【書評】『世界基準の交渉術』(ロベルト佃)

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 お薦めの本の紹介です。
 ロベルト佃さんの『世界基準の交渉術』です。

 ロベルト佃(ろべると・つくだ)さんは、FIFA(国際サッカー連盟)公認のサッカー代理人です。
 アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれの日系3世で、10代のころから日本語ースペイン語の同時通訳としてご活躍されています。

世界を舞台に戦うための「基準」とは?


 日本では、プロスポーツにビジネス的なかかわりをすることに、“いやらしい”とみられることも多いです。

 佃さんは、その感覚に非常に違和感を覚えると述べ、日本に「プロスポーツビジネス」が根付いていない証拠だと指摘します。

 プロスポーツビジネスを成功させるためには、スポンサーありき、企業ありきの意識からの脱却が必要です。
 今後、日本のスポーツ界が発展していくためには、「世界基準」のプロ意識を持った人物がたくさん出てくることが必要です。

 本書は、プロのサッカー代理人という立場から、「世界基準」になるために必要な要素などをまとめた一冊です。
 佃さんのいう「世界基準」は、スポーツの世界だけでなく、ビジネスの世界でも、世界を舞台に活躍するために役に立ちそうなものばかりです。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「メイド・イン・ジャパン」の発信に誇りを!


 佃さんは、日本のサッカー界、サッカー選手が、移籍交渉の場で、世界と対等に渡り合える状況になることを目標に、日々交渉に臨んでいます。

 自らの体験も踏まえて、これから世界の舞台を目指そうとしている人に対して、以下のように述べています。

 後続の人間たちには彼らなりの、次世代の問題が出てくることだろう。
 彼らはそれに対応しなければいけないし、彼らにだって、そのあとの世代に受け継いでいかなければならないことは山ほど出てくる。
 ただし、ひとつだけ変わらないものがある。それが、“日本人としてのプライドを忘れてはいけない”ということだ。
 それは本書を読んでいる、全ビジネスパーソンにも心してもらいたい。
 “メイド・イン・ジャパン”のモノやサービスを、世界や海外に出すということは、相当の覚悟と確固たる信念、絶対的な信念、絶対的な自負を持っているのは間違いないはずである。
 それに、そうした想いを持たない日本人に対して、外国の人間が「やはり、日本はすごいな」と言ってくることは、まずない。
 ビジネスなのだから、みなさん自身が「扱ってください」「買ってください」「試してみてください」と、下手に出なくてはならない場面が必要であることはわかる。
 しかし、相手をリスペクトすることと、自分にプライドを持たないことは、まったく別次元の話だ。
 日本の代理人、交渉人を見ていても、これが理解できていない人が多く見受けられるのがとても残念でならない。
 誇りある“メイド・イン・ジャパン”を、世界へ発信するという重責を甘く見てはいけない。
 自信があるモノを扱っているのだから、妙に低姿勢になったり、変にへりくだったりする必要はない。威張るのは違うが、正しい態度というものを見極め自信をもって交渉に挑んでほしい。

 『世界基準の交渉術』  Chapter2 より  ロベルト佃:著  ワニブックス:刊

 謙虚なことは、日本人の美徳です。
 しかし、謙虚であることと、自己を過小評価することは、まったく別のことです。

 気持ちで相手に呑まれない。
 これが海外を相手にするのに、最も大事なことです。

相手が怒ったら帰りなさい


 佃さんは、自分に明確な非がなく相手が怒った場合、そこで交渉を打ち切り、帰るという選択をします。
 交渉の場で“怒る”こと自体が間違っているというスタンスからです。

 怒ることは、相手の策略という可能性が高いです。

 本項で、私が最も言いたいことは、交渉でわざと“怒る”という行為が、日本人の性格のウィークポイントを利用した、非常に外国的な交渉の仕方だということだ。
 欧米人が、「なんだ、お前は!!」とでも言おうものなら、たいていの日本人はすぐにおどおどして、状況が把握できずにとにかく謝ってしまうだろう。相手の心理を著しく不安にさせ、プレッシャーを与えて、有利な条件を引き出そうとする卑怯な交渉術だ。
 要は、相手にマイナスからのスタートを強いようとしているのである。
 私自身も、そういう駆け引きをされた経験は、何度もある。
(中略) 
 私は相手が一回謝ったら、交渉を再開することにしている。もし謝らないで話を進めようとすれば、そこで終わりだ。わたしは交渉過程で間違ったことを主張してはいないし、交渉はあくまでもビジネスなのだから。
 交渉の場で怒るという感情が出ることは、本来あるはずがないことだと思う。
 たとえば、私が人様の商品を結果的に貶して、相手が怒ったのだとしたら、それは謝る。だが移籍交渉の場合、売りにいっているのは私だ。私の商品をなめられて、相手が怒ってしまったら、もうそこで交渉はない。そうなれば、新たに違うクラブを探すだけだ。
 交渉に挑む時は、それくらいのプライドと自信をもつべきである。

 『世界基準の交渉術』  Chapter3 より  ロベルト佃:著  ワニブックス:刊

 交渉事は、つねに冷静に。
 相手に合わせて、こちらも熱くなったり、ビビったりしてはいけません。

 決して、相手のペースに巻き込まれないようにする。
 それが基本です。

自分のキャパシティが及ばないことはしない


 佃さんは、交渉に臨むにあたって、メモなどは一切取りません。
 それは、以下のような理由からです。

 私は、自分の機能はすべて、脳の「引き出し」に仕舞っているという意識がある。自分のアビリティ(能力、技量、才能、理解力、適性)を、その局面に応じて引き出しから取り出し活用しているのだ。
 それぞれの引き出しのなかに、何をどのくらいの量、詰めておけるかということは自分のキャパシティ次第だが、交渉事において記憶できないような情報は、私にとって有効な“情報”ではないだろうと、たとえそれが必要な情報であっても、「自分のキャパシティを超えていて覚えられないな」というものに関しては、「自分が覚える必要がないものだ」と割り切って考えている。
(中略) 
 改めて考えてみてほしい。考えに時間が必要な交渉というものは、素人でもできるレベルなのではないだろうか。
 私はそういう交渉をしていないので、その場で今ある引き出しから、何を出して勝負すればいいかと考えて実行するだけだ。だから、交渉の場でも、引き出しに入れるに値する情報なのか、引き出しにどう詰めるのか、ということだけを常に判断している。

 『世界基準の交渉術』  Chapter3 より  ロベルト佃:著  ワニブックス:刊

 自分の能力をしっかりわきまえている人が、強い。
 それは、どの世界も一緒です。

「己を知り、敵を知れば、百戦して危うからず」

 交渉相手を気にするよりも、まず、自分自身をよく知る必要があるということですね。

語学は「意思を伝える」手段


 日本人は、外国の言語を身につけるのが苦手だ、とよく言われます。

 6カ国語を堪能に話し、それを仕事に生かす佃さんは、以下のように述べています。

 語学を習得するのに、コツなど存在しない。
 単純な話、「覚えればいい」ということだ。これは勉強全般にも言えることではないだろうか。「暗記したいのか、そうでないのか」という話で、語学は丸暗記とはいかなくても、言葉を覚える他ないわけだ。
 製品をプロディースする際に、「日本人は、機能などを完璧にしないと世に出さない」という話をしたが、それは語学に取り組む際の日本人の姿勢にも言えることだと思う。
 日本人は語学においても、たとえば文法を完璧に覚えないと、人には話さない(ビジネスでは使わない)傾向がある。世界を見渡しても、語学書がこれだけ充実している国はない。それはなぜかといえば、語学を勉強する際、日本人は文法を重視して、それらを完璧に理解しないと話さないからだ。
「明日の朝10時に食事に行きましょう」と相手に伝えたい時に、「食事、10時、朝、行く」とバラバラに単語を言ったとしても、そこにボディランゲージなどを加えれば、なんとなく意味は通じるものだ。
「動詞の変化を厳密に覚えて実践しよう」と考える暇があったら、まずは「意思を伝える」という“実利”だけを考えてみたらどうか。
「食事、10時、朝、行く」という言葉も、もし間違っていたら相手が直してくれるので、それを覚えればいいだけだ。
 指摘されていくうちに、自然と文法は覚えていくものなので、最初はそうやって語彙を増やしながらトライしていくことが大事だと思う。そうして、しゃべって、直されて、だんだんわかっていく。
 実践レベルの語学は、それで大丈夫だ。

 『世界基準の交渉術』  Chapter5 より  ロベルト佃:著  ワニブックス:刊

 文法の正確さよりも、伝えようとする気持ちが大事。
 なるほどその通りです。

「伝わらなかったらどうしよう」

 そう躊躇しているくらいなら、どんどん話しかけてしまえばいいということ。
 海外でやっていくなら、それくらいの積極性が必要になります。

 語学学習は、「習うより慣れろ」の精神でいきたいですね。

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 インターネットなどのIT技術の進歩もあり、グローバル化が進むことは避けられません。
 日本のビジネスパーソンも日本企業も、これから世界を相手にしなければならない場面は増えてくるでしょう。

 交渉事でも、周到な事前準備は欠かせません。
 もし、そのような機会に遭遇したときに、堂々とした態度で接する。

 今からその心構えをしておきたいものですね。

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