【書評】『一流の学び方』(清水久三子)

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 お薦めの本の紹介です。
 清水久三子さんの『一流の学び方』です。

 清水久三子(しみず・くみこ)さんは、人材開発がご専門のコンサルタントです。
 執筆・講演・研修を中心に、幅広くご活躍中です。

「学んだことが身につかない」のは、『学び方』のせい


 学んだことを、仕事に役立てられない。
 勉強を始めても、すぐに挫折してしまう。

 数多くのビジネスパーソンが、そのような悩みを抱えています。

 多くの「学び」が失敗に終わる理由。
 それは、「学び方」にあります。

 筆記試験を前提にした、暗記主体の勉強法。
 清水さんは、それを「チャイルドエデュケーション」と呼びます。

 それとは一線を画す、新しい学び方が「アダルトラーニング」です。

 アダルトラーニングとは、最短で効率よく、知識やスキルを身につける方法です。
 さらには、身につけた知識やスキルを、プロとして稼げるレベルまで高めることができます。

 この方法は、私が外資系コンサルティングファームで長年にわたり、コンサルタントの育成やプロフェッショナル人材制度の設計、人材開発戦略などのプロジェクトをリードしてきた経験と、自分自身がリーダー研修などの社内外における研修のインストラクターとして、約3000人のコンサルタントをトレーニングしてきた経験から導き出したメソッドです。
 コンサルタントはクライアントから、日々さまざまな相談を持ちかけられます。そして、その一つひとつに対して、適切なタイミングで、適切な問題の解決方法を提示していきます。だからこそプロとして相応の対価がいただけるのです。
 相談内容は実にさまざまです。業種業態も異なれば、解決すべき問題も異なります。これらのニーズに対応するためにコンサルタントは、最速で基礎知識をインプットし、対価をいただけるだけの最良の問題解決方法をアウトプットする必要があります。
 最速のインプットと最良のアウトプット。コンサルタントに求められるのはまさにこの2点です。クライアントのニーズにこたえるためにスキルや知識をインプットすることを「キャッチアップ」と言いますが、コンサルタントはこのキャッチアップを常人の3〜6倍の速さ、場合によっては、1週間から10日ですることを求められるのです。
 もちろん、速さだけでなくクオリティも求められます。どんなに速くインプットしても、クライアントに満足していただける成果物をアウトプットできなければ、二度と仕事の依頼は来なくなるからです。バリューを生み出して、初めて意味を成すのです。

『一流の学び方』 「はじめに」に代えて より 清水久三子:著 東洋経済新報社:刊

 コンサルタントは、一般のビジネスパーソンよりも、最速でのインプットとアウトプットを求められます。
 それを実現するメソッドが、「アダルトラーニング」です。

 本書は、ビジネスに生かせる知識を3倍速で身につける画期的な「学び方」のノウハウをまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「学び」には、4つの段階がある


 アダルトラーニングでは、「仕事でバリューを出せる」ことが目的の勉強法です。

 では、「バリューが出せる」レベルとは、どのような状況を指すのでしょうか。

 私は、学びには4つの段階があると考えています。それは、①概念の理解、②具体の理解、③体系の理解、④本質の理解です。そしてバリューが出せるレベルとは、③と④だと思うのです。
 47ページの図をご覧ください(下の図1を参照)。それぞれの段階について、詳しくはCHAPTER2で述べますが、本書の全体に関する大事な図ですので、野球を例に、ここで簡単に説明しておきます。

 ステップ1の「概念の理解」とは、「知っている」というレベルです。ルールも知っているし、キャッチボールも素振りも、投球理論やバッティング理論も知っている。でも、試合に出たことがないというレベルです。

 ステップ2の「具体の理解」は、試合に出たことがあるというレベルです。とりあえず基本プレイはできるけれど、学んだ範囲でしか対応できない。ストレートにはミートできても、見たこともない変化球を投げられればお手上げ。試合には出られるけれど、うまいか、勝てるかというと、微妙なところ。
 この「概念の理解」と「具体の理解」までは、言い換えれば体育の授業で教えられるレベルです。つまり、チャイルドエデュケーションで達成できる範囲です。ただし、プロ野球選手にはなれません。つまりバリューを生まないレベルなのです。

 バリューを生むのは、ステップ3の「体系の理解」レベルからです。基本知識、技能は習得済みで、さらに自分なりにそれを応用できるレベルです。
 バッターとしてはカーブでもフォークでも対応できます。守っては高度な捕球もできます。投げては強打者を相手にしても配球を散らし、三振か、あるいはゴロに仕留める実力があります。ここまで来ればバリューを生みだしていると言えます。

 ステップ4の「本質の理解」にいくと、プロ野球なら主将かエースクラスです。
 自分で高度なプレーができるだけでなく、新たな野球理論やテクニックを編み出したり、人に聞かれれば助言やアドバイスもできます。リーダーとしてチーム全体の力を高められるレベルです。ここまで来れば生み出すバリューは「体系の理解」レベルよりさらに跳ね上がります。

 私がインストラクターとして研修をしてきたなかで一つ気づいたことがあります。それは、多くの人が「概念の理解」「具体の理解」までは学ぶのに、その先の「体系の理解」「本質の理解」まで学び続けないということです。
 その原因としては、「具体の理解までできれば、とりあえず足りることが多い」ことと、「学生時代の受験の要領(チャイルドエデュケーション)で達成できるのが具体の理解まで」ということが考えられます。
 このことは2つの点から、非常にもったいないと言わざるを得ません。
 1つは、「具体の理解」までではバリューを生まないので、ビジネスパーソンとしてはあまり評価されないということです。このレベルは、最低限できて当たり前、あるいは誰か他の人でもかまわないレベルです。だから、せっかく学んでも評価は低いのです。
 2つ目の理由は、あともうひと踏ん張りするだけで世界が変わるということです。4つの段階で一番つらいのは、実は最初の2つの段階です。そこをクリアできたなら、その勢いを駆って、かなりスムーズに次の2つの段階に進むことができるのです。

『一流の学び方』 CHAPTER1 より 清水久三子:著 東洋経済新報社:刊

図1 学びのステップ 一流の学び方 CHAP1
図1.学びのステップ
(『一流の学び方』 CHAPTER1 より抜粋)

 一口に「学び」といっても、いろいろな段階があります。

 単に、知識を「覚えた」。
 それだけでは、スキルの表層的な部分しか学んでいないことになります。

「点」と「点」を結んで、「線」にする。
 さらに「線」をいくつも描いて意味のある「図」にする。

 そこまで深く追求してこそ、実際にビジネスに役立つスキルとなるのですね。

なぜ一流は「リベラルアーツ」を学ぶのか?


 これからの時代に、「何を学ぶか」を考える。
 そのうえで参考になるのが「リベラルアーツ」です。

 リベラルアーツは、一般的に文系・理系の垣根にとらわれず、学問領域を自由にまたいで幅広い知識を身につけ、異なるアプローチを駆使できる総合的な学習と定義されます。

 清水さんは、リベラルアーツは自由を獲得するための学問であり、自分が何をすべきか考える基礎の力となると述べています。

 リベラルアーツから学びたい力は2点、1つはアナロジー(類推)スキルです。
 古代の戦争から現代のビジネスに応用できる戦略を抽出したり、昔の社会の成り立ちから今にも通じるコミュニケーションの本質をつかみとるなど、まったく関係のない分野から自分にとって役に立つものを見つけ出す力は、リベラルアーツを学ぶことで鍛えられます。
 たとえば、歴史を考える際も、リベラルアーツは単に知識体系を増やすのではなく、歴史の淘汰をくぐり抜けて人々に読み継がれてきた古典の中から、現在にも通じるエッセンスをくみ取り、自分なりに解釈する力を養ってくれます。

 もう1つが、マイストーリーを語る力――自分が何者であるかをプレゼンテーションするスキルです。
 グローバル化が進んでいくと、仕事においても異なる国、異なる民族、異なる宗教をもつ人たちと交わる機会が増えていきます。習慣も考え方も違う人々と良好な関係を築いていくためには、まずこちらがどういう人間であるかを知ってもらわなくてはなりません。
 そのとき重要なのが、仕事とはまったく関係ない分野の知識であり、自分の核となる信念や信条なのです。
 たとえば、海外のエグゼクティブと会食する際、話題になるのはビジネスの話ではありません。文化や自国の歴史など、いわゆる教養と呼ばれるものです。
 そこで自国の歴史について語ることができないのは恥ずかしいことですし、古典文学の話題に乗れないのは知性を疑われてしまいます。
「シェークスピアは何が好きか?」と問われて、「オセロです」と答え、その理由を自分の解釈を交えて語ることで、相手はこちらの趣味や嗜好を推し量り、「この人は、こういう人間なんだ」と理解を深めていくのです。
 また、どんな趣味を持っているか、どんなことに興味を持っているか、何を信じているか、仕事とはまったく離れて魅力的なマイストーリーを語ることができれば、相手の信頼も高まります。
 相手とは考え方や心情が異なっていてもいいのです。差異をはっきり認め合うことが信頼に結びつくのであり、そのためには豊富な話題の中で自分を語るスキルが求められます。

『一流の学び方』 CHAPTER2 より 清水久三子:著 東洋経済新報社:刊

 清水さんは、信頼を醸成するには人間的厚みが必要だと述べています。

 相手を納得させて、動いてもらう。
 それには、幅広い知識とともに、「自分なりの考え」を持つことが必要です。

 リベラルアーツは、すべてのスキルの基礎となるもの。
 すそ野を広く、いろいろな分野に興味を持って学んでいきたいですね。

「因数分解」をしてから、人から盗む


 アダルトラーニングでは、見て、聞いて、人の知識やスキルを吸収することも大切です。

 清水さんは、最初は人マネでもいいので、良いと思うところはどんどん盗んでいくべきだと述べています。

 時間があれば、とにかく人の仕事を見る、盗む。それだけで一流になれるのに、それがなかなかできないものです。

 人から何かを盗もうと決めたら、まずは、自分がその人のどんな部分に惹かれているのか、そこを因数分解によって特定する必要があります。そうすることで自分が学ぶべきテーマがよりハッキリと見えてきます。
 たとえばあなたが「松岡修造さんのようになりたい」と思ったとします。とすると、闇雲に何でも取り入れるようなことはせず、まず松岡修造さんのスキルを因数分解するのです。

 明るい性格
 本番の集中力
 飽くなき向上心


 こんなふうに因数分解していくと、自分の身につけたい知識やスキルがはっきりし、余計なものまで学び取る無駄が省けます。
 また因数分解すると、モデルとした人物のやり方をそのまま鵜呑みにはできないこともわかる場合があります。モデルにとってうまくいく方法が、万人に通用するとは限らないのです。
 たとえば、部下の育成に定評のあるAさんという人がいたとします。そのAさんのコーチングスキルを学ぼうと思って因数分解したところ、手厳しい指導が秘訣であるとわかりました。しかし、誰もが手厳しく指導をすれば部下がついてくるかと言うと、そうではありません。部下に厳しく接することが得意な人もいれば、苦手な人もいます。キャラクター的に似合わない場合もあります。
 そういったことを無視して、モデルのスキルがベストだと鵜呑みにしても、お仕着せ感の強い単なる猿真似に終わり、逆にパフォーマンスを悪化させることになりかねません。
 うまくいっている人を見習う際には、「厳しい指導の根っこにある、部下を思う愛情をポイントにしよう」など、自分なりにアレンジして取り入れる必要があるでしょう。

『一流の学び方』 CHAPTER3 より 清水久三子:著 東洋経済新報社:刊

図2 人のスキルは因数分解して学ぶ 一流の学び方 CHAP3
図2.人のスキルは因数分解して学ぶ
(『一流の学び方』 CHAPTER3 より抜粋)

「学ぶより真似ろ」

 そういう言葉もありますね。

 すべてをマネる必要はありません。
 自分が必要だと思う部分だけで構わないです。

「この人から学び取りたいスキルは、何か?」

 それをはっきりさせるための「スキルの因数分解」です。

1冊ずつ読破するより、並行して複数冊読む


 清水さんは、書籍を一度に何十冊もまとめ買いをします。

 その目的の一つは、「パラレル読み」をするためです。
 パラレル読みとは、複数の本を同時並行(パラレル)に読むスタイルです。

 なぜこんな読み方をするのかというと、この読み方なら、ある本で述べられていたことと他の本で述べられていたことが自分のなかで関連付けられたり、ある本でわからなかったことが他の本でわかったりなど、学習効率が高まるからです。
 また、読書という行為自体、1冊の本をじっくり読むより、パラレル読みをする方が飽きがきません。純文学を読むのであればじっくり読む必要があるかもしれませんが、ビジネス書は前述の通りサーチ読みするので、パラレル読みが有効なのです。
 よく「そんな読み方で、頭が混乱しませんか?」と聞かれます。さすがに、まったく同じテーマの同じ切り口の書籍を同時に読むことはしませんが、切り口の違う本を並行して読み進める分には、そんな心配は無用です。
(中略)
 パラレル読みに関連して一つ付け加えておくと、本を読む場所がたくさんあると、読書欲を維持・向上させるうえで、とても便利です。
 私自身、書斎や電車のなかなど一定の場所に限定しません。オフィスの休憩コーナーや会議室、自宅のベッド、リビングのソファ、キッチンの片隅。あらゆる場所を読書スペース化しています。そうすることによって、日常生活のあらゆるシーンに読書を取り入れることができるのです。

 本を買っていたら私は、それらをまず自分の前にザーッと広げます。そうして全部の本を眺めて、厚さやテーマを考えながら、「これは通勤時間に読む」「これは休日に一気に」「寝る前にはこの本」といった具合に、「いつ、どこで、何を読むか」を決めてしまいます。
 あとは、本を1冊1冊、然るべき場所に配置していくだけ。こうしておくと、「さぁ本を読もう」と構えずとも、生活のさまざまなシーンで読むべき本を手にとることが可能です。

 なかには「読む場所が決まっているほうが落ち着く」という方もいらっしゃるでしょうが、パラレル読みをする私にとって大事なのは、落ち着いて長時間集中できる環境よりも、頭の切り替えをスムーズに行える環境なのです。「この本はここ、あの本はあそこ」と分けておいたほうが、効率的に本を読むことができるのです。
 もちろん、この「パラレル読み」が誰にとってもベストな方法とは限りません。「やはり私は、1冊1冊順に読み進めたい」という考えの人もいるでしょう。それが悪いわけではないので、自分に合った方法を見つけてください。
 たとえば、何か一つのテーマについて集中的に読破して、一点突破するという読み方もいいでしょう。一つでも課題を突破できると、学習が楽しくなります。
「広く浅くパラレル読みを続けていると、イライラする」という人は、一番興味が持てるテーマ、あるいは一番強化したいテーマを選んで、そこだけ先に読んでしまうのも一つの方法です。

『一流の学び方』 CHAPTER4 より 清水久三子:著 東洋経済新報社:刊

 違う分野、違う切り口の本を同時に読み進める。
 そうすることで、気分転換をしながら、集中して知識を身につけられますね。

 飽きっぽい人、同じ場所にじっとしていられない人には、おすすめの読書法ですね。

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☆    ★    ☆    ★    ☆    ★    ☆

 スキルや知識を身につける。
 それ自体、楽しく、やる気を高めるものです。

 ただ、「学ぶ」という行為に伴う快感は、その先にあります。

 清水さんは、この快感は、「体系の理解」「本質の理解」の過程でしか味わえないものだとおっしゃっています。

 深く学ぶことで、学ぶ楽しみを知る。
 学ぶ楽しみを知ると、より多くのことを学んでみたくなる。

 そんな“知的好奇心のスパイラル”をつくる「一流の学び方」。
 ぜひ、私たちも身につけたいですね。

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