本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『防衛大式 最強の仕事』(濱潟好古)

 お薦めの本の紹介です。
 濱潟好古さんの『何があっても必ず結果を出す! 防衛大式最強の仕事』です。

 濱潟好古(はまがた・よしふる)さんは、チームマネジメント・人材育成コンサルタントです。

防衛大式「何があっても結果を出す」仕事術とは?

 防衛大は、将来の幹部自衛官を養成することを目的として創設された学校です。

 自衛隊の仕事は、日本の平和と独立を守り、安全を保つために国民と領土を防衛することです。
 他国の脅威への対応以外にも、大規模災害時の人命救助、海外の紛争地域での平和維持活動など、その任務は多岐にわたります。

 すべての自衛隊任務に共通していること。
 それは、「決してミスが許されないこと」です。

 防衛大を卒業後、私は広島県江田島にある海上自衛官幹部候補生学校を経て、一般企業に就職しました。
 自衛隊と一般企業ではもちろん仕事の内容は違いましたが、一つだけまったく同じことがありました。
 それは、「どんな状況であれ、最高の結果を出すことが求められる」ことです。
 困難や逆境といった事態が発生しても、いかなる理由があったとしても、お客様から依頼された「仕事」、上司から依頼された「仕事」、自分で段取りした「仕事」、すべての「仕事」において最高の結果を出す――。
 実際、就職先でも「結果を出すことが仕事だ」と言われ、日々営業に飛び回りました。
 といっても、まだ入社1年目。強力な営業ノウハウがあるわけではありません。
 毎日、目の前の膨大な量の仕事に追われ、それぞれの仕事が中途半端になり、お客様からクレームが入ることもたびたび。自分では一生懸命取り組んでいるつもりでも、結果がついてこず、上司からも「もっと結果を出せ」と叱咤されれるばかり。そんな状況に気持ちばかり焦り、いきあたりばったりで仕事する、そんな悪循環に陥っていました。
 どうにもこうにもうまくいかなくなったある日、ふと思い出したのが、防衛大に入校したばかりのときの生活でした。どんな状況下でも結果を出さなくてはならず、ない時間を必死でひねり出していた日々――。
 為す術がなかった私は、防衛大時代に学んだ「結果を出すためにすべきこと」を仕事に応用してみることにしました。
 すると、状況が一変しました。
 ぐんぐん営業成績が上がり、入社2年目から4年連続売上ナンバー1、営業MVPも独占、さらには入社6年目で異例の営業部長就任、2年間で会社の売上を160%アップさせるなど、どんどん結果が出たのです。

『防衛大式 最強の仕事』 はじめに より 濱潟好古:著 あさ出版:刊

 濱潟さんの営業成績を劇的に改善した、“防衛大式仕事術”とは、どのようなものでしょうか。

 本書は、「何があっても結果を出す」ための最強の仕事・時間術をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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アウトプットイメージから逆算して「時間」と「行動」を管理する

 濱潟さんが、防衛大時代に身につけた考え方が「逆算思考」です。

 あるとき、中央観閲(かんえつ)式というパレードがありました。
 これは陸上自衛隊が3年に一度実施するパレードのことで観閲官は内閣総理大臣です。
 他にも主催者である防衛大臣や実施責任者である陸上幕僚長といった錚々(そうそう)たる顔ぶれ、そして防衛大の学生隊も参加します。
 防衛大をあげてのイベントだけに、パレード責任者だけでなく、全学生に当事者意識を持たせるために毎日言われたことがあります。

「中央観閲式当日は最高のパレードにする」

 この言葉によって、全学生が共通のアウトプットイメージを持って中央観閲式に臨むことができました。
 さらに、最高のアウトプットイメージに近づかせるために、期限から逆算して、「いつまでに何をやるのか」、緻密(ちみつ)な訓練スケジュールと内容が段取りされました。
「第一段階として◯月◯日までに全学生の腕の振りを合わせるようにする」
「第二段階として◯月◯日までに列を乱さないように行進を行う」
 訓練不足によるミスは絶対に許されません。
 学生全員が共通の意識を持って逆算思考で行動することで、パレードは大成功となったのです。

 この「逆算思考」は一般企業に入社したときに本当に役立ちました。
 私は営業職だったため、年間の目標額(アウトプットイメージ)がありました。そこで、その額から逆算して毎月の目標を決め、「納期」までの営業行動計画を立て、ひたすら行動することにしたのです。
 たとえば月500万円の売上を上げるために、1か月で30社の企業を開拓する必要があるとします。
 それには1週間で最低でも8社開拓しなければならない。8社開拓するためには毎日100社電話する必要がある、といった具合です。
 アウトプットイメージから逆算して「時間」と「行動」の管理をしっかり行うと、自然と仕事に対する不安など、ネガティブな感情はなくなります。
「魚を与えるのではなく魚の釣り方を教えよ」という格言があります。
 入社したときに「魚の釣り方」となる営業の仕方は教えてもらえますが、やり方を知っているだけでは、なかなか乗り越えられません。「魚を釣れる日もあるし、魚が釣れない日」もあるからです。
 大事なのは、魚を釣り続けること。つまり、どんなときも継続して成果を出し続けることです。
「逆算思考」は仕事のやり方ではなく、どんな状況においても仕事を前に進めるための大切な考え方なのです。

『防衛大式 最強の仕事』 第1章 より 濱潟好古:著 あさ出版:刊

図 逆算思考の考え方 第1章 P27
図.逆算思考の考え方
(『防衛大式 最強の仕事』 第1章 より抜粋)

 真面目であることが、美徳とされる日本。

 頑張っていれば、結果が出なくても、許されてしまう。
 そんな風潮が、なきにしもあらず、です。

 それでは、甘すぎるということです。

 最初に、「納期」ありき。
 仕事は、つねに逆算思考で考える習慣を身につけたいですね。

「自己保身」は、百害あって一利なし

 防衛大での集団生活で、最低限、守らなければならないことは、以下の3つです。

  1. ウソをつくな。
  2. 仲間を売るな。
  3. 言い訳をするな

 この3つのいずれかを破ったときは、上級生から厳しく指導されます。
 3つに共通していることは、「保身に走るな」ということです。

「保身」とは自分の地位、名誉、安全を守ることです。ウソをついて自分の地位を守る、言い訳をして名誉を守る、仲間を売って自分の安全を守る。これらの行動は、厳しく指導されます。幹部になると、国家防衛、災害派遣、人命救助と、自分のことよりも優先しなくてはならないことは山ほどあります。将来、幹部自衛官になり、有事の際に「保身に走る」ような行動を取られては困るのです。

「保身に走るな」という教育は、集団生活の随所に見られました。指導時はとくに顕著です。
 基本的に指導されるときは、ルールを破ったときや、手を抜いているときなど、こちらに「落ち度」があったときです。
 指導されたとき、学生の態度は2種類に分かれます。
 1つは、「落ち度」を素直に認める学生です。
 上級生から指導されてもそれに対して素直に聞き、次に同じことで指導されないように反省し、生活するタイプです。この手の学生に対してはその後、上級生も継続的に指導することはありません。「自分の指導の結果、反省しているようであればそれでよし」といったスタンスです。
 もう1つが「落ち度」を素直に認めず、何かしらの保身に走る学生です。
 先にもお話したとおり、「保身に走る」行動は防衛大では絶対に許されません。
 ウソをついたり、言い訳をしたり、人のせいにした学生は、まずできなかったことに対して指導され、さらに「保身に走った」という理由で指導されます。ひどいときには、1週間続けて指導される学生もいました。

 たとえば、時間がなくて作業服の「アイロンがけ」ができていなかったとします。
 もちろん上級生に指導されます。その際に、アイロンがけを行っていない理由を必ず聞かれます。「時間がありませんでした」という答えは「言い訳」として厳しく指導されます。
 いちばん言ってはいけない理由が、「同期の作業を手伝っていた」「指導された同期のアイロンがけを手伝った」というように「誰かのせい」にすることです。誰かのせいにすることを防衛大用語で「仲間を売る」といいます。
 仮に同期の作業の手伝いをしたせいでアイロンがけの時間がなくなったとしても、仲間を売るような発言は決してしてはいけません。自分の落ち度を「同期のせい」にした学生の多くは上級生に毎日指導され、そのほとんどが防衛大での居場所をなくし、自主退学していきます。
 防衛大での「自己保身」は百害あって一利なしでした。
 この「保身に走るな」という教育は卒業するまで続けられました。

『防衛大式 最強の仕事』 第2章 より 濱潟好古:著 あさ出版:刊

 自衛隊の任務は、一瞬の油断や気の緩みが、文字通り“命取り”になります。

 自分の言葉や行動に、責任を持つ。
 甘えや他人任せの考えを一掃する。

 最初の段階から、徹底した自己責任の精神を植え付けられるのですね。

「プレスの神」が教えてくれた「プロセス管理」の重要性

 限られた時間の中で、いかに正確で、質の高いパフォーマンスを見せるか。
 そのカギを握る仕組みが、「プロセス管理」です。

 濱潟さんは、プロセス管理の重要性を「プレス」から学びました。

「プレス」とはアイロンがけのことで、防衛大生はほぼ毎日、制服や作業服の「プレス」をしています。
「カンターチ」というアイロン用のスプレーのりを使い、ズボンの折り目などを「カチカチ」にし、「スムーザー」というアイロン用のシワ取り剤を駆使して制服や作業服をシワ一つない形仕上げるのです。
 私はこのプレスが苦手でした。入校したての4月、5月はプレスで何度指導されたかわかりません。一度など、「作業服についているシワの数だけ腕立て伏せをやれ」と言われ、腕が上がらなくなるまで腕立て伏せをやらされたこともあります。私はプレスが苦手で仕方ありませんでした。
 人には得手不得手があります。私と違い、同期のNさんはプレスがとても得意でした。私が1時間程度かかるところを、Nさんは30分ほどで終わらせます。
 いったいどうしてこんなにも差があるのか、一度コツを聞いてみました。
「プレスは時間がかかるから、まずは30分以内で終わらせると決める。最初の15分は作業服の全体を一気にプレス。ついついシワを気にしてこだわった結果、集合時間に間に合わなかった経験があるから。次の10分で細かいところのシワを全部取り除く。最後の5分で同部屋の同期にプレスした作業服を見てもらい、気になるシワを指摘してもらう。指摘部分をプレスして仕上げる」
 びっくりしました。
 Nさんは自分の決めた時間内で最高の一着をつくる「仕組み」を持っていたのです。
 プレスをするという「仕事」のアウトプットイメージは「シワ一つない作業服」です。Nさんはアウトプットから逆算して各プロセス(工程)でやるべきことを次のように仕組み化していたのでした。
「30分でシワ一つない作業服を作る」という納期から逆算して、「15分で作業服全体を一気にプレスするプロセス」「10分で細かい部分のシワを取り除くプロセス」「5分で同期にチェックしてもらうプロセス」まで。
 防衛大当時は「プロセス」なんて言葉も知りませんでしたが、一般企業に入ってからはこの仕組みのことを「プロセス管理」と名付けてすべての仕事に適用しています。

『防衛大式 最強の仕事』 第3章 より 濱潟好古:著 あさ出版:刊

 複雑で手間のかかる作業も、一つひとつの工程は単純なことが多いです。
 分解した工程ごとの時間を決めれば、作業全体のだいたいの所要時間がわかります。

 いきあたりばったりで作業に取り掛からないこと。
 まず全体のアウトラインを見てから、工程ごとの時間の割り振りを決めたいですね。

防衛大式「脱・先延ばし」の技術

 時間管理をするうえで、ネックとなることのひとつに「先延ばし」があります。

 先延ばしにしても、その仕事はなくなることはありません。
 その仕事があったこと自体を忘れてしまう、というリスクも大きくなります。

 濱潟さんは、先延ばしと決別するための3つの心得・鉄則を紹介しています。

1 1分以内でやれることはすぐにやる
 まずは、「この仕事はどれくらいでやれるのか」と時間を見積もります。1分以内でやれるようなことだったら「無条件」で即やります。
 メールの返信、電話の折り返し、書類の押印といったことから交通費の入力や書類の印刷、机の上の片づけなどがこれにあたります。交通費の精算はその最たる例です。すぐにやればいいのに、先延ばしにしてしまい、月末の2時間、3時間を使って、慌てて入力するという営業マンを数々見てきました。
 このとき「突発的な仕事」や「緊急度の高いトラブル」が舞い込んできたら、交通費は当然後回しになります。その後、この2時間、3時間というまとまった時間を確保することは難しいでしょう。仮に確保できたとしても精神的に焦ってしまい、計算ミスをしたり、漏れがあとから見つかったり、といったことも起こりえます。1分以内で済ませられる仕事を溜めておいてもいいことはありません。
 1分以内でやれることはすぐにやる。これは仕事の鉄則です。

2 やるかやらないかで迷ったら瞬時にやる
 靴磨きのエピソードをご紹介しましたが、すぐにやれることを後回しにしてもろくなことがありません。
 営業マン時代の同僚が「お客様へ案件の進捗報告を今やるか、後でやるか」で悩んだ結果、「やっぱり忙しいから後でやろう」と決めたことがありました。しかし、その後、突発的な仕事が入ってきたりして、お客様への進捗状況の連絡が大幅に遅れます。
 そうしたところ、待たされたお客様が激怒され、担当を変えろという非常に厳しいクレームが本社に入る事態にまで発展してしまいました。
 どうせ遅かれ早かれやらなければならない仕事です。やるか、やらないかで迷ったら瞬時にやってしまいましょう。

3 メモを書き、メモを置き、メモを破る
 最後はちょっとしたテクニックです。
「先延ばしの習慣は捨てよう」と思ってもどうしてもそのときの仕事の状況で先延ばしにせざるを得ないときもあります。
 そのようなときはメモを有効活用します。
 メモ用紙は、どのようなものでもかまいません。私はシュレッダー行きになるような、裏が印刷されていない使用済みのA4用紙を4等分して使っています。
 メモには、どうしても後回しにしなければならない「仕事」の内容を日付と一緒に書き込みます。
 後回しにした仕事の内容を書いたメモは、デスクの上に置きます。このとき大切なことは自分の目に届くところに置くということです。最後に後回しにした仕事を完了させたらそのメモ用紙を破って捨てます。
 メモは、その仕事が完了するまでずっと机の上に置いておきます。上司から「退社するときは机の上のメモを片づけろ」と言われたとしても、そのままです。完了させるまで間続けるのはなかなかしんどいものです。後回しにしているうしろめたさも生まれ、自然と前倒しで片づけようという気持ちになるのでお勧めです。

『防衛大式 最強の仕事』 第4章 より 濱潟好古:著 あさ出版:刊

 たいしたことがない作業だけど、やり始めるのがおっくうだ。
 そんな作業こそ、指示を受けたその場から取りかかってしまう。

 それが、先延ばしをしないためのコツです。

 先延ばしばかりしていると、仕事を抱え込んで、身動きが取れなくなります。
 そうなると、よけいな仕事もどんどん降ってくるようになります。

 そんな悪循環に陥らないよう、いつも身軽な状態を保っていたいですね。

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 濱潟さんは、仕事をするうえで最も大切なことはアウトプットの質を高める努力をすること、行動を繰り返すことだとおっしゃっています。

 有事は、いつやってくるかわかりません。
「そのとき」がいつ、どのようなシチュエーションでやってきても、最高の対応をする。
 それが、自衛隊の任務です。

 訓練のための訓練では、意味がありません。
 本番同様の訓練を積み重ねることが、本当の訓練です。

 私たち、一般のビジネスパーソンも、学ぶことが多い“防衛大式仕事術“。
 ぜひ、日々の習慣として身につけたいですね。

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