【書評】「小さな「悟り」を積み重ねる」(アルボムッレ・スマナサーラ)
お薦めの本の紹介です。
アルボムッレ・スマナサーラさんの『小さな「悟り」を積み重ねる』です。
アレボムッレ・スマナサーラさんは、スリランカの上座部仏教の長老です。
現在は、日本で初期仏教の伝道と瞑想普及に尽力されています。
「悟り」とは、何か?
本書のタイトルには、「悟り」という言葉が付いていて、小難しい感じがします。
しかし、そんなことはまったくありません。
ここでいう「悟り」とは、何気ない気付きや小さな発見のようなもの
です。
それらを積み重ねることで、より安らかで幸せな心で過ごせるようになります。
物事には、必ず原因がある(因果と言います)。
苦しい思いをしているのなら、その原因は、自分の中にあります。
スマナサーラさんは、その根本を突きとめて克服する以外に心が休まることはない
と述べています。
人の悩みや不安、迷い(いわゆる煩悩)は、「この世を錯覚して見るから起こるもの」と断じ、その錯覚から抜け出し、真理を発見するには「ありのままに見る」という方法しかない
とのこと。
つまり、世の中の常識や個人的な希望や先入観を持たずに、「物事をそのまま捉える」ことが大事です。
では、どうすれば、そのような柔軟なものの見方が出来るようになるのでしょうか。
スマナサーラさんは、以下のように述べています。
そこで、仏教は小さな小さな悟りを積み重ねていく、いたって簡単な方法を教えるのです。
人は一日にして大悟に達しなくても構わないのです。
日々の人生をそのまま観察して、小さな小さなひらめきを積み重ねていけばよいのです。
一つひとつの小さなひらめきが、一つひとつの悩みや不安をなくしてくれるのです。
日々、積み重ねていく小さな悟りの一つひとつが、やがて人生全体の真実を発見する大悟になるはずです。『小さな「悟り」を積み重ねる』 まえがき より アルボムッレ・スマナサーラ:著 集英社:刊
自分自身をしっかり観察しなさい。
そして、少しずつでもいいから、意識を変えていきなさい。
ということですね。
お釈迦様も、きっと、そのような小さな積み重ねから、大きな悟りを開かれたのでしょう。
本書は、著者ならではの視点から、自分の日々の気付きを手助けしてくれる発想がまとめられた一冊です。
その中からいくつかピックアップしてご紹介します。
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「不安」という感情について
「不安」は、なぜ起こるのでしょうか。
スマナサーラさんは、「現実が変わってほしくない」という気持ちから来る
と述べています。
裏を返せば、不安は、現実を自分自身でコントロールしようとしている傲慢さの表れです
「現実が変わってほしくない」という気持ちに不安の原因があるのだから、現実が変わっていくことを自然な姿として認めればいい、という教えを「放っておく」という言い方で表しているのです。
万物が変化することは宇宙の法則です。その変化の流れに身をゆだねればいいということです。
宇宙の法則、自然の法則には誰も逆らえません。『小さな「悟り」を積み重ねる』 第1章 より アルボムッレ・スマナサーラ:著 集英社:刊
「現実は常に変わっていくもの」
人間の意志とは関係なく、ですね。
何が起こっても、受け止めよう。
そういう心構えは、しっかりしておきたいですね。
それさえできていれば、不安など入る余地はありません。
「自分を守る」ということ
先進国の中では、異常ともいえる、日本の自殺率の高さ。
スマナサーラさんは、その理由を、日本人が「自分を守る」ということを怠ってきた
からだと述べています。
端的に言えば、現代の日本社会では、人は「自分を守る」ことより、「自分を前に押し出す」ことに重心を置いているのではないでしょうか。
成功したい、お金持ちになりたい、自分の存在を評価してもらいたい、能力を磨きたい、強くなりたい・・・
そこにあるのは自分をいかに前に進めていくか、という強い関心です。
(中略)
自分を守るということは、決して何かにすがることではありません。
(中略)
神様にしろ、会社にしろ、家族にしろ、お金にしろ、何かを盾のように持ち出してきて、守ってもらおうとしても意味がないのです。
何かにすがって自分を守るという方法は、成り立たないのです。
何にもすがらない、とらわれない心こそが、自分を守るのです。『小さな「悟り」を積み重ねる』 第3章 より アルボムッレ・スマナサーラ:著 集英社:刊
お金や他人の評価と、自分自身の命。
どちらが本当に大事なのか。
自明ですね。
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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆
スマナサーラさんは、常識には、場所や時代によって変化する「個人の常識」と、いつの時代も変わらない普遍的な「生命の常識」の二種類がある
と述べています。
常識というのは、そのようにどんどん変わっていきます。しかし中には変わらない常識もあります。
(中略)
それは生命の常識です。人はお腹がすいたらご飯を食べなくてはいけない、とか、人と人とは支え合って生きていくべきとか、そうした生きることの基本に関するものです。
こういう常識は変わるものではないし、また変えたり破ったりしていいというものでもありません。
個人の常識は、この生命の常識の上に乗って、社会や時代の変化とともにどんどん変わっていきます。
(中略)
狭い常識にとらわれている人は、自分自身の本来の姿を見失っているのです。『小さな「悟り」を積み重ねる』 第5章 より アルボムッレ・スマナサーラ:著 集英社:刊
変えてはいけないものも、たしかにあります。
そして、変えなければならないものも、当然あります。
人でも組織でも、もちろん国家でも、それは同様です。
変えるべきか、変えないべきか。
その判断を間違えないためには、やっぱり小さな「悟り」を積み重ねていくことです。
皆さんも、日々の小さな気付きのお供に、是非一冊いかがでしょうか。
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