【書評】『たった5秒思考を変えるだけで、仕事の9割はうまくいく』(鳥原隆志)
お薦めの本の紹介です。
鳥原隆志さんの『たった5秒思考を変えるだけで、仕事の9割はうまくいく』です。
鳥原隆志(とりはら・たかし)さんは、コンサルタントです。
長年、大手流通会社に勤められ、さまざまな販売部門を経験し、スーパーバイザー(店舗指導員)として店舗指導や問題解決業務に従事されていました。
現在はその経験を生かし、日本で唯一の「インバスケット・コンサルタント」としてご活躍中です。
たった「5秒」の積み重ねが、人生を変える
本書は、「インバスケット的な考え方」に基づいて書かれた、一風変わったビジネス本です。
「インバスケット」とは、1950年代にアメリカ空軍で生まれたトレーニングツールです。
架空の人物になりきり、限られた時間の中で、より多くの案件を精度高く処理するビジネスゲーム
のことです。
戦闘機のパイロットは、高速で飛行中、様々な決断を瞬時に、数多くこなす必要があります。
もちろん、間違えることは、命に関わる危機に直結します。
彼らは、迫りくるトラブルや課題を、一つひとつゆっくり考える時間の余裕はありません。
では、なぜ短時間に、いくつもの決断を正確に下すことができるのか。
それは、前もって想定されるあらゆるケースをにおける状況に応じた対処方法がインプットされ、飛行中に目の前の事象にそれぞれのケースを当てはめて最適な対応を引き出す決断をするための訓練を日々積んでいる
からです。
鳥原さんは、行動する前に「考える」という5秒ほどのプロセスを入れる
ことを勧めています。
誰もが考えているのですが、考えるポイントがずれているのです。しかし、考えるポイントを修正できれば、誰もが「仕事ができる人」に変われます。ですから、私がお伝えするのは、単純に「考えて行動する」ということ。それだけです。
本書では、むずかしい理論や根性論、精神論はお話ししないつもりです。今まで読んできた本の視点と少し違うかもしれませんが、インバスケットでいう「考えて行動する」とはどういうことなのかを知る一冊になると思います。
この本を読んでいただくにあたり、あえて述べたいことがあります。
それは、「読むだけでは何も変わらない。行動しなければ、あなたは変われない」ということです。
つまり、自分の今までのスタイルや行動パターンを変えることが必要なのです。変えると言っても、なにも朝早く起きる、ランニングをする、と言った大きな変化ではありません。
行動する前に、「考える」という5秒ほどのプロセスを入れる。
それだけです。しかし、たったこれだけの変化でも、多くの人は「自分には必要性がない」と言って行動を変えません。行動を変えることは、それだけむずかしいのです。『たった5秒思考を変えるだけで、仕事の9割はうまくいく』 はじめに より 鳥原隆志:著 中経出版:刊
時間にして、5秒足らず。
そのわずかな時間の思考の差が積み重なり、大きな結果の差となって表れます。
本書は、インバスケット的な考え方の基本や、具体的な考えるべき基準をまとめた一冊です。
いくつかピックアップしてご紹介します。
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「どの失敗をするか」を選びなさい
ビジネスには、「失敗」はつきものです。
とはいっても、致命的な失敗は、避けなければなりません。
鳥原さんは、「失敗にも種類がある」と指摘します。
世の中には、数えきれないほどの失敗があふれています。
しかし、失敗には種類があります。
大きく分類すると、「許される失敗」と「許されない失敗」の2つです。
まず、ビジネスをするうえでは、この2つの失敗があることを理解しておかなければなりません。
そもそも、ビジネスは失敗の裏側で成り立っています。
「失敗の可能性がゼロ」という仕事はありません。取引先とのメールのやりとりに始まり、大きな売上につながるプレゼンテーションまで、すべてに失敗の要素が含まれているのです。
私自身は、失敗を恐れて何もしないことは最大の失敗だと思っています。許されない失敗のひとつです。
「失敗しなければ評価される」と思っている人もいますが、そういう人は大きな成果を残せないと、私は確信しています。
だからと言って、「失敗をしていいのか」と言うと、これも違います。
大事なのは、「許されない失敗」をしないことです。『たった5秒思考を変えるだけで、仕事の9割はうまくいく』 第2章 より 鳥原隆志:著 中経出版:刊
とくに日本人は、このあたりのリスク感覚がない人が多いです。
失敗しないように、怒られないように、無難にやり過ごそうとしてしまいがちです。
「許されない失敗」をしない。
そのためにも、想定される「許される失敗」については、もし起こってしまったら「ごめんなさい」と謝ればいい、と腹をくくる度胸も必要です。
その見極めが肝心ですね。
「安楽早正」が効率化のポイント
ビジネスパーソンは、つねに数十のタスクを、同時に抱えているのが普通です。
鳥原さんは、その状況を「皿回し」の芸に例えて、以下のように説明します。
「どうすれば、より効率的にできるか」
と考えることは、皿回しにたとえれば、いくつもの皿を力まかせに回すのではなく、
「どのように配置すれば、より多くの皿を回すことができるか」
「どの順番で回せば、より多くの皿を回すことができるか」
を考えることに当たります。
また、もっと効率的に皿を回そうと思えば、「1本の棒で2枚の皿が回せないか」
といったアイデアも出てきます。効率を高めるツールは、あなたのまわりにたくさんあります。
たとえば、クリアフォルダや名刺管理ソフト、メールの振り分け機能などもそのひとつです。
これらの存在を単に知っているだけか、それとも便利なツールとして使いこなすかで、成果は変わっていきます。
つまり、「もっと安全に、楽に、早く、正しくできる方法はないのか」考えるかどうかです。これを「安楽早正」と言います。『たった5秒思考を変えるだけで、仕事の9割はうまくいく』 第3章 より 鳥原隆志:著 中経出版:刊
がむしゃらに、目の前の皿を回せばいい、というわけではありません。
手をつける前に、ちょっと立ち止まって冷静に考えること。
すべての皿を効率的に回す方法は何か、つねに考えるクセをつけることが重要です。
リスクを察知すれば、余裕をもって仕事ができる
鳥原さんは、ビジネスにおいて、「洞察力」の大切さを強調します。
先を見る力のある人は、さまざまな情報をつかみ、全体の流れの中で現象を観察できる
と述べています。
「次にどうなるか」と考えることが、視野を広くします。
人は、何か起きたときに、「次はどうなる?」と考えます。
仕事ができる人も同じように考えますが、彼らの「次はどうなる?」は少し違います。何も起きていない段階、つまり、まだトラブルが発生していないうちに、「次はどうなる?」と考えているのです。
これを「リスクを察知する」と言います。
問題が発生してから先を読むのも、すばらしい行動と言えますが、本来は問題が起こる前に、先を読んで行動するほうが、余計なパワーを浪費することもありませんし、結果的に仕事の量も少なくてすみます。
皿回しでたとえると、「今にも落ちそうな皿は、どれだろうか」と注視するよりも、「そろそろ回転が遅くなるのは、どの皿だろうか」と予測して行動するほうが、慌てずにすむので楽です。もし予測を誤っても、十分、計画を練り直す余裕もあります。
先を読んで皿回しをする人は、まわりで見ている人を安心させます。なぜなら、落ち着いて行動しているからです。落ち着きは、仕事を先回りして進めているからこそ、生まれるのである。『たった5秒思考を変えるだけで、仕事の9割はうまくいく』 第3章 より 鳥原隆志:著 中経出版:刊
上司から命令されたことを、ただ鵜呑みにして作業する。
そんなことをしている間は、洞察力など身に付くはずはありません。
「この仕事にはどんな意味があるのか」
「この仕事を頼んだ上司の意図は何なのか」
作業に入る前に、自分なりに把握しておくと、余計な作業をしなくて済みますね。
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読んで頂いてわかるように、内容自体はビジネスの基本ともいえるものがほとんどです。
しかし、それが意外とできていない人が多いのも、事実です。
いかに普段、考えないで仕事をしているか、ということですね。
仕事のできる人というのは、それらが無意識にできている人のことです。
「考えるべきこと」の項目をリストアップする。
仕事に入る前に、ちょっと時間を取って整理する。
それだけでも、だいぶ効率が違ってくるのは、間違いありません。
慣れてくれば、「5秒」でできる習慣になります。
最初は戸惑うかもしれませんが、トライしてみる価値はあります。
まずは、実行するのみ、ですね。
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