【書評】『「脳の疲れ」がとれる生活術』(有田秀穂)

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 お薦めの本の紹介です。 
 有田秀穂先生の『脳の疲れ」がとれる生活術』です。

 有田秀穂(ありた・ひでほ)先生は、呼吸の脳生理学がご専門の医学博士です。
 脳内物質に関する研究の第一人者として有名な方です。

夜更かしが「脳の疲れ」の大きな原因


 有田先生は、現代人は疲れやすくなっているとよく言われるが、それは肉体的な疲れよりも、むしろ心の疲れ、「脳の疲れ」といえるものをつねに抱えているからだと指摘します。

 しっかり睡眠を取るためには、「メラトニン」と呼ばれる睡眠ホルモンの十分な分泌が欠かせません。
 日が沈むと、メラトニンが脳の「松果体」という器官で合成されます。
 夜中の2時くらいがメラトニン分泌のピークとなり、太陽が上がる明け方にはゼロになります。

 太陽光に限らず、一定の強さの照度の光(2500~3000ルクス位)が目から入ってくる限り、メラトニン分泌は起こりません。
 夜更かしが、睡眠時間だけでなく、睡眠の質も大きく左右することがわかります。

 一方、食生活改善もメラトニン分泌を大きく増やすことにつながります。

 メラトニンはセロトニンからつくられますが、セロトニンの一つ前の物質はトリプトファンです。
 トリプトファンは必須アミノ酸の一種で、体内で十分な量を合成できません。そのため、栄養分として摂取する必要があります。
 メラトニンが十分に合成される前提条件として、まずセロトニンがつくられなければならないので、その原料であるトリプトファンが入っている食材を摂らなければなりません。
 トリプトファンは、牛乳やヨーグルトなどの乳製品、豆乳など大豆類、赤身の魚類などたんぱく質が含まれる食品や、ごま、バナナ、マンゴーなど多くの食品に含まれています。
 肉類にもトリプトファンが多く含まれていますが、肉類のトリプトファンは脳に効率よく吸収されません。手軽にトリプトファンを摂れるのは、乳製品やバナナなどです。また野菜では、ケールにメラトニン自体が含まれています。
 いい睡眠を取るためには、まず食材に気をつける必要はありますが、バランスよく食べていれば、それほど神経質になる必要はありません。
 昼間、太陽が昇っているときには、食物から摂取したトリプトファンはまずセロトニンになります。セロトニン神経が活性化された状態にあれば、昼間はセロトニンが適度に分泌されて自律神経のバランスを整え、活動的な状態をつくってくれます。
 夕方から夜にかけては、だんだん、セロトニンが減っていきます。昼間から夕方にかけてもセロトニン神経を活性化させる生活をして、セロトニンが十分につくられていれば、メラトニンも十分につくられることになります。

 『「脳の疲れ」がとれる生活術』  第2章 より  有田秀穂:著  PHP研究所:刊

 パソコンやスマートフォンから発生する電磁波が、メラトニンを破壊するという研究結果もあります。
 いつでもどこでも手軽に何でも手に入る便利な世の中。
 それは、逆に、心や脳にとってはストレスの溜まりやすい社会です。

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「オキシトシン」という脳内物質


 近年、「オキシトシン」と呼ばれるホルモンが注目されています。
 オキシトシンは、「幸福ホルモン」と呼ばれ、具体的な効果は、以下のとおりです。

  1. 人への親近感、信頼感が増す。
  2. ストレスが消えて幸福感を得られる。
  3. 血圧の上昇を抑える。
  4. 心臓の機能をよくする。
  5. 長寿になる。

 オキシトシン受容体は、前頭前野と扁桃体にありますが、まさにそれは心に関係した脳の場所にあるわけです。
 ですから、心の状態に影響を及ぼす脳内物質ともいえます。
 セロトニン神経の神経細胞にオキシトシンの受容体があります。ですから、オキシトシンがたくさん分泌されてオキシトシン受容体があります。ですから、オキシトシンがたくさん分泌されてオキシトシン受容体に届くと、同時にセロトニン神経が活性化されることになるのです。
 よって、オキシトシン分泌を盛んにするような行動を行なうと、セロトニン神経の活性も起こるわけです。つまり、オキシトシンの分泌→セロトニン神経の活性化→セロトニンの分泌というような流れになります。
 セロトニン神経が活性化されると、脳の状態を安定させ、心の平安、平常心をつくりだします。また、自律神経に働きかけて、痛みをやわらげる効果もあります。そのように、脳全体の状態を変えてくれます。

 『「脳の疲れ」がとれる生活術』  第3章 より  有田秀穂:著  PHP研究所:刊

 オキシトシンは、母親が子どもに母乳を与えるときに大量に分泌されることが知られています。
 母親とスキンシップをとっている子どもにも多く分泌されます。
 さらに、直接スキンシップがなくとも、電話で会話するだけでも、オキシトシン分泌の増加が認められます。

 人と人とのつながり、何気ないコミュニケーション。
 それらが心の健康に役立つことが生理学的にも認められたということです。

前頭前野の四つの大切な働き


 脳の疲れは、とくに「前頭前野」と呼ばれる部位の働きと大きく関係します。
 前頭前野は、「仕事脳(ワーキング・メモリ=作業記憶、作動記憶とも呼ばれます)」「意欲脳」「切替脳」「共感脳」の四つの役割があります。

 1.仕事脳(ワーキング・メモリ)——注意や集中、判断に関係する機能
 目や耳など五感から入ってきた情報を、人は脳の中に蓄積された情報と照らし合わせて瞬時に判断したり、行動したりしています。この一連の動作をするのが仕事脳です。
(中略)
 2.意欲脳——意欲に関係する機能
 人が何かをやろうとする意欲がわくのは、前頭前野の働きによるものです。
 意欲に関係する脳の部分は、前頭前野の眼窩前頭皮質という部分です。目は顔の中に食い込んでいますが、その目の上のところの奥の場所です。
 意欲脳と仕事脳は似ていますが、「仕事脳」はてきぱきと一連の動作をする能力ですが、意欲脳はその動機付けに関係しています。意欲があれば仕事脳の働きもよくなるというように、相互に関係しています。
 3.切替脳——気持ちを切り替える能力に関係している機能
 私たちが状況に合わせて、態度や言葉を変えることができるのは、切り替える能力があるからですが、それも前頭前野の働きで、こめかみの内側の前頭前野の部分(副外側前頭前野)にあります。
 また、切り替えることができるから、たとえば、カッとしたときに自制することもできるのです。
 4.共感脳——非言語コミュニケーションの機能
 私たちは、人とコミュニケーションをとるには言語だけでなく、相手の表情、仕草なども読み取っていますが、そんな非言語コミュニケーションを読み取ることができるのも、前頭前野の働きによるものです。共感脳は、額の下の部分である、内側前頭前野にあります。

 『「脳の疲れ」がとれる生活術』  第4章 より  有田秀穂:著  PHP研究所:刊

 前頭前野の四つの働きは、それぞれ、以下の脳内物質とかかわっています。

「仕事脳」は、ノルアドレナリン。
「意欲脳」は、ドーパミン。
「切替脳」は、ノルアドレナリン。
「切替脳」と「共感脳」は、セロトニン。

ドーパミン、ノルアドレナリンが適正に働くには?


 前頭前野の働きには、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンが重要な役割を持っています。
 しかし、これらの脳内物質は、分泌が多ければいいというものではなく、バランスが大切です。

 セロトニン神経は、前頭前野全体にいきわたっていて、しかも脳幹のところでつながっているので、前頭前野全体をコントロールする役割をしていると考えられます。
 ドーパミン神経が暴走したり、ノルアドレナリン神経が暴走したりするのをコントロールして、心を安定した状態に戻すのがセロトニン神経なのです。セロトニン神経が活性化することによって、ドーパミン神経もノルアドレナリン神経も適正に働く状態がつくられるのです。
(中略)
 私は、三つの脳神経系の相互作用を光の三原色にたとえています。ドーパミンはポジティブな赤、ノルアドレナリンはネガティブな青、セロトニンは心が安定した状態をあらわす緑にたとえています。
 光の三原色が混ざり合って、いろいろな色がつくられるように、三つの脳内の物質の組み合わせ次第で、いろいろな心の状態がつくられます。光の三原色である赤青緑の三色がバランスよく混ざり合うと真っ白になりますが、三つの脳内物質がバランスよく保たれている状態こそが、心が安定した状態だと思います。

 『「脳の疲れ」がとれる生活術』  第4章 より  有田秀穂:著  PHP研究所:刊

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 心の健康を保つことは、脳内物質のバランスを維持するということと同義です。
 脳内物質の分泌は、精神状態や気分により大きく左右されます。
「ニワトリと卵」のように、どちらが先ということはありません。
 ただ、心の疲れを取るために生活習慣を改善して脳内物質のバランスを整える。
 そのアプローチは科学的根拠にも裏付けられていますし、試してみる価値は十分にあります。

 ストレスの元に事欠かない現代社会。
 脳内物質のハーモニーを美しく奏で、健康的な生活を送っていきたいですね。

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