【書評】『上昇思考』(長友佑都)

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 お薦めの本の紹介です。
 長友佑都さんの『上昇思考』です。


 長友佑都(ながとも・ゆうと)さんは、プロサッカーの選手です。
 大学在学中に特別指定選手としてJリーグデビューを果たされ、2010年の南アフリカW杯に日本代表として出場。
 そこでの活躍が認められ、イタリア・セリエAへの移籍を果たされました。
 2012年9月現在、欧州を代表するビッグクラブの一つ、インテル・ミラノのサイドバックを主戦場に活躍し、最も注目されている日本人選手の一人です。

「上昇思考」という言葉に込めた意味


 長友さんは、自他ともに認める「超」が付くほどのポジティブ思考の持ち主です。

 そんな彼でも、つらいことがあったときや、大きなプレッシャーがかかったとき、弱い自分が出てきて押しつぶされそうになることもあります。

 長友さんは、人は誰でも、心の弱さを持っている。その弱さを自覚することが強くなるためのいちばんの近道になると述べ、その弱さから目を背けないことが大事だと力説します。

 弱い部分を克服しながら、人として成長することを目指していけばいい。
 僕は人生の選択肢にぶつかったときにも、正解を選択しようとするよりも“自分の選択した道を正解にしていくこと”をいつも考える。信念にもとづいて道を選択し、そのプロセスのなかで最大限の努力ができたと言い切れるなら、必ずそこで成長ができ、大きな成果を手に入れられるからだ。
 そんな意味での「上昇志向」。いかに自分を成長させるかということから日々のあり方や生き方を考えていくという意味では「上昇思考」と言い換えたい。
 僕はいつも先を見つめている。
 前向きで向上心をもった思考ができていれば、人生は大きく変わる。
 今がつらいと思っている人たちにもそれを知ってもらいたいという気持ちを込めて、この本のタイトルも『上昇思考』にした。
 この『上昇思考』をもっていてこそ人生の意味は大きくなり、毎日が楽しくなると僕は信じている。

  『上昇思考』 はじめに より  長友佑都:著  角川書店:刊

 人生に、「これが正解だ」というものはありません。

 あれこれ悩んで立ち止まるよりも、自分の選択した道を正解にするために精一杯の努力をすることの方が大事。
 その前向きな割り切り方が、長友さんを超一流のアスリートへと成長させました。

 本書は、長友さんがどのような「上昇思考」をもって自分の心と向き合っているかをまとめた一冊です。

 “幸せを感じるために大切なこと”について、率直に力強い文章で書かれています。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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僕がサッカーをやっている理由


 長友さんのサッカーにおける最終目標は、「世界一のサイドバック」になること。
 そのとてつもない大きな目標を掲げて、周りに公言することで自らの道を切り拓いてきました。

 価値観は、人それぞれ、百人百様です。
 世界一のサイドバックになれたかどうかということは、結局、自分で判断するしかありません。

 そして、自分でそう言えるようになるためには、人に認められるよりもずっと高い地点に達する必要があります。

 なぜ、あえてそんな厳しい道を選ぶのか。
 長友さんは、その理由について、以下のように述べています。

 ただ、普通では叶えられないほど大きな夢を描き、険しい道を歩んでそこに向かっていくなかでは、さまざまな経験ができていく。その道は、険しければ険しいほど、得られるものが大きくなっていく。
 最近の僕は、世界一のサイドバックになる過程を通して、自分が人間としてどう成長できるかということが楽しみでしょうがない。サッカーが大好きで、世界一のサイドバックになることを目指して毎日努力していながらも、「人間として成長していくためにサッカーをやらせてもらっている」と言い換えられる。
 ある意味ではサッカーも“人間づくり”のための手段のひとつといえなくもない。
 それくらい、人として大きくなっていくことには価値がある。
 僕が目指しているのは世界一のサイドバックになることではないのかもしれないとはそういうことだ。

 『上昇思考』 第一章 より  長友佑都:著   角川書店:刊

 ただガムシャラに、世界一のサイドバックになることを目指してはいません。

 その先までしっかり見据えて突き進んでいるところに、長友さんの人間としての魅力や可能性の高さを感じます。
 この謙虚さこそが、今なお驚異的な成長を続けている秘訣ですね。

感謝の気持ちがあるから人は成長できる


 もう一つ、長友さんの飛躍に欠かせなかったもの。
 それが、「感謝の心」です。

 長友さんは、感謝の心を持つことの重要性を、以下のように述べています。

 感謝の心を忘れてしまっては、人として成長できなくなるのはもちろん、サッカー選手としても飛躍は期待できない。
 人に助けられているからこそ現在の自分がある。それに対する感謝の心があるからこそ、自分に厳しくもなれるし、努力を継続できる。
 その気持ちがなければ傲慢な人間になってしまうだけだ。
 自分の力を伸ばしていくこともできず、自分が持っている才能をあっという間にすり減らしていくだけになるかもしれない。
(中略)
 個々の選手の能力の高いインテルのようなチームでは、選手がそれぞれにリスペクトし合い、それぞれへの感謝の心を忘れないようにしている。
 人に対して感謝の気持ちを抱けるかどうかということは、あらゆる場面で最初に問われることだと思う。
 感謝の心をもてている人は、自分にとっての損得しか考えていないのはなく、しっかりと周りが見えている。
 それができているか、できていないかということで、いろんな結果が変わってくる。
 そのことはサッカーに関してもいえることだ。
 また、どんなときでも周りの人たちのことを考えられる心の余裕がもてているというのは、それだけ人として成長できていることになる。

 『上昇思考』  第三章 より  長友佑都:著  角川書店:刊

 感謝の心を持つということは、周りの人たちのことを考える心の余裕があるということ。

 たしかにその通りですね。
 自分のことだけで精一杯な人は、周囲を気遣う余裕はないでしょう。

 周りからパスをもらい、自分の出したパスを相手が受け取ってくれる。
 ミスしたときは、お互いにカバーし合う。

 そういったこともお互いに感謝の気持ちを持っていないとなかなか上手くいきません。
 集団スポーツであるサッカーに身を置く長友さんは、このことが身に沁みているのでしょう。

「世界共通のバカ」と「素の自分」


 長友さんが、サッカーの本場、ヨーロッパで活躍できた要因の一つ。
 それは、どんな人ともすぐに溶け込んで馴染んでしまうという“特技”を身につけたことです。

 初対面の相手と上手にコミュニケーションを取る秘訣。
 それは、自分がバカになることでバカにされてもいいと考えて、積極的に相手のふところの中へ飛び込んでいくことです。

 どうすればバカになれるかといえば、それもやはり心に余裕をもつこと。
 余裕をもてずにいると、相手の反応を気にしすぎてしまうことになる。
 みんなを笑顔にして、気持ち良く過ごすためには、ある程度は自分がバカにされても構わないというふうに考えられたならいちばんだ。
 自分からバカになっているのと、相手からただバカにされるのとではまったく違う。
 言葉が通じない海外ではとくにそう。
 ある意味ではプライドをきっぱり捨ててしまい、“世界共通のわかりやすいバカ”になることも大切だ。
 自分がそうだと言いたいわけではないけれど、バカになるというのは賢くなければできないことだ。
 “生きていくための処世術”だと考えてもいいかもしれない。
 ただ、僕が積極的にバカをやっているのにしても、決して無理をしているわけじゃないということも付け加えておくべきだろう。
 もともと僕はそういうキャラクターに近いといえる。
 バカを演じる場合でも、それとは逆のすまし顔で通していく場合でも同じだけれど、そういう部分で自分をつくり込みすぎても意味がない。
 素直な自分、素のままの自分で勝負していくのを基本にしたうえで、みんなに溶け込んでいきたいという気持ちをしっかりとみせていくのがいいはずだ。

 『上昇思考』  第五章 より  長友佑都:著   角川書店:刊

 意識的にバカをやって、コミュニケーションを取ろうとする。
 そうすれば、こちらがみんなに馴染もうと一生懸命なことが相手にも伝わります。

 言葉の問題ではなく、気持ちの問題。
 まずは、自分から心を開いて自分をアピールすること。

 海外では、特にその意識が大事だということです。

「努力」は裏切らない


 長友さんは、才能は授かるものではなく、才能はつくるものだと述べています。

 DNAに委ねられている部分があっても、それですべてが決まるわけではありません。

 大切なのは、才能を呼び覚ますこと。
 僕自身、自分の中にはまだまだすごい才能が眠っていると信じている。
 それを呼び覚まして、伸ばしていくために、どいうすればいいかと客観的に自分を観察しながら、練習メニューなどを組んでいる。
「努力を継続する才能」にしても、授かったものではなく、つくりあげることができるものだ。
(中略)
 この才能は、自分でつくりあげたものだという思いは強いし、そのことが僕を支える自信になっている。
 努力をしない限り夢を掴むことなどは絶対にできないのだから、誰でもまずは、その部分から見直してみるのがいいかもしれない。
 どんな夢や目標をもっていたとしても、努力をすれば必ず結果を出せるという保証はない。だけど、それに向けてのプロセスを大切にしていけば、絶対に何かは残り、何かを得られる。
 努力をすれば、努力した分だけ何かが返ってくるし、その何かは、目指していた結果以上に大きいものになるだろう。

  『上昇思考』  第六章 より  長友佑都:著  角川書店:刊

 勝ち負けなど、誰から見ても分かりやすい結果だけを求めて努力する。
 それは心理的に、かなりのプレッシャーです。
 また、難しい目標になるほど、途中で諦めたり、燃え尽きる危険性が高くなります。

 努力すれば、努力した分だけ何かが返ってくる。
 そういう考え方を持てば、どんな目標に対しても、果敢にチャレンジできます。
 また、努力を継続しやすいですね。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 当たり負けしない体幹の強さを武器にした、鋭い縦へのドリブル突破。
 そんなプレースタイル同様、真っ直ぐに目標に向かって突き進む長友さんの生き方。
 とても明快で、爽快感があります。

 シンプルだけれど、そこに至までには、色々な体験で培ってきた確固たる信念があります。

 2014年ブラジルW杯の最終予選も佳境に入ってきます。
 長友さんのますますのご活躍に期待したいです。

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