【書評】『老いるほど血管が強くなる健康法』(南和友)

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 お薦めの本の紹介です。
 南和友先生の『老いるほど血管が強くなる健康法』です。

 南和友(みなみ・かずとも)先生は、心臓血管外科医です。
 これまでに20000例を超える心臓・血管・肺手術を執刀されている、その道の権威です。

健康を保つ秘訣は、「血管力」にあり!


「いくつになっても、前向きで楽しみながら健康的な生活を送る」

 誰もが願い、追い求めている夢ですね。
 そのカギを握るのが、「血管力」です。

「血管力」とは、具体的に何を指すのでしょうか。
 南先生は、血液循環の仕組みとともに、以下のように解説しています。

 血管は、心臓に近いところから大血管、中血管、小血管と細かくなっていきます。そこを心臓から拍出された血液が流れていくわけです。
 血液の役割は大きく分けて3つです。

  1. 酸素や必要な栄養素を細胞へ送る
  2. 細胞で代謝された老廃物を肝臓や腎臓へ運び解毒する
  3. 老廃物を腎臓、肝臓や皮膚でろ過して排泄する
 血液中には酸素や水分のほかに、たんぱく質、炭水化物、コレステロールといった栄養素が入っていて、身体の隅々の細胞まで運ばれていきます。細胞はこれらを分解してエネルギーに変えます(代謝)。

 栄養の滞った木の枝がそれ以上伸びずに花を咲かせないのと同じように、血液がドロドロになると血管が詰まり、その先にある器官(臓器)に十分な栄養がいかず働きが鈍くなります。
 ただし、血管には再生力があります(脳と心臓は除く)。血液をさらさらにすることで、詰まっていた血管にふたたび血液が流れ出し、身体も活性化するのです。
 また詰まった血管の横から違う血管が伸びてバイパスすることもあります。木の枝分かれとと同じ原理です。血管力を高めるとは、こうした血管の再生能力や生成能力を高めることです。

 血管は大きく2種類に分かれます。1つは全身に酸素や栄養を送る動脈です。動脈の血流がよいほど人間は活動的になります。

 一方、代謝によって熱と共に出た老廃物を回収するのも血管の役割です。老廃物は静脈によって運ばれます。皮膚からうっすらと見えるのはすべて静脈です。老廃物が含まれるので青黒い色をしています。
 静脈の血液は肝臓で7割ほど解毒され、右側の心臓に戻ったら、肺で酸素交換されたあと、左側の心臓に戻り、残りの3割は動脈を通って腎臓へ運ばれます。そこで解毒されて、最後に尿として排泄されます。

 肝臓で解毒した老廃物はどうなるかと言うと、胆のうで濃縮されて十二指腸に流れます。十二指腸は胃の出口とつながっているため、胃液により消化された食べ物も流れてきます。これらと胆汁、すい液が一緒に混じり合います。
(中略)
 老廃物と消化物は十二指腸から腸に入り、たんぱくなどの栄養素が血液に再吸収されて、残りが便として体外へ排泄されます。
 これが私たちの身体を流れる血液循環の仕組みです。血液が全身に運ばれることで、酸素や栄養素が十分行き渡るだけではなく、老廃物もしっかり排泄されます。健康の鍵はまさに血管が握っているのです。

 『老いるほど血管が強くなる健康法』 第1部 より 南和友:著 アチーブメント出版:刊

血液循環の仕組み 第1部P22
図1.血液循環の仕組み
(『老いるほど血管が強くなる健康法』 第1部 より抜粋)


 本書は、誰でもできる「血管力の高め方」を、さまざまなアプローチからまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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なぜ詰まる、硬くなる血管ができてしまうのか?


 南先生は、血管が詰まったり、硬くなってしまう理由を以下のように説明しています。

 血管の柔軟性を左右するのが血圧、その次にコレステロールです。現代食は炭水化物や糖質過多なので、消化しきれない糖質が肝臓で中性脂肪に変わります。

 脂肪そのものは水が主成分の血液に溶けません。移動もできないためにリポプロテインというたんぱく質とくっついて、おもにHDL(High Density Lipoprotein)コレステロール、LDL(Low Density Lipoprotein)コレステロールなどの複合体になり血液に溶けます。それぞれ善玉コレステロール、悪玉コレステロールと呼ばれます。

 LDLコレステロールは、悪玉コレステロールと、いつも悪者扱いされています。しかし、コレステロールは細胞膜をつくったり、ホルモンの材料となったり、身体に欠かせない成分です。LDLコレステロールはそれ自体が多くても、血中を滞りなく流れていれば問題ありません。
 ただ、LDLコレステロールは粒子が小さいので、流れる途中で血管壁のちょっとした亀裂や枝分かれするところに入り込んでしまうのです。
 すると血管の中膜(筋肉層)が硬くなり、弾力性が失われます。血管の中膜が硬くなると、内膜に負担がかかります。
 血流によって内膜に小さな傷がつき、そこにLDLコレステロールが付着します。血液中には貪食(どんしょく)細胞と呼ばれる、菌や不要物を食べることで身体の掃除をする白血球があります。

 白血球はLDLコレステロールを掃除しようと出動します。ところが、白血球が食い潰れてしまうことがあります。すると、そこにLDLコレステロールが付着して、さらに白血球が食い潰れていく。どんどん堆積していくとプラークになります。プラークが肥厚すると、血管が閉塞するリスクがあります。
 プラークにより、血管内が狭くなり、血流も悪くなります。前述した流れの滞った川のように、血液の流れが悪い血管内には血小板が溜まってきて血栓ができます。
 またLDLコレステロールは血管壁の至るところに付着して集積し、血管自体を硬くしていきます。いわゆる動脈硬化です。
 動脈硬化が進行してくると血流に対する血管の抵抗が増すために血圧が上がります。血管がすべて硬くなることはないので、硬いところとやわらかいところができます。やわらかいところは高い血圧に押されてしだいに膨らんでいきます。血が溜まって動脈瘤ができやすくなります。

『老いるほど血管が強くなる健康法』 第1部 より 南和友:著 アチーブメント出版:刊

プラークができる仕組み 第1部P41
図2.プラークができる仕組み
(『老いるほど血管が強くなる健康法』 第1部 より抜粋)


 血液中の悪玉コレステロールを減らし、血管を柔軟に保つこと。
 それが、私たちの健康にどれだけ大切なことかが、よくわかりますね。

 コレステロールのバランスは、HDLコレステロールとLDLコレステロールの比率で成り立っています。
 南先生は、LDLコレステロールの数値が高くても、その分、HDLコレステロールがあれば健康にまったく問題がないと述べています。

 血管が健康であることの目安は、LDLコレステロールの数をHDLコレステロールの数で割ったL/H比が2以下です。

今、日本人が最も注意すべき病気「糖尿病」


 日本人のコレステロール値は、食習慣の変化とともに上がり続けています。
 それに伴って増えてきたのが、「血管が詰まる病気」です。

 南先生が、「今日本人が最も注意すべき病気」として挙げているのが、「糖尿病」です。
 日本は、糖尿病羅漢率(総人口に対する糖尿病患者の割合)で世界7位にランクされています(下図3を参照)。

2015年の糖尿病人口トップ10カ国の罹患率 第2部P65
図3.2015年の糖尿病人口トップ10カ国の罹患率
(『老いるほど血管が強くなる健康法』 第2部 より抜粋)

 糖尿病患者の40パーセントは心臓血管が悪く、心臓血管疾患をもつ患者の35パーセントは糖尿病と言われます。
 血管壁にある毛細血管が糖によって傷つきます。すると血を固める働きをするフィブリンが変質して固まっていきます。それを溶かすために白血球が出てきて堆積し、さらに血管が硬くなっていきます。
 また、高血糖だと血液がドロドロになるため、白血球が血管壁に付着しやすくなるという悪循環に陥ります。小動脈ほど詰まりがちです。
 糖尿病によって眼の網膜や腎臓が悪くなるのは毛細血管がとくに集まっている器官だからです。ひどくなると末梢の血流が滞り、手足がしびれてくるといった症状も起こります。

 ここで、傷が治る仕組みについて簡単に説明します。
 出血すると即座に血小板が集まって血管を修復しようとします。皮膚にはかさぶたができて血が止まります。皮下組織には多少なりとも血の塊(血腫)ができるため、サイトカインという物質が白血球から分泌され炎症反応が起きます。その火事現場は白血球の中の貪食細胞と言われるものが集まり、血腫を吸収して炎症を沈めます。
 かさぶたがてきたあと、傷跡は青くなり、しだいに黄色となって色あせていきます。その後に血管が再生され、元の皮膚の状態に戻ります。

 このような傷を治す力は胃腸の粘膜にできた潰瘍や、血管の内膜に生じた創にも同様に存在します。
 糖尿病を患っている患者さんは血管力が極度に落ちているため、たとえば足にできた傷がなかなか癒えず、その傷に菌が入り、傷の炎症も広がり足が壊死してしまうケースがあります。
 それは糖尿病の副作用で末梢血管が閉塞してしまうために傷が治りにくく、放置しておくと感染が全身に回る敗血症という死に至る病になるので、足を切断しなければならなくなるのです。

『老いるほど血管が強くなる健康法』 第2部 より 南和友:著 アチーブメント出版:刊

 詰まりやすい血管は決まっていて、足背(そくはい)動脈、大腿動脈、橈骨(とうこつ)動脈、頸動脈です(下図4を参照)。

詰まりやすい血管 第2部P68
図4.詰まりやすい血管
(『老いるほど血管が強くなる健康法』 第2部 より抜粋)


 糖尿病の症状が出てからでは、遅すぎます。
 普段から身体を動かし、糖質や脂質の多いものを控えるなど、節制を心がけたいですね。

心臓をケアする運動法「パワーウォーキング」


 血管を若返らせるための第一の柱は「運動」です。
 適度な運動とは、心臓に負担がかからないよう身体を動かすこと、すなわち有酸素運動が血管若返りのポイントとなります。

 有酸素運動となる心拍数は、以下の式からおおまかに割り出せます。

  上限:(220 ― 年齢) × 0.75(75%)
  下限:(220 ― 年齢) × 0.6(60%)


 南先生が勧める有酸素運動は、「パワーウォーキング」です。
 パワーウォーキングは、心臓をケアし、骨格を正しく使って、代謝を上げるもっとも効果的な歩き方のこと。

 ポイントは「心拍数」と「かかとから着地する歩き方」です。しばらく歩いたら脈を測り、目標心拍数でウォーキングすることによって、身体に最適な有酸素運動になります。無理して歩くよりも目標心拍数で歩いたほうが代謝はアップし、効率よく脂肪が燃焼します。
 さらに身体に必要な酸素を100パーセント取り込むことができるので心臓も無理なく働きます。

 また、かかとから着地することで、足裏全体で着地するときよりも第2の心臓と呼ばれるふくらはぎの運動量がアップします。静脈をミルキングして10パーセント〜20パーセントくらい心臓の補助になります。当然、心臓の負担は減ります。
 これまでドイツや日本で数千人がパワーウォーキングを実践し、明らかな効果が出ています。
(中略)
 よく1日1万歩を目標にすると健康によいと言われます。ただ、パワーウォーキングでは歩数や距離はあまり気にしません。大事なのは脈拍です。たとえば30分のパワーウォーキングで脈が120までいっていたものが、続けていると上がり方がゆっくりになります。これは脚の筋肉がついて下肢の血液循環がよくなったことを指します。運動許容量が上がったと言えます。
 そこで「30分は歩けるようになった」と自覚しても、身体が疲れている日は、疲れていない日に比べて脈拍はすぐに上がってしまいます。有酸素運動の範囲を超えてしまい、健康にいいと思って運動をすればするほど、じつは心臓に負荷をかけているということになりかねません。適正な脈拍を保つため、パワーウォーキングをする際に次のことを意識してください。

 ▶目標心拍数を維持するポイント

  • 15分間パワーウォーキングをしたらウォーキングをしたら立ち止まって脈拍を測る
  • 脈拍は10秒間測って6倍すればよい
  • 目標心拍数を超えていたら歩くスピードを落とす
  • 目標心拍数を下回っていたら歩くスピードを上げる
 運動を習慣化したければ、まず時間を先に決めることです。「今日は60分歩けるな」という時間があれば、15分パワーウォーキングして、目標心拍数の上限にきたら、それ以上は脈拍があがらないようにゆるく15分続けます。そこでふたたび脈拍を計って、落ち着いていれば歩く速度を上げます。もし有酸素運動の限界値を超えてしまったら、ペースを落として脈拍が下がるのを待ちます。この繰り返しです。

『老いるほど血管が強くなる健康法』 第3部 より 南和友:著 アチーブメント出版:刊

パワーウォーキング 第3部P125
図4.パワーウォーキング
(『老いるほど血管が強くなる健康法』 第3部 より抜粋)


 南先生は、運動の時間は週に2回〜3回取れるのが理想だと述べています。
 通勤のときにひと駅分歩いてみるなど、工夫して生活の中に取り入れてしまいましょう。

コレステロールはただ減らせばいいものではない


 コレステロールは、人間の身体の筋肉にとって欠かせない存在です。
 不足すると、血管は脆弱になり破れやすくなります。

 人間の体内にあるコレステロールのうち、食物由来のコレステロールは全体の3割です。残りは炭水化物から肝臓でつくられたものです。
 LDLコレステロールはいつも悪者にされています。ただ、細胞や血管壁をつくる大切な仕事があります。コレステロールは少なければ少ないほどよいわけではありません。LDLコレステロールを減らすよりも、HDLコレステロールを増やす食事を考えるべきです。

 HDLコレステロールを豊富に含む食べ物は納豆、ねぎ、お茶、きのこ類、トマトなどがあります。またサラダ油よりもオリーブ油を使いましょう。オリーブ油に含まれるオレイン酸がLDLコレステロールを下げる作用があります。
 わたしは中性脂肪100、HDLコレステロールは70以上あります。これは意識してHDLコレステロールを増やす食事をしているからです。

 コレステロールに気をつけるというと、脂っこいものを控えるというイメージがあります。間違ってはいないものの、炭水化物も合わせて控えなければなりません。
 余った炭水化物(糖)が肝臓で中性脂肪に変わるときにコレステロールもできます。消化しきれないコレステロールは脂肪として蓄えられます。お腹がすくと血中に出るので血液がドロドロになります。
 そこで、私はGI(Glycemic Index)値の高い白米や白いパンではなく、玄米やライ麦パンをよく食べます。GI値とは、食後血糖の上昇度を示す指標で、GI値の高い食品は一気に高血糖になるため、すい臓からインシュリンが多量に出ます。続けているとインシュリンが涸渇して糖尿病になります。

 普段の食事では炭水化物の摂りすぎを防ぐために、おかずをよく食べるようにしましょう。ご飯を食べる前に野菜を先に食べるのは鉄則です。前菜、スープ、メインという順番がいいのです。血糖値の急激な上昇を防ぎます。

 わたしはトマトにモッツァレラチーズを乗せて、ハーブをかけるカプレーゼをよくつくります。トマトには強い抗酸化作用をもつリコピンが入っていて、酸化したLDLコレステロールによる血管壁硬化、損傷を防ぎます。
 乳製品もリコピンと一緒に食べると脂肪値も糖質も上がってきません。そのほか、わかめなどの海藻類、野菜、ナッツ類も抗酸化作用のある食品です。
 HDLコレステロールの高い食材は「おさかなすきやね」を参考に毎日取り入れるようにしましょう。
 お(お茶)さ(魚)か(海藻)な(納豆)す(酢)き(きのこ)や(野菜)ね(ねぎ)です。ねぎはなぜ野菜に含まれていないかというと、ほかの野菜には含まれていないアリシンという成分が血液をさらさらにするからです。

『老いるほど血管が強くなる健康法』 第3部 より 南和友:著 アチーブメント出版:刊

HDLコレステロールの高い食材 第3部P197
図6.HDLコレステロールの高い食材
(『老いるほど血管が強くなる健康法』 第3部 より抜粋)


 血管を若返らせる秘訣は、糖質(炭水化物)や脂質の摂取を抑えること。
 そして、HDLコレステロールの高い食材を多目に摂取すること。

「おさかなすきやね」

 普段の食事から意識したいですね。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 何の前触れもなく、突然襲ってくる病魔。
 脳梗塞、脳出血、心筋梗塞、心不全などの循環器系の病気は、まさにその代表です。
 しかし、自覚はなくとも、それらの病気の原因は普段の生活習慣に行き着くことがほとんどです。

 普段、ほとんど運動らしきことをしていない。
 甘いものばかり間食している。
 味付けの濃いものばかりを食べている。

 そのような不摂生が、「血管の老化(硬化)」という形で自分自身に跳ね返ってきます。
 
 大切なものほど、失ってからそのありがたみを知るものです。
 健康は、その最たるものでしょう。

「善は急げ」です。
 本書を片手に、加齢に負けない血管力を身につける一歩を踏み出したいですね。


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