【書評】『体制維新』(橋下徹、堺屋太一)

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 お薦めの本の紹介です。
 橋下徹さんと堺屋太一さんの『体制維新―大阪都』です。

 橋下徹(はしもと・とおる)さんは、弁護士、政治家です。
 大学卒業後は弁護士としてご活躍、08年に大阪府知事選に立候補し見事当選します。
 府知事就任後、危機的状況にあった大阪府の財政を立て直すべく、大胆な改革を実行していきます。
 11年末の大阪市長選に立候補し対立する現職市長を破り、大阪市長に鞍替えし、12年4月現在も同職を務められています。
 
 堺屋太一(さかいや・たいち)さんは、評論家です。
 大学卒業後、通商産業省(現経済産業省)に入省、78年に退官されて以降、日本の政治や産業について数多くの著書を書かれています。
 ご自身は大阪府生まれ、また70年の大阪万博を手掛けて、開催までこぎつけるなど大阪には縁の深い方です。

「大阪都構想」の狙いは?


 橋下さんは、その類い稀な実行力と高い政治思想が、多方面で賞賛されて絶大な人気を誇っています。

 一方、少々強引とも思える手法で、自らの政策を実行する姿は「ハシズム」とも揶揄されています。
「独裁者」と批判する人も、数多くいますね。

 橋下さんは、自らが代表を務める「大阪維新の会」において「船中八策」という政策方針を打ち出し、大阪から日本を変えようと奮闘中です。
 その改革の中心となるのが、「大阪都構想」です。

「大阪都構想」とは、何か。
 橋下さんは、なぜ、この「大阪都構想」実現にこだわるのか。

 そんな多くの人の興味に応えるべく出されたのが、本書です。

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「大阪都構想」の意義


 最初に、堺屋さんが以下のように、「大阪都構想」の意義を説明しています。 

 経済社会の大きな流れを変えるのには、人事(政権交代)や仕方(政策変更)では実現できない。本当に経済の基本と大きな流れを変えるのには、人事(政権交代)、予算の組替や執行を改めたり(政策転換)するだけでは絶対にできません。その基にある仕組み=体制(システム)を変えなければならないのです。
「大阪都構想」は、明治以来の日本の仕組みを変える最初の具体的な提案です。そしてそれをまずはじめようというものです。
(中略)
 この本は、その大阪都構想について述べることで、日本の仕組みをどう変えるべきかを論じる縁を示そうとするものです。

  「体制維新」 はじめにより   橋下徹、堺屋太一:共著  文春新書:刊

 堺屋さんは、「大阪都構想」は明治維新以来の日本の仕組みを変える大改革だと断言します。

国と地方行政の役割分担の明確化


橋下 僕が今やろうとしている大阪都構想とは、大阪市役所の権限のうち、都市間競争に関わるものは大阪都へ、住民サービスに関することは、大阪市24区を8つに再編した特別自治区へ渡す。同じように大阪府庁の権限も、大阪都に任せるものと特別自治区に委ねるものとに分ける。大阪府と大阪市が今持っている権限と財源を再配置することが、大阪都構想なんです。

堺屋 知事はいま、2つ重要なことを言われた。1つ国は国の仕事をするということ。国の仕事といえば、外交、防衛、通貨の発行、マクロ経済、高級司法などです。実際、日本の国は国の仕事が手薄です。
(中略)
 次に、地方の仕事にも大小あって、地域住民の意見をそのまま吸い上げるものと、いま盛んになっている世界都市間競争に勝ち抜く政策とがあります。前者は正しく「ニア・イズ・ベター」、住民の意思の反映が大切です。後者については、財政的、人材的、権限的基礎がある広域のものが必要だということです。


  「体制維新」 第二章より   橋下徹、堺屋太一:共著  文春新書:刊

 国が何から何まで、地方の面倒を見ている、今のシステム。
 それを改め、国と地方の役割分担を明確化すること。

 また、地方の仕事も住民に密着した部分(特別自治区が対応)と世界的な都市間競争に打ち勝つための戦略的な部分(大阪都が対応)に分ける必要があるとのこと。

 英国のロンドン市などを意識しているようですね。

府と市の二重行政の廃止


 大阪府独自の問題として、『二重行政』があります。
 それを改めることも、「大阪都構想」の大きな目的です。

 現在、大阪市と大阪府の行政が完全に分離し、それぞれ独立しています。
 そのため、多くの弊害が出ています。

 橋下さんは、「大学」を例に、東京都と比較して、以下のように説明しています。

橋下 首都大学東京にかかっている東京都の財政負担は年間約120億円。一方府立大学への大阪府の財政負担は約100億円、市立大学への大阪市の財政負担は約108億円(全て10年度)です。合わせると合計208億円にもなり、大阪全体としては公立総合大学に東京都以上に税金を投入していることになるのです。

  「体制維新」 第五章より   橋下徹、堺屋太一:共著  文春新書:刊

 いろいろムダが多そうなのは、たしかですね。

行政職員と教職員の身分化の撤廃


 橋下さんは、行政と教育を担う、「公務員制度」の改革の重要性を訴えます。
 新しい行政システムを構築しても、それを実行する役所の職員や教員などが変わらないと意味がないからです。

橋下 しかし僕は、大阪都構想と教育基本条例、職員基本条例はワンセットの戦略だと考えています。これは単純な話で、運送会社やバス会社経営における自動車のドライバーの関係と同じなんです。
 まず自動車は大阪のシステムです。いまの大阪府・市というボロボロの車を、大阪都構想で変えようというわけです。どれだけポンコツでも、ちょっとでも動くと、みんな、今の車でいいと思ってしまう。
(中略)
 でも本当は、もう電気自動車に変えるべきときなんです。
(中略)
 そして、ドライバーの話が職員基本条例なのです。ドライバーがどれだけスピード違反をしようが、信号無視をしようが、飲酒運転をしようが、身分になっていると、運転手の交替はない。それが今の日本の公務員制度です。
 運送会社やバス会社の経営者であれば性能の良い車を導入して、腕の良いドライバーを選ぶのが当然です。バス会社の経営者と同じく大阪の経営者である首長は、乗客である府民がバスに乗って、早く安全に安心して目的地にたどり着くためには、良い運転手を選ばなければいけない。
(中略)
 身分が絶対的に保障される、つまり公務員はクビにできない、という価値観はあり得ません。公務員も能力や意欲がなければクビを切られるし降格もされる。労働基本権の問題は、この価値を前提に考えられるべきなのです。


  「体制維新」 第二章より   橋下徹、堺屋太一:共著  文春新書:刊

 堺屋さんも、『公務員の身分化』を激しく非難しています。

 この問題については、いろいろな意見があります。
 ただ、民間の企業に勤める人の感覚では、公平感が大きくなるのは、間違いないです。

政治と行政の役割分担の明確化とその「仕組み」作り


 橋下さんの狙いは、府政が自律的に運営されるような「仕組み」を作ること。

 つまり、選挙で選ばれた首長が、政治的に一定の方針を決める。
 それに従って、現場が動く。

 そんなシステムの構築に、こだわります。

 それを推し進めていく中で、橋下さんには、政治家としての一定のルールが出来てきました。

橋下 以上のような政治と行政の役割分担の話を、ずっと府庁組織に話してきましたから、意志決定において一定のルールのようなものが出来上がりました。

 1、原則は行政的な論理に勝っている方を選択する。
 2、論理的に五分五分ということになれば、僕が政治決定で選択する。これは感覚ですね。
 3、行政的論理に負けていても、これはというものは、政治決定で選択する。このときは行政マンのプライドを 尊重するためにも、論理としては行政の言い分が勝っていること、僕の論理が負けていることをしっかりと認めます。しかし、自分の政治的な思い、あるべき論から、敢えてそれを選択したということをしっかりと説く。

 この2、3が政治家の真骨頂だと思います。選択の拠り所は、政治家の感覚。特に3は。
(中略)
 政治と行政の役割分担、違いを、府庁組織と事あるごとに議論し続け、僕は行政マンの専門知識、行政価値、行政の論理を最大限尊重しました。議論すべき時は徹底的に議論しました。
 その上で、直感、勘、府民感覚では、僕の方が上だろうということを見せるように努めてきた。いざという時の勝負どころは外さないようにしてきました。政治は情、勘、行政は理性、論理です。


  「体制維新」 第四章より   橋下徹、堺屋太一 共著 文春新書 刊

 大飯原発の再稼働問題に対する、橋下さんの対応一つをとっても、この原則は貫かれています。
 
 その“ブレない”確固たる政治信条と、論理的な説得力の高さ。
 それが、橋下人気を支えています。

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 橋下さんは、政策を円滑に実行する仕組みを作るために、多少強引にでも色々な改革を推し進めなければならないと覚悟されています。

橋下 選挙で選ばれた者、そして選ばれる者は、何もやらなければ決断力がない、実行力がないと批判され、実行すればもっと議論しろ、独裁者だと批判される。どうせ批判されるなら、やって批判される方がいい。僕は大阪都に挑戦します。

  「体制維新」 おわりに より   橋下徹、堺屋太一:共著  文春新書:刊

 好き嫌いは別として、主義や主張が論理的で、明快です。

 日本を変えてくれるかもしれない。
 そんな期待感が大きいのも、うなずけます。

 閉塞感漂う日本に必要な存在であることは、確かです。
 橋下さんの、今後のご活躍に期待したいです。

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