性は下痢になり、女性は便秘になったりしますが、これは一種の防御反応の結果です。セロトニンが腸を守ろうとしている証拠です。さらに強いストレスを受けると、腸のわずかな動きでさえ痛みとして感じることがあります。それはセロトニンが脳に危険を知らせる信号を出すようになるためです。

  『脳はバカ、腸はかしこい』 第2章 より  藤田紘一郎:著  三五館:刊

 腸内環境を保つためには、なるべくストレスの少ない生活を心がけ、セロトニン量を一定に保つことが大切です。
 さらに「活性酸素」を消す「抗酸化力」のある食品を積極的に摂る必要があります。
 抗酸化力のある食品は、すべて植物性の食品です。
 その中でも最近、特に注目されているのが「オリーブオイル」です。
 オリーブオイルには、抗酸化成分であるポリフェノールやビタミンEが含まれ、他の植物油と比べて酸化されにくいオレイン酸も多く含まれています。 

生まれたての赤ちゃんがなんでも舐めたがるワケ


 子どもがアトピー性皮膚炎やぜんそくにならないようにする。
 藤田先生は、そのためには、あえて落ちたものは拾って食べた方がいいと訴えています。
 人間の子どもは、お母さんの体内にいる数ヶ月で、40億年の生命の進化の過程を辿ると言われています。
 まず、腸が最初に作られ、脳や心臓はそのあとにできます。
 生まれたばかりの赤ちゃんは、酸素が増えてきた地球上にすんでいた原始的な脊椎動物と同じ状態であり、その生物は、大地で泥まみれの生活をしていて、当然、土も舐めていたでしょう。

 人間の赤ちゃんが何でも舐めたがるのを「ばっちい、ばっちい」といって阻止すると、その後、赤ちゃんの腸の正常な発育を望めなくなるのです。
 消毒したお皿で、無菌に近い食品を赤ちゃんに食べさせているのは人間だけです。パンダは生まれたらすぐに土を舐め、お母さんのウンチを舐めます。そうしないとパンダになれないからです。笹を消化する酵素をパンダ自身は持っておらず、腸内細菌が消化酵素を持っているので生まれたらすぐにパンダの赤ちゃんは腸内細菌を増やそうと土を舐めているのです。

 『脳はバカ、腸はかしこい』 第3章 より  藤田紘一郎:著  三五館:刊

 パンダだけでなく、コアラもユーカリを無毒化する酵素を持っている腸内細菌を増やそうと、外部から色々なものを口にする努力をしています。

 近年、細菌やバイ菌の類いは「汚い」として、殺菌や滅菌グッズが流行しています。
 家の中も過剰なほど衛生的なり、「無菌質状態」に近い状態で生活している人が増えています。
 ただ、それが本当に健康にいいことなのかを、改めて考える必要がありますね。

脳が喜ぶ「糖質」は、うつ気分を誘導


 藤田先生は、大人になってからの「糖質」の摂り過ぎに注意を呼びかけます。
 糖質の摂り過ぎは、身体の中の活性酸素を増やす大きな原因です。
 体内に活性酸素が増えると、糖尿病や脳梗塞・心筋梗塞になりやすくなります。
 さらには、アルツハイマーや認知症などの脳の病気にもなりやすくなります。

 アルツハイマー病になったネズミの脳を調べてみると、脳の海馬に多量の活性酸素が付着しているのが認められました。そのネズミ活性酸素を消す水素を飲ませると、アルツハイマー病が治ったという実験結果最近、発表されました。
 糖質を食べすぎると、活性酸素が多く発生して脳の機能も悪くなるのです。現に、私の知人で糖質制限を行った人の多くが、気分がよくなり、うつな気分もなくなったと言ってます。すぐキレる若者を調べてみると、砂糖などの糖質を多く摂っている人が多いという事実もあります。
(中略)
 炭水化物が主成分である食品は安価で、結構おいしく、街にあふれており、私たちはつい手を出してしまいます。特に疲れたときなどは、脳は「甘いものを食べなさい」指令を出します。腸は「それはイケないことだ」と知っていないがら、脳の指令にしぶしぶ応じ、その結果、脳自体が損傷されるということなのです。

 『脳はバカ、腸はかしこい』 第4章 より  藤田紘一郎:著  三五館:刊

 疲れているときやイライラしているときは、どうしても甘いものが欲しくなります。
 糖質は、脳の主要な「動力源」ですが、過剰に求め過ぎる傾向があります。
 脳にダマされないように、注意する必要がありますね。

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 これだけ豊かになり、物質的に恵まれた環境で暮らしている現代人。
 しかし、その多くが不満を抱えて生きるのは、必要のないことまで考え過ぎているからなのかもしれません。

 藤田先生は、もっと、身体が直接訴えかけてくることに耳を傾けるべきだと強調されています。

 幸せは、頭で考えて理解できるものではありません。
 身体で直接感じるものです。
 腸からのメッセージは、私たちを幸せに導く「水先案内人」といえます。


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