【書評】『1時間の仕事を15分で終わらせる』(清水久三子)

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 お薦めの本の紹介です。
 清水久三子さんの『1時間の仕事を15分で終わらせる』です。

 清水久三子(しみず・くみこ)さんは、人材開発がご専門のコンサルタントです。
 執筆・講演・研修を中心に、幅広くご活躍中です。

「ボトルネック」をなくせば、生産性は劇的に上がる!


 清水さんが提唱する仕事効率化のメソッド、「4倍速仕事術」は、とてもシンプルかつ強力なものです。
 このメソッドのベースとなる考え方は、「ボトルネックの解消」です。

「ボトルネック」という言葉に耳慣れない方もいるかもしれません。ボトルネックとは、ビンの首の細い部分です。ビンの首は、中の液体が少しずつ出るように細くなっていて、流れを堰(せ)き止めています。もともとコンピュータシステムの用語で、処理を遅くさせる要因のことを指し、仕事においても同様に全体の効率を落として流れを遅くしてしまう要因となります。
 高速道路にたとえると、車線が減る箇所や料金所や車両事故などがボトルネックであり、それが渋滞の原因を生んでいる、と考えるとイメージしやすいでしょう。私たちの仕事にも、スムースな流れを妨げるボトルネックが潜んでいるのです。
 このボトルネックが自分の仕事のどこに隠れているのかを突き止めて、仕事の高速化・高品質化を実現するにあたり、「IPO」という有名な考え方をご紹介します。
 IPOとは新規公開株のことではなく、仕事の大きな手順です。ほとんどの仕事は、どんなに複雑に思えても「インプット(Input:入力)」「プロセス(Process:処理)」「アウトプット(Output:出力)」という流れで進んでいます。
 インプットでは、やらない仕事/やるべき仕事を整理して必要な情報やモノを揃えます。プロセスでは、情報や考え方を処理・加工して、形にします。アウトプットでは、それらをしかるべき人に伝えて成果に結びつけます。

 とてもシンプルな考え方ですが、あなたの仕事のスピードを妨げているボトルネックの正体を突き止めるにはとても有効なものです。本書では、このIPOにさらに「コンディション(Condition:体調)」を加えて仕事のボトルネックを見つけ出します。人間はコンピューターのように常に一定に物事を処理できるわけではなく、気力や体力の維持・向上も、生産性を大きく左右するので、扱わないわけにはいかないのです。

 『1時間の仕事を15分で終わらせる』 序章 より 清水久三子:著 かんき出版:刊

 ボトルネックを解消し、ハイスピード、ハイクオリティを手に入れる。
 そのために必要なのは、「選択力」「処理力」「突破力」「持久力」の4つの力です。

 選択力は、不要なモノやタクスを捨て、残った重要なものにだけエネルギーを集中させる力です。
 処理力は、「時間」「習慣」「思考」を整えることで、やるべきことをより速く、効率的に処理する力です。
 突破力は、相手の期待に応えて、最短でYESを引き出す力です。
 持久力は、高い生産性を発揮する土台となるメンタルや体力を維持する力です。

 本書は、ボトルネック解消のための「4つの力」を身につけ、仕事の生産性を劇的に高めるための具体的な方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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できる人ほど、余計な仕事をやらない


 仕事を効率的に進めるうえで、最初に取り組むべきこと。
 それは、「不要な仕事をできるだけ減らす」ことです。

 よく「優先順位を決めよう」と言われますが、さらに思い切ってやらないこと=劣後順位を決めてください。この二つは次のように違います。

 優先順位:重要度と手順を考えて、行うべき順序を決定する
 劣後順位:目的と効果から考えて、やらないことを決める


 仕事で溢れ返っているときには、劣後順位から決めたほうが圧倒的にスピードアップにつながります。劣後順位の決め方は3通りあります。

①そもそもやる必要がない場合
 「やる必要がないことを本当にやるの?」と思う方もいるかもしれませんが、実は意外と多かったりします。まずはそもそも何のために行うのかという目的の確認をしましょう。「何のために?」を繰り返すことで、やるべきかどうかを判断します。
 たとえば「橋がなくて不便」という問題らしきことが発生したとき、「何のために橋が必要なのか?」と考えはじめて、「向こう岸に渡りたいから」→「何のために向こう岸に渡りたいのか?」→「買いたいものがあるから」→「それならネットショップでも扱っているから届けてもらえる」ということがわかれば、わざわざ橋をかける必要はありません。

 こう書くととても単純ですが、ビジネスでは「◯◯がないこと」を取り組むべきことにしてしまうケースは非常に多いものです。
 実は優秀なコンサルタントほど、「それは何のためにやるのですか?」という質問をしつこくします。彼らは、やりたくないから反抗的な態度をとっているわけではなく、いったん必要だと確信したらものすごいスピードで実行します。

②状況が変わって必要がなくなった場合
 たとえば、お客様の要望など状況が大きく変わり、今までの作業方針をガラッと変えなくてはならないようなときを考えてみてください。お客様との会議前までは重要な仕事だったのに、会議後に不要になることはよくありますよね。このようなときに、自分から確認に行かないとムダな作業に時間を費やすことになってしまいます。

 私はコンサルタントになった当時、マネージャーから「プロアクティブに自分から確認してね」とよく言われました。プロアクティブとは、「積極的に」という意味以外にも「事前に」「自分から」という意味があります。指示を待つのではなく、変化を事前に察知して自分から何が必要かを考えろ、ということを叩き込まれたのです。
 また、仕事を誰かから引き継ぐときや異動のときなども、不要になったことを見つけてやめるチャンスです。状況や環境が変化したら、やらなくていいことを見つけましょう。

③過剰品質レベルのことをしている場合
 やる必要のない過剰品質レベルの仕事をなくしましょう。たとえば、アイディア出しのミーティングなどでは、精緻(せいち)につくり込んだ枚数の多い資料は必要ありません。関連記事などをざっと集めて、それを元に話し合えば十分です。そんなときにパワーポイントを駆使して綺麗に資料をつくるのはムダな作業になります。
 とはいえ勝手に簡略化して相手の期待と違っていた場合は「手抜きだ」と言われてしまうこともあるので、「これくらいのイメージでいいですか?」と事前に確認をとっておくことをおすすめします。

 『1時間の仕事を15分で終わらせる』 第1章 より 清水久三子:著 かんき出版:刊

 仕事に追われると、心の余裕がなくなり、降ってきた業務を片っ端から片づけるので精一杯になりがちです。
 しかし、そんなときこそ一呼吸おいて、「やらないこと」を決めることが大切です。

 仕事で溢れ返っているときは、優先順位より劣後順位。
 覚えておきたいですね。

「虫の目」「鳥の目」「魚の目」で本質を見抜く


 情報が溢れ返る今の時代、重視されるのは「情報を処理し、考えを深めていくノウハウ」です。
 思考の質とスピードを劇的に上げるコツ、それは思考の型を身につけることです。

 清水さんは、思考の型を使いこなすことは、思考のショートカットキーを覚えるのに似ていると述べています。

 数ある「思考の型」のなかのひとつに、「仮説思考」があります。
 仮説とは、まだ正しいかどうかが立証されていない現時点での結論のことです。
 仮説思考は、色々な情報や事実を目にしたときに、そこから思考を深めて、結論に近づいていくものです。

 仮説思考で考える際に意識すべきが、「虫の目」「鳥の目」「魚の目」「3つの目」です。

「虫の目」は、複眼です。つまり近づいて「様々な角度」から物事を見ます。
「鳥の目」とは、高い位置から「俯瞰的に全体を見回す」こと。
「魚の目」とは、潮や川の動き、つまり「流れ」を見るという意味です。

 事実を見るときに一面的な見方をせず、複眼的に見るのが「虫の目」。しかし、接近しすぎると全体が見えなくなるので、一度距離を取り直して一つ上の視点からその上方を見直す行為が「鳥の目」です。そして、最終的な意味づけをするときに、組織や社会の流れの中でとらえる必要があります。情報や事象が、どのような変化の中で発生したのかを忘れないための「魚の目」ということになります。

 ある店舗のプロモーションを検討した際に、「3つの目」を使った事例です。

自分「具体的にはお客様はどんなことを望んでいるのかな?(虫の目)」
相手「お客様は最初から複数商品の比較をしたがるね」
自分「具体的には何を比較するのかな?(虫の目)」
相手「価格とか、値引率とか、何倍ポイントがつくか、とかだね」
自分「一言で言うと最安値がわかればいいってこと?(鳥の目)」
相手「うちの店で推したい商品が結構あるから、最安値だけ提示されると困るね」
自分「つまり、価格比較に対応しつつ、推奨商品を提示したいってこと?(鳥の目)」
相手「そうだね」
自分「そういう商品は増えてるの?(魚の目)」
相手「今まではあまりなかったけどこれからは増えるね」
自分「じゃあ、他社でも同じような動きがきっとあるね(魚の目)」

 具体と抽象のバランスがとれていて、それが大きな流れの中でどんな意味を持っているかまで考えられれば、「よく考えたのか?」と突き返されることも減るでしょう。3つの目を意識して素早く角度を変えながら、考えを深めてみましょう。

『1時間の仕事を15分で終わらせる』 第2章 より 清水久三子:著 かんき出版:刊

 ひとつの固定された視点からだけから判断すると、偏った考え方になってしまいがちです。
 同じものを見るでも、見る位置によってまったく印象が変わることは、しばしばあります。

「3つの目」を意識して、より客観的な判断をするように心がけたいですね。

相手の期待値をコントロールする


 清水さんは、相手の仕事に対する満足度は、完全にやることが決まっている場合を除けば、相手の期待度と一致しているかどうかによって決まると指摘します。
 仕事の速い人は、この期待値のコントロールが絶妙です。

 期待値をコントロールできていれば、品質が少々低かったとしても「この条件ならこれくらいで充分だ」と相手が満足するので、結果、速く仕事を完了することができます。期待値のコントロールとは、品質(Q:Quality)、費用(C:Cost)、納期(D:Delivery)という3つの条件で相手と合意することです。頭文字をとってQCDと呼ばれ、もともとは製造業の生産管理で重要な視点ですが、他の仕事にも当てはまります。
 この3つはトレードオフ(複数の条件を同時に満たすことのできない関係)です。ある品質を満たそうとすれば、投入する費用(人手やお金)、作業時間がある程度決まります。もし、費用をあまりかけられないとすれば、品質を犠牲にするか、納期を遅らせるという選択になるわけです。もちろん理想は、質の高いものを常に出し続けることですが、それでは燃え尽きてしまうこともあるでしょう。やりたくても条件が揃わないことも当然あります。相手の期待をQCDに分解して、何を犠牲にしてもいいのか? 相手と交渉してからアウトプットを出すのです。

 とはいえ現実には、「人手が足りないのも、時間的に厳しいのもわかるけど、そこを何とか・・・」と押し切られることも多いのですが、同じく品質を満たさない成果物を提出したとしても、このQCDについて交渉するか/しないかで、相手の期待値とのギャップの大きさがまったく違います。これは「先に言えば説明、後に言えば言い訳」と受け取られるからです。
 時間的にはかなり厳しいと先に説明しておいてから、早いタイミングで提出できれば期待を超えることも可能です。出した資料を最速で受け入れられるかどうかは、期待値コントロールにかかっているのです。

 『1時間の仕事を15分で終わらせる』 第3章 より 清水久三子:著 かんき出版:刊

 時間とお金をかければ、質の高い仕事ができるのは当たり前です。
 大事なのは、コストパフォーマンスです。

 限られた資源(お金、時間など)で、お客様の要求する品質を満足する。
 その最適解を探す意識を、つねに持っていたいですね。

大抵の悩みは、5人に話せば解消する


 清水さんは、ハイパフォーマーと呼ばれる人ほど、コンディションに一家言を持ち、これを怠ると仕事にならない、という方がほとんどだと述べています。

 コンディションに影響を与えるボトルネックのひとつが「不安」です。
 不安を解消するための方法のひとつが、「人に相談すること」です。

 厚生労働省の調査によると、強い不安・ストレス・悩みなどを、実際に相談した人のなかで約9割は相談することによって問題が解決したり、解決しなくても楽になったという結果が得られています。

 私が講師を務めている研修でも、これは実証されています。
 一人が悩みを話し、その他の数人がどうしたら解決できるか話し合うというグループ演習をやっているのですが、わずか5分という制限時間の中で7割を超える人の悩みが解決していき、毎回参加者が驚いています。

 かつて私は、人に不安や悩みを話すなんて格好悪いのではないか? と考えていました。あるプロジェクトでお客様を怒らせてしまい、本当に自己嫌悪に陥り、誰にも相談できないという気持ちになったこともありました。
 その件を人に話したところ、「よくある話だ。お客様に、ここからの対応を見られてるよ」と言われました。周りが優秀な人ばかりに思えて、重たい悩みだったのですが、「よくあること」と言われ、失敗自体が問題ではないのだと気がつき、一気に次にすべきことに目が開きました。
 以来、自分では解消できそうにない不安や悩みは5人以上の人に話すようにしています。相談する相手をできるだけ広げた方が、解決のスピード感が早くなるように思います。

 なるべく幅広くたくさんの人に相談したほうがいいと再認識したのは、外資系コンサルティングファームの当時の社長から受けた次のようなアドバイスからです。
「同年代だけで固まるな。自分の年齢の上下に幅50歳の交友関係を持ちなさい」

 自分が40歳だとすると、たとえば下は20歳、上は70歳となります。自分が60歳ならば上は鬼籍に入る方も出て減ってきますから、上は80歳、下は30歳。つまり若い方はできるだけ上の人と、歳を重ねたらできるだけ若い人と意識して交流を持つようにしようということです。
 これは人間関係を豊かにし、自分にはない知恵を授けてもらうためにとても大切な考え方だと思いました。若いうちはまだ見ぬ色々なことを先達から積極的に吸収できますし、歳をとってからは固まりつつある見識に揺さぶりをかけられるからです。
 先ほどご紹介した悩みを打ち明ける演習ですが、実は参加者の年齢層が近かったり、同じ環境の人ばかりだと解決率が低くなります。先人や後輩が自分の悩みを、まったく異なる方法で解消していることがたくさんありますし、違う環境から見れば、悩み自体がなくなってしまうこと大いにあるのです。ぜひ思い切って話してみてください。

 『1時間の仕事を15分で終わらせる』 第4章 より 清水久三子:著 かんき出版:刊

「三人寄れば文殊の知恵」とは、よく言ったものですね。

 自分が抱えている不安や悩みは、すでに誰かが経験しているものである可能性は高いです。
 思いきって、信頼できる人に相談してみると、意外とあっけなく解決するかもしれませんね。

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 やりたいことは増えていくのに、逆に使える時間は減っていく。
 そんな人生のパラドックスを解決すべく、導かれたのが清水さんの「4倍仕事術」です。

「ボトルネックを取り除き、自分の持てる能力を最大限に発揮する」という考え方はわかりやすいです。
 具体的なやり方も、清水さんご自身で考え、改良を重ねてこられただけあって、練りに練られています。

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 皆さんも、ぜひ、お試しください。


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