【書評】『迷いが消える決断思考』(新妻比佐志)

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 お薦めの本の紹介です。
 新妻比佐志さんの『迷いが消える決断思考』です。

 新妻比佐志(にいづま・ひさし)さんは、経営コンサルタントです。
 起業支援や経営立て直し業務などを行なう会社を自ら立ち上げられ、日本のみならず、海外でもご活躍されています。

決断できる人とできない人、その分かれ目は?


 社会が急速に変化する中で、信じるべきものを失い、将来に対する迷いや不安を抱える人は、急増しています。
 東日本大震災以降、その傾向が顕著になっています。

 新妻さんは、これまであったものごとの価値を測る「ものさし」として依存してきたもの、「学歴」や「お金」などが、かつてと同じような価値を持たなくなってしまったため、判断や選択をするための基準が曖昧になってしまったからではないかと指摘します。

 世の中にも「決断できない人」が溢れているのをみると、「決断できないのは混沌とした時代のせいなのだ」と感じる人も多いけれど決してそうではない、正しい決断ができない理由はあくまで「あなたの中」にあるとのこと。

 大きく分ければ、世の中には決断できる人とできない人の2通りの人がいます。
 では、できる人とできない人の違いはいったいどこにあるのでしょうか。
 決断できるのは知識が豊富だから?それとも勇気があるから?反対に、決断できないのは精神力が弱いから?
 残念ながらどれも的外れな答えです。
 できる人とできない人の違いは、個人の性格やパーソナリティの問題とは関わりありません。決断できる人のほうが、ほかの人と比べて人間的に優れているというわけではないのです。
 だとすれば、両者を分けるものは何なのでしょうか。

  それは「目的」があるかどうかです。

 いつどんなときでもすばやい決断ができるのは、目的が明確な人です。一方、目的が不明確な人はなかなか決断できません。
 これは本書の核になる、もっとも重要なポイントです。
 目的をもつということは、自分の中に「ものさし」をもつことと同じです。

 『迷いが消える決断思考』 Chapter1 より  新妻比佐志:著  フォレスト出版:刊

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橋下徹大阪市長が「決断できる」のはなぜか?


 本書では、「決断できる人」の具体例として、橋下徹大阪市長が挙げられています。
 断固として、みずからの主張を貫き、さまざまな改革案をぶち上げて、実行に移しています。

 いろいろ批判する人も多いですが、それ以上に、大きな世論の支持を得ています。

 橋下市長は、積極的にメディアにも登場して、反対派の知識人と論戦を展開しています。
 しかし、だれ一人橋下市長に勝つことはできませんでした。

 新妻さんは、橋下市長が論破されない理由を、「目的の明確な人物だから」と解析します。

 彼は自分の目的と照らし合わせて、正しいと判断できることを発言しているにすぎません。そのような意味で、彼の発言はすべて一貫して筋が通っています。
 ピシッと筋の通った人に対して反論するのは、それが正論であろうとそうでなかろうと、とても困難です。
 一方、彼と議論して負けてしまう人たちは、筋の通っていない感情的な発言が多いように見受けられます。
 橋下市長はいまのシステムを壊して、新たな土台を築こうと明言しています。それに対して、「システムを変えてはいけない」という反論には、異質なものや新しいものに対する漠然とした不安が見え隠れしている気がするのです。
 そういった人たちの心中にあるのは、「変化によって自分の生活が脅かされる」という、どこか自己保身的な嫌悪感なのかもしれません。必然的に、彼らの発言は筋を通すものというより、自分の立場を守るためのものになっていきます。
 それは、多くの政治家たちが選挙で投票してもらうために、周囲の顔色をうかがってビクビクしながら発言を行なうのと大違いです。彼は自分の考える理想とそれを実現するための政策について大胆に話をします。
 そこにいっさいのブレがないのであれば、彼がだれからも論破されないのは当然でしょう。
 橋下市長がだれに何を言われても平然とし、多くの人を敵にまわしても強気な態度で振る舞うことができるのは、おそらくそのような理由があるからです。

 『迷いが消える決断思考』 Chapter1 より  新妻比佐志:著  フォレスト出版:刊

「君が代斉唱問題」にしても、「大阪都構想」にしても、橋下市長の考え方は分かりやすく、理にかなっています。
 しかも、大阪府知事に就任した当初から、まったくスタンスが変わっていません。

 このブレのない芯の強さが、橋下さんの強さと人気の秘密なのでしょう。

「ビジュアル・フューチャー」という考え方


 決断力は、どうすれば磨かれるのでしょうか。
 新妻さんは、目的を明確化してものごとを決断するための方法として「ビジュアル・フューチャー」というモデルを提唱します。

 ビジュアル・フューチャーは、下図のような2種類の円すい形をさまざまな直面する課題に当てはめることで結論を導きだします。

様々な 2012 09 02 22 32 59  (「迷いが消える決断思考」 P53より抜粋) 

 右の円すいは、「目的」の下に「目標」、その下に「行動」が位置しています。
 左の円すいは、「目的」がない代わりに、円すいの頂点に「目標」があり、その下には同様に「行動」が位置しています。

 この二つは、ケースによって使い分けます。

 目的とは方向性のことです。

 前節でも説明しましたが、目的は豊かさや満足感のように、形をとらない抽象的なものです。
 だから、到達することは決してだれにもできません。目的とはあくまでもその人が向かう方向性を指し示すものです。
(中略)
 目標とは到達できるものであり、実現できるものなのです。
 たとえば、「人生の目的は大きな家に住むこと」という言い方が成立しないのはなぜでしょうか。それは、大きな家は手に入れることが可能だからです。手に入れるものは、決して目的ではありません。つまり、大きな家はその人の目標なのです。
(中略)
 ビジュアル・フューチャーの円すいでは、目標の下のレベルにさらに行動が位置します。
 行動とは目標に到達するための手法です。
 大きな家を手にするためには、もちろんお金を貯めて、土地を購入し、業者に建築設計を依頼しなければなりません。それらはみな目標に到達するための行動の一つです。
 なぜ行動するのかといえば、それは目標があるからです。なぜ目標があるかといえば、それは目的があるからです。

 目的のない目標はなく、目標のない行動はありません。

 目標を目的と見誤ってしまうのは、その人の中で目的が明確になっていないからです。目的が見えていないために、目標を最終的な到達点だと勘違いしてしまうのです。
 目的が明確であれば、到達すべき目標を間違えることはありません。目標が決まれば、それを実現するためにどんな行動をとるべきか、いちいち迷うこともありません。
 目的を明確にすることですばやい決断ができるのはそのためです。

 『迷いが消える決断思考』 Chapter2 より  新妻比佐志:著  フォレスト出版:刊

「目的」と「目標」を混同せず、しっかりとした「目的」を探し出すことが、最も重要です。
 会社でいえば、「経営理念」です。

 利益を稼ぐことは、「目標」で「目的」を達成するための手段でしかありません。

なでしこジャパンの目的は世界一ではなかった


 新妻さんは、具体的な例として、サッカー女子日本代表、「なでしこジャパン」を例に挙げます。

 なぜ、彼女たちは次々と強豪を倒し、世界一という夢を実現することができたのでしょうか。

 それは彼女たちが公的な目的を持っていたからです。

 それまで男子サッカーのJリーグと比べ注目度も低く、厳しい環境の中で試合をつづけてきた彼女たちにとって、ワールドカップでも勝利の先には、女子サッカーの普及という大きな目的があったはずです。
 さらに、東日本大震災を経た彼女たちの闘いには、日本代表として国民の期待を背負って立つ部分もあったかもしれません。
 世界一になることが最終的な目的ではなく、彼女たちにはさらにその先へ行こうという強い意志がありました。そのような高い目的をもっていたからこそ、なでしこジャパンは世界一になる夢を実現することができたのです。

 『迷いが消える決断思考』 Chapter3 より  新妻比佐志:著  フォレスト出版:刊

 彼女たちにとって、「W杯で優勝する」ということは、「目標」であり「目的」ではありません。

「目標」は、もっと高いところに置いていました。
 そして、東日本大震災で、「目的」である、ビジュアル・フューチャーの円すいの頂点が更に高く引き上げられました。

「目標」の円と「行動」の円の部分が広げられる。
 それにつれて、円すい自体が大きくなり、より高いところに到達できるようになりました。

「目的」は、できるだけ高く。
 それを実証してみせたのが、なでしこの活躍でした。

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「ビジュアル・フューチャー」は、とても分かりやすく、シンプルなモデルです。
 色々なところで応用できそうですね。

 今の時代、最も大事なのは、周囲の価値観や常識ではありません。
 自分が自分自身に何を望んでいるか、です。
 突き詰めると、「生きる目的」は何なのか、ということに行き着きます。

 本書は、それを改めて考え直すきっかけを与えてくれる一冊です。

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