【書評】『動員の革命』(津田大介)

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 お薦めの本の紹介です。
 津田大介さんの『動員の革命』です。

 津田大介(つだ・だいすけ)さんは、主にインターネット上を活動の場にしているジャーナリスト、メディア・アクティビストです。

「ソーシャルメディア」の出現で変わったこと


「ソーシャルネットワークサービス(SNS)」と呼ばれる、ネット上のコミュニケーション・ツールの急激な普及。
 ここ数年で、世界に大きなインパクトを与え、実際に世の中を変える、大きな役割を果たすまでになりました。

 SNSとは、ツイッターやフェイスブックなどネット上で特定の人々と自由に情報や意見、更には映像や画像まで共有できるサービスのことです。

 テレビや新聞などの、既存のマスメディア。
 それに対し、インターネット上の情報媒体をすべてひっくるめて「ソーシャルメディア」と呼びます。

 ソーシャルメディアの出現で、何が大きく変わったのでしょうか。
 津田さんは、以下のように指摘しています。

 わたしたちを取り巻く情報環境は、ここ数年のソーシャルメディアの台頭によって大きく変わりました。その本質は「誰でも情報を発信できるようになった」という、陳腐なメディア論で言われがちなことではなく、「ソーシャルメディアがリアル(現実の空間・場所)を『拡張』したことで、かつてない勢いで人を『動員』できるようになった」というところにあるのです。ネットを通じて短期間に人が動員されるとどのような社会変革が起きるのか―本書は、そのことを様々な角度から検証します。

   「動員の革命」 はじめに より   津田大介:著  中央公論新社:刊

 ソーシャルメディアがリアルを『拡張』したことで、かつてない勢いで人を『動員』できるようになった
 これは、どういうことのなのでしょうか。

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「ソーシャルメディア」ができるまで


 ソーシャルメディアが姿を現したのは、2002年頃。
 その後、動画共有サイトのユーチューブ(2005年)、誰でも生放送が可能なユーストリーム(2007年)、ツイッターやフェイスブック(2006年)が開設され、人々に認知されていきました。

 ソーシャルメディアが世界的に注目され、世界的に注目されたのは、2009年6月のイランの大統領選。

 現役大統領の対立候補が、不正を指摘。
 選挙のやり直しを求める民主化運動が起こりました。

 そのとき、政府側の激しい弾圧や情報統制に対抗して使われたのが、「ツイッター」でした。
 この民主化運動は1か月ほどで鎮圧されましたが、「ツイッターが政治運動に使えるんだ」と世界的に知れ渡るきっかけとなりました。

 そして、2011年にその流れが激流となって、中東の国々を襲いました。
 いわゆる『ジャスミン革命』と言われる、一連の反体制運動です。

 チュニジアで、2010年末失業中の一人の若者が「抗議の焼身自殺」を遂げたことが革命のきっかけになりました。チュニジアは若年層の失業率が30%近くあり、若者たちは大学を出ても職にありつけないという背景がありました。その焼身自殺に衝撃を受けた民衆はベンアリ大統領の退陣を要求するデモを開始、治安部隊とぶつかりながらもデモはチュニジア全土に広がり、翌年1月には大統領が国外亡命する事態となりました。
 チュニジアでは、反政府デモの主催者がソーシャルメディアで参加を呼びかけることで、大きいうねりとなりました。さらに、警察が武力でデモを弾圧する様子や、政府側の発砲で亡くなった人の写真がソーシャルメディア上にアップされ、それを見て怒った人がまたデモに行って、という連鎖が生まれていったのです。

   「動員の革命」 第1章 より   津田大介:著  中央公論新社:刊 

 民主化の大きなうねり。
 それは、エジプトやリビアなど、他の中東各国をも呑んでいきました。

『中東の春』として、メディアでも、大々的に取り上げられていましたね。
 
 ソーシャルメディアの力が注目されたのは、中東の政変だけではありません。

 2011年8月の英国・ロンドンの暴動。
 同年9月から始まった、米国の『オキュパイ・ウォールストリート』デモ。

 それらにおいても、大きな力を発揮します。

世界を変えたのは、ソーシャルメディアなのか?


「ソーシャルメディア自体が、世界を変えた」

 そのように見る人も多いですが、津田さんは、必ずしもそうではない、と指摘しています。

 たしかにソーシャルメディアで社会変革が起きるという見方には同意できる部分もあるのです。が、こうした賛美の意見には違和感もあります。
 その理由は簡単で、結局中東で起きた革命をソーシャルメディアが起こしたというのは、半分正しく、半分間違っているからです。なぜか。ソーシャルメディアは、それ単体で政治的な圧力になったわけではありません。広場に何百万人も集まるという、民衆のデモが圧力になったのです。オンラインではなく、リアル世界での具体的な行動が社会を変えたのですね。
(中略)
 それでは、ソーシャルメディアは何の役に立ったのか。
 まず、最初のきっかけをつくりました。リアルタイムでユーチューブを見ていたら、目の前で警察がデモ隊に発砲して、多数の人が死傷した。その怒りから「行動しなければ」と、多くの人が動き始めました。ソーシャルメディア上で、「この政治体制はおかしい」という共感が広まり、「変えよう」という具体的行動につながっていったのが、「アラブの春」でした。
 その意味では、ソーシャルメディアというのは、実は人が行動する際に、モチベーションを与えてくれるもの――言い換えると背中を押してくれるメディアとして機能しているのです。

   「動員の革命」 第1章 より   津田大介:著  中央公論新社:刊 

 津田さんは、世界中で起こった出来事における、ソーシャルメディアの役割を冷静に分析し、以下のような結論を得ます。

 それではソーシャルメディア革命とは一体何なのでしょうか。僕はここ数年様々なソーシャルメディアを利用しながら考えてきました。そして、一つの結論に達しました。

 ソーシャルメディア革命とは、「動員」の革命なのです。
 とにかく人を集めるのに長けたツールです。人を集めて行動させる。まさにデモに代表されるように、人が集まることで圧力となり、社会が変わります。そのソーシャルメディアの革命性が最大限発揮されたのが、「アラブの春」でした。

   「動員の革命」 第1章 より   津田大介:著  中央公論新社:刊 

ソーシャルメディアの果たした役割とは?


 では、具体的には、どのような役割を果たしたのでしょうか。
 その点について、津田さんは、独自の表現を使って分かりやすく説明します。

 しかし、オープンなソーシャルメディアが登場して、変わりました。「出る杭」として飛び出したときに、それに呼応してすぐに追いかける人間が出てきたのです。呼応する人が増えることで、リアルタイムで大きなムーブメントに成長していく――この動きは、ツイッターやフェイスブックで起こり、実際に中東でも起きています。
 これを僕は、「ソーシャルメディア=納豆論」と呼んでいます。
 要するに、誰かが出たときについていきやすい―まさに納豆を一粒つまむと、粘りが次の豆につながるようなものです。
(中略)
 行動する人にとっては、何かの行動に対して反応が返ってくるだけで動くモチベーションが維持できるのです。そうして、人間同士が有機的につながっていくと、誰かが飛び出した瞬間に他の人たちがそれにわらわらついてくる。結果、誰かの思いつきによる行動がソーシャルメディアを通すことで大きなムーブメントに成長していくのです。

   「動員の革命」 第1章 より    津田大介:著  中央公論新社:刊

 また、以下のようにも述べていますね。 

 つまり、社会運動で重要なのは、1人で飛び出したときに追随する2人目をどうつくるか、ということなのです。2人目が一緒に踊り始めれば、3人目、4人目も自然と発生します。
 ソーシャルメディアがきっかけで大なり小なりムーブメントが起こっているのは、ソーシャルメディアに「最初のフォロワー」を生み出しやすい仕組みが内包されているからなのです。

   「動員の革命」 第1章 より    津田大介:著  中央公論新社:刊

 このような特長により、多種多様な世界の人が国境や人種、言語を壁を超えて、有機的に結びけることができます。
 それが、ソーシャルメディアの、最も重要な力です。 

 本来なら絶対に話すことはなかっただろう、または絶対に友達になることはなかったであろう人と知り合う。そして、具体的行動を共にする。従来であれば絶対につながらなかった人たちがソーシャルメディア上では自然につながり、それによってムーブメントが起きる―それが「動員の革命」が起きている最大の理由なのです。

   「動員の革命」 第1章 より    津田大介:著  中央公論新社:刊 

 この急激な変化は、まさに「革命」と呼ぶのにふさわしいです。
 誰でも、いつでも、ソーシャルメディアという道具があれば、社会変革のきっかけを作ることができます。

「誰が」ではなく、「何のために」という目的。
「どうしたい」という、具体的なプラン。

 それさえしっかりしたものであれば、多くの賛同者(フォロワー)を集めることができます。

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 津田さんは、最後に以下のような言葉を述べられています。

 もはや「動員の革命」が起きたことをは疑いようがありません。そしていま、われわれの手元には世界をより良く変えていくためのツールが多数存在しています。あとは自ら意志を持って1歩目を踏み出すことができるか、それにすべてはかかっています。
 ここ数年で「ちっぽけな自分が何をやったところで社会は変わらない」というあきらめの心境が「自ら動くことで多くの人の共感が得られ、社会が少しずつ変わっていくかもしれない」という希望に置き換わった人は少ないでしょう。ソーシャルメディアは何を変えたのか。もしかしたらそれは、人々の「希望」の持ち方なのかもしれません。

   「動員の革命」 おわりに より   津田大介:著  中央公論新社:刊

 これから、ソーシャルメディアの影響力は更に大きくなり、世界を動かす大きな力となります。

 日本でも、東日本大震災をきっかけに、貴重な情報源として、ようやく脚光を浴びるようになりました。

 プライベートだけではなく、ビジネスの世界でも、ソーシャルメディアを活用する時代が間近にせまっています。
 いや、もうすでに来ています。

「知りません。使ったことありません」

 それは、言い訳になりません。

 今から知っておいた方がいいし、慣れておいた方がいいのは間違いありません。 

 本書は、具体的な活用方法なども含めて、ソーシャルメディアを分かりやすく解説してくれています。

 フェイスブックやツイッターを「子供の遊び」とバカにしている。
「何だか怖い」と思って敬遠されている。

 そんな方たちにこそ、読んでもらいたいです。
 考え方が変わること、間違いなしです。

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