【書評】『プロフェッショナルの言葉』(NHK「プロフェッショナルな仕事の流儀」)

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 お薦めの本の紹介です。
 NHKの番組「プロフェッショナル 仕事の流儀」作成班がまとめた「プロフェッショナルな言葉」です。

「プロフェッショナル 仕事の流儀」は、さまざまな分野の第一線で活躍するプロの「仕事」を徹底的に掘り下げる番組です。
 普段はカメラが入れない仕事の現場に密着した取材ドキュメントVTRと、本人をスタジオに招いての徹底インタビューで、現在進行形で時代と格闘している「プロ」に迫る人気ドキュメンタリーです。


 本書は、「プロフェッショナル 仕事の流儀」の作成班の方々が、選りすぐった81の「プロフェッショナルな言葉」を、それぞれについてエピソードを交えて解説されています。

 その道を究めた一流の方々の言葉だけに、どれも鋭く胸に突き刺さるものばかりです。
 ここでは、その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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大事なのは、「目」。


  菊池恭二(宮大工)

 追い込まれた時に大事なのは、目です。
 死んだ目をしたら、終わりです。

 菊池恭二さんは、日本でも指折りの宮大工として知られている方です。

「一流」と言われている方々は、大小さまざまな挫折や敗北を乗り越えてきた方ばかりです。

 菊池さんも、一度「奈落の底」に落ち、そこから這い上がってきた経験があります。

 そんな菊池さんが「奈落の底」に落ちたのは、43歳の春のことだった。原因不明の火災で会社事務所が全焼。さらに、貯木場に火が広がり、請け負っていた4つの仕事の材木すべてが灰になった。その額、7000万円。
(中略)
 何よりも心配だったのは施主たちの反応だった。
「こんな失敗を犯した自分に、再び仕事を任せてくれるのだろうか」
 もし、叶わなければ一巻の終わりだった。
 まもなくやって来た施主たちは、多くを語らない。だが、一点だけを注意深く見ていることに気がついた。菊池さんの目だった。
(中略)
「こいつは立ち直れるだけの根性があるか、射貫くように自分の目を見ていた。怖かったね」
 その時、菊池さんはうつむくことなく真正面から施主の目を見据えた。無言のやりとり。そして最後に、「必ずやり遂げます」と約束した。

  「プロフェッショナルな言葉」 より  大坪悦郎:文  :幻冬舎:刊 

 人間の真価は、上手くいかない時、それも絶体絶命の大ピンチ、後のない状況に陥った時の姿勢に顕れます。

 そして、もっとも心理状態を映し出すのが「目」です。

「目は口ほどにモノをいう」

 そんな言葉もあります。

 不安や自信のなさは、必ず目の表情に顕れます。
 つい視線を外したくなるときもあります。

 菊池さんは、絶望的な状況にもかかわらず、施主たちから視線を外すことはありませんでした。
 プロとして、お客さんの前で自身のない姿は見せられない、というプライドもあったでしょう。

 2年後、菊池さんは、施主たちとの約束を果たし、すべてを工期通りに納めたとのことです。

「言葉」だけでなく「行動」で示す。


  上山博康(脳神経外科医)

 批評家になるな。
 いつも批判される側でいろ。

 たった一つの手順の遅れが患者の命を奪う、脳外科手術。
 それを肌で知る上山さんは、こと患者さんに関わることについては、一切の妥協を許しません。
 そんな上山さんの信条を表しているのが、恩師から受け継いだという上の言葉です。

 この時に限らず、上山さんは、こと患者さんに関わる問題となると、自らが正しいと信じる意見を絶対に曲げませんでした。周囲との衝突、批判、前例や圧力も何のその。どんな逆風も全く恐れる様子がありません。
(中略)
 批判されるのは「何か」をしている証拠。そして、「何か」をしているのは、ちゃんと問題意識を持っている証拠。周囲の雑音に惑わされることなく、自らの問題意識を大切にしなさいという教えでした。

  「プロフェッショナルな言葉」 より  森田哲平:文  :幻冬舎:刊 

 批判の対象となる「何か」をする。
 それには、その根拠となる判断基準が、自分の中に必要です。

「なぜそれをしなければいけないのか?」

 それを自分に問うための問題意識を、つねに持つことが大切です。

 周りの意見に左右されず、ブレないでものごとを成し遂げられる人は、その部分がしっかりしています。

 自分自身で考えて、自らの信念に照らし合わせて判断する。
 大事な場面ほど、空気を読んではいけないということです。

誰も届かないくらいの高みへ。


  大野和士(指揮者)

 すべてにおいて相手を圧倒しなければ人はついてきません。

 大野和士さんは、若くして海外に活動の拠点を構え、第一線で活躍し続けているオーケストラ指揮者です。

 日本人でありながら、本場・ヨーロッパの奏者たちから大きな尊敬を受け続けている理由が、垣間見れる言葉です。

 指揮者の中には、英語しか話せない人も少なくない。しかし大野さんはオペラが書かれている言語をマスターし、その歌詞を言語で読み込む。そしてピアノで曲を弾き込み、音楽を自らの血肉にしていく。
 なぜそこまで打ち込まなければならないのかと問うた時、大野さんは言った。
「僕は日本人です。同じ実力があればドイツ人にさせた方が安心でしょう。だから日本人の僕が相手に自分を認めさせるためには、同じではダメなんです。すべてにおいて相手を圧倒しなければ人はついてきません。
 音楽を愛し、音楽にすべてを捧げるその姿勢に一切迷いはない。一心不乱に打ち込み続けたものだけが届く高みがある

  「プロフェッショナルな言葉」 より  河瀬大作:文  :幻冬舎:刊 

 音楽の世界だけでなく、スポーツの世界でも、日本人の海外進出が目立ちます。
 自分の力を試したいという日本人が、海外に活躍の場を求めることが多くなったということです。

 日本人が海外で活躍するには、その国の人以上の実力を見せる以外に方法はありません。
 それが身に沁みている大野さんだからこそ、口にできる言葉です。

 大野さんのようなパイオニアがいることで、より一層、日本人が海外で活躍できる場が増えていくでしょう。

真剣勝負の現場から生まれる言葉は「圧倒的な説得力」を持つ。


「プロフェッショナル 仕事の流儀」チーフ・プロデューサーの有吉伸人さん。

 有吉さんは、プロフェッショナルな方々が語る「言葉の力」の大きさについて、以下のような感想を述べています。

 番組が始まって、まる四年になりますが、毎回毎回、驚かされるのは、プロフェッショナルの方々が語る「言葉の力」です。人前で話をすることが、必ずしも仕事の重要な一要素という方ばかりではありません。しかし、その言葉は、いつも、まっすぐ一直線に、僕たちの心に飛び込んで来ます。自分の仕事がうまくいっていないとき、無力さに打ちのめされているときには、「頑張っていれば道は開ける」と背中を押してくれ、調子がいいときには、「その程度で満足していていいのか」と、戒めてくれる。番組を作りながら、何度、はっとし、居住まいを正したことか。逃げようのない、ひりひりとした真剣勝負の現場で生きてきた人だからこその圧倒的な説得力が、プロフェッショナルの言葉には宿っているように思います。

  「プロフェッショナルな言葉」 あとがき より  有吉伸人:文  :幻冬舎:刊

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 もちろん、有吉さん自身がプロフェッショナルな方であります。
 だからこそ、それぞれの世界の第一線で奮闘されている方々の言葉の裏に秘められた熱い想いを素直に感じ取ることができます。

 日本にも、有名・無名を問わず、世界に誇れるプロフェッショナルな方々が大勢いらっしゃるのだ、とあらためて実感します。

 彼ら彼女らの体現する「日本の職人魂」。
 それに多くの人が共感し、さらに多くの分野でプロフェッショナルな人々が活躍する。
 そのことが、日本復興の起爆剤になります。

 本書に掲載された81人のプロフェッショナルな方々と、「プロフェッショナル 仕事の流儀」作成班の方々の、これからのご活躍を願っています。

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