本一冊丸かじり! おいしい書評ブログ

本を読むことは、心と体に栄養を与えること。読むと元気が出る、そして役に立つ、ビタミンたっぷりの“おいしい”本をご紹介していきます。

【書評】『「夢中になる」ことからはじめよう。』(エリザベス・ギルバート)

 お薦めの本の紹介です。
 エリザベス・ギルバートさんの『BIG MAGIC「夢中になる」ことからはじめよう。』です。

 エリザベス・ギルバート(Elizabeth Gilbert)さんは、米国の小説家、ジャーナリストです。

「あなたの中に眠る宝」を見つけよう!

 もっと豊かで、手ごたえがあって、変化に富んだ人生を生きたい。

 そんな願いを叶えるために、最も必要なもの。
 それは、「勇気」です。

 ギルバートさんは、勇気がなければ、世界がどれだけ豊かさを差し出してくれたとしても、それを味わえないまま終わると述べています。

 私たちに、自らの内に眠る「勇気」を引き出す力があるか。

 ギルバートさんは、いかなる創造的な生き方も、それにどう向き合うか次第であると強調します。

 あなたにどんな才能が隠れているのか、私には知るよしもありません。あなた自身でさえ、ほとんどわかっていないかもしれない(気配りくらいは感じているのではないかとは思うけれど)。あなたの能力や夢、欲望、秘めたる素質とは、いったい何なのでしょうか。
 ただひとつ、確かに言えることがあります。それは、すばらしい何かが、あなたのなかに手つかずで眠っているということ。なぜなら、人間とは存在そのものがおおいなる秘宝だからです。
 この宝は、天が人類に対して仕組んだ悪戯のようなもの。仕掛けたほうも仕掛けられたほうも楽しめる、最古にして最大の悪戯です。天は、人間の奥深くに見たこともないような宝石を隠しておいて、私たちがそれを探しているあいだ、傍観者を決め込んでいるに違いない。そう、私は考えています。
 この宝を探す旅――、それこそが、創造的な生き方にほかなりません。
 したがって、宝探しに出かける勇気を持っているかどうかが、退屈な人生と心躍る人生を分けることになります。
 この旅では、あなたが想像だにしていなかった宝を発見する場合も少なくないでしょう。その隠れた宝こそ、「ビッグ・マジック」なのです。

『「夢中になる」ことからはじめよう。』 Chapter1 より エリザベス・ギルバート:著 神奈川夏子:訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

 本書は、「自分の中に眠る宝」を目覚めさせ、本当に望む自分だけの人生を生きるため方法をまとめた一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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「充実した人生」を送るには?

 ギルバートさんのいう「創造的な人生」とは、「恐れ」よりも「好奇心」を原動力とする人生のことです。

 その例として、創造的に生きている人でここ数年でいちばん素敵だなと思った人物を紹介しましょう。友人のスーザンです。彼女は、40歳になってからフィギュアスケートのレッスンを始めました。
 正確にいうと、スーザンはそのとき、まったくの初心者というわけではありませんでした。むしろ、彼女は幼いころから大会に出場していて、滑ることが大好きな女の子だったのです。
 ところが思春期に入り、大会で優勝するほどの才能が自分にはないと悟ったとき、スーザンはスケート選手になる夢にみずから見切りをつけてしまいます(けなげな少年少女たち! “才能ある”生徒たちは大勢のなかから正式に選抜されて、世間の“夢と感動”への過大な期待をそのか細い両肩に背負わされる。一方で、残された凡人は平凡で味気ない人生を歩むしかなくなる。なんというむごい仕組みでしょうか・・・・・)。
 スケートをやめてから四半世紀、スーザンが氷の上には立つことは一度としてありませんでした。トップになれないならやっても仕方がないと、彼女は思っていたからです。
 そしてある日、40歳の誕生日を迎えます。そのときスーザンは、疲れて気の抜けた中年女になっていました。焦燥感。くすんだ肌。重い身体。節目の誕生日に人びとがよくやるように、彼女もまた自分の人生を見つめ直してみました。ありのままの自分をいつわらず、軽やかで喜びに満ちて、そして・・・・・そう、創造的に生きていたのはいつだっただろう?
 それがもう数十年前も前のことだと気づいたとき、スーザンは愕然としました。
 あの感覚は、10代のころにはたしかにあったはず。そう、まだスケート選手になる夢を追っていたころには。人生を謳歌させてくれたスケートを、こんなにも長いあいだ封印していたなんて・・・・・。自分自身にただ唖然としました。そして、スケートに対する思いが変わっていないかどうか、どうしても確かめてみたくなったのです。
 スーザンは自分の心に素直に従い、スケート靴を買って、練習させてくれるリンクを見つけ、コーチを雇いました。こんなばかげた真似をするなんてあまりに勝手で非常識じゃないか。そうささやこうとする内心の声も封印しました。華奢で、妖精めいた少女ばかりのアイスリンクにたったひとりの中年女という状況で人の目がひどく気にもなったけれど、それもすぐに克服しました。
 そうしてスーザンは、ただひたすら滑ったのでした。
 週に3回の早朝レッスン。夜明け前に起きて、寝ぼけまなこでリンクに行き、日中のハードな仕事が始まる前にスケートの練習をする。まさにスケート三昧の日々が続きました。
 そしてあると、スーザンは理解します。自分は今でもスケートが大好きなのだ、と。それどころか、スケートを愛する気持ちは昔以上に強くなっていました。大人になってやっと、喜びに満たされることの大切さをかみしめる心のゆとりができたのかもしれない。そう、スーザンは考えました。
 スケートのおかげで生きている実感が湧き、年のことなどもはや気にならなくなりました。ただお金を使うだけの空っぽな自分、日々の義務と義理を果たす以外に何をするでもない自分を、卒業したような気がしました。みずからの力で、そして、みずからを素材として何か新しいものを生みはじめたのです。

『「夢中になる」ことからはじめよう。』 Chapter1 より エリザベス・ギルバート:著 神奈川夏子:訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

 心の底からやりたいこと。
 魂が望むこと。

 それらには、人を甦らせる魔法の力があるということですね。
 まさに、「ビッグ・マジック」です。

「その分野で一流になれるのか」
「それでお金が稼げるのか」

 そんな余計なことを考えては、いけません。

 自分の心の声に耳を澄ましてみる。
 そして、素直に従ってみる。

 創造的な人生は、そこから始まります。

「アイデア」が実るまで

 創造的な人生を歩み始めると、これまで思いもしなかったアイデアが浮かんできます。
 アイデアは、「インスピレーション」として、突如、私たちの身に降りかかります。

「インスピレーション」は、非科学的なもの、魔術的なものとされています。

 ギルバートさんは、創造的活動は魔術的な力によって成立していて、元来人間の力が完全には及ばないところで発生するものだと述べています。

 創造的なプロセスとは、魔法にかけられながら魔法を使うことです。

 ギルバートさんは、創造活動の仕組みについて、以下のように説明しています。

 地球上には、動物や植物、バクテリア、そしてウイルスなどが棲息しています。しかし、それだけではありません。地球にはアイデアも棲んでいるのです。アイデアは、肉体のない、エネルギーを持つ生命体だと考えられます。私たち人間からは完全に切り離された存在だけれど、やり取りすることはできます。
 その奇妙なやり取りとは、次のようなものです。肉体を持たないアイデアには、意識があるうえ、間違いなく意志も備わっています。そして、アイデアはただひとつの衝動に突き動かされています。それは、「出現させてほしい」という衝動です。人間のパートナーを得なければ、アイデアはこの世に出現することができません。私たちが力を尽くしてはじめて、アイデアを虚空から現実世界へとスムーズに誘い出すことができるのです。
 アイデアは私たちの周囲をいつでまでも回り続け、喜んでパートナーになってくれそうな人間を探します(芸術、科学、産業、商業、倫理、宗教、政治など、あらゆる分野のアイデアがそうしています)。自分を生み出してくれそうな人間を見つけたアイデアは、その人――たとえばあなた――のもとを訪れて、注意を引こうとするでしょう。でもほどんどの場合、あなたはこれに気づきません。なぜなら、そのときあなたはもめ事や心配事、気晴らし、不安、仕事等々で頭がいっぱいで、インスピレーションを受けとめるだけのゆとりがないからです。
 ほかにも、アイデアからのシグナルを見逃す原因はいろいろと考えられます。テレビを見ていた。買い物をしていた。怒りすぎたと後悔したり、失敗や過ちを思い返したりしていた。たんに、いつも忙しいせいかもしれません。アイデアはあなたに手を振って見つけてもらおうとします(数分間だけかもしれないし、数ヶ月間、あるいは数年間にわたる場合もあるでしょう)。でも、最終的にあなたには気づいてもらえないことが分かると、見切りをつけて別の人のところへと移ります。
 それでもたまには、やってくるものを受け入れるくらいオープンでリラックスした精神状態のときが、誰にでもあるもの。めったにないけれど、すばらしいタイミングです。心の鎧が外れているときや、不安から解放されているときがチャンス。魔法は、あなたのなかにするりと入ってきます。あなたの心が開かれていると察した「アイデア」がアプローチを始める瞬間です。インスピレーションを受けたときに誰もが感じる身体的・感情的な兆候(両腕に走る寒気、逆立つうなじの毛、胃もたれ、ワクワク感、恋に落ちるときや夢中になるときの感触)は、じつは「アイデア」の仕業なのです。

『「夢中になる」ことからはじめよう。』 Chapter2 より エリザベス・ギルバート:著 神奈川夏子:訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

 不安などのネガティブな感情に、心が囚われている。
(魂にとって)重要ではないことに、思考が奪われている。

 そういうときには、アイデアは降りてきません。

 アイデアが浮かばないのは、才能がないのではありません。
 単に、受け入れる準備ができていないということです。

 いつでも、心にアイデアが出現するための“余白”を持っていたいですね。

ずうずうしく「意思表明」をする

 自由に創造し、自由に探求する。
 そんな生き方をしたいなら、「断固とした権利意識」を持つ必要があります。

 権利意識とは、私はここにいていい、とひたすら信じ続ける心のありようのことです。

 創造的な生き方をしよう。
 そう決意するとすると、激しい自己批判、自己嫌悪に襲われることがあります。

 それを打ち破るのが、よい意味でのずうずうしさ。言い換えれば、「存在する権利と、それに由来する自己表現の権利」の意識です。

 創造的人間としての自分を他人に認めてもらうためには、まずあなた自身について定義しなければなりません。それは、あなたの意思を宣言することでもあります。まずは、そこから始めましょう。背中をまっすぐにして立ち、大きな声で。
 私は作家です。
 私は歌手です。
 私は俳優です。
 私は庭師です。
 私はダンサーです。
 私は発明家です。
 私は写真家です。
 私は料理人です。
 私はデザイナーです。
 私には、いろいろいな顔があります。
 私は自分がまだ何ものかわからないけれど、それを見つけようという好奇心でいっぱいです!

 さあ、声に出して。「私はここにいる」と発信しましょう。そうして、あなたがここにいることをあなた自身にも教えてあげてください。世界とか他人に対するこの意思表示は、自分自身に対しても行われなければ意味がないのです。
 宣言を聞いたとたん、あなたの魂は動きはじめるでしょう。大喜びで協力してくれるでしょう。なにせ、そのための魂なのだから。魂は、あなたが自らの存在意義に目覚めるのを、もう何年も待ち続けてきたのです。
 でも、対話の口火を切るのは、かならずあなたです。そして、この対話を続ける権利をつねに自覚していてください。
 意思と権利を表明すれば、あとは奇跡が起きるのを待つだけ、というわけにはいきません。毎日、表明を繰り返してください。成人してからの私は、来る日も来る日も、「私は作家である」と自分を定義し、意志を維持し続けなければなりませんでした。「何があっても創造的生活を送る」「成果があろうとなかろうと、心配と心細さで胸がつぶれそうになっても、創作活動は決して投げ出さない」。そう、自分の魂と世界全体に向かって、繰り返し言い聞かせたのです。
 そのうち、どんな口調で表明すれば効き目があるのかもわかってきました。きっぱりと、でも優しく。辛抱強く繰り返すけれど、キーキー言ったりはしない。心の深い闇から生じるネガティブな声に向かって、静かではあるけれど断固とした口調で話しかけましょう。あなたは、凶暴な精神異常者を相手にした人質解放の交渉担当者。ここで何よりも大切なのは、絶対に引き下がらないこと。絶対にです。なにしろ、救出しようとしている人質は、あなた自身なのだから。

『「夢中になる」ことからはじめよう。』 Chapter3 より エリザベス・ギルバート:著 神奈川夏子:訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

 上手い下手、経験の有り無しは、関係ありません。

「私は、歌手だ」
「私は、作家だ」

 そう自分で決めてしまうことが、何より大切だということです。

 表現の自由は、すべての人間の持つ権利です。
 どんなときも、その意識を強く持っていたいですね。

学び始めるのに、遅すぎることはない!

 ギルバートさんは、創造活動を何歳で始めようと、決して遅すぎることはないと述べています。

 もうそんなに若くないという歳で創造の道を歩みはじめたすばらしい芸術家を、私は何人も知っています。人によってはかなりの高齢になってから始めています。紙面の都合上、今回はそのうちのひとりだけを取り上げます。
 彼女の名前はウィニフレッド。
 その名を知ったのは、1990年代のグリニッジ・ヴィレッジでのことです。ウィニフレッドの90歳の誕生日パーティで(これがかなり盛大なイベントでした)、私は初めて本人に会いました。なんと彼女は、私の友人の友人だったのです。ウィニフレッドの交友関係は年齢も経歴もさまざまで、この友人は20代の男性でした。
 当時の彼女は、グリニッジ・ヴィレッジのワシントン・スクエア公園界隈におけるちょっとしたスターで、この辺に昔から住んでいる筋金入りのボヘミアンでした。赤毛のロングヘアを頭のてっぺんで艶やかに結い上げ、琥珀のビーズでできたネックレスを何連もまとっていました。科学者だった亡き夫の存命中は、世界中の台風やハリケーンを追いかけてまわるような存在だったのです。
 ウィニフレッドのような鮮烈な生き方をしている女性に初めてあった私は、インスピレーションを得ようとして彼女に質問したことがありました。「今まで読んだなかで最高の本は何ですか?」
「まあ、なんて質問かしら。私にとって大切な本はとっても多いのよ。1冊に絞るなんてできないわ。でも、お気に入りの学問なら教えてあげられる。10年前から勉強している古代メソポタミア史に今は夢中なの。それにね、この勉強のおかげで人生が変わったって言いきれるわ」
 当時25歳だった私は、90歳の未亡人の口から「何かに夢中になって人生が変わってしまった」などというセリフを聞いてびっくりしていました。この瞬間、私は、ものの見方が広がっていくのを体で感じているようでした。そうして私の精神はゆっくりと少しずつ開かれてゆき、女として生きていくうえであらゆる種類の新しい可能性を試してみたい、と思えるようになっていったのです。
 しかし最大の衝撃を受けたのは、そのあとでウィニフレッドの学問にかける情熱をさらに詳しく知ったときのこと。なんと彼女はその後、古代メソポタミア文明史の専門家として名を成すまでになっていたのです。それは、この分野の勉強を10年間みっちり続けた成果にほかなりません。つまり、どんなことでも10年間専念すれば、エキスパートになれるのだということ(10年あれば、修士号ふたつに博士号ひとつを取得できます)。ウィニフレッドは中東まで何回も足を運んで発掘調査に参加し、くさび型文字を学び、メソポタミア文明を専門とする著名な研究者や博物館長たちと親交を深めてきました。関連する展示会や講演会が地元で開催されれば、絶対に参加しています。そしてとうとう、古代メソポタミアについて人びとに見解を請われるまでになったのです。今や彼女こそがこの学問の権威だというわけです。
 当時の私は大学を出たばかりでした。対象にもよりましたが、まだまだ鈍く貧しい想像力しか発揮できなかった私は、ニューヨーク大学を卒業できたのだからこれ以上の学問は必要ないと信じ込んでいました。ところが、ウィニフレッドに啓発されて気づいたのです。他者に学業修了を言い渡されたからといって、自分の学びが終わるわけではない。学びが終わるのは、自分でそう決めたときなのだということに。ウィニフレッドは、80歳になったばかりの女の子だったときに決意したのでした。まだ学びは終わっていない、と。

『「夢中になる」ことからはじめよう。』 Chapter4 より エリザベス・ギルバート:著 神奈川夏子:訳 ディスカヴァー・トゥエンティワン:刊

 最高に創造的で、情熱的な人生。

 ギルバートさんは、始めようと決めたときならいつでも始められると強調します。

 年齢や環境のせいにして諦めるのは、簡単です。

 いくつになっても、「何かに夢中になる」生き方。
 続けていきたいですね。

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 創造活動における秘訣となるもの。
 それは、「好奇心」です。

 好奇心は、たったひとつの簡単な質問を投げかけてくるだけの存在です。

「あなたの興味があることは、何ですか?」

 私たちの注意を一瞬でも引いた「何か」が見つかったとき。

 ギルバートさんは、立ち止まって、そこに潜むごく小さな興味のかけらが何であるのか、見きわめましょうとおっしゃっています。

 “興味のかけら”を拾い集める作業。
 それは、「宝探し」に似ています。

 “好奇心の宝探し”を通じて、“興味のかけら”を拾い集める。
 それを続けているうちに自然と、エネルギーにあふれた創造的な生き方になっている。

 それが人生を変える、「ビッグ・マジック」の本質です。

「もっと自分を輝かせたい」
「もっと自分らしい、充実した人生を送りたい」

 そう願う、すべての人に読んで頂きたい一冊です。

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2 thoughts on “【書評】『「夢中になる」ことからはじめよう。』(エリザベス・ギルバート)

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