【書評】『MINE』(ジョージ・S)

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 お薦めの本の紹介です。
 ジョージ・Sさんの『MINE 総時価総額100兆円、利用者数1億人。ついに動き出す金融革命。「マイニング経済圏」は世界を変えるのか』です。

 ジョージ・S(Geoge S)さんは、プログラマーです。
 イーサリアムを使う開発コミュニティ、エンジニアチームのリーダー的存在として知られている方です。

「仮想通貨」は、世界をどう変えるのか?


 多くの人にとって、仮想通貨は、生まれたばかりの「よくわからない」技術です。

 これから世界に受け入れられるのか。
 どのように受け入れられるのか。

 まだ、《未知数》な部分が大きいです。

 ジョージさんは、この《未知数》に賭けようとする冒険家であり、ビジョニストです。

 本書で日本に住む人々にも広く知ってほしいと願っている僕の構想「MINE」をコアとする《マイニング経済圏》は、マイニングに詳しい人も、マイニングなんて言葉を知らない人にも、同様の資格で参加可能な仕組みになっている。
 アフター・ビットコインになることが確実なイーサリアムをプラットフォームにこの経済圏は作り上げられていく。
 MINEは僕の構想にもとづいて新しく発行された「通貨」だが、このMINEはただ単に「仮想通貨が、また一つ増えた」というだけのものではないことも本書を通じてお伝えしていくつもりだ。
 MINE向けのMINEのためのマイニングファームが、すでに稼働している。日本でもDMM.comやGMOインターネットなどの大手企業が、マイニングファームに出資したことがニュースになっているらしいが、僕が投資したマイニングファームは、時期的にも規模的にも、圧倒的に早く、スケールも大きい。
(中略)
 この構想をまとめながら、僕は同時にこんなこと考えていた。

  1. そもそも「お金」とは一体何なのか?
  2. 100円を送金するのに2倍近くの「手数料」がかかるのはなぜか?
  3. 「投資」って何なのか? (本当にわかっていたのだろうか?)
  4. 「資金調達」の「資金」とは?
  5. AIシンギュラリティと、かぶるのか?
 僕はこれを、「クリプトカレンシーcrypto currency(訳者注:英語圏では日本語で仮想通貨と訳されるヴァーチャルカレンシーより一般的に使われる。日本語で暗号通貨)が要請してくるリバースエンジニアリング」と呼んでいる。
 どれもいつもはあたりまえの空気のようなもので、クリプトカレンシーを知るまで疑問に思ったりすることはなかった。でも、これはそういう問いを求めてくる凄さを持っているものだ。僕はそうひしひしと感じていた。
 言わば、この新しい通貨が、アタリマエと思ってきた僕らが生きるこの世の中の仕組みを、リバースエンジニアリングすることを要請している、と思ったのだ。
 たとえさほど深い理解に達していなくても、アプリケーションとしての通貨の仕組みを、空想も含めてもいいので、どんな世界で、どんなことができるようになるのかを、イメージしようと自分のアタマを動かして考えると、かえって今現在の「お金」についていろいろなことが、もっとクリアに見えてきたりする。これを僕は広い意味でのリバースエンジニアリングと呼んでいる。
(中略)
 ただ、いまの世界をより良いものへと変える可能性を秘めたこの構想の素晴らしさを、より多くの人にわかってもらうためには、そもそもカソーツーカについてイメージを共有しておく必要がある。世界中で書かれている解説書とは、たぶん僕のカソーツーカはちょっと違っているはずだ。
 その違いをシェアしてもらうためにも、まずはクリプトカレンシー――日本語では「暗号通貨」よりも、「仮想通貨」が一般的に使われているらしい――のおさらいから始めよう。
 すでにマイニングしている人にも、そうでない人にも、名前だけは知っているという人にも、役立つこと間違いなしである。

『MINE』 はじめに より ジョージ・S:著 中上分維:訳 冬至書房:刊

 本書は、世界をよい方向へ変える可能性のある《マイニング経済圏》とは何か、わかりやすく解説した一冊です。
 その中からいくつかピックアップしてご紹介します。

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ブロックチェーンは、「peer to peer」と「マイニング」


 ビットコインに代表される「仮想通貨」。
 それらは、「ブロックチェーン」=サイバー空間上の取引「台帳」を「共有」して取引されます。

「台帳」を共有する通信方式は、「ピア・トゥ・ピア(peer to peer)」と呼ばれます。

「ピア・トゥ・ピア」の通信方式により、金融機関などを間に介することなく、「直接的」に誰かから誰かへと、送金や支払い、入金ができるようになります。

 しかし実際のところ、このpeer to peerは、わかりにくいです。わかりにくいというのはイメージしづらいということです。僕はこの説明をする際にいつもスカイダイビングのフォーメーションとメリーゴーランドを頭に浮かべます。
 スカイダイビングのフォーメーションが「自律分散型」、つまりピア・トゥ・ピア、メリーゴーランドが、中心に金融機関などが管理者として存在する「中心集中型」です。
(中略)
 peer tp peerの「ピアpeer」は、「同僚」とか「仲間」という意味です。あくまでイメージですが、身近な例としてはオフィスでスタッフ同士、内線で何かを伝えあうとか、タブレットに文書を表示して、確認のために相手の席までタブレットを持って行くという光景は、このpeer to peerの「直接」性を理解するヒントになると思います。しかし、フロア全体を管理する「上司」のような人は、いません。つまり「中心」は存在しません。
 でも誰かが「この指とまれ」とか「ここにいるからデータ送って」とか言わないことには何も始まりません。それはそうです。いったんこのピア・トゥ・ピアの仕組みが動き始めると確かに「中心」はありません。しかし仕組みを起動するための「言い出しっぺ」はもちろん初めに存在します。
 この言い出しっぺのことを僕はIntiative(イニシアティブ)と呼んでいます(訳注:一般には仮想通貨の「開発者コミュニティ」などと呼ばれる。このInitiativeは著者独自の使い方で日本語にしにくく英語のまま表記した)。「コインチェックNEM盗難事件」へのコメントの節で、ネム財団のとった行動について表に出るべきではない、と言っているのはこのInitiativeのことです。仕組みが動き始めたら、イニシアティブは消えるべきなのです。

『MINE』 第1章 より ジョージ・S:著 中上分維:訳 冬至書房:刊

 仕組みを作る人は必要だが、管理する人は必要ない。
 組織を形作る個人が、それぞれ独立し、1対1の関係をつくる。

 それが、仮想通貨を軸にした《マイニング経済圏》の根本となる考え方です。

 起動者となるInitiativeが、媒体となる通貨を新しく導入する。
 そのたびに、新たな経済圏(トークン)が生成されるということを意味します。

 たしかに、これまでの経済システムを揺るがす、大きな力を秘めていますね。

「マイニング」は、現代版「ゴールドラッシュ」


 マイニングは、本来、「鉱石などの採掘」の意味で、比喩的な意味で使われています。

 この場合、不特定多数の、自由意志で参加する人々が、「仮想通貨」による取引の公正さを証明する作業を指します。

 マイニングの作業する人を「マイナーminer(採掘する人)」と呼びます。

 暗号技術を駆使して公正で安全な通貨の取引と流通を支える具体的な仕組みは、機械=高速演算処理能力を持つコンピュータと、マイナーと呼ばれる人々との協働作業、つまり「マイニングMining」による「プルーフ・オブ・ワークProof of Work:PoW」によって支えられているのです。
 これはボランティア活動に近いものがあります。日本語でボランティアというと無償でやる仕事、奉仕活動のようにとらえられているようですが、それはまちがいです。
 自発的な意志でやりとげられた仕事に対して報酬が発生することがあることを、ボランティアは否定するものではありません。
 僕はそもそも、ブロックチェーン技術と切り離すことのできないこうした作業をなぜ「マイニング」と呼ぶのか、不思議に思っていました。ブロックチェーン技術とは別の分野で「テキストマイニング」とか「データマイニング」という用語はすでに使われていますが、やっていることはまるで違います。
 そこで僕なりに推測して、これはいかにもアメリカ的なたとえじゃないのかと調べてみたところ、19世紀のアメリカで起きた「ゴールドラッシュ」に関係していることがわかりました。彼らは一攫千金を夢見て、黄金を掘り当てようとしましたが、金脈を掘り当てることができた人はごくわずかだったといわれています。
 ブロックチェーンを支えるマイナーたちも、まっさきにプルーフ・オブ・ワークをやり終えたマイナーが、感謝の気持ちが込められたお礼として、ビットコインやイーサをもらいます。日本円で一ヶ月あたり3000円程度でしょう。日割りにすると一日100円です。
 これらは一攫千金とはほど遠いですが、マイナーたちはマイニングが楽しいから高額な専用マシンを設置して、「儲からなくても楽しい。儲かったらうれしい」といったノリで、「第三者機関」に依存しない「信用」と取引の「公正」さを実現実証するワークに自発的に参加してきたわけです。もっともこのスタイルは、アフター・ビットコインではなく、ビットコイン時代のものです。
 しかし僕は、ここで稼働している自発的な意志と、フェアな競争によって自らの能力を試し、うまくいけばそれに見合った報酬を得られるという仕組みを支えるスピリットは、とても大切なものだと感じています。

『MINE』 第2章 より ジョージ・S:著 中上分維:訳 冬至書房:刊

 高性能のコンピュータを稼働させるだけで、ものすごい電気代がかかります。
 メンテナンスなどの手間も、ばかになりません。

「莫大なコストを費やしてでも、続けたい」

 マイナーたちに、そういう気持ちを起こさせるほど、「マイニング」は魅力的なのでしょう。

 まさに、現代版「ゴールドラッシュ」と言えるかもしれません。

「特定の国の通貨ではない」から世界を変えられる!


 最近では、「仮想通貨」も、株式やFXと同様に、簡単にトレンドをチェックできます。
 例えば、証券会社のアプリで、いわゆる「チャート」を見ることができます。

 ジョージさんは、仮想通貨が、ドルやユーロなど世界の基軸通貨を含む各国法定通貨と同等に、「世界通貨」の一つとして扱われているという事実が重要だと述べています。

 投機の対象としての仮想通貨ではなく、「世界通貨としての仮想通貨の価値」を、たとえば「スイスフラン」とくらべてどうなのか、という「指標」も示すことができます。あくまでも、参考にすべき材料として、ペアを組んだその国は、仮想通貨をどう見ているのかを知るということになります。
 もちろんここには、仮想通貨と仮想通貨のあいだで価値を競いあうことによる仮想通貨の通貨単位の値=価値が相対的に決まる「仮想通貨による仮想通貨の相場」が形成されているという仮説が必要で、話は込み入ってきますが、通貨の資格という意味ではシンプルで、どんな通貨であれ――法定通貨であれ、仮想通貨であれ――それを通貨つまり「価値を乗せるメディア」として「受け入れる人、受け取ってくれる人」が増えれば、それは通貨の資格を持つことになります。
 法定通貨は、その国の国民全員が、国内では当然に使うことを定められた通貨ですから、基本、国民全員がその通貨を「価値を乗せるメディア」として「受け入れる人、受け取ってくれる人」です。
 ですから通貨としての資格を持つことは当然です。その価値は国内では、固定されています。「一万円」札に「一万円」と印刷されているかぎり、「一万円」は「一万円」であるという意味で固定です。しかし、なぜこの一枚の紙が「一万円」の価値を乗せているのか? を説明することは僕にはできません。
 トレーディング・ビューのこのチャートは、法定通貨であれ、仮想通貨であれ、その絶対価値ではなく、その相対価値を表しており、「円」で何が買えるか、自動車が何台買えるか、という意味での絶対価値を表すものではありません。
 つまり、このチャートは、各国法定通貨は、とっくの昔に「絶対価値」を失っている、あるいは「絶対価値」など求めなくても、やっていけるという「信仰」によって、リーマンショックまで走り抜けてきた、その通貨たちの姿を示しているのか? と思ったりします。差益をとった人は、そのお金で自国で買い物をするかも知れません。しかしそういうメイキングマネーを、なぜこういう相対相場でやる必要があるのか? 勝つか負けるか以前に、この「相場(市場)」が、何をしているのか、何によって動いているのか、ここまで来ると例の、ゴールドを価値の裏付けとして流通した金本位制の兌換紙幣から、金の裏付けなしに「価値の乗り物」として流通し、今にいたっている「円」や「ドル」や「ペソ」、そしてそこにあらたに登場してきた「仮想通貨」という流れを、「通貨の歴史」としてみることができるか、という話になってきそうです。
 僕は当然できるはずだと思っています。たただこの場合には、「ドル/円」のような相対ペアを作れるはずがなく、たとえば「ビットコイン/円」という相対はとてもおかしなものだと思います。
 なぜなら、ビットコインにかぎらないイーサもMINEも、仮想通貨は、

 どこかの「特定の国の通貨」ではない。

 からです。

『MINE』 第3章 より ジョージ・S:著 中上分維:訳 冬至書房:刊

 法定通貨は、発行主体の国の信用力で、支えられてます。

 仮想通貨の価値は、「ブロックチェーン技術」の信用性に基づいています。

 ブロックチェーンは、その構造上、不正が不可能なシステムといわれています。
 仮想通貨は、技術の進歩が生み出した、新時代のお金です。

 国際的な政治や戦争、経済状況などに左右されない。
 そんな仮想通貨の価値は、今後ますます増していくことでしょう。

お金を使えば使うほど増える「2層構造」とは?


 ブロックチェーン技術を基盤とした、ツールとしての「お金」。
 そこには、いくつかのさらに小さなツール(モジュール)が、パーツとして組み合わさっています。

 歯車に例えると、大きな歯車と小さな歯車がうまく噛み合って、全体がスムーズに回ることで、経済圏をかたちづくっていくということ。

 ジョージさんは、MINE構想から生まれた仮想通貨は、この二つの歯車、つまり二つの機能を発揮する複数のツールを兼ね備えた通貨だと述べています。

 経済学の用語を借りて言えば、マクロ経済とミクロ経済の良好な相関、もっと言うなら、二つの相乗効果を生み出すことが、ツールとしての「お金のミッション」であると僕は考えています。
 しかしだからと言って、僕がそういう経済のありかたを「計画」して実現するというのではまったくありません。
 この「ツールとしてのお金」の基盤技術は、何度も本書で取り上げている「ブロックチェーン技術(分散型台帳)」なので、「計画」することなど、そもそもできないのです。
  この技術による「決済」の完了が、確率論的過ぎる、こそが限界だという議論もありますが、そこは僕は、ほとんど心配していません。
 まずは、レジで買い物をするという意味での、「決済」が安全確実に完了すること、あるいは「送金」と「着金」が安全確実に完了すること、このことが経済圏成立にとっての必要条件だと考えているからです。
「確率論的すぎる」ことを問題にするのは、旧来の「融資」をはじめとする金融業務にブロックチェーン技術を応用する、いわゆる「フィンテック」の側から見た「問題点」です。いわばどちらかというとマクロ経済からの視点です。
 しかし仮想通貨、法定通貨を問わず、経済圏を形成する「土台」は「買い物」に代表されるミクロな経済なのではないですか?
(中略)
 なぜ大小の歯車を例にこんな話をするかというと――これは僕自身、訳者とのメールのやりとりをしていて気づいたのですが、MINE構想は、大きく2層構造になっていて、この2つが大きな歯車と小さな歯車のように組み合わさることで、法定通貨ではできなかったことを実現できる、新しい経済圏のエンジンになりえているのだ、という説明のしかたが、より多くの人にMINE構想の特長を理解してもらえる有効な方法だと気づいたからです。

 大きな歯車と小さな歯車が組み合わさっているというのは、もう少し具体的に言うと「お金を使えば使うほど、お金が増える」経済圏ということです。
「お金を使う」のは、いわゆるごく日常的なショッピングに代表される「消費」です。ミクロな経済です。そして「お金が増える」のは、法定通貨による「貯蓄」「投資」などいわゆる「資産形成」に相当します。
「資産形成」をマクロと言っていいかどうかは、僕には自信がありませんが、「お金を使うこと」つまり「消費」が「通貨」的であり、一方「資産形成」は「退蔵」されるという意味で「貨幣」的であるということは、言っていいと思います。
 経済圏は、「お金が動く」ことによって成立します。これは便宜上の使いわけにすぎないのですが、動くお金が「通貨」、じっとしているお金が「貨幣」で、この意味「資産」は「貨幣」かもしれない、と言い換えてもいいとと思います。
 MINE構想は「2層」からなる、と言ってみたのは、この「通貨」と「貨幣」の連続性のようなものを、なんとか説明したいと思ってのことです。これは「法定通貨」では成立がむずかしい、「仮想通貨」だからできる「貨幣」と「通貨」の新しい関係とでも言うべきものだと、僕は考えています。

『MINE』 第4章 より ジョージ・S:著 中上分維:訳 冬至書房:刊

 事業を起こしたり、規模を広げたりするのに欠かすことができない「資金」。

 これまでは、「すでにあるもの」を、銀行から借りるなどして手に入れるしか、方法はありませんでした。

 しかし、MINE構想では、自分たちの手で「新しく作る」という選択肢もでてくるわけです。

 仮想通貨は、単なる「通貨」ではなく、「貨幣」としての価値を持つ。
 そして、使えば使うほど、世の中に認知され、信頼されて、価値が上がっていきます。

「お金を使えば使うほど、お金が増える」経済圏。

 たしかに、世の中を根本的に覆すインパクトがありますね。

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 ジョージさんは、貨幣は、言葉に近いものであるとおっしゃっています。

 ユニバーサルな言語コミュニケーションを可能にする音声認識技術と、「世界の旅人」である仮想通貨の技術がタッグを組むことで展望される経済圏の可能性は、とてつもなく大きいとのこと。

 いたるところで「仮想通貨」という“声”が、数限りなく生まれ続ける世界。
 そこでは、どんな光景が繰り広げられるのでしょうか。

 近い将来、必ず訪れるであろう、MINE経済圏による「金融革命」。
 皆さんも、ぜひ、本書を片手に覗いてみてはいかがでしょうか。

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