本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『情報の呼吸法』(津田大介)

 お薦めの本の紹介です。
 津田大介さんの『情報の呼吸法』です。

 津田大介(つだ・だいすけ)さん(@tsuda)は、主にインターネット上を活動の場にされている、ジャーナリストです。
『メディア・アクティビスト』の肩書きもお持ちです。

「ソーシャルメディア」は、世界をどう変えたのか?

 津田さんの活動で注目すべきは、世界を変える原動力となっている『ソーシャルネットワークサービス(SNS)』と呼ばれるネット上のコミュニケーション・ツールを駆使して、自らの考え方や有益な情報を発信し続けていることです。

『SNS』とは、ツイッターやフェイスブックなどネット上で、特定の人々と自由に情報や意見、更には映像や画像まで共有できるサービスのことです。

 津田さんの情報発信力や影響力。
 それらが最大限に発揮されたのは、東日本大震災の時です。

 震災の発生直後、ツイッター上で有用と思われる情報を、片っ端から自分のフォロワーに拡散リツイートして話題になりました。
 その行動力や臨機応変さなどから、“これからの時代のジャーナリスト”と言えます。

 津田さんは、最初に以下のように述べています。

「情報の呼吸法」―何とも大それたタイトルの本ですが、本書のテーマを一言で表現すれば、デジタルやネットワーク技術が発達し、かつてないほど大量の情報に溢れかえっているこの日本において「情報」を活かして何か物事を実現するには、情報のインプット(入力)とアウトプット(出力)のバランスを取ることが重要だ、ということになります。
(中略)
 社会で新しく起こるムーブメントの種に「情報」が関与する割合は日増しに大きくなっています。そんな中、企業であるマスメディアが発信した情報のほうが大きな影響力を持つという現象も頻繁に見られるようになってきました。個人から発信された情報が大きなムーブメントになるきっかけを作り、人々が新たな連帯をし始めている。 今やインターネットはかつてのバーチャル空間ではなく、「現実」そのものの一部として、人々をつなぐ新しいコミュニケーションインフラになっているのです。

   「情報の呼吸法」  はじめに より   津田大介:著  朝日出版社: 刊

『インターネットはバーチャル(仮想)な空間ではなく「現実」の一部』

「アラブの春」を持ち出すまでもありません。
 世界では、国境を超え、SNSを通じて人々が繋がり、情報や価値観を共有し合って大きなネットワークを形成しています。

 津田さんにとって、『情報』とは、何か。

「情報とは何か?」と問われたら、僕は「人々が動き出すきっかけを与えるもの」「人をドライブさせるためのガソリン」と答えます。その先に行動や変化があることが大前提です。

   「情報の呼吸法」  第1章 より   津田大介:著  朝日出版社: 刊 

 情報は、『使うこと』『動くこと』で効果を発揮します。
『蓄えること』だけでは、意味がありません。

『情報』=『ガソリン』とは、うまい例えです。
 
 本書は、今後ますます増えていく『情報』をどう生かしていくかをまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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情報を「スルー」しろ!

 少し前まで情報は「ストック」でした。ネットに情報を上げておけば誰かが何年後かに検索で見つけることができる。そんな巨大なインターフェイスをみんなでよってたかって作ろうしていました。それがツイッターやフェイスブックになると情報がどんどん流れて消えていってしまう。情報がある意味「一期一会」の「フロー」となった。
 だからといって情報をずっと追う必要はありません。本当に大事な情報というものは、わざわざ遡って探さなくてもリツイートなどに形を変えてまた流れてくるからです。だからその場・その瞬間の直の声のほかに、「エコー」に注意していればいいと思います。

   「情報の呼吸法」  第2章 より   津田大介:著  朝日出版社: 刊

 今の時代、情報は『溜まっていく』のではなく、『流れていく』もの。
 あまりに膨大な情報が、短期間に生み出されるため、溜めておけない、ということもあります。

 それでも、その時、その時に必要な情報は、再び形を変えて流れてきます。

情報を出力(アウトプット)しろ!

 情報を活用するにはインプットだけでなく、仕入れた情報をどうアウトプットするかということが重要になります。情報のアウトプットを鍛えるのにまず必要なのは、独自の視点を持つということです。奇抜である必要はありません。ある一定の基準を自分の中で作り、そのうえでインプットした情報から新しい発想を生み出そうとすることで、必然的にアウトプット力が鍛えられていくのだと思います。
(中略)
 情報に対する反射神経をやみくもに鍛えても意味はありません。
 重要なのは情報と人との「組み合わせ」を考えるということです。こういう情報はあの人に届けると面白くなるのでは、という「自分が情報のつなぎ役になるのだ」という意識があればいいと思うのです。

  「情報の呼吸法」  第3章 より   津田大介:著  朝日出版社: 刊

 SNSの最大の利点は、双方向の情報交換が可能なことです。
 つまり、情報を受け取るだけでは、その機能を十分生かしきれていません。

 受け取った情報を、自分なりにアレンジしたり、視点を変えて再発信する。
 そうすることで、情報が循環するようになります。

 つまり、独自の情報ネットワークが出来るわけですね。
 これからは、このようなネットワークが価値を生む時代です。

 情報の「入力」と「出力」を繰り返す。
 まさに「情報の呼吸法」ですね。

会いたい人に会っておけ!

 若い人たちに向けて言いたいのは、「若いうちに会いたい人に会っておけ」ということに尽きます。というのも、今はいろいろな人に自由に「会える」環境になったからです。今までは情報だけでなく「人」への「アクセス権」をマスメディアが握っていて、有名人と一般人を隔離することで優位を保っていました。
(中略)
 しかし今やツイッターで直接連絡が取ることが可能となり、タイミング次第では会うこともできる。人間関係資本が豊富な人へのアクセス権が、そうでない人でも持てるようになったというのが、実はメディア革命のいちばん大切なポイントなのです。

   「情報の呼吸法」  第4章 より   津田大介:著  朝日出版社: 刊 

 SNSのおかげで、今までは、近づくことも出来なかった著名人を、身近に感じるようになりました。

 自分なりの情報ネットワークを構築する。
 そのためには、有名・無名に関わらず、ネット上で気になる意見を見つけたら、躊躇しないで、こちらからアクセスする勇気を持つことです。

 日本人には、ちょっと抵抗のある部分ですね。
 まずは、SNSに慣れていくことが大事です。

 最後に、津田さんは、急速に進む情報化社会について、以下のように述べています。

 人間性の共有が人と人が出会うきっかけを作り、「何か精力的に動いている人を手助けしたい」というモチベーションがまったくの赤の他人の中で喚起される。それが結果として、「物事が動く速度」を依然と比べものにならないぐらいに上げているのです。正直者がバカを見ず、情報をきっかけに意志を共有できる仲間が見つかり、現実を即座に変えていくことができる ―かつてインターネットが登場した際に夢想された理想の情報社会が一部とはいえ、現実のものとなったのです。
(中略)
 かつて「パソコンの父」と呼ばれたアラン・ケイは「未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ」と言いました。今、我々は情報とソーシャルメディアという新たな武器を手にしたことで、未来を「発明」できる立場になったのです。

   「情報の呼吸法」  おわりに より   津田大介:著  朝日出版社: 刊

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディア。
 それらによって、今までまったく面識のなかった人々が、情報を通じて繋がることができる。
 しかも、人種の壁も国境も飛び越えて。

 そういうところから、世界を驚かすような斬新なアイデアや、新たな発想が生まれるのでしょう。

『ソーシャルメディアはが未来を「発明」する』

 大げさな表現ではありませんね。

 津田さんは、創るべき「未来」に一番近い最前線に立っているのでしょう。
 これからのご活躍にも期待したいです。

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